【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告も感謝感激雨あられです。
とりあえず、カヤノ編はここまで。
次回は弟編です。
アンケートのご協力、ありがとうございました。
接戦でしたが、結果は両方登場になりました。
カヤノの手持ちは、
・マスカーニャ
・ガオガエン
・ダイケンキ(ヒスイのすがた)
・ブラッキー
・サザンドラ
・ダークライ
です。
アカデミーでの新生活は、私が思っていた以上に充実していた。
それというのも、アカデミー全体の雰囲気というかノリというかが、私の性分にマッチしていたからだ。
アカデミーがあるテーブルタウンはまさに学園都市といった雰囲気で、放課後なんかにちょっと階段を下ればおしゃれなお店がたくさんあって煌びやかで面白い。基本、森とか山とかを愛する私だが、こういう賑やかさも嫌いではなかった。
学校に通っている生徒の年齢層も幅広く、上は初老過ぎのおじさんから十歳にもなっていない児童までという間口の広さは流石である。当然、画一的でつまらない授業などはなく、教師たちの個性が全面に出た授業はたいへん興味深いものばかりだった。
それと、これまで見た事はあっても使った事のない“テラスタル”なる現象には驚かされた。こんなの戦術幅が広がりまくり夢広がりまくりである。テラれば島めぐりももっと楽だったろうにと思わずにはいられない。
まあ、テラれるのはパルデアだけらしいので、他地方では使えない戦術だが、ともかく面白い現象なのは確かだ。
で、だ。
元々父母譲りの知能を持つ私である。アカデミーで習う授業はそれほど難しくはなかった。それは大人が受ける類の難解な授業も例外ではなかった。
なので、私は勉強に困っている生徒がいると積極的にお節介を焼きに行っていた。困っている人は助けるのが当たり前……とは言わないが、私個人はそれが好きなのでやっちゃうのだ。
そんな事をしていると、私はあっという間にクラスのアイドルになった。アイドル化と同時に、友達もたくさんできた。寮のお隣さんとご飯の御裾分けをしたり、同じ授業を受けた子たちとランチをしたり、ギャルっぽい女の子たちとショッピングしたりした。
で、三ヵ月もすれば私はクラスの人気者からアカデミーの人気者へとジョブチェンジしていた。
「カヤノさん、ちょっと授業で分からないところがあって……」
「カヤちゃん、食堂行こう?」
「カヤノ~? 放課後空いてるー? ちょっと寄りたい店あるんだけど一緒に行かない?」
ノーと言えない訳じゃない。
頼られる事は嫌いじゃない。
「うん、私にまかせて!」
義務というより、趣味であった。
さて、そんな順風満帆な学校生活だが、ちょっと困った事もあった。
「ふへへ……カヤ姉つよいね。なんかあと一歩届かない感じがするよ」
「ううん、キリちゃんも強かったよ。お姉ちゃんだから勝てただけ」
ある日、妹に誘われてポケモンバトルをしたところ、思ったより……ていうかめちゃくちゃ苦戦してしまったのだ。
苦戦、苦戦である。あく使いの私と、ゴースト使いの妹が戦って、私が苦戦したのだ。
正直、サザンドラたちがあくタイプだから勝てたようなもので、過程がコレではもはや負けた様なものである。
「ふへへ、やっぱり強いトレーナーとバトルすると学びが多いね。明確な改善点が見つかるバトルは久しぶりかなぁ」
現在、妹は11歳。ちょうど私が本格的にポケモントレーナーになった年齢だ。
もし、その頃の私と妹が対等な条件でバトルをしていたら、間違いなく負けるだろう才能の差を感じてしまった。
なんというか、有り体に言って私は妹の才能に驚愕していたのだ。
妹はパルデアにおけるチャンピオンランクトレーナーであり、相応の実力者である事は承知していたつもりだったが、いざ戦ってみるとその莫大な才能の片鱗には圧倒されてしまった。
しかも、この子はまだ成長途中なのだ。多分、打ち止めの私と違って。
あと何回、私は妹に勝てるだろう。
