【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 感想がもらえるのはやっぱり嬉しいですね。
 嬉しいので周回ほっといて執筆ばっかやってます。

 何度も言いますが、例によって独自解釈独自設定多めです。
 それもこれもバーッと書いてるので、詰めが甘いです。細かいトコが間違っていても堪忍してつかーさい。


【リュウキ編4】スシとテストと召喚龍

 課外授業が終わって、また時が過ぎた頃。

 

 俺はアカデミー二年生になった。

 二年生にはなったものの、俺の生活にそんな大きな変化はなかった。

 相変わらずダサマント二人はうるさいし、男子生徒からの視線はキツいし、6匹に増えたドラゴンポケモンたちは可愛いし。

 色々あって、平穏な学校生活は諦めた。今の俺にとって、ミニリュウやセビエのお世話をしている時間が唯一の癒やしだった。

 

「ふへへ……リュウ兄、久しぶり~」

 

 そんな中、アカデミーに我が妹――キリノがやってきた。

 二歳下の一学年後輩。曰く、スクールがつまらなくなったから飛び級してきたのだという。

 

「あら~! 可愛い妹さんですこと! あっ、タルトありますわよ? ぜひぜひお食べになって?」

「ん、リュウキブレンドを飲むべき。兄妹なら味の好みも同じはず」

 

 で、妹を見た二人組の反応がこれであった。

 何故かは知らないが、妹に対する二人からの好感度が妙に高い気がする。

 

「まあ……あんまはっちゃけ過ぎんなよ」

「はっちゃけないよ、はしゃぐだけ。アタシとしても、リュウ兄に迷惑はかけたくないかな」

「そうか。ならいいけどよ」

 

 別に、妹が嫌いな訳じゃない。

 けれども、割とトラブルメーカーなとこのある賢い愚妹とは距離を取りたいのも事実だった。

 

 

 

 で、妹が入ってきて少し経った、ある日の事。

 廊下を歩いていると、美術室の前に飾られた絵の中に、見覚えのある画風の絵を発見した。

 

「あー、妹の絵か」

 

 それは妹が書いた絵だった。

 まるで幼児が描いたみたいなポケモンの絵だ。相変わらず、妹の絵は“無題”という名前だった。子供の頃から、妹は自分が描いた絵に無題と名付けるのである。

 賢くて器用な妹だが、昔から絵は下手なのだ。

 

 俺からすると見慣れた妹の絵。

 そんな絵を、じっと見つめる先生がいた。

 

「おはようございます、ハッサク先生」

「……あ、これは失礼。おはようございます、リュウキくん」

「あの、妹の絵が何か?」

 

 なんでかは分からないが、ハッサク先生が妹の絵をじっと見つめていたのだ。

 気になったので訊いてみると、いつもハキハキと答えてくれるハッサク先生は顎に手を添えてうむむと唸った。

 

「……リュウキくん、貴方にはこの絵が何に見えますか?」

「はあ」

 

 何と言われても困る。普通に描いてあるままにしか見えないのだが……。

 まあ、芸術に傾倒してる人ってのは往々にして凡人には理解できない感性をしているものだ。その点、俺はさっぱりだから普通に思ったまま返せばいいだろう。

 

「スナヘビの絵ですよね?」

「スナヘビ……ですか。なるほど……」

 

 俺の回答を聞いて、ハッサク先生はなおも考え込むように唸った。

 いや、何も間違った事は言ってないと思うのだが。芸術家肌の人には妹の絵は一体何に見えてるんだろうか。

 ここまでハッサク先生の眼を釘付けにしているんだ。もしかして、妹って芸術面でも天才なのでは?

 

「どんな、スナヘビに見えますか?」

「はあ、どんなって……」

 

 再度の質問に、俺はその意図を勘ぐってしまった。

 まさかとは思うが返答如何で成績に影響があるとかじゃないよな。まぁだからと言って好成績になるような返答はできないので、さっきと同様の答えしかないのだが。

 

「普通に、“ドンファンを食べたスナヘビ”でしょう?」

「……そう見えますか」

 

 小さく呟いたハッサク先生は、再度スナヘビの絵を見つめた。

 え、なにこの沈黙。どういう意図?

