【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 今回は課外授業回です。
 三人組の絡み書くのが楽しくて、ただでさえ長い後日談が更に長くなってしまいそうです。
 最初は後日談全体を全6話構成にする予定だったってマ?


【リュウキ編3】ドゥラララ!!

 俺がアカデミーに入ってそれなりの時が過ぎた頃、校内は課外授業の話題で持ち切りだった。

 それはピカピカの一年生の我が教室こそ顕著であり、放課後になるとあちらこちらで課外授業で何するだとかアレしたいだとかで各々のグループで盛り上がっている様だった。

 

 で、俺はというと……。

 

「リュウキ様、課外授業ではわたくしとベイクタウンに行きませんこと?」

「ん、リュウキは私といっしょにパルデアモトトカゲカップ芝3200に出る予定。ベイクタウンは一人で行ってきて」

「んな!? わたくしそんなの聞いてませんわよ!? リュウキ様、それ本当ですの?」

「ん、さっき決めた。リュウキが育てたモトトカゲに私が載ればパルデア最速間違いなし。歴史に残るレースになる」

「ずるい! ずるいですわ! わたくしもリュウキ様が育てたモトトカゲに乗りたいですわ!」

「先行者利益。何で負けたか、明日までに考えといて」

 

 左右からのキンキン声に頭を抱えていた。

 無論、俺はモトトカゲレースに興味は……ない事もないが、出るとも育てるとも言っていない。アニスが勝手に言ってるだけで、シンラがそれを真に受けてるだけだ。

 

「課外授業、ねぇ?」

 

 それより、課外授業である。

 ぶっちゃけ、何も決まっていなかった。

 

 宝探しと校長は言うが、なんとも抽象的で曖昧な授業である。

 幸いノルマやレポートなんてものもないので、なんならマジで適当に済ませてもいい。普段の授業はともかく、こういう自主性とか主体性が重視される授業は苦手であった。

 

「自由と言われてもな……」

 

 で、その事を我らがハッサク先生に相談してみると、「リュウキくんの心に従う事をお勧めしますよ」というお返事。

 心に従う、とは何だ。もし本当に心に従うなら、俺はずっと部屋に引きこもってドラメシヤ抱っこしながら昼寝するぞ。

 

 ちらりと、俺の隣にいるメスバクオング達を見る。相変わらずギャーギャー言い合っていた。

 こいつらにも、探したい“宝”なるものがあるのだろうか。

 

「お前らは何すんの?」

 

 訊いて見ると、二人はぴたりと言い合いを止め、軽く考え込むような仕草をした。

 やがて、アニスが先に答えた。

 

「私はさっき言ったように、モトトカゲカップに出る。モトトカゲが好きでパルデア来たみたいなトコあるから。課外授業で良いモトトカゲ捕まえて、その子で出走する」

「わたくしはベイクタウンに行って優秀な陶器職人を見つけますわ。その方に我が家に相応しい陶器の作成を依頼します。あと、陶芸の体験学習もさせていただく予定ですわ」

 

 考え込みはしていたが、出て来た言葉には淀みがなかった。前々から、やりたい事は決まっていたみたいだ。

 

「そうか」

 

 参考になったような、なってないような。

 

「リュウキは何するの?」

 

 アニスの質問に、俺は答える事ができなかった。

 無視したかった訳ではない。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 さて、課外授業当日。

 俺たちは校長の長々としたお話を聞き終え、いざいざテーブルシティを後にした。

 

「じゃ、私はこっちだから。その気になったら連絡して」

 

 アニスはモトトカゲを捕まえるべく東へ。

 

「ではリュウキ様、ベイクタウンはこちらなので。陶芸に興味があるのでしたらご一報ください」

 

 シンラは理想の陶器を探すべく南西へ。

 

「さ、行くか」

 

 結局、俺は“旅”をする事にした。

 

 旅はいいぞ、というのが父の口癖だった。

 何が良いのかと訊けば、見たことない景色がどうのとか会った事のないポケモンがどうのだとか言っていた。正直なところ子供心に何を言っているのか分からなかった。

 分からなかったが、良い機会なので、俺もこの広いパルデア地方を旅してみる事にした。物は試しだ。面白くなかったら、帰って他の事やろう。

 

 手持ちポケモンと一緒の旅。

 実にトレーナー的だろう。

 

 

 

 俺の宝探しに、目的地はなかった。

 コイントスで東西を決めて、棒の倒れた方に歩いて向かう。それを、実際にやってみたのだ。

 この旅に意味はなく、心に従ってる訳でもないが、宝探しではあったかもしれない。

 

 行く先のない旅の道中は、色んな事があった。

 爆走するモトトカゲに水たまりの水を引っかけられたり。

 サンドウィッチを食べてたらイッカネズミの群れに追いかけられたり。

 雨宿りに入った洞窟の中でディグダの襲撃に遭ったり……。

 いやろくでもない事ばっか思い出してんな。よくない癖だ。

 

 勿論、楽しい出来事や良い出会いというのもあった。

 ある時、いつものように俺とジャラコとドラメシヤでキャンプをしていると、飯の匂いに誘われたのか一匹のポケモンが寄ってきたのだ。

 大口開けてやってきたそいつは、かの有名なドラゴンの幼体――フカマルだった。

 

「ふんがぁ~」

 

 フカマルは相当腹を空かせていたらしく、ジャラコとドラメシヤを無視して無防備に俺の近くまでやってきて、食いかけの干し肉を要求してきた。

 仕方ないので食料を分けてやると、フカマルは飯の後も俺についてきた。で、仲間になるかと訊いてみたら、OKが出たのでボールに入ってもらった。俺の手持ちにフカマルが追加されたのだ。

 

 他にも、食料目当てに釣りをしていたら何とミニリュウが釣れてしまい、リリースしようとしたら何故か懐かれてゲットする事になったり。

 ナッペ山を登っている最中、何が原因かは知らないが怒り狂うポケモンたちに追い回されていたセビエを救出し、そいつも仲間に加えたり。

 

 あと、道中の危険を払うべくちょこちょこバトルなどしていると、俺の最初の手持ち2匹が進化したりもした。

 ドラメシヤはドロンチに、ジャラコはジャランゴに進化したのだ。

 流石のドラゴンポケモンで、2匹の戦闘力は跳ね上がる事となった。

 

 気づけば、俺の手持ちは5匹になっていた。

 タマゴから育てたジャランゴとドロンチ。食い意地の張ったフカマル。人懐っこいミニリュウ。やんちゃで陽気なセビエ。

 あてどない旅の中、偶然出会った最高の相棒たちであった。

 

 けれども、ふとこのように思う事もあった。

 俺は、こいつらに釣り合うポケモントレーナーなのだろうか、と。

 

 仮に、俺の手持ちポケモンたちが皆、最終進化までしたとする。

 ドラパルト。言わずと知れた超スピードポケモン。

 ジャラランガ。超武闘派の格闘ポケモン。

 ガブリアス。超有名なシンプル激強ポケモン。

 カイリュー。可愛くて強いチャンプ御用達ポケモン。

 セグレイブ。パルデアが誇る重量級マッチョポケモン。

 

 ……という事になる。

 

 超強いポケモンたちと、成り行き任せの凡人トレーナー。

 つり合いが取れてないんじゃないか?

 

 一歩立ち止まって考えて見ると、不安になった。

 俺はバトルが得意じゃない。そんな俺ではこいつらをちゃんと指揮できない。今からでも父や姉に言って、こいつらの世話を任せた方がいいんじゃないか。そっちの方が、こいつらをもっと活躍させられるんじゃないか。

 こいつらにとってどんな未来がベストなのか、ちゃんと考える必要があると思った。

 

「ん?」

 

 そんな事を考えながら歩いていると、チャンプルタウン近くの道で、寿司を発見した。

 二度見する。道の真ん中に、寿司が落ちていた。

 何か何故かはわからないが、何と道路に寿司が落ちていたのだ。

 

「お、オレスシ……」

 

 寿司? スシ? なんで? と思って観察してみると、それは寿司ではなくシャリタツというドラゴンポケモンだった。

 にしても、変なところにいたものである。シャリタツが生息するのはオージャの湖のような水辺であり、こんな道端で餌に擬態しているなんて見た事も聞いた事もなかった。

 見た感じ、赤いシャリタツ――たれたすがただ――はかなり傷ついている様だった。背中には鳥ポケモンにつけられたと思しき裂傷があり、白いのど袋もイマイチ膨らみきっていない。弱っている……のか?

 

「ふがぁー!」

「おっと、そいつはダメだ」

 

 と、一緒に歩いていたフカマルが食い意地を発揮してシャリタツを食おうとしていた。俺はその身体を抱えてストップさせると、周囲に視線をやった。

 落ちてるスシに気を付けろとはパルデアでは有名な言葉である。シャリタツは頭の良いポケモンだ。自分自身を疑似餌として使い、寄って来た飛行ポケモンを仲間と共に襲って狩るのである。目の前のコレも罠かもしれない。なので、目と耳を凝らして周囲を警戒する。何もない。

 何もないが、警戒を維持しつつ一応シャリタツにも思念を送ってみる。すると、弱々しいながら思いの外明瞭な返事が返ってきた。

 

 ――助けて、と。

 

 それを聞いたと同時、俺はシャリタツに駆け寄ってキズぐすりを使ってやった。

 罠かもしれない、と思ったばかりだったが、実際話してみて助けを乞われたのだ。助けざるを得ない。

 

「キズぐすりだけじゃ無理か……」

 

 あんまりバトルをしない都合上、俺のバッグには緊急用のキズぐすりしか入っていない。それだけではシャリタツを全快させる事はできなかった。ちゃんと回復させるには、ポケモンセンターに行くしかないだろう。

 俺はしおれたシャリタツを抱えて……いや、手で運んで走ってはシャリタツに無駄に負担がかかる。ここは一度ボールに入ってもらった方が安全だろう。

 シャリタツに思念を送り、後に野生に帰すので一時的に手持ちに加わるよう説得する。するとすぐさま是という明瞭な返事がきた。シャリタツは頭が良いと聞いていたが、こんなにも円滑にコミュニケートできる程とは思っていなかった。

 俺はシャリタツを仮ゲットし、ドロンチにつかまってポケセンへ向かった。

 

「オレスシー!」

 

 それから小一時間ほど後、傷ついたシャリタツをポケモンセンターにぶち込んでやると、すぐに全快してくれた。

 元気になったポケモンをボール外に出すと、シャリタツはお礼でも言うようにお辞儀をしてくれた。やっぱ、こいつ頭良いな。

 

「でも、これは治らなかったな……」

 

 ポケモンセンターの治療技術は凄い。けれど、シャリタツの背中についた裂傷の痕は消えなかった。これでは寿司に擬態してもすぐにバレてしまうだろう。

 このシャリタツは回復次第野生に帰すつもりだったのだが、疑似餌としての役割を失ったこいつに、野生で生き残る術はあるのだろうか。

 

「ススシー」

 

 すると、意外な事にシャリタツの方から、俺の手持ちで居続けさせてほしいという旨の要望がきた。

 賢いシャリタツの事だ。きっと自分がもう野生でやっていけない事を悟っているのだろう。

 

「そうだな……そうしよう」

 

 ハッサク先生の言葉を思い出す。迷う事はなかった。俺は、こいつを群れに招き入れる。俺の心に従うならば、そうするのが自然だろう。

 

 多分、こいつは弱い。強くもならないと思う。

 状況証拠的に、このシャリタツは狩りに失敗して疑似じゃなくマジの餌になるところだったのだろう。よくよく見て見ると、平均よりも小さな身体をしている様だし、ただでさえ弱いシャリタツの中でも一等弱い個体なのではないだろうか。

 

「スシー!」

 

 だが、それでいい。

 そもそも、俺は強さで手持ちを選んでいない。運命的な何か……感性にビビッときたから、フカマルやセビエを仲間にしたのだ。

 一匹ぐらい、弱いのがいてもいいじゃないか。もともと他5匹だって他に預ける事を検討する程度には上手く育てる自信がないのだし、増やすってんならシャリタツくらいが丁度いいのかもしれない。

 

「ジャラ!」

 

 それに、俺の手持ちたちもシャリタツを気に入ってくれてるみたいだ。

 ジャランゴは握手をするように手を差し出し、応じてシャリタツも前びれを合わせた。ドロンチは周囲をぐるぐる旋回し、ミニリュウも新たな群れの一員の匂いを嗅いでいる。セビエは何か賑やかになってるっぽい雰囲気を察して踊っているし、フカマルもいつも通り大口開けて跳ねていた。

