【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告にはいつも助けられています。
書き溜め分の放出です。
相変わらずバーッと書いた奴なので詰めが甘いです。
今回からは長男視点です。
よろしくお願いします。
みんなに出来ない事が出来る。
多くの場合、それは凄い事としてみなされるものだ。
クラスの誰より足が速い。
チームのエースストライカー。
ポケモンバトルで負けた事がない。
そういうの、みんな褒める。
大人も、子供も、教員たちも。
すごいね、とか。才能あるよ、とか言って。
褒められると、子供は嬉しくなるものだ。
両親曰く、俺は軽い体重で生まれ、ハイハイが出来るのも言葉をしゃべるのも遅れていたらしい。
早熟だった姉と比べて、ではなくもっと多くの赤子と比較してである。
その頃から、俺は何をするにもノロマだったのだ。
そんな俺にも、俺に出来て他の子に出来ない事があった。
ドラゴンタイプのポケモンと、お話ができるのだ。
お話といっても、実際に言葉を使って行うものではない。
目を見て、心で念じて、受け取ったり受け取ってもらったり……。
言葉のないお話が、人間とするよりも簡単に行えた。
人より、ポケモンとの会話の方が得意な子供。
それが俺。
リュウキという“凡人”だ。
ドラゴンは基本、素直だ。
大人同士がしているような難しいお話などしないし、できない。当然、互いの本心の探り合いなんてものもない。
睨み合い、吠え合い、殴り合いで上下が決まって、頂点が統べてそれで終わり。
実に清々しい気質だと思う。そんな気質が、他タイプより顕著なのだ。
そんなドラゴンたちと、俺は“お話”する事ができた。
赤と念じれば赤と、青と念じれば青と返ってくる。それを何度か繰り返すと、お友達だ。友達同士なら、喧嘩はすれど敵も上下もないだろう。
俺を介する事で、ドラゴンポケモンたちはみんな仲良くなれた。
そういう、俺にとって当たり前にできる事を、俺以外にできない事を知ったのは、なんとある程度大人になってからの事だった。
遅すぎである。
俺程度にできる事など、みんな出来ると思っていたのだ。
何故なら、俺に出来ない事を、俺の家族は皆簡単に出来ていたからだ。
俺の家族は皆、俺より優秀である。
父は歴戦のポケモンレンジャーであり、年によっては四天王の代役をこなしたりする程度には腕がいい。
母は複数の会社を経営する敏腕社長であり、いくつもの作品を出版した人気作家だ。あまつさえ月数千万の金を動かす投資家でもある。
姉は生まれた頃から優秀で、文武両道を地で行く神童だった。その上善良な性根の持ち主で、幼稚園でもスクールでも人気者だった。
妹は驚くほど頭が良く、俺より年下のはずが俺よりも先の内容を勉強していた。おまけに母と同じくゴーストポケモンとの相性が良いらしい。
で、そんな優秀な両親姉妹に挟まれた俺は、普通の子供だった。
幼稚園の運動会でアンカーを任せられるくらいには運動ができた。母に教えてもらっていたので、文字書き計算もすぐ出来た。同い年の男子たちよりは落ち着いた精神性ではあったと思う。
だが、まぁ……姉とか妹と比べると、普通だ。
決して、優秀な子ではない。
父や母から「姉のようになれ」だとか「もっと賢くなれ」などと言われていた訳ではない。
ただ、姉や妹を近くで見ていると、如何に自分が凡庸であるかを思い知るので、なんだか情けない気持ちになってしまうのだ。
無意識だろう。姉は、周囲の人に敗北感を与えてしまう。
無自覚だろう。妹は、周囲の人を馬鹿に変えてしまう。
あぁ……俺はこいつらには勝てないんだな。
物心ついた頃から、心底納得していた。
勉強でも運動でも、まして創造性や社交性でも、俺はこの家で最下位の兄なのだ。
存外、認める事に抵抗はなかった。
● 〇 ●
ある日、旅行好きの我が家がガラル地方のカンムリ雪原に行った時の事だ。
どういう経緯だか忘れたが、突然姉がめちゃくちゃ怖いポケモンを連れて来たのだ。
グーグー眠っているところを妹にたたき起こされ、ギャーギャー騒ぐ妹に強請られて姉は不承不承ボールからそいつを解き放った。
真っ黒な、死神みたいなポケモン。ダークライだ。
俺は、そいつの姿を見てギャン泣きしてしまった。
よく覚えている。ダークライがボールから出て来た瞬間、脊柱に“こごえるかぜ”を浴びた様な感覚がしたのだ。小児の俺、マジ泣き。
母のドラパルトの後ろに隠れてなんとか恐怖を耐えていたが、あの時は涙も鼻水も垂れ流しであった。