 

「ありがとうございます。小生もまだまだですね」

 

 しばらく後、そう言ってハッサク先生は去って行った。

 何だったんだ、今の。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 季節はあっという間に過ぎていき、今年も課外授業がやってきた。

 

 その間は、それほど大きなトラブルは起きなかった。トラブルメーカーだと思っていた妹も、ずいぶん大人しく……はしてなかったみたいだが、俺にまで火の粉が飛んでくる事はなかった。

 

 で、課外授業前日である。

 例によって今年も何をするかは決めていないが、まぁ当日になれば決まるだろうとぼんやりその時を待つ事にした俺であった。

 

「わたくしはナッペ山の氷彫刻コンテストに出場する予定ですわ。ナッペ山ジムにお越しの際は是非ともわたくしの作品をご覧になって?」

「私は今年もモトトカゲカップに出る。出走するのはダート2800。それまではパワーをつける為にロースト砂漠でトレーニング」

 

 と、去年同様お前らは何すんのと訊いてみたら、このようなお返事。

 やりたい事が明白なのは羨ましい。

 

「キリは何かしたい事あるのか?」

「ん? アタシはねぇ……」

 

 続いて、夕飯の席で一緒していた妹にも訊いてみると、その意思は既に決まっている様であった。

 

「リーグ制覇かなぁ?」

「リーグか……」

 

 これまたデカい目標である。課外授業としては最もポピュラーな目標だが、その達成者は年に一人いるかどうかである。当然、狭き門だ。

 だが、妹はその気らしい。

 

「なるほどな」

 

 聞いてみると、悪くない選択かもしれないと思えた。

 バトルに自信のない俺だが、いつまでもそうは言っていられないだろう。リーグへの挑戦を経れば、相棒たち同様俺も成長できるかもしれない。

 相棒に相応しいトレーナーになるチャンスと見れば、やってみる価値はあるか。

 

「なら、俺もリーグ目指してみるわ」

「ふへへ、がんばってね」

 

 相変わらず、妹は上から目線だった。

 妹視点、自分以外全て下なのだ。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 パルデアポケモンリーグは、他地方のそれと同様に各街のジムを巡ってこれに勝利し、規定枚数のバッジを集めていく形式だ。

 で、全てのジムを突破した後にテーブルシティ北西のリーグ本部で最終試験を受け、四天王やチャンプを打倒して完了である。

 実にシンプルだ。

 

 しかしながら、前述の通りリーグ制覇者はごく限られている。

 凡そ半分のジムで約半数のトレーナーが諦め、後半からは一気にその数を減らす。で、そもそもリーグ本部に挑めるトレーナーがいない年だってあるというのだから相当である。

 

 正直、俺にリーグ制覇をできる自信はなかった。

 けれど、手持ちポケモンたちへの信頼はあった。

 我ながら、よく育てられていると思うのだ。

 

 存外、ジム巡りの旅は順調だった。

 苦戦しそうなジムはあったが、何だかんだドラゴンの地力でゴリ押しできてしまったのである。

 半分のジムを超える頃には、俺は俺なりのスタイルを確立していた。

 

 また、ジム巡りの道中は去年と同様に徒歩の旅だった。

 西へ行って東へ行って北へ行って……。

 相変わらず嫌な思い出を覚えがちな俺の脳みそでも、それなりに楽しい思い出を記憶してくれる程度には楽しいジム巡りであった。

 

 そんな中、去年は出くわす事のなかったいつもの二人とも会う機会があった。

 

 たまたま立ち寄ったモトトカゲレースの会場では、レース直前でピリついているアニスと会った。

 せっかくだからとパルデア伝統のモトトカゲレースを観戦する事になり、アニスの出るレースでは柄にもなく大声で応援してしまった。やっぱモトトカゲっていいわ。

 結果、アニスの乗ったモトトカゲが頭差で勝利。優勝カップを掲げたアニスに、俺も拍手を贈った。

 実際、良いモン見れた。

 

