【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 感想・お気に入り登録など、ありがとうございます。
 誤字報告も感謝です。

 アンケートのご協力、ありがとうございました。
 結果、一番上の子は「ケヤキみたいな姉」になりました。
 一人一話の予定でしたが、長くなりそうなので分割します。

 ケヤキみたいな姉、というのもあり、ちょっとやり過ぎかな? みたいな設定がいきなり出てきます。
 本話は自己紹介と家族紹介回みたいな感じです。
 よろしくお願いします。


【カヤノ編1】お姉ちゃんは黒い死神の夢を見るか?

 物心つく前から、私は眠る度に夢を見ていた気がする。

 物心ついた頃から、私は夢の中で目が覚めるようになっていた。。

 

 夢の内容はいつも一緒。誰か、よく分からない“黒い何か”とお話する夢だ。

 その日あった事。その日できた事、生まれた時から、私は夢の中の“彼”と言葉もなくお話していた。

 眠って見る夢など、皆そんなものだと思っていた。

 

 明晰夢、というらしい。

 夢を見ている最中に、これは夢だと気づく事。これをできない人、体験した事のない人は意外といる事を知ったのは、割と後になってからだった。

 また、生まれてからずっと明晰夢を見続けているのも、変な事らしい。体験した事がある人も、あー何回かあるかなぁ程度なのだとか。

 

 現実で眠り、夢で目覚め、夢で遊び、現実に起きる。

 これの繰り返し。

 

 そのせいか、私はめちゃくちゃ寝相が悪い。

 

 

 

 パパの専属オペレーターさん曰く、私のパパは歴代でも最強のポケモンレンジャーなのだという。

 同じくオペレーターさん曰く、私のママはガラルでは有名な敏腕社長なのだという。

 そんな両親の間に生まれた私は、周囲の予想を覆す事なく優秀な子供であり、且つめちゃくちゃかわいらしい子供であった。

 

「まぁ~! 私こんなに可愛い赤ちゃん見たの初めて! 見るだけで目の保養になるわぁ~!」

 

 生後間もない頃などはまさに愛の化身であり、フェアリータイプもかくやと思われる純真さ。穢れひとつない顔にひとたび笑みを浮かべれば、広大なパルデア地方の端から端までをマジカルシャインで満たしたという。

 いや、それは今でもそうか。実際、私はモテる。それも男女から。

 

「へぇ~、カヤちゃんってば大人なんだねぇ」

 

 また、どうやら私は他の子よりも早熟であるらしかった。

 ある日のスクールの課題に、両親に自分が赤ちゃんだった頃の事を聞いてレポートしてくるというものがあった。

 で、課題の事を両親に訊いてみると、どうやら私は他の子より色々と成長が早かったらしい。「人生RTA」とはパパの談であり、「手の掛からなかった子」とはママの談である。

 具体的には、私は生後7か月ほどで初めて言葉を話し、1歳も半ばになるとある程度の会話ができていたそうな。なにそれ凄い……のだろうか。よくわからない。ちなみに、最初に話した言葉はパパでもママでもなく、「あーくぁい」という謎ワードであったらしい。

 

「えへへ……教えてもらったの!」

「あら、誰から?」

「うーんとねぇ……夢で!」

 

 まあ、心当たりはあった。

 多分、夢にいる“彼”のお陰なのだと思った。

 未だ言葉を知らない時分の事、言語を発しないコミュニケートは赤子の身にはたいそう刺激的であったのだろう。

 その事を夢の彼に話してみると、何故か安堵したかのようだった。相変わらず、私と彼の間に言葉はない。

 

「えへへ! 私の勝ちぃ!」

「ちょっと! カヤちゃんいたらチームのバランス崩れちゃうじゃん!」

「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」

 

 私の早熟ぶりは知能のみにあらず、運動神経も抜群であった。

 事実、園でもスクールでも運動会のMVPはいつも私だった。マサラの血が強く出たのではとパパは考察していた。

 上級生が持ち上げられない物を片手でヨイショした時は、クラスの男子からはメスオコリザル呼ばわりされたりもしたが、私に恋をしている男子の戯言など可愛い以外の感想が持てない。無論、彼からの告白は拒否させてもらった。

 

「イーブイ! “でんこうせっか”!」

「ぶい!」

 

 あまつさえ、ポケモンバトルの方もそれなりに出来る子であった。

 もともと、私の家にはパパママのポケモンたちがいっぱい居たのだ。当然として、私はポケモン慣れしていた。

 スクール入学祝いにとプレゼントされたタマゴから生まれたイーブイは、今では立派な相棒ブラッキーだ。パパ同様、私はあくタイプと相性がいいらしい。

 

「カヤちゃん! 遊ぼ遊ぼ!」

「暑いし泳ぎにいこうよ!」

「うん、ちょっと待ってて! ママー! 遊び行ってくるー!」

 

