【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 今回は日常回です。
 少し話が進む回でもあります。
 独自設定多めです。

 おいおい、また似たような事やってるよ。ちょっとやり過ぎたかもしれない。けどこういう形式が一番楽やったんや。
 先の事を書くにあたり、一応必要のある話ではあるんです。最後まで読んでいただければその意味が分かると思います。



【リュウキ編5】竜と才媛 ―刷毛職人の見地から―

「……あ、そうだ。俺明日フスベ行くんだったわ」

「「えっ!?」」

 

 長期休暇、俺は結局シンラとアニスの誘いに応じる事にした。

 まずシンラの故郷フスベシティに行き、その後アニスの実家のあるソウリュウシティにお邪魔するのだ。

 

 長期休暇開始翌日、妹共々実家に帰って夕食中、ふと思い出してその事を家族に伝えると、両親はあんぐり開口して驚いていた。

 

「え、何しに?」

「さぁ? なんかドラゴン関連云々がどうので、俺にもよく分からん」

 

 竜の穴とかいうトコで修行? するとか。

 アニスの家の蔵書読ませてもらう? とか。

 ぶっちゃけ、ただの旅行気分である。

 

「リュウ、事前準備の大切さをお前に教える」

 

 翌朝、出発の段になって父からひとつの箱を渡された。

 箱の表面には「安心安全! 厚さ0.01ミリ!」と書いてあった。父が腕組み仁王立ちでドヤ顔をしている。

 返却した。

 

「リュウくん、ママ応援してるからね!」

 

 父に続いて、母も俺に袋を渡してきた。

 袋の中には木箱があり、同封のメモ紙には「水に混ぜてね」と書いてあった。母が親指を立てている。

 返却した。

 

 その後もあれこれ渡してくる両親を無視して、俺とシンラとアニスは一路フスベシティへと向かうべく船に乗り込んだ。

 そういえば、家族以外とパルデアの外に出るのは初めてだった。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 船乗ったり飛行機乗ったりリニア乗ったりしてジョウト入りした俺たちは、〆にそらをとぶでフスベシティへとやってきた。

 フスベシティは山間の町だけあり高低差が激しく、人口の割に発展した感じはなかった。ただ、フスベの住民には富裕層が多い様で、立ち並んでいる家々はどれも大きく立派だった。

 全体的に古風で厳格、静かな空気のする町だった。

 

「さぁ、ここですわよ!」

 

 そんな豪華な家々の中にあってひと回り大きな豪邸がシンラの実家であった。

 門を潜って執事さんに案内され、ふんわり絨毯を踏みつつご当主ことシンラパパにご挨拶。事前にマナー本読んどいてよかった。

 

「ほう、君がリュウキ君かね。娘から話は聞いているよ」

 

 そうして対面したシンラの父は、温和そうな髭ダンディだった。その輪郭は圧倒的な金持ちオーラで覆われている。恐縮しながら社交辞令的なあれこれをすると、ナイスミドルな彼は人好きのする笑みを返してくれた。

 で、若輩の俺はシンラパパの老獪な話術にすっかり気を許してしまい、色々あって中庭でお茶をする事になった。

 

 シンラの家の中庭は、これぞ金持ちの家と言わんばかりに豪華な造りをしていた。

 庭園には映画でしか見たことのない建造物――フォリーというらしい――があり、その近くにはこれまた大きな人工池。よく手入れされた池にはミニリュウが泳いでおり、時折目が合うと人懐っこく近づいてきてくれた。

 

「ぎゅーるー」

 

 で、そんなこんな中庭でお茶をしていると、そこに一匹のカイリューが現れた。

 ずいぶん大きなカイリューだなぁと観察していると、シンラパパがドヤ顔で解説してくれた。

 話によると、このカイリューは先々代から受け継いだ家の守り神的なポケモンであるという。

 

「ぎゅる……?」

 

 件のカイリューはぼんやりした動作で近づいてくると、外部の人間である俺の匂いが気になったのか鼻を寄せてきた。反射的に思念を送ってみると、反応して送り返してくれた。

 そのままカイリューとお話していると、どうやら首の付け根が痒いらしいので掻いてやる。

 

「な、なんと……あのカイリューを手懐けているとは……!?」

 

 と、シンラパパが驚いていたが、別に手懐けてなどいない。「ここ痒いから掻いて」と言われたからそうしているだけだ。むしろ初対面の人間にこんな事頼めるカイリューのがよっぽどである。