勝てなくなったら、どうなるのだろうと思った。
「ねぇキリちゃん、このあと空いてたら……」
「あー、アタシこれから積みゲー崩す予定だから。じゃ、また戦ろうね、カヤ姉」
「あぁ……うん」
まあ、バトルについてはいいのだ。
妹の才能に少しばかり思うところはあれ、素直に嬉しく思うのも確かなのだ。
だが、なにより困るのが……。
「……お姉ちゃんは寂しいよ」
妹の姉離れが深刻である事だ。
昔はあんなにカヤ姉カヤ姉と甘えてきた妹が、今ではすっかり甘えてこなくなって……。
嬉しいような、哀しいような気持ちである。
姉離れといえば、弟のリュウキもまた深刻である。
ある日、私が自室で焼いたクッキーを持って――昔リュウくんが喜んで食べてくれたチョコチップクッキーである――弟の部屋に行った時の事。
「リュウくぅん? 入るよー?」
言いながら、不用心に鍵のかかってなかった弟の部屋に入ると……。
「ほら、リュウキ様、そろそろ休憩にしてお茶にしませんこと?」
「ん、リュウキはコーヒー派。私が淹れたコーヒーを飲む方が幸せだと思う」
弟の部屋に見知らぬ女子がいた。
しかも二人。
しかも美少女。
弟は、そんな二人を無視して黙々とスクワットしていた。
そんな弟に無視された美少女二人は、音に反応してクッキー片手に硬直している私の方を見た。
「あら、お客様かしら?」
一人は長い金髪の女の子で、制服の上からマントを羽織っていた。
それと、彼女はおっぱいが大きかった。多分私より大きい気がする。雰囲気的に年下な感じもあるのにである。教えはどうなってんだ、教えは。
「巨乳……リュウキはやっぱりそうなの?」
一人は背の低い黒髪褐色肌の女の子で、こちらも制服の上からマントを羽織っていた。
こちらの子の胸は……身長相応だった。小さいでいえば、見た感じこの子はリュウくんより年下に見える。凡そキリちゃんと同じくらいだろうか。なんというか、小さなお人形みたいな子だった。
「ちっ……! 姉さん、勝手に入ってくんなって言ったろ……」
そして、この部屋の主である弟は、なおもスクワットを続けていた。悪態をつきながらも上下運動を止めない弟はトレーニーの鑑である。
「えっ、あの……その子たちは?」
対し、私の脳の回転はブレにブレていた。
仮に、今の状況が弟一人女の子一人であったなら、「あらあらうふふリュウくんに春が来たのねぇ!」とウザ絡みをしていただろうが、現実は弟一人女子二人姉一人である。
どういう事だと弟を見る私だったが、姉弟の間に挟まれた二人は各々持っていた茶器を置くと丁寧に名乗ってくれた。
「申し遅れました。わたくし、フスベシティから参りましたシンラと申します。以後お見知りおきを」
「私はソウリュウシティから来た。名前はアニス。よろしくお願いします」
「あ~、こちらこそ……」
と、そのままシームレスに弟そっちのけで3人でお茶会を始める事になった。
どうやら、二人はリュウくんと同じ年に入学してきたみたいで、どちらも私より年下だが先輩であるらしかった。
あと、何故か二人からの私への好感度が最初から妙に高かった。流石のお姉ちゃんも初対面でここまで好意的だとびっくりしてしまう。
「あら、義姉様ったら」
「さすがお義姉様……」
で、気づけば二人から義姉認定されていた。
「まぁ多少はね?」
悪い気はしない。むしろ嬉しい。私の心の穴がどんどん埋まっていきますよ。
妹なんてナンボおってもええですからね。そうしていつしか、私はシンラちゃんとアニスちゃんを新たな妹として認めていた。どんどん頼って甘えてほしいものである。
数分後、ダンベルを持ち上げていた弟が、
「用がないなら帰ってくれよ」
と、一言。
なんか言い慣れた風な口ぶりであった。
「あら、もうこんな時間……。リュウキ様、わたくしはこれにて失礼しますわ」
「バトルの予定入ってたから、私ももう帰るね。じゃあね、リュウキ」
意外にも? 二人は粛々と帰って行った。
一人残った私は、いまだ筋トレを続ける弟に、