 さて、生まれながらアルセウスから二物も三物も与えられていた私は、ごくごく自然な流れでご近所のアイドルだった。

 麗しい見目は大人だけでなく子供たちをも魅了して、生まれ持った徳と力で園も学舎も統べる民主的独裁者だった。

 そして私は、玉座でふんぞり返る女王様などではなく、むしろ城下であばれるタイプの将軍だったのだ。外でも内でも男女と遊び、ポケモンを愛で、バトルで以て勇を示す。

 我ながら、パーフェクトに過ぎる美少女ちゃんであったのだ。

 

 文武両道、才色兼備、知勇兼備エトセトラエトセトラ……。

 パルデア生まれマリナード育ち、近所の子供だいたい友達。

 それが私、ポケモントレーナーのカヤノだ。

 

 

 

「ただいまー! おうカヤちゃん、お土産買ってきたぞー。ほら、チャンプル土産のアオキさんまんじゅうだ。中身は普通のあんこだってよ」

 

 そんな私を、パパは愛してくれていた。

 

「おかえりカヤちゃん。夕飯はまだもうちょっとかかるから、それまでキリちゃんたち見といてくれる?」

 

 そんな私を、ママも愛してくれていた。

 

「はぁい! パパ、おまんじゅうはご飯のあとね」

 

 愛に溢れた私は、私の家族が大好きだった。

 

 さて、学生の時分。私には父と母以外にあと二人人間の家族がいた。

 小さな弟と、もっと小さな妹だ。

 

「あれ? リュウくんは?」

「ここ……」

「わぁ! またドラパルトの上乗って! 落ちたら痛いよ?」

「ん、大丈夫……」

 

 弟は幼稚園に入ったばかりで、ちょっと暗い性格をしている。

 何事にも後ろ向きで、私が言うのもなんだがあんまり子供らしくない。かまってあげると喜んでくれるのだが、一緒に遊ぶのは消極的だ。

 

「ねーちゃ! ねーちゃ! このお本読んでー!」

「はいはいはい、ちょっと待っててね……ってこれキクコさんの自伝じゃん! これ読んでほしいの?」

 

 妹はあちこち動き回るやんちゃな性格だ。

 この子もまた私同様に知能の発達ぶりが凄まじい子供で、一度読み聞かせた絵本などは一言一句暗記するほど記憶力が良く、頭の回転も早い。

 

「はははっ、それ書斎にある奴だぞ、キリちゃんは賢いな。ほら、これは姉ちゃんにはちょっと難しいから、パパが読んであげようねー」

「いいえ、私が読みます」

「えっ」

 

 パパはいつも楽しそうにしている人で、疲れたり嫌そうな顔をしているところを見たことがない。

 前述の通り、ポケモンレンジャーのパパはたまに家を空けて他地方に出張する時がある。どうやら、パパじゃなきゃダメなお仕事というのがあるらしい。

 出張の際、わざわざ家までお迎えの人が着て、颯爽と黒塗りの高級車に乗り込むパパは最高にクールだった。お土産のセンスは、ちょっとアレだが。

 

「け……パパ、明日私午後から外だから、車使わせてもらうね」

「あいよー」

 

 ママはとても優しい人で、怒鳴ったり叱ったりしているところを見た事がない。

 パパと同じく、ママもまた忙しい身の上だ。よくは分からないが、たまに締め切りがどうのとか取引先のアレがコレでどうのだとか言って右往左往している時がある。パパ曰く、パパより稼いでるらしい。

 ただ、忙しいながら私たち家族をほったらかしにする母ではなかった。私や弟、妹のお世話をしている時などは、いつも嬉しそうにしていた。

 

「リンリ~ン♪」

 

 それに加えて、我が家には両親の手持ちポケモン&私のイーブイ――ブラッキーになったのはだいぶ後――がいた。

 そして、忙しい両親をサポートしているのが、ママの手持ちのイエッサンだ。私たち家族は、パパとママとイエッサンによって守られていた。

 

 そういった家庭だったので、私の自意識ははじめから長姉のソレであった。

 また、姉的自意識は幼稚園やスクールでも発揮され、泣く子を慰め弱った子を庇う振る舞いなどしていると、いつしか私はご近所アイドルからアイドルお姉ちゃんへとジョブチェンジしていた。

 ちょっとませた子供が、いつの間にか大人顔負けのお世話スキルを身につけていたのだ。むべなるかなであった。

 

「カヤちゃん勉強教えてー!」

「カヤちゃん! タクくんの風船が引っかかっちゃったの! どうしよう!?」

「カヤちゃんカヤちゃん! ミキちゃんの帽子が海に落っこちちゃった!」

 

 家族だけでなく、皆の頼れるお姉ちゃん扱い。存外、悪い気はしなかった。

 

「うん! まかせて!」

 

 ノーと言えない訳ではない。ただ、頼られる事は嫌いじゃない。

 自分は他者より凄いのだという自負があるから、自分より弱い人等を守らねばと思うのだ。

 義務というより、趣味であった。

 