 そのまま勢いで全身ブラッシングをしてやると、カイリューは心地よさそうに眠ってしまった。

 カイリューも満足したところでブラッシング終了。そしたら、なんかいきなりシンラパパが重々しい声色になって語り始めた。

 

「最近、カイリューの様子が変なのだ」

 

 あれ? こんな展開前にもなかったっけ? と思いつつ聞いてみると、どうやら最近のカイリューは昔と比べて元気がないらしいのだ。

 医者に診せても分からずじまいで、やはり年齢的なものだろうとの結論。だが、ドラゴン使いであるシンラパパにはどうにも違う気がしてならないと。

 

「君は、このカイリューをどう見るかね?」

 

 どう見るも何も、医者の言ってる通りだとは思う。実際このカイリューは結構高齢だ。

 けれど、確かにこのぬぼーっと感は老衰のそれが全てとも思い難いのは分かる。実際、全身の筋肉はがっしりしているし、翼の張りも良い。思念からしてボケてる感じもないし、元気がない理由がないのだ。

 ぶっちゃけ分からない。

 

「ん、ご飯は食べてるんだよね?」

「ああ。好みも栄養も、すべてを考慮した食事を与えているつもりだ。食も細くない」

「わたくしが小さい頃からカイリューでしたものね。仕方ないのかもしれませんわ……」

 

 四人であれこれ話していると、ぐぅぐぅ眠っていたカイリューが目を覚ました。

 それから、のっそりと起き上がると大口を開けて欠伸をした。我が家のバンギラスがよくやる行動だ。

 

「あ……」

 

 ふとカイリューの様子を見て、ひとつ気が付いた事があった。

 三人に了解を得てから、俺のボールからカイリューを出してみる。すると、俺のカイリューはバトルかと身構えて臨戦態勢を取った。シンラ家のカイリューも、一瞬だけ俺のカイリューに目をやって、ぷいと逸らした。

 で、だいたい分かった。

 

「明日、このカイリューとバトルさせて頂けませんか?」

「え? それは構わんが、僕は明日忙しくてね……。シンラ、頼めるかい?」

「は、はい! 畏まりましたわ!」

 

 という訳でふかふかベッドで眠って翌日。

 俺とシンラはフスベにあるバトルコートで向かい合っていた。お互いの前にはお互いが持つカイリューが立っている。

 俺のカイリューはバトル前の高揚で身を震わせているが、シンラのカイリューは審判のアニスにおやつを要求していた。

 

「ん、もうはじめていい? じゃあ、はじめ!」

 

 投げやりな開始宣言。

 俺はやる気満々のカイリューに、初手“りゅうのまい”を指示した。対するシンラカイリューはぼんやりそっぽを向いている。トレーナーの指示を聞いていない。

 能力を向上させたカイリューに、俺は……。

 

「暴れてこい」

 

 そう命じた。

 指示を聞いたカイリューは技もへったくれもなく突貫し、そっぽを向いているシンラカイリューに猛烈な右ストレートをぶちこんだ。これにはたまらずのけ反る……と思いきや、シンラカイリューは微動だにしていない。

 フック! フック! ボディブロウ! ストレート! 野生と比しても粗暴に過ぎる攻撃を続ける俺カイリュー。対し、シンラカイリューもちょっとイラついてきたのか次第に腕を上げて攻撃を防御し始めた。

 

「ぎゅる! ぎゅる! ぎゅるるー!」

 

 一発、二発、防御の隙間を縫って攻撃がヒットする度、シンラカイリューの眼が鋭くなっていく。怒りのボルテージが上がっている。

 

「ぎゅるぁ……!」

 

 やがて、カイリューが大振りの攻撃を放たんとした瞬間、鋭い身のこなしで半回転したシンラカイリューの尻尾が俺カイリューの胴体にぶち当たった。

 重量物同士がぶつかる鈍い音。俺のカイリューはあまりの威力に膝をついた。そこにすかさずシンラカイリューの左フックが炸裂。

 俺カイリューは数歩後ずさって、ばたりと倒れた。

 

「え? あ……勝者、シンラのカイリュー?」

 

 技でも何でもない、生身の攻撃二発。俺カイリューは、たったそれだけの攻撃で倒れてしまった。

 バトルに勝ったシンラカイリューは、むふぅと荒い鼻息を吹いた。その眼は歴戦のドラゴンらしい威厳に満ち、戦いの熱に燃え盛っていた。

 

「え? これわたくしの勝ちですの?」

 

 アニス同様、置いてけぼりになっていたシンラは困惑していた。

 