「で、あの子達は結局何者?」
と、単刀直入に訊いてみた。
すると弟は、嫌いな野菜でも見るような目をしながら言った。
「なんか、あいつらが入ってるよく分からんサークルがあるらしくて……」
「ふむ」
「俺にそのサークル入ってほしいらしくて……」
「ふむふむ」
「で、あいつらはそのハニトラ要員」
「ふむふ……ハニトラ?」
ハニトラ? ハニトラってあれだろうか。あまいミツで獲物をおびき寄せて補食する的な、アレだろうか。
弟の話を信じるなら、あの子達けっこうヤバい子なんじゃないだろうか。話してみてもヤバさというか、悪意とか害意みたいなのは無かった様に思えたんだけど……。
場合によってはお姉ちゃん案件かもしれない。
「えっ、大丈夫なのリュウくん?」
「どうでもいい。ていうか姉さんも帰れ」
そのまま、部屋を追い出されてしまった。
と、こんな事もあった。
弟の姉離れが深刻だ。
昔みたいにアレコレ頼ってくる事もない。
とても寂しい。
「はぁいケーキ焼けたよぉ~」
「「わぁい!」」
そんな訳で、休日は実家に帰って小さな双子たちのお世話を焼いて心を満たしていた。
最初は姉を名乗る不審者扱いされたりもしたが、何度か会って話してお菓子をあげれば私は見事姉認定されたのだ。
「ふふっ、可愛いなぁ可愛いなぁ」
そうやって双子弟妹とたわむれつつ、パパやママとも交流していた。
曰く、リュウくんもキリちゃんもあんまり家に帰ってこないらしくて親的にもちょっぴり寂しいのだとか。
「リュウキは色々と一生懸命やってるみたいだし、キリは趣味人だし、もう一ヵ月以上顔見てない……」
なんか、久しぶりに会ったパパはしおれていた。
相変わらず年齢不相応に若くエネルギッシュなパパだったが、そうやっていると年齢相応にくたびれた雰囲気があった。
「大丈夫だよパパ。二人はそういう年頃なだけだから」
対するママは落ち着いた様子で、休日に帰ってくる娘を歓迎してくれた。やっぱりママの味噌汁が一番である。
また、相変わらずその胸は豊満であった。年齢詐欺といえばママの方こそ大概だ。パパと並ぶと大学生カップルにしか見えないのおかしいと思う。
「みんな、忙しそうだもんねぇ……」
とまぁ、私の学校生活はこんな風に過ぎていった。
アカデミーでは充実した学生をやって。
上の子達にはちょっとしか構ってもらえなかったが、たまに会って話をしたり。
休日は実家に帰って下の子のお世話を焼いたり……。
完璧ではなかったが、考えうる限り最高に近いスクールライフなのではなかろうか。
● 〇 ●
そんな生活が1年ほど続き、私はアカデミー伝統の課外授業を受ける事になった。
課外授業である。
アカデミーでは年に一度、パルデア全土を使った授業を行う時期があるのだ。
授業内容は生徒の自由。強いトレーナーを目指すべくリーグに挑んでもいいし、美味しい香辛料を求めて旅をしてもいいし、あるいは一匹のポケモンを研究しまくってもいい。
やりたい事、成し遂げたい事を通じて自分の中の何かを知る事。
校長はこれを、宝探しと言っていた。
さて、初課外授業の私、普通に困った。
何をしていいか分からなかったのだ。
リーグ? 研究? 宝探し? 目的のない旅は好きだが、目標のない努力は苦手である。
やりたい事と言われても、お姉ちゃんは困ってしまうのだ。
その事を弟妹に話して、二人は何するのと訊いてみると……。
「俺はリーグ制覇を目指す。今年こそ、絶対チャンピオンになってやる……!」
そう言って、弟は颯爽とテーブルシティに背を向けた。
その背には並々ならぬ覚悟を感じられた。
「あたしはぁ……どうしよっかな~。チャンピオンには去年なっちゃったし、今年はフリッジあたりでゴロゴロしよっかな~」
そう言って、キリちゃんもそらをとぶタクシーに乗り込んでいった。
適当な物言いだったが、何をするかは決めている風ではあった。
「チャンピオン、かぁ」
ポケモンリーグ。イッシュとかホウエンとかでやってるお馴染みのアレ。それのパルデア版。