で、いつの間にかそいつが新しい家族だよと紹介されて精神にダブルチョップである。ボールの機能で害はないとか言うが、普通に怖くはないのかと思ったものだ。
旅行の後、色々あって姉は島めぐりなる儀式の後にダークライを手持ちにするらしい。
島めぐりが行われるのは11歳の頃。上手くいけば、姉はその年で伝説だか幻だかの、とにかく凄い強くて珍しいポケモンを手持ちにする予定なのだ。
流石姉さんだな、と。俺はぼんやり思っていた。相変わらず、ダークライは怖かった。
で、数か月後、姉はスクールを卒業した。
あれそんな歳じゃなくねと思ったが、頭の良い生徒は飛び級といって他より早く卒業できるらしいのだ。
飛び級した姉は、それから父についていってポケモントレーナーとしての英才教育を受けていた。そうすると、元々優秀だった姉の実力はどんどん伸びていった……らしい。
手持ちのイーブイはブラッキーになって、10歳になるとニャオハのタマゴをもらっていた。もう十分、2匹を手持ちにしても大丈夫だと、父から認められたのだ。
「ただいま。お、バンギラス。父さん今日は早いな」
その頃、俺は特に何もしていなかった。
普通にスクールに通い、普通に勉強して、普通にポケモンと遊んでいた。
姉みたいに目標なんてなかったし、妹みたいに急いで勉強する気もなかったのだ。
その頃になると、ダークライには慣れていた。一応、俺も成長はしているらしかった。
また時が過ぎ、姉は島めぐりに行った。
で、しばらくして、姉は帰って来た。
すっかり日焼けして、逞しくなったポケモンたちを従え、試練を超えて見事ダークライを手持ちに加えてのけたのだ。
「久しぶり! リュウくん!」
なんだか、そんな姉を、かっこいいと思えた。
一皮剥けたというか、何というか。
とにかく、そんな姉の逞しい姿に、ほんのちょっとだけ憧れたのだ。
● 〇 ●
姉が帰ってきてから、俺はちょっぴり行動的になっていた。
姉みたいにやりたい事は見つからなかったが、なんとなく色々やってみようと思ったのだ。
まず、近くの道場でガラル空手を習う事にした。広告を見て、何となくだ。
稽古は疲れるし楽しくはなかったが、自分の肉体が強くなっていく感覚は新鮮で面白かった。
筋肉ムキムキの師範の大胸筋には素直に憧れたものである。
で、体力がつくと使いたくなるもので、サッカークラブにも入ってみる事にした。
父譲りの血かガラル空手のお陰かは分からないが、いつしか同年代の男子の平均より体力のあった俺はすぐにレギュラーになれた。ポジションはサイドバック。
初の試合で、俺は地味ながらしっかりとチームに貢献できた。試合には負けたが、両親と監督には褒めてもらえた。なんか無性に嬉しかった。
アレやりたいと言えば叶えてくれる両親のおかげで、空手とサッカーに加えその他色々な事をさせてもらった。
面白くないとすぐやめてしまったものもあるが、父と母は「それでいい」と言ってくれた。とにかく、色々と試してみるのが楽しかった。
結局、空手とサッカーしか続かなかったが、挑戦する事自体が良い経験になったと思う。
そんなある日、俺が運動場で一人サッカーの練習をしていた時の事。
「リュウくん何してるのー?」
日焼け跡が消えた姉がひょっこり現れた。
島めぐりを終えて、最近暇している姉はたまにこうして弟や妹にくっついてくる事があるのだ。
かまちょかまちょしてくる姉を、当時の俺は疎ましく思うようになっていた。サッカーも空手も、一人で練習する時間が好きなのだ。その時間を邪魔されたくなかったのである。
で、やかましい姉に、俺はこう言ってしまった。
「じゃあ、PKの練習させてよ」
その時、俺の練習メニューにPKの予定はなかった。
けれど、得意なサッカーなら姉をボコボコにできて、かつ撃退できるんじゃないかと思ったのだ。
サッカーなら、姉に勝てると思っていたのだ。
「オッケー! アレだよね、止めればいいんだよね?」
姉はキーパーしか知らないらしいので、PKというかゴールキーパーの練習みたいになってしまったが……。
「よし……」
とにかく、俺は本気でゴールを決めるべく、全力でボールを蹴った。
「えへへ、もっと強いのきていいよー!」
結果、俺のシュートは、全て姉にキャッチされてしまった。
姉はサッカー素人だ。ルールもうろ覚えだし、ポジションもテクニックも知らない。まして経験もない。
そんな姉に、ディフェンダーとはいえサッカー経験者である俺のシュートを、全て“キャッチ”されてしまったのだ。
「もう、いいよ……」
「え、どうしたのリュウくん?」