 最近、元気のなかった高齢カイリューくん。

 そこに、特にこれといって複雑な理由はなかった。

 要するに、あまりにも強いこいつにはまともに戦える相手がおらず、退屈していただけなのだ。我が家のバンギラスと同じように。

 

 その事を帰ってきたシンラパパに説明すると、実際最近はあんまりバトルもなく、たまにやる時も一族の会合の時などにちょっと流す程度に出張る程度であったと言っていた。

 むべなるかなと、シンラパパは唸っていた。

 

「リュウキ君、君のお陰でまた元気なカイリューに戻ってくれたよ! ありがとう、何とお礼を言えばいいか!」

 

 と、シンラパパには感謝されたが、多分明日からの彼は困る事になる。

 何故ならば……。

 

「ば、バクガメス戦闘不能! シンラ? の勝ち!」

「ばっ、バクガメスー!」

 

 例のバトルの後からシンラカイリューの戦闘意欲が蘇ったのか、俺等がフスベ滞在中事あるごとに「戦え……戦え……」と恐ろしい思念を送ってくるようになったのである。

 当然、俺のカイリューを二発で沈める様な化け物カイリューの相手になるポケモンなどそういるはずもなく、俺たちは持てるポケモンを総動員してシンラカイリューの相手をする事になった。

 

「え、これもわたくしの勝ちですの? わたくし何もしてませんが」

 

 まぁ何だかんだ戦いを楽しんでいた俺の手持ち達や、ちょっとマゾの気のあるバクガメスはともかくとして、当のシンラは困惑しきりであった。

 

 

 

「リュウキ君、アカデミーではくれぐれも頼んだよ」

「ぎゅるー」

 

 そんなこんなで、一応の目的であった竜の穴での修行を行う事なく毎日カイリューの相手をしていたら、いつの間にかフスベを去る時がきた。

 帰り際、シンラパパから痛いくらいの握手をされた。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 山間にある静かなフスベシティと比べ、ソウリュウシティの雰囲気は華やかな感じがあった。

 石造りの道路は歩行者が多く、噴水前の屋台では伝統的なイッシュ菓子が売られていた。タウンマップの説明通り、ソウリュウシティは街全体が昔の物を大切にしている様だった。

 

 アニスの実家は、そんな街の外れにあった。

 例によってとんでもない豪邸。規模的にはシンラ家と同じくらいだが、頑丈そうな造りは実にイッシュ的であった。

 通されるまま門を潜ると、ゴルフ場みたいな広さの庭の奥から一人の女性が歩いてきた。

 

「あら、アニスちゃん帰ってたの?」

「ん、姉さんは今から仕事?」

「そう、ヒウンまでね」

 

 近づいて見ると、その女性はアニス同様褐色の肌をしていた。会話の内容的に姉である事が分かる。アニスより背が高いが、アニスと同じくらい身体が細い。血の繋がりを感じる。

 

「ふぅん、君がリュウキ君か」

「な。なんでしょう……?」

 

 で、話を振られて挨拶しようとしたら、ずいと接近してきたアニス姉は俺の耳元に顔を寄せ、首の後ろの匂いを嗅いできた。

 

「……へぇ、良い匂いだね。君、私と結婚しない?」

「姉さん!」

 

 突然の求婚発言に固まる俺だったが、そんな姉を妹の体当たりが制した。

 

「んはは、まぁ半分しかマジじゃないから。あんま気にしないでね~」

 

 そう言うと、アニス姉は去って行った。

 門を出る後ろ姿は颯爽としていた。思考も歩行も決断も“はやい”人だ。

 

「相変わらずですのね、あの方は」

「知り合いなのか?」

「ええ、まあ」

 

 シンラとも顔見知りであるらしい。

 

「姉さんは変人なの。気にしないで」

 

 変人のアニスが言う程だから、それはもう変なのだろう。

 

「はじめまして。リュウキ君だね? 孫から話は聞いているよ。まぁゆっくりしたまえ」

 

 で、案内されて客間へ。

 シンラ家と同様当主のおじい様と話をする。名家の人というのはお話が上手なのか、ちょっとコミュ力に難のある俺とも円滑にコミュニケートしてくれた。

 どうやらこのおじいさんがアニスの言っていた「同種ドラゴン5匹持ちのおじいちゃん」であるらしく、彼の膝には一匹のキバゴが乗っていた。

 

「ええ、構わないよ。我々としても、若いドラゴン使いの方には是非とも知っていてほしい知識があるのでね」

 

 少し話をして、目的であった古書の閲覧許可を得る。

 とはいえもう遅いので各々客室に行き就寝。これまたふかふかのベッドでおやすみである。

 