とりあえず、それを目標に動こうと思った。旅と同じ、行先を決めるのと同じ感覚だと思えば楽だった。
あんまり興味はなかったが、ちょっくら腕試しにジムでも巡ってみよっかなと思うのだった。
● 〇 ●
で、色んなジムで色んなバトルをして、やってきましたリーグ本部。
私はそこで、チャンピオンのオモダカさんと対峙していた。
「カヤノさん、貴女の才……見定めさせてもらいます」
で、バトルをした。
結果、私が勝った。
確かに、オモダカさんは強かった。手加減が苦手と言っていたがまさにその通りで、一応挑戦者である私にも全く容赦なく技の冴えを突き付けて来た。
でも、やっぱりダークライは強かった。最後の一匹、ダークライの敏捷性がなければ押し負けていたかもしれない。そんなバトルになった。
「素晴らしい才能、素晴らしいポケモンたち……。おめでとうございますカヤノさん、貴女が新たなチャンピオントレーナーです」
そんなこんなあって、キリちゃんに続き私はパルデアのチャンピオンランクのトレーナーになった。
で、チャンピオンになった私はアカデミーの人気者からパルデアの人気者にランクアップした。
それと、リュウくんはオモダカさんに負けてしまったらしい。
声をかけたが、無視をされてしまった。
とても寂しい。
時は過ぎ、なんとなくエントリーしたアカデミー主催のバトル大会で、私は優勝した。
決勝では、妹のキリちゃんとのバトルになった。
妹は課外授業で手持ちポケモンたちを鍛えてきたらしく、以前とはまるで違う強さになっていた。
まるで、巨大な才能の原石で“りゅうせいぐん”されたかの様であった。
結果、私はなんとかかんとか勝利できた。
相性有利じゃなけりゃ絶対負けてたし、ダークライがたおれたバトルは初めてだった。
ほんの少しの間、ブラッキーが耐えてくれたお陰で、勝つ事ができたのだ。
「ふへへへへっ! やっぱりカヤ姉は強いなぁ!」
と目を輝かせる妹の眼差しに、私は完全に気圧されていた。
何が妹の心をそこまで駆り立てるのか分からなかった。
閉会式もそこそこに、妹は意気揚々と去って行った。
それから、また時が過ぎ……。
その時の生徒会長が卒業するというので、新たに生徒会長を選出する事になった。
で、私はクラスのみんなからの推薦もあり、あれよあれよと生徒会長になっちゃったのだ。
● 〇 ●
「どうすりゃいいんだろうねぇ~」
チャンピオンになって、学校で最強のトレーナーになって、生徒会長になって、しばらく……。
私はアカデミーの屋根の上でぼんやりしていた。
隣ではダークライがふわふわ浮いていた。
なんというか、私の気持ちが迷子になっている感じがあった。
道に迷った時とも違う。森で遭難した時とも違う。けれど、それらにちょっと似た感覚。
どうにもこうにも不安定で、落ち着かない。
ぼんやりして思うのは、家族の事であった。
生徒会はやる事が多いので、最近は実家に顔を出せていない。
しばらく双子ちゃんの顔を見ていない。
アカデミーでは、弟は口をきいてくれない。
妹も妹でなんか忙しそうにしている。
会えないから寂しいと感じているのか。
旅をしている間は、そんなに感じなかったのに?
本当、よく分からない感覚だった。
「リュウくん、最近どうしたんだろうね。キリちゃん、最近なにやってるんだろうね」
「……、……」
アカデミーは楽しい。
生徒会長として、色んな子のお世話をするのはやりがいがある。
チヤホヤされるのは嬉しいし、頼られると元気になる。疲れてもいない。苛つく事だってない。
けど、なんだか……。
「これからどうしよっか、ダークライ?」
「……、……、……」
心の中に、隙間風が吹いている様だった。
● 〇 ●
ある日の放課後。
なんて事のない日常の中。
私のスマホロトムに、一通のメッセージが届いた。
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