 

「あぁ……これか」

 

 ふと、その瞬間。

 校長の言ってた事の意味が、分かった気がした。

 

 課外授業の意味。宝探しという曖昧で抽象的なテーマ。

 俺にとっての宝探しが今、完遂されたのだ。

 旅はいいぞ、という父の言葉も、少し理解できた気がした。

 

 俺は遠い空を見ながら、課外授業を振り返った。

 嫌な思い出もそれなりにあったけど、旅に出たからこそミニリュウやセビエに会えたのだ。

 父も、母も、あるいは姉も、こういう経験をしてきたのかもしれない。そう思えば、なるほど旅が好きになる訳である。

 

 そして、もう一度俺の手持ちポケモンたちを見る。

 すると……。

 

「ふがーっ!」

「ス……!?」

 

 ガブリと。

 フカマルが、シャリタツを食っていた。

 

 ジャランゴ、ドロンチ、ミニリュウ、セビエ、あと俺も、一時停止してしまった。

 フカマルの口からはみ出たシャリタツの下半身がビタビタ跳ねていた。

 やがてシャリタツがぐったり力を失うと、フカマルは残る半分の身体を……。

 

「おいおいおい! コラちょっと待てフカマル! ぺっ、しなさい! ぺっ!」

 

 俺とポケモンたちは力を合わせて、フカマルの暴虐から新しい仲間を救出した。

 

「オ、オレスシ……」

 

 シャリタツ、上手くやっていけるだろうか。

 俺のドラゴン育成の課題がまた一つ増えたのであった。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 そんな感じで、俺の課外授業は終了した。

 増えた仲間たちを連れてアカデミーに戻ると、いつもの二人に催促されて旅の出来事を話す事になった。

 

「まぁ! ドラゴンを6匹だなんて! お父様でも4匹ですのに! すごいですわリュウキ様!」

「んっ、凄いと思う。私の爺ちゃんでも同種5匹だし。それにみんな交渉ゲットだなんて凄すぎだよ」

 

 実際、ドラゴンポケモンはその気性故、強い種族のドラゴンを複数手持ちにするのは難しい……とは、アカデミーのバトル学でも習った事だ。

 だが、ドラゴンとてポケモン。トレーナーがちゃんとお話すれば他タイプ同様に複数持ちも難しくないはずなのだ。

 ドラゴンポケモンは育成が難しいとか言う奴は、単にコミュニケーション不足なだけだと思うんだよな。

 その点、俺に不安はなかった。俺が不安なのは、バトル下手な俺がちゃんとこいつらをバトルで活躍させられるかであって、上手く共存させられるかではないのだ。

 

「別に凄くねぇよ」

 

 本当に凄いトレーナーってのは、子供の時分に伝説ポケモンを手持ちにしている奴とか、手持ち3匹で島めぐりを達成するような奴の事を言うんだ。

 適正タイプのポケモンを6匹揃えただけで褒められても、何も嬉しくはない。

 

「けど……」

 

 昼寝中のシャリタツの背中を撫でながら、思う。

 で。思った事をそのまま言葉にするならば……。

 

「……まあ、自慢のパーティではあるかな」

 

 というのが、素直な気持ちではあった。

 柄にもなく、口の端を歪めて返答などしてしまった。

 気づいて、すぐ真顔に戻した。スクールの頃、「リュウキくんって笑うと怖いよね」と言われた記憶がフラッシュバックしたのだ。笑うならちゃんと練習した笑顔にしないと。

 

 

 

 相変わらず、俺というポケモントレーナーの腕前に自信はないが。

 旅で出会ったポケモンたち。出会った時の思い出。

 それを、自慢するのに抵抗はなかった。

 

 これで俺の手持ちはドラゴンポケモン6匹。

 それぞれ性格も個性も特性も食性も違う。

 さて、まずはそれぞれに合ったブラシを作るところからだな。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

「ねぇ、アニスさん」

「なに? シンラ」

「あの、もしかして……なのですけれど」

「ん」

「……リュウキ様って、その……アホなのかしらん?」

「というか、ズレてるんだと思う。ほら、お父上が……」

「あぁ……納得ですわ」

「ある意味、仕方ないと思う」

「ですわねー」




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