その時の気持ちを、どう例えたらいいだろう。
敗北感など、今さらだった。物心ついた頃から、俺は父にも母にも姉にも妹にも負け続けてきたのだ。
劣等感や敗北感なんてのは、幼児の頃から隣人だった。自分がしょうもない人間である事など、身に染みるほど知っているのだ。
だから、悔しい気持ちはなかった。
ただ、喪失感だけがあった。
ややあって、俺はサッカークラブを抜けた。
空手は続ける事にしたが、大会に出るのはやめた。
誰かと競うのなんて、嫌いだ。
どうせ、誰も姉には勝てない。
虚しいし、時間の無駄だ。
そんな中、姉が姿を消した。
なんか知らないが、いきなり「旅に出る」と言って、船に乗ってどこかへ行ったのである。
とても不思議な事だったが……。
俺の心は、安堵している様だった。
● 〇 ●
また時が経って、俺はアカデミーに入学した。
入学祝いにと、俺は父と母から2つのタマゴを貰った。
父にもらったタマゴからは“ジャラコ”が生まれ、母にもらったタマゴからは“ドラメシヤ”が生まれた。
なんと、どちらも彼の有名なドラゴンポケモンの進化前であった。
「リュウなら上手く育てられるさ」
「かわいがってあげてね」
その時、まだ自覚のなかった俺の才能を、両親は見抜いて信じてくれたのかもしれない。
普通、初めてのポケモンにドラゴンタイプを選ぶなんてありえない。それも2匹となると、初心者トレーナーには荷が重いだろう。
「よぉし、ご飯の時間だぞー」
で、だ。
いざ生まれてきたドラゴン2匹の育成は、思っていたより順調だった。
それというのも、2匹とも俺によく懐いてくれたのである。喧嘩こそ時々やっていたが、殺し合いに発展する事はなく、2匹とも俺の指示には従順であった。
上手くしつけたとかではない。普通に、話せば分かってくれただけだ。
事前に読んだドラゴン育成本は、あんまり役に立たなかった。
「ほう、素晴らしいですね。リュウキくん、貴方にはドラゴン使いとしての才能がありますよ」
と、ドラマで見た事あるような見た目の先生――ハッサク先生というらしい――に褒められたりもしたが、俺的には普通の事をしているだけだったので、素直に喜ぶ事はできなかった。
それに……。
「ありがとうございます。けど、俺より姉のが上手くやれますよ」
そう、姉ならドラゴンの2匹や3匹程度、余裕で使いこなせるだろう。
無根拠だったが、そう思っていたから、褒められても素直に喜べなかった。
ジャラコとドラメシヤが生まれて、しばらく……。
アカデミーでの生活は、存外充実していた。
手持ちポケモンの世話は大変だったが、それでも楽しかった。少ないながら友達もできたし、試しに初めてみた筋トレは俺の性に合っていた。
アカデミーは、良い所だと思う。
良い所で、充実してはいたのだが……。
「リュウキさん! 何なのですかそのハムは! ジャラコの食性をちゃんと理解しておいでですの!?」
「ん、この水……ドラメシヤにとって適切な硬度じゃない。ドラゴンには硬水を飲ませるべき」
俺は、面倒な奴に絡まれて困っていた。
何故だか知らないが、同じクラスの変人女子二人――ふたりとも超ダサいマントをこれ見よがしに着ていたのだ――に付きまとわれるようになっていたのだ。
最初は軽く受け流していた俺だったが、あんまりにもしつこいもんで一ヵ月もする頃には、
「うっせ。このジャラコはこのハムが好きで、このドラメシヤは軟水が好きなんだよ。それに必要な栄養は他の食材で補ってる」
と、言い返すようになっていた。
だいたい、まともに交流していない奴に俺のポケモンの何が分かるというのだ。
「貴方ねぇ! そんな事を書いてある本なんてわたくし読んだ事ありませんわよ!?」
「軟水が好きなドラゴンなんて、私知らない。誰から聞いたの?」
「こいつらから」
「「はぁ?」」
やかましい二人にガミガミ言われるのは、まぁ良い。
けど、こいつらが近くにいると周りから俺まで変な奴扱いされそうで嫌だった。
ドラゴン2匹持ちなど、ただでさえ目立つのに、これ以上注目浴びてどうするというのだ。
「さて、ブラッシングの時間だな。ほら、ジャラコこっち来~い」
「聞いていますの? それにそのブラシは何!? そんな安物じゃあドラゴンポケモンの品位がですね!」
「それ、リュウキの手作り? お金ないの? 私の貸そうか?」
「うっせ。こいつら用にカスタマイズしたブラシなんだよコレは」
と、こんな感じで俺の学校生活は過ぎて云った。
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