 翌日、俺たちは予定通りアニスの一族が管理している古書を読みに行った。

 行ったと言っても、その保管場所はアニス家の地下にあり、中は厳重に管理され電子機器やモンスターボールの持ち込みはNGであった。

 

 さて、アニスの案内で件の古書を数冊借りてその場で読み始める。

 内容は伝記モノが多く、その時私はこうしたとか、こういう事があってああいう事になったんだよ的な内容が主であった。勉強というより、歴史小説でも読んでいる気分である。

 けれど、ただのご当主日記とは訳が違った。その中には、あまりネットや論文に載っていない様なドラゴン豆知識みたいなのが沢山書いてあったのだ。

 

 中でも俺が気になったのは、“竜の心を読む英雄”なる人がアニスの一族の初代党首であるという記述であった。

 というのも、竜の心なんてドラゴン使いなら皆ある程度読めるもんなんじゃねぇのと思った為だ。

 ……いや、俺は一方的な意思の受信はハッサク先生と戦った時しかできなかったか。確かに、常時あれをできるのであれば英雄だろう。さすがご先祖である。

 

 あと、伝記の中にアニスの一族とオノノクスの関係がピックアップされた章があり、そこも興味深いところだった。

 曰く、アニスの御先祖様は何やかやあってオノノクスと固い契約を交わしたとかで、代々一族の当主はオノノクスを盟友として遇し、オノノクスはその力で一族の敵を倒すとか何とか……。

 

「アニス、お前すごい一族の末裔だったんだな」

「ん、らしいね」

「わ、わたくしの一族もそういう系のお話ありますのよ? 口伝ですけれど……」

 

 まぁそんな感じで、ソウリュウシティ滞在中は読書と食事と就寝の繰り返しで、割とインドアなとこのある俺からすると充実した日々が過ぎて云った。

 あとアニスの言う通り、シェフさんのカントー食はべらぼうに美味かった。これだけでも来てよかったと思える。まるでテーマパークに来たみたいだぜ。

 そして何より、アニス家にいるキバゴたちが可愛い。オノンドも可愛い。オノノクスも複数いて、俺からしたらアニス家は夢のドラゴンハーレムであった。

 中庭で手持ちポケモンをブラッシングしている時など、キバゴたちが列になってブラッシングを要求してきたのだから実にキュートである。その時は結局全員磨いてやった。お世話係さんの仕事奪って申し訳ない。

 

 そんなある日、中庭の噴水エリアを借りてシャリタツをを泳がせていると、そこに当主のおじいさんがやってきた。

 少し話そうというのでおじいさんと一緒にキバゴのお手入れなどしながら世間話をする事に。

 

「……アニスはね、我が一族の星なんだよ」

 

 なんか盛大な事言いだしたぞと思って驚いたが、つまりこういう事らしい。

 代々オノノクス使いの一族として続いてきたアニス家だったが、どうやらおじいさんの息子であるアニス父には全く素質が遺伝しなかったそうで、その父の子であるアニス姉もドラゴン使いとしての才能は遺伝しなかったらしいのだ。

 で、そんな中生まれて来たのがアニスであり、アニスは一族の中ではまぁまぁそれなりの才で以て歓迎されたのだとか。

 

「嘆かわしい事に、分家の中には今すぐアニスに婿を取らせるべき……という人達がいてね。ほら、ソウリュウは昔気質だろう? それが悪いとは言わないが、本人の意思や夢をないがしろにする伝統というのは、私には残酷に思えてならないんだ」

 

 で、そういうのから遠ざける為に、ほとんど無理矢理アニスをアカデミーに留学させたのだという。

 それでも彼女の未来には高い確率で一族の運命が背負わされると……。

 

「実感し難いかもしれんがね。他タイプと違い、ドラゴン使いの才というのは遺伝によるところが大きいのさ。君の様な存在は、希少なんだよ。それに、近年ではどこも跡取り問題が深刻でね。シンラくんの所もそうなんじゃないかな」

「そうなんですか」

 

 おじいさんの話を聞いていると、顔にこそ出さなかったが俺はちょっぴり不快な気持ちになっていた。

 才能、遺伝、跡取り……そういうワードを聞くと、俺の中に言語化できない負の感情が蓄積していくのが分かった。

 

「これも押し付けと言われればそれまでだが、アニスには自由に恋をして、好きな人と結ばれてほしいと思うんだ。なにせ、私がそうだったからね」

 

