【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
なので、短いです。
いつも以上に詰めが甘いです。
伝説のポケモン、というのをご存じだろうか。
有名なところでいうと、カントーにいるサンダーとかファイヤーとかフリーザーとか。
あるいは、ジョウトにいるという虹色のひこうポケモンか。ホウエンの空飛ぶ兄妹とかだろうか。
で、例外こそあれその伝説ポケモンの多くは通常のポケモンとは別格の強さを持ち、かつ何等かの特殊な能力を持っていたりする。
そんでもって、彼らは非常に気位が高く、相応に強力だ。
捕まえるにしろ、言う事を聞かせるにしろ、彼ら彼女らには一度力や覚悟を見せる必要があるのである。
自身の力を託すに値するか、見定めてくるのだ。
ジョウト地方の、とある森の深奥。
俺は、一匹の伝説ポケモンと相対していた。
さすがはポケモンレンジャー協会の調査力といったところか、彼はあっさりと見つかった。
「お久しぶりです。スイクン」
オーロラポケモン・スイクン。
淀んだ水を蘇らせるという、みずタイプの伝説ポケモンだ。
今、俺の目の前には、あの日見たスイクンがいた。
彼は泰然自若とした姿勢で、じっと俺の目を見つめていた。
俺にも彼にも、敵意はない。害意もない。痛めつけようとか、悪用してやろうという気持ちもない。
ただ、戦意はあった。
「……現在、ホウエン地方の一部にて深刻な環境汚染が発生しています。原因は強力な他地方ポケモンによる縄張り争いであるとされています」
ポケモンに言葉は通じない。けれど、霊験あらたかなポケモンを前にしては、こちらも礼を失する訳にはいかない。
凪いだ瞳を、こちらも見つめ返す。申し訳なさを覆い隠し、強い義務感があるのだと示さなくてはならない。
「スイクン様、貴方のお力を貸していただきたい」
対するスイクンは、静かに周囲の温度を下げ始めた。臨戦態勢である。
わかっている。まず、力を示す必要があるのだ。
そもそも、ここまで待って話を聞いてくれている事実こそ、彼が伝説のポケモンたる証左である。
「……ありがとうございます」
応じるように、俺もボールを投げ放った。
「べあくあ!」
繰り出すは、同じく伝説ポケモンのウーラオス。
ウーラオスは流麗に合掌礼をすると、構えを取った。
一対一の、正々堂々とした勝負でこそ、覚悟を示せるというものだ。
「……それと、俺の給料になっていただきます」
あと、一応俺個人の本音も添えて置く。
なんか嘘とかバレそうな感じあるし、最初から本音言っちゃった方がいいでしょ。
「最高の指輪を買いたいので」
いい加減、決着をつける時がきたのである。
● 〇 ●
テンガン登山からしばらく、俺とムクノちゃんは色んなところを旅してまわっていた。
故郷であるガラル地方を、隅から隅まで探索した。
〆に行ったヨロイ島でウーラオスのキョダイマックスができるようになった。
カントーでは、サイクリングロードを一緒に走った。
その時、俺の昔馴染みと再会した。既婚者になっていてビックリだった。
ジョウトでは、どこかの悪の組織の残党とかち合った。
非道な研究でゴーストポケモンを虐げていた研究員くんは、珍しくブチキレたムクノちゃんによりボコボコにされていた。
ホウエンでは、美しい山や滝を見て回った。
その際、何故かダイゴさんとバトルする事になり、何とか勝利する事ができた。ムクノちゃんの声援がなければ負けてたね。
再度シンオウに来た時は、異文化の建物で大きな無名の絵画を眺めた。
ムクノちゃんの体温が暖かかった。
広大なイッシュは、ヒウンシティで買ったバイクで旅をした。
タンデムして走ったスカイアローブリッジは最高だった。バイクの旅ってのも良いものだ。
カロスでは、なんとムクノちゃんが旧友と再会した。
相手はオヤブンゲンガーであった。曰く、幼稚園時代の唯一の友達なのだとか。彼とは涙ながらの別れとなった。
アローラでは、俺の両親と顔合わせとなった。
俺とムクノちゃんと両親で、色々諸々を話した。話す事はたくさんあった。