 

 

 趣味と言えば、我が家は大の旅行好き一家であった。

 最低でも、年に二回は旅行に行くし、多い年など五回くらい旅行に行く。

 思えば、物心ついた頃からパルデアの色んなところに行っていた。キラキラ光るハッコウシティに、綺麗なレンガのテーブルシティ。コサジタウンでピクニックしたり、ナッペ山でソリ遊びをした。

 

 で、冬休みや夏休みの長期休暇になると、船や飛行機で他地方に行ったりもした。

 アローラの祖父の家に泊まったり、ガラルにあるママの実家にも行った。シンオウやホウエン、イッシュにも行った。

 中でも、私はヒウンやミアレなどよりも、メレメレ島やワイルドエリアみたいな自然豊かな場所が好きだった。

 パパ曰く、そこはパパ譲りの趣向であるらしい。割とファザコンの私、普通に喜んだ。

 

「なぁカヤちゃん、冬休みに行きたいところとかあるか?」

「んぅーっとねぇ……」

 

 さて、そんな旅行好きの我が家である。

 ある日、どういう理由かは分からないが、パパは私に次の旅行はどこに行きたいか訊いてきた。

 私は一旦保留して、夢の中の“彼”に旅行先について話してみた。

 

 すると彼は、“カンムリ雪原”と答えた。

 黙って私の話を聞く事の多い彼にしては珍しく、ずいぶん具体的な地名が出たなと思った。無論、言葉でなくイメージで送られて来たのだが。

 なるほど、そこに行けば彼に会えるんじゃないか。なんとなく、そう思った。

 

 目覚めた私はカンムリ雪原に行きたい旨を話すと、そんな所よく知ってたなと言われた。

 曰く、カンムリ雪原はパパママ夫婦には思い出の地らしい。

 その夜、二人の寝室からは変な声が絶えなかった。覗いて見た光景がけっこうショックだったのを覚えている。

 

 

 

 旅行当日、船と飛行機乗り継いではるばるきたぜガラル地方。

 

 カンムリ雪原に着くと、さっそく私はパパと一緒にカンムリの大地を探索し始めた。

 弟と妹は寒いのが嫌で施設に籠るようで、ママは二人のおもりをしている様だった。

 姉的庇護欲と幼児的冒険心のバトルの結果、パパを独占できる後者が勝った。

 それに、彼は今、カンムリにいるのである。夢だけじゃなく、リアルでも会いたい。宝探しみたいで、面白かった。

 

「疲れたら言うんだぞー」

「だいじょーぶっ!」

 

 カンムリ雪原での冒険は、パパの付き添いもあり非常に快適に進んだ。

 お昼休憩の際、パパが作ってくれたガラルカレーがまた絶品であり、イーブイともどもいたく感動してしまうほどであった。

 喜ぶ私を見て、パパも嬉しそうだった。なんてわかりやすい父なのだろう。

 

 対し、夢の“彼”の捜索は難航していた。

 夢で訊いてみると案の定カンムリにいるとの事だがそもそもカンムリは広く、外見も分からない彼という“黒い何か”を探しだすのは砂浜からスナバアを探し出すのと同じだ。

 

 そんな中、村にいた恰幅のいいおじいさんの話によると、最近カンムリの大洞窟には奇妙な事象が起こっているらしいという話を聞いた。

 詳しく訊いてみると、どうやらそこに入った人やポケモンは強い眠気に見舞われ、洞窟探索を諦める羽目になるのだという。

 近々ポケモンレンジャーに調査依頼を出すつもりであるらしい。

 

 なんとなく、此処だと思った。

 よくは分からないが、直感としか言いようのない確信が私の身体を駆け巡った。

 

 思いついたその場でパパに洞窟に行きたい旨を話すと、レンジャーの調査が終わったらいいよと言われてしまった。それでは遅い。

 なので、私はひとりで会いに行く事にした。

 

 夜中、こっそりと施設から抜け出した私は、話にあった洞窟へと忍び込んだ。

 入口は封鎖されていたが、イーブイと協力すれば難なく入る事ができた。

 悪い事をしている自覚はあったが、“彼”に会えるかもという高揚が私を突き動かしていた。

 

 そして、私は出会った。

 

「君が、夢の……?」

 

 黒く、禍々しく、得体の知れない圧を放つ存在。

 慣れ親しんだ、安心できる、負のエネルギーを醸しだす存在。

 

 

 

 あんこくポケモン・ダークライ。

 

 夢の中の“彼”は、伝説のポケモンだった。

 

 

 

「意外と小っちゃいんだね」

 

 言うと、ダークライはちょっぴりしょげている様だった。




 感想投げてくれると喜びます。

 カヤノは父親と違って真っすぐ育っているので、幼少のケヤキみたいにひねくれていません。



 アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございました。
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