「リュウキ、見てくれてありがとう。お陰で勝つ事ができた」

「俺なんもしてねーだろ」

「ん、応援してくれた」

 

 ちょっと何を言ってるのかは分からなかったが、モトトカゲも胸を張っていたのでヨシとしよう。

 

 ナッペ山ジムでは、シンラと会った。

 シンラは三角ノミを片手に一心不乱に氷像を掘っていた。邪魔するのもアレかと思って通り過ぎようとした時、ちょうど一息ついたシンラと目が合ったのだ。

 で、休憩中のシンラと軽くお茶してすぐ解散。俺はジムへと挑戦した。

 その帰り、氷像の展示がなされていたので行ってみると、シンラの掘った氷像の周りには人だかりができていた。

 それは氷で出来たタルップルであった。休憩前に見せてもらったものより、活き活きとした作品に見えた。

 

「どうですこのタルップルは? あんなにも人目を集めていますわ!」

「うん、すごいすごい」

「何ですのその生返事!」

 

 俺に芸術だの美術だのは分からんが、シンラが如何に手持ちのタルップルを大事にしているかが伝わってくる作品ではあると思った。

 

 まぁそんな感じで旅なんかも満喫しつつ、俺は全てのジムを制覇する事ができた。

 

 最後のジムを突破する頃には俺の手持ちは全員最終進化を迎えていた。

 エースのドラパルト。

 技巧派のジャラランガ。

 特攻隊長のガブリアス。

 とんでも火力のカイリュー。

 頼れる筋肉のセグレイブ。

 サポート役のシャリタツ。

 このパーティで、四天王に挑む事になったのだ。

 

 

 

 四天王戦は、入念な事前の準備があって尚、苦戦の連続であった。

 挑戦者を迎える四天王たちは皆、強いというか、上手かった。俺のドラゴンたちの動きを制するような適格な指示を下し、絶妙なタイミングでこちらのやりたい事を潰してきたのである。

 しかし、ドラゴンたちはその全てを正面から打倒した。俺はその時その時に相棒が最も力を発揮できる技や行動を指示していた。上手くはないが、少ない手札の中では最善手だと思えた。

 苦戦はしたが、俺は四天王のうち三人を倒す事ができた。疲れてはいたが、心は絶好調だった。俺の手持ちのポケモンたちも、ガンガン行こうぜと張り切っていた。

 

「お久しぶりですリュウキくん。課外授業で会うのは初めてですね」

 

 そして、四天王最後の一人との戦い――ハッサク先生とのバトルがはじまった。

 ハッサク先生は俺と同様にドラゴンポケモンの使い手であり、キャリア相応に熟達した腕前の持ち主だった。

 トレーナーとしての差なんて、感じまくりであった。俺みたいなある意味ドラゴン頼りのトレーナーではない、真のドラゴン使いとしての技を見せつけられたのである。

 

「くっ……やりますね、リュウキくん!」

 

 けれど、意外な事に、俺にとってハッサク先生は与しやすい相手であった。

 こちらはドラゴン。相手もドラゴン。つまりドラゴン同士の真っ向勝負。どうにもこうにも居心地がよかった。

 竜の意が満ちた場で、俺の感覚は冴え渡っていた。そう、その時俺は絶好調で、先んじて相手ドラゴンの“意思”を感じ取る事ができていたのだ。

 

「シャリタツ、交代だ。行け、ジャラランガ!」

 

 故に、先読みができた。技も、息遣いも、その一挙一動に至るまで、俺は敵味方のドラゴンの全てを把握していた。

 トレーナー同士の戦いじゃ絶対勝てない。だから、俺は俺の相棒たちが戦いやすい状況を作り上げ、力を押し付ける作戦に出たのだ。

 作戦は上手くいっていた。ドラパルトのスピード。カイリューの火力。セグレイブの筋肉。これまでの積み重ねは、俺の付け焼刃を“せいなるつるぎ”に変えていた。

 