ガラルに戻ると、今度はムクノちゃんの両親とお話した。
めっちゃ緊張していた俺だが、いざ会ってみると拍子抜けするくらいどうぞどうぞと言われた。曰く、ムクノちゃんとは「OHANASHI済」であるらしい。
そして、俺たちは、今……。
遠く、パルデア地方まで来ていた。
――パルデア地方。
広大な自然と、そこに住まうポケモンたちに恵まれた、古来から現代に至るまで古今東西の文化を要する歴史の深い地方だ。
そんなパルデア地方はマリナードタウンに、俺とムクノちゃんの姿があった。
「良い天気で良かったね~」
庭付き一戸建て。二人の要望を詰め込めるだけ詰め込んだ、夢いっぱいの注文住宅の門前。
真新しい家を前に、ムクノちゃんが空を見上げながら云った。
実際、この日が雨とかだったら普通にへこむので同意である。
「ああ。どうせなら、良い天気で撮りたいもんな」
言いつつ、俺は愛用のクソデカ一眼レフのセッティングをしていた。テンガン山の後、ナックルシティで一番いいのを買ったのだ。
今どき、写真なんてスマホロトムでいいじゃんと言う人がいるが、俺はこっちのが好きだ。なんたって、一眼レフはゴツくてかっこいいからだ。
ロマンに勝るものなどないのである。
「ほら、皆あつまってね」
綺麗な庭に興奮していたポケモンたちを呼び寄せるムクノちゃん。俺の手持ちポケモンたちも、今では彼女を群れの長として認めてくれている。
そんな長の号令に、俺たちの家族がカメラの前に集まって来た。ポケモンとて、この頃になると何をするのか分かっているのだ。
「じゃ、撮るぞ~」
タイマーをセットして、俺もレンズに映るよう位置取りする。
真ん中には、俺とムクノちゃん。
二人の手には、同じデザインの指輪がはめられている。デカい仕事で稼いで、カロスの職人にオーダーメイドした世界でひとつだけの結婚指輪だ。
それから、俺たちの足元にブラッキーとエーフィが座る。
物心ついた時から一緒の二匹だ。もう何を言わなくても伝わる。
俺の隣やムクノちゃんの隣にそれぞれのポケモンが位置取り、お互い良く映える様に調整していた。
俺の隣には綺麗におすわりするグラエナ。何故かポーズをキメてるゾロアーク。腕組み仁王立ちしているウーラオスに、図々しくその肩に乗ったドンカラス。
ムクノちゃんの隣には、ふよふよ浮いたドラパルト。その頭に着地したポットデス。それから、諸々の事を考えて新たに仲間になってもらったイエッサン。
二人の後ろには、バンギラスとゴルーグとガラルギャロップという大型ポケモンが狭そうにしつつ、上手く収まる様がんばってくれていた。
旅で良い感じの所に行く度、俺たちはこうやって写真を撮ってきた。
物理アルバムも、電子アルバムも、そこには俺たちの幸せがいっぱいだ。
悲しい思い出など、不要である。
「……ケヤキくんに会ってから、私ずっと幸せだよ」
耳元で、ムクノちゃんが云う。その声にはわずかに涙が滲んでいた。
涙の意味は分かる。けれど、そうじゃない。俺は、ムクノちゃんを泣かせたい訳ではない。
「俺はムクノちゃんのおかげで幸せになった」
その肩を抱き、カメラに向かって渾身のイケメンスマイルを送ってやる。何をすべきか、わかるだろう。
あの日みたいな、ぐんにゃりと歪んだ怖いくらいの笑顔でいてほしいのだ。
「絶対、これからもそうだ」
「うん♡」
パシャリ、と。
シャッターが切られる。
そこには案の定、満面の笑みを浮かべる二人が映っていた。
俺たちの幸せだ。
俺と、ムクノちゃんと、ポケモンたち。
それから、やがて幸せになるべき、新たな家族も。
俺たちの歴史に、また1ページ。
まだまだ、新しいアルバムを買わなきゃいけない。そこに、ありったけの写真を詰め込んでやる。
それが、今の俺の、一番の目標だ。
感想投げてくれると喜びます。
前書きにもありますが、突貫工事で書いた奴なので色々と堪忍してつかーさい。
アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございました。