【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

27 / 53

 感想・お気に入り登録など、ありがとうございます。

 誤字報告、本当に本当に助かっています。
 前話では筆者の勘違いを正して下さり、感謝の極みです。



 例によって長くなったので分割します。
 おい、もうちょっとテンポ良くなんねぇのかよという気持ちは筆者が一番感じています。
 とはいえ、まぁ無理せずボチボチやってこうかなってのが1話からのスタンスなので、あんま細かい事気にせずボチボチやっていきます。

 アンケートのご協力ありがとうございました。
 結果、双子は兄妹となりました。
 一応出てきます。


【カヤノ編2】ダークライがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!

 夢の中の“彼”の正体は、“ダークライ”という名のポケモンであったらしい。

 らしいというのも、その時の私にはダークライの知識はなく、夢の中でも私とダークライは言語を介したコミュニケーションをしていなかったので、その後に彼の名を知るまでは彼の名前を知る機会がなかったのである。

 

 さて、赤ちゃんの頃からの友達と初めて会った感想だが、意外と小さいなぁというものだった。

 が、身体の小ささの割にその身から滲み出ているオーラは強ポケのソレであり、ダークライの凄みはパパの手持ちのウーラオスやバンギラス、あるいはママのドラパルトに勝るとも劣らぬと感じられる程だった。

 事実、同行していたイーブイなど身体を震わせて怯えてしまっていた。私視点、そんなに怖がる事ないのにと思った。実際問題、目の前のダークライ――前述の通り、当時の私はこの名前を知らない――はただ単にふわふわ浮いているだけで、戦闘態勢を取ってはいないのだから。

 

「カヤノッ!」

 

 その時、背後から聞き慣れたパパの声が聞こえて来た。けれど、その声色は常のそれではなく、余裕のない切羽つまった大声であった。

 パジャマ姿のパパは一流アスリートもかくやというスピードで私を追い越すと、ちょうどダークライと私の間に立って腰を低くした。

 まるで、危険なポケモンから庇うかの様……いや、多分パパからするとそうなのだろう。

 

「べあーく!」

 

 パパがボールを選ぶ前に、腰のホルダーから一匹のポケモンが現れた。ウーラオスだ。

 ウーラオスはいつも戦う前に行っていた合掌礼をする事もなく、全身の筋肉を漲らせて構えを取った。

 

「なんだこのポケモン……見た事ないぞ。新手の伝説か? 噂のパラドックスなんとかって奴か? いや、そんなのはどうでもいい……行くぞウーラオス!」

 

 まずい。パパもウーラオスも、おまけに私のイーブイも戦る気満々だ。

 いつも無駄に勘のいいパパならダークライに戦う意思がない事くらい気づきそうなものなのに……鈍い人だ。

 

 あ、いや、違う。パパは焦っているのだ、

 パパ視点、夜中に急に娘の姿が消えていて、見つけたと思ったら如何にも悪役ですみたいなポケモンが娘の前にいたのだ。そりゃ如何にも悪役な方を警戒するに決まっている。

 見ると、ダークライは困っているみたいだった。対するパパとウーラオスはダークライを倒す気だ。かなり強そうなダークライだが、いくらなんでもパパには勝てないだろう。

 さすがに、この状況は私が何とかしなきゃいけない。

 

「パパ! ウーラオス! ちょっと待って!」

 

 私はパパの背後から抜け出すと、ダークライに背を向けて大の字になった。

 

「ちょ!? 待てウーラオス! カヤノ、お前……いや、まさか……?」

 

 何だかんだ経験豊富なポケモンレンジャーのパパだ。状況を察して矛を収めてくれるのも早かった。

 ウーラオスはなおも臨戦態勢だが、それは仕方ない。自分と同じ強大なあくのオーラむんむんなダークライを前にしては気が抜けないのだろう。

 

「えっとね! このポケモンはね……」

 

 そして、私はこれまでの経緯を全て話す事にした。

 記憶にある限りの全部だ。生まれてすぐ夢の中で名前も知らない“黒い何か”と会っていた事。カンムリ雪原には彼に会う為にやってきた事。大切な友達なので倒さないでほしい事。

 

「夢? あくタイプ? いや待て……そういうポケモン、どっかで聞いたような……。いやいや、とりあえず一旦戻ろう、ママが心配してる」

 

 悩むパパだったが、ともかくと私を施設に連れ戻そうとした。

 否はなかったので私も戻ろうとしたら、案の定ダークライもついてこようとした。どうやら、ダークライも一緒に行きたいらしい。可能なら私もそうしたいところだが……。

 

「困ったなぁ……」

 

 お話の結果、とりあえずとダークライを説得してパパのレンジャー用ボールに収まってもらう事になった。

 当初は私のボールに入ってもらおうとしたのだが、流石に危険だし資格がないからNGと言われてしまった。

 

 

 

 宿泊施設に戻って心配させてしまったママにごめんなさいしてから、私は事のあらましをママに話す事となった。

 ついでにママの精神感応とサイコメトリーで確認を取られた。

 するとママは、

 

「まぁケヤキくんの子だしね……」

 

 と、ちょっと遠い眼をしていた。

 

 で、わちゃわちゃしていると弟妹が起きだして、我が妹の激しい要望もありダークライは我が家とご対面となった。

 案の定、怖がりな弟はダークライの姿を見てギャン泣きしてしまった。そしてこちらは意外や意外、やんちゃな妹は物怖じせずダークライの髪の毛? みたいな白い部分をひっ掴んでブラブラやっていた。

 混沌とした状況だ。賑やかというかやかましいというか、その中心であるダークライはまたまた困惑している様だった。

 

「あー、カヤちゃん、ちょっといいか? ダークライ……あぁ、そのポケモンの名前な。そいつについてなんだけど……」

 

 レンジャー協会とお話していたパパに呼び出されたので、ダークライをママに任せて話を聞く。

 で、連絡を受けた協会からは、専用のボールを支給するので連絡あるまでダークライはパパに預かってもらうという事になったらしい。

 

 この、今にして思うと随分優しい対応に、当時まだ子供だった私はちょっぴりむっときてしまった。

 なんだか、私の友達が危険物呼ばわりされているみたいで嫌だったのだ。実際、ダークライは危険な存在であり、決して無害なポケモンという訳ではないのだが、当時はその事を知らなかったのだ

 それに連絡あるまでとは何だ。その連絡の後ダークライをどうするつもりだと協会に対して理不尽なヘイトが向いていた。

 

「カヤちゃん、危ないのはダークライだけじゃないんだ。ポケモンは親愛なる隣人だけど、怖い生き物でもあるんだ。ヒトとポケモンには、ちょうどいい距離感と確かな信頼がないといけないんだ」

「むぅ……」

 

 説得され、不承不承頷いた私だったが、どうにもお腹の中はもやもやしていた。

 

 翌日、パパ充てに一つのボールが送られてきた。素早さ特化アーマーガアによる特急便だ。流石レンジャー協会である。

 支給されたボールはこれまでショップで見た事のない真っ赤なボールだった。名前をプレシャスボールというらしく、ダークライの様な特別なポケモンを収める為に作られた特別なボールなのだという。

 曰く、このボールの中にいる限りは一部ポケモンの特異なエネルギーを封じ込める事が出来るのだとか。つまり、ダークライの制御できない力――無意識に周囲の生物に悪夢を見せてしまう力――を抑えられるのだ。

 

 で、レンジャーのパパが責任持ってダークライをボールに入れ直す段になった。ダークライはボール入りを粛々と受け入れている様だった。

 捕獲の直前、パパはうんうん唸って逡巡した後、意を決した様に私にボールを手渡してきた。

 

「……カヤノ、守ってほしい約束と、一つの試練を超える事ができたら、その時は君にこのボールを任せようと思う」

 

 約束と試練。訊いて見ると、こうだった。

 ひとつ、試練の後までダークライの存在を誰にも明かさない事。

 ひとつ、ダークライをバトルに出さない事。

 ひとつ、ダークライを出す時はパパかママがいる時の家に限定する事。

 そして、試練というのが……。

 

「カヤノが一流のトレーナーになった時……。11歳でアローラの島めぐりを達成できたら、協会にかけあってカヤちゃんを正式にダークライのトレーナーとして認めてもらおう」

 

 それは、これまでパパが見せた事のない、ちょっとした厳しさだった。

 普段、パパやママは全くと言っていい程怒らない。妹が悪戯した時も、弟がお野菜を拒否した時も、真っすぐ眼を見て根気よく言葉で言って聞かせるタイプの両親だった。

 私の場合、心身共に早熟というのもあって何かしら間違いや悪事というのをした事がなかったので、叱られた経験も厳しくされた経験もなかった。

 ……いや、悪い事はつい先日にやらかしたばかりだが、その時も叱責でなく心配が十割だった。雪原の人たちには謝り倒したが、何だかんだ許してくれた。

 

「……できるな?」

 

 そんなパパが、他所からすると甘い優しさなのであろうパパなりの厳しさを私に向けていた。

 先日さんざん聞かされた話だ。このダークライは大人しいが、それでも危険なポケモンだ。周囲の生物に悪夢を見せ、その力を制御できないのだ。特殊なボールがあるとはいえ、普通そんなポケモンを子供に預ける選択などしないだろう。

 けれど、パパは私を信頼して、チャンスをくれたのだ。私の我儘の為に、無用なリスクを背負ってくれているのだ。

 

「……わかりました」

 

 私の、初めての友達と離れ離れにならないように。

 父親らしく、勇気を出して子供を信じて見守ってくれるというのだ。

 その信頼には、応えたいと思った。

 

「ダークライ、よろしくね……」

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 正式にダークライのトレーナーになるまで止まらねぇぞなRTAはーじまーるよー。

 

 さて、新たな家族を迎えてマイナードタウンに戻った私は、帰宅早々人生RTAを再開した。

 パパは「いやそんな急がんでも……」と言い、ママも「もっとゆっくりでいいからね……?」と言っていたが、私からするとこれまでは1速走行だったのだ。これからはトップギアで行く。

 

 まず、さっさとスクールを卒業する事にした。

 話によると、アローラ地方の島めぐりは他地方の子からすると割と過酷な風習であるのだという。

 経験者曰く、何日も家に帰らず、11歳の身でアローラ地方の島から島を渡り歩き、現地のトレーナーやポケモンたちに勇気を示し、試練を突破する。そうして、アローラでは立派なポケモントレーナーとして認められるらしいのだ。

 昔はともかく、今はその功績は他地方でも通用するらしく、島めぐり達成者はガラルやパルデアでも十分な力があると認められるのだとか。無論、レンジャー協会にも。

 なら、準備期間は長い方がいいだろう。

 

「まぁこんな感じです」

「はえー、すっごい賢い……」

 

 という訳で、私はこれまで他の子に合わせていた勉学を早々に終わらせ、齢十を前にスクールを飛び級卒業した。

 皆のアイドルお姉ちゃんの卒業に寂しがるクラスメイトたちだったが、私にはずっと寂しがらせていた友達がいるのだ。会えなくなる訳じゃないし、良くない? という気持ちだ。

 

「じゃあ、今日はナッペ山に行こうか」

「うん、あ……はい師匠!」

「何の影響、それ?」

 

 さて、島めぐりの準備である。スクール卒業後、私はパパについて行って旅の心得を学んでいた。

 危険なポケモンの見分け方、いざという時の逃げ方、ヤバくなった時の食べ物の見つけ方……。

 どれも泥くさくてかっこ悪い学びだったが、それらは確実に必要なスキルだった。

 厳しい顔して島めぐりに出すとか言ってた割に、なんだかんだ甘いパパだ。

 

「技だけじゃない。手持ちポケモンのできる事、できない事を把握しておくんだ。強い技の連発だけじゃあ、一流のトレーナーにはなれないぞ」

「押忍!」

「だからそれ何の影響?」

 

 加えて、パパ指導の下、バトルの英才教育を受ける事にもなった。

 バトルの基本と応用、戦術の組み立て方。実地訓練と、基礎訓練のやり方等々……。

 これまで同年代の子としかやっていなかったバトルは、いざ格上とやってみると如何に私が弱いのかを思い知る結果となった。

 その過程でイーブイはブラッキーに進化し、10歳の誕生日にはパパからポケモンのタマゴをもらった。タマゴからは、くさねこポケモンの“ニャオハ”が生まれた。

 

「ダークライは何食べるの?」

「……、……、……」

 

 トレーニングの傍ら、ダークライとも交流していた。

 人目につかないよう私の部屋でボールから出してお話したり、以前と同じように夢の中でお話したりだ。できるだけ、ダークライの事を知るよう心掛けた。

 で、これまでダークライの話を聞く事はあんまりなかったのだが、どうやらこのダークライは強い同族から逃げ回って生きてきたらしい事が分かった。同族相手は絶対負けるのでマジ勘弁との事。このダークライ、強い癖に自信なさすぎである。

 

 余談だが、ママが言うには私にはママの感応力とパパのあくタイプ適性が強く遺伝して、生まれてすぐの私が寂しがってたダークライに感応した結果、強い繋がりが生まれ……今に至る、んじゃあないかという話だった。

 それと、プレシャスボールのおかげでダークライの影響で家族が悪夢を見る事はなく、我が家とダークライは一応友好的な関係を構築できていた。相変わらずダークライにビビッている弟と、遠慮なくダークライの髪の毛を引っ張る妹は対照的だった。

 ポケモン間でもそれは同様で、最初は警戒していたウーラオスやドラパルトも、この頃にはダークライを群れの一員として認めてくれていた。

 

 そんでもって私が10歳になってしばらく、我が家にはこれまた新しい家族が生まれた。

 

「か、かわいい……!」

 

 病院のベッドでママに抱かれていたのは、二人の赤ちゃんだった。

 一緒に生まれて来た、双子の男の子と女の子だ。

 それぞれ、兄の名前が“ハスキ”で、妹の名前が“ハクノ”だ。二人ともめちゃくちゃ可愛かった。まさにフェアリータイプの赤ちゃんズだ。

 

「抱っこしてみる?」

「う、うん……!」

 

 言われた通り恐る恐る抱っこしてみると、どちらもめちゃくちゃ軽くて小さくて、ちょっと心配になるくらい柔らかかった。

 最近RTAしまくって希薄になっていた私の姉的庇護欲が、むくむくと膨れ上がっていく感覚があった。

 

「すごいね、ママ……!」

 

 何がすごいのか分からなかったが、とにかくすごい経験をした。

 好きな家族が増えるのは、とても嬉しい。

 ママは、やっぱりママなんだなぁと思った。

 

 

 

「じゃ、行ってくるね。パパ、ママ。リュウくんとキリちゃんもね」

 

 そして、11歳になった私は、単身アローラ地方へと旅立つ事になった。

 父方の祖父の家にお邪魔して、島めぐりに参加する為だ。

 

「……待っててね、ダークライ」

 

 ダークライのボールをパパに渡し、船に乗り込む。

 旅の連れはニャオハとブラッキー。

 人生初の、冒険の始まりだ。




 感想投げてくれると喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。