「ははは! 何だか若い頃に戻ったみたいですよ! 小生もまだまだ成長できる気がします!」

 

 けれど、その作戦は長くは続かなかった。

 後半戦。ハッサク先生は戦術を変更した。ドラゴンの意思重視でなく、トレーナーの指示重視に。多少効率が悪くなろうと、ハッサク先生はバトルに勝つ為だけの指示をするようになったのだ。

 アカデミーのハッサク先生でもなく、四天王のハッサクでもなく、ドラゴン使いのハッサクとして、俺のポケモンたちの前に立ちはだかったのだ。

 

「あぁ、負けたか……」

 

 そして、俺は負けた。

 

 純然たる実力差だ。ポケモンの能力は決して劣ってなどいなかった。これは、俺の指示が悪かったが故の敗北だ

 

「もっ……! 申し訳ありませんリュウキくん! つい熱くなってしまい、四天王としてではなく私人として貴方と相対してしまった! 何たる不覚! 何たるプロ意識の低さ!」

 

 バトル後、同じ四天王の人たちに叱責されたハッサクさんは、いつものハッサク先生に戻っていた。

 四天王やジムリーダーとは、優秀なトレーナーを育む為にある。要するに、本気で相手を叩きのめしてはいけないのだ。あくまで指導者として、バトルで以てトレーナーを導かなくてはならないのだ。

 それを考えると、本気で俺を倒そうとしたハッサク先生は、四天王失格なのだろう。

 

「いえ、本気で戦ってくれて、嬉しかったです」

 

 負けたものの、俺の心は存外晴れやかであった。

 負けには慣れているし、俺は俺がしょうもない人間なのを理解している。ここまで来れたのは十割手持ちたちのお陰だし、俺にしては上出来だと思っている。

 それに、ハッサク先生に本気を出してもらえたというだけで、それなりに誇らしい気持ちになれた。

 

「本っ当に! 申し訳ありませんッ!」

 

 まあ、言ってもハッサク先生はガチ謝罪してきたが。

 じゃあ単位くれよと言ったら真顔で断られた。

 

 

 

 俺がリーグ落ちした後、妹のキリノはチャンピオンランクのトレーナーになったらしい。

 四天王を倒し、チャンピオンを倒し、見事リーグ制覇を成し遂げたのだ。

 

「おめでとさん、やっぱ凄いな。キリは」

「まぁね。それよりさ、リュウ兄と勝負させてよ」

 

 アカデミーに帰ってきた妹を労うと、意外な事にバトルを申し込んできた。

 相変わらず、妹の考えは分からない。実りのあるバトルなど、俺相手じゃできる訳もないだろうに。

 

「いや、俺じゃ相手にならねぇよ」

「勝ち負けじゃないの。バトルする事に意味があるんだよ」

 

 そんな妹に押し切られる形で、人気のない時にひっそりバトルする事になった。

 

 まあ、予想通り俺は敗北した。

 ハッサク先生とは良い勝負ができたつもりだったが、やはり妹は格が違った。

 

「んー、リュウ兄はもっと自信持っていいと思うけどなぁ?」

「皮肉か? それ」

 

 ハッサク先生の時同様、悔しくはなかった。

 所詮、俺なんてそんなもんだ。妹のエースと比べて。個体としてはドラパルトのが強そうな感じこそあったが、やはりトレーナーの差はでかい。

 

 妹は、天才的なゴースト使いだ。

 せめて、ドラパルトだけでも妹に任せるべきじゃないか?