 言うと、おじいさんは茶目っ気たっぷりに微笑んだ。

 その笑顔を見て、俺の心にあったもやもやは少し晴れた。

 ドラゴン使いの一部を嫌いになりかけたが、このおじいさんの事はいっそう好きになった。

 

 

 

 時が過ぎ、ソウリュウを去る前日、ちょっとした事件が起きた。

 一族お抱えのポケモンお世話係さんが、いつものお世話中にオノノクスに攻撃されてしまったのだ。

 幸い大きな怪我などはなかったそうだが、攻撃を受けた彼はひどくショックを受けている様だった。

 

「俺が子供の頃は、あのオノノクスはもっと素直に言う事を聞いてくれたのに……」

 

 彼が言うには、つい最近までは父親と一緒にこの家のポケモンのお世話をしていたらしいのだが、父親が引退してから急にポケモンたちが粗暴になったのだという。

 おろおろする執事さんメイドさんシェフ等々は、みんな当主のおじいさんの周りに集まってちょっとした騒ぎになっていた。

 

「あの人ら、何やってるんだ……!」

 

 おじいさんを中心にガヤガヤしているアニス家の皆さまを置いて、俺は困惑しているオノノクスに近づいて「大丈夫だよ」「安心してね」と言って落ち着かせた。まずこの子を落ち着かせるのが先でしょうがと。

 部外者がこういうのに首突っ込むのはどうかと思ったが、この中で一番のドラゴン使いであろうおじいさんが家人にもみくちゃにされて動けないんじゃ仕方ない。

 で、オノノクスに話を聞くと、そう大した事でもなかった。

 

「あの……すみません」

「な、なんだい?」

 

 俺は腕に氷嚢を当てている件のお世話係さんに話しかけた。

 別に、誰が悪いとかではなかったのだ。軽く説明して、パパッと解決できる程度の話である。

 

「あの、貴方もある程度戦えるポケモンを手持ちにしてたりします?」

「ん? あ、まあ、俺もこの一族に仕える家の人間だ。オノノクスほど強くはないが、ムーランドならいるぞ」

「そうですか。じゃあ、あのオノノクスと戦わせてみてください」

「……はぁ?」

 

 まあ、事は簡単だった。

 要するに、この家のオノノクス達が認めているのはあくまでお世話係さんの父上であって、お世話係さん本人はまだ認めていないから言う事なんて聞かないぜという事らしかった。

 

 結局、無理矢理お世話係さんのムーランドとオノノクスを戦わせてみて、ある程度の力を示す必要があったのだ。

 その事をおじいさんに説明すると、

 

「君、父上から聞いてなかったのかい? 我が一族の習わしだろう」

「す、すみませんでした!」

 

 今回のこれは、上手く知識を継承できなかったのと、新しい人が古の風習を蔑ろにしていたが故に起こった事故であった。なんじゃそりゃと思われる事が多いのも、ドラゴンポケモンが特別視される所以である。

 その後、バトルで分かり合ったお世話係さんとオノノクスは、以前と同様仲良し関係に戻れたらしい。

 

 

 

「ありがとうリュウキ君。君のお陰で、大きな問題にならずに済んだ」

 

 翌朝、ソウリュウシティを発つ俺たちを、おじいさんを中心とした家人一同でお見送りしてくれた。

 別れ際、おじいさんとはちょっと痛いくらいの握手をした。

 

「アカデミーでは、アニスの事をよろしくたのむよ」

 

 あと、それと同じ時期にアニス姉が帰ってきて、再度俺の匂いを嗅いできた。

 

「ふぅん? やっぱ良いね、君。何でもいいけどさ、ウチに来なよ。相応の待遇を約束するよ」

 

 と言って、連絡先を渡してきた。

 その瞳には、俺を値踏みするような色があるように思えた。

 

「リュウキ、姉は欲しいモノは絶対手に入れる主義。連絡しちゃダメ」

「まぁしねぇけど」

 

 なんか、あのお姉さん怖いし、あんま関わりたくはないなと思った。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

「リュウキ様、貴方の事は調べさせていただきました」

 

「父は彼の有名なポケモンレンジャー。母は優秀なゴースト使い。それと、貴方の姉君は旅先で捕まえたサザンドラを使いこなしているとか……。何より、自覚はないようですが貴方自身の才能……」

 

「類稀なる貴方の血、他の一族が放っておくとは思えません……」

 

 ある日の放課後、人気のない場所で見知らぬ女性に話しかけられた。

 その人は、ハッサク先生の実家から来た使いの者であるという。

 そして、彼女はこう言った。

 

「良いご縁談がございます。どうか、話だけでも……」




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