 ふと、そんな事を思った。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

「リュウキ様、あの……よろしければ、今度の長期休暇、フスベシティに行きませんこと? ほ、ほら、フスベはドラゴン使いにとって聖地みたいなとこありますわよね? 一回くらい行くべきなんじゃないかなぁとわたくしは思うのですけれど……」

「ん、リュウキは私とソウリュウシティに行く。あそこにはアカデミーにも無いようなドラゴン関連の古書がいっぱいある。それにウチのお抱えシェフはカントー食の達人、きっと気に入る。テーマパークに来たみたいな気分になるはず」

 

 で、いつもの授業に戻った訳だが。

 

 課外授業の後から、なんか二人の距離が前より近くなった気がする。

 それと、何か以前と現在では二人の目の色が違うようにも思えた。

 前はこう……同じドラゴン使い仲良くしようぜ的な感じだったのが、今は母が父を見ている時に近い様な……。

 

 気のせいか、二人ともいつもより呼吸が浅い気がする。

 フスベシティはシンラの故郷で、ソウリュウシティもアニスの故郷だ。そんなところに、何で俺を誘ってくるんだ?

 俺とて、人並に漫画や小説を嗜んだりする。その中には、ラブコメとか少女漫画とかも含まれる。そういう感覚がないではないし、憧れがないでもないのだ。

 もしかして、そういう事……なのか?

 

 

 

 ……いや、ないな。

 

 

 

 ちょっとリーグで良いとこまで行けたから、浮かれて勘違いしそうになった。

 俺は俺がしょうもない人間なのを知っている。さっき一瞬過った事など絶対にありえない。

 それによくよく考えろ。これまでの約一年の付き合いで、こいつらからそんな素振りあったか? いや、ない。

 

 だいたい、二人に失礼だろう。

 ……いやそれこそ今更だが。

 ともかく、俺みたいな奴にフスベやソウリュウのお嬢様がアレコレ想うなど、マンガの読みすぎである。

 

 なら、今のこの状況はどういう事なんだ……?

 

「も、もちろん、二人きりでとは言いませんわ。ちゃんと、リュウキ様の事は分かっていますもの……」

「ん、両者お話済み。リュウキを困らせたい訳じゃない」

 

 ……ん?

 

 二人の発言が、俺の記憶の隅っこを刺激した。

 その台詞、どっかで聞いた事があるような……。

 

「あっ……!」

 

 まさか、とは思った。

 けれど、なるほどなとも思った。

 そりゃ、素直には言いだし難いよな。

 

「リュウキ様?」

「リュウキ?」

 

 二人を見る。

 ちょっぴり顔が赤い。

 

 うん、そういう事だろう。

 恥ずかしいよな。俺がその立場ならめっちゃ緊張するもん。

 

「お前らさ」

「「はい」」

 

 鞄から、二冊の本を出す。

 それを、二人に差し出した。

 

「母さんのファンだったんだな」

「え?」

「ん?」

 

 俺の母は、社長で作家で投資家だ。

 そして、そんな母がつい最近出版したのが、三角関係をテーマとした恋愛モノの小説であった。

 なんか俺充てに送られてきたので読んでみたのだが、そのへんよく分からん俺にはシュールギャグ小説としか思えなかったんだよな。

 けど、世間ではまぁまぁ評判らしい。特に女性層から強い支持を得ているとか何とかで……。

 

「ほら、母さんの直筆サイン入りだ。ファンの子いたら渡してあげてねって言われたんだよな」

 

 確か、作中にさっき二人が言ったようなセリフがあったような気がするし、真似したくなるほどハマってるのだ。作者直筆のサインなんて垂涎モノだろう。

 それに、知り合いの親のファンだなんて言いだしづらいのは当然だ。

 

「あの……」

「えっと……」

「ん? あぁ名前書いてほしいなら頼んどいてやるよ」

 

 見ると、二人はひんしのクイタランを見るアイアントみたいな眼になっていた。

 なんでだよ。

 

「「……はぁぁぁぁ」」

 

 そして、二人同時にため息を吐かれた。

 なんでだよ。

 

「で、サインいらねぇの?」

 

 と訊いて見ると、

 

「お願いしますわ」

「私も」

「最初からそう言えばいいのに」

 

 まったく、素直になれない人ってのは面倒くさくていけない。

 その点、ドラゴンポケモンは素直でいいね。

 

「おっ、もうこんな時間か。ほぉらシャリタツー、水浴びの時間だぞー」

「オレスシー」

 

 その後、何故かシャリタツに水をかけられた。

 なんでだよ。 




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