【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告、とても助かっています。
ちょうどいいところで切りました。
多分、今回くらいの文量がちょうどいいのかなと思います。
「ら、ラウドボーン! 戦闘不能! キリノ選手の勝利! 優勝はキリノさんです!」
課外授業の後、チャンピオンクラスとなったアタシはアカデミー主催のバトル大会に出場し、これに優勝した。
アタシが出たのは6匹フルメンバーの部で、そこにはアカデミーの先生や現生徒会長さん――彼もチャンピオンクラスである――も出ていたが、アタシは全ての対戦相手を打倒し、決勝ではクラベル校長と戦って勝利した。
リーグ制覇に続き、今度はアカデミーの頂点に立ってみた訳だ。これにより、アタシはアカデミーで今最も熱い生徒となった。
もはやアカデミーでアタシを知らない生徒はいない。何処へ行っても注目されるし、何を言っても成功者の格言と扱われるようになった。所詮法的効力のないアタシの行動・言動はしかし、見えない力となって生徒たちに影響を及ぼす程となったのだ。
予想通りだ。バカな人は強い人の言う事やる事を真に受けちゃうのだ。そして強くてバカな人はその状況に酔い、やがて暴走する。そうして崩壊した国や組織は枚挙に暇がない。事実、毎日のようにSNSでどこぞの強いバカが炎上しているだろう。
人気、人望、あるいはカリスマ。名前は何でもいいが、アタシはアカデミー内でのみ通用する見えない力を手に入れ、これを行使せずただ君臨した。お陰でアカデミーは今日も平和だ。アタシは酔うバカではないが、酔わぬと言い切るほど愚かではなかった。
目的は果たした。抑止力を手に入れたのだ。これ以上はいらない。過ぎたるは及ばざるが如し……ンッン~、名言だなこれは。
今や、アカデミーの生徒でアタシに盾突く奴はいない。
課外授業でアタシにちょっかいかけてきた奴も鳴りを潜め、プッツンきてガチ犯罪をやらかした生徒の中には自主退学した生徒もいた。させた、とも言えるか。
それもこれもアタシが仕組んだ事で、煽り煽られたから起きた事だ。罪悪感とかないんかとか言われても、さっぱりだ。確かに誘導したのはアタシだが、乗ってきたのは当人である。彼ら彼女らには何もしないという選択もあったのに、それをしなかった。ルールを破ったのはあちらであり、ルールを逸脱しなかったのがアタシだ。過程がどうあれ、殴ったのはあっちで、殴られたのがこっち。どこに自責の念を感じる要素がある。
人は結果により判断されるものだ。どれだけ殺人欲求を持っていても人を殺さない危険人物と、全くの平和主義ながらカッとなって人を殺してしまった善人。当然ながら、裁かれるのは後者である。
つまり、実際殴った方が100パー悪い。例えアタシが罪に問われたとしても、殴ってないから軽傷だ。人生、死ぬ事以外かすり傷みたいなもんである。
また、アタシ一強の平和状況は特進クラス内こそ顕著であり、アタシを中心とする――チャンプになると決めた時点で覚悟の上ではあったが、無論のこと意に反する――Aグループはクラスの上位カーストとなり、以前までアタシに敵対していたBグループはその数を減らして大人しくしていた。Cの子は一人だ、多分この子らが一番賢い。
AとBの溝は深まったが、かつてのバチバチ感は薄れた。仲良くとはいかないが、クラスを統べるのが平和主義のAである。派閥争いに一応の決着がついたとでも言おうか。
そんな中、Bでも未だメラメラ燃えてる人らもいた。相変わらず、件の優男ドラゴン使いマント君からは“にらみつける”を頂戴している訳だが……いい加減、過去は忘れて生きたほうが楽だと思う。
概ね予想通りで、理想的な状況を作る事はできた。
けれど、誤算もあった。不可解で、不愉快な誤算だ。
先述の通り、クラスはそんな感じで穏やかなものとなったのだが、それ以外でのアタシのアカデミー生活は一転、アタシにとって不快な環境に変容してしまった。
廊下や食堂で注目されるのは別にいい。有象無象の視線などアタシの精神に何の変化ももたらさない。けれど、アタシではなくアタシの友達にはそういった視線を嫌う子がいたのだ。分からせリスト制作に協力してくれた、オタクくんと情報屋ちゃんである。
浴びせられる視線を嫌った二人とは、一緒にご飯を食べる機会がなくなってしまったのである。それに寂しさを感じてしまったあたり、アタシにとって二人は大切な存在になりかけていたのかもしれない。
そうしてできた隙間に入り込むようにして、名前も知らない生徒と同席したりする機会が増えた。拒否するのも面倒だったので無視していると、そいつらときたら何か知らんがアタシにアレコレ話しかけてきてクッソ鬱陶しかった。ギャルちゃんの助け舟がなければ、終いにゃそいつらにスープをぶっかけていたかもしれない。
やはり、友達は少数精鋭に限る。
同じくリュウ兄たちとお食事する時も、以前にもまして人目を引くようになってしまった。
リュウ兄は居心地悪そうにしていた。気にするなと言ってやりたかったが、それをできない人には言えない。人間、無理なものは無理なのだ。
できれば毎日でも一緒にいたかったが、そういう事もありリュウ兄とはあまりご飯を食べないようにした。
家族愛の為に、我が心を抑えて家族を大切にする選択をしたのだ。
何も、リュウ兄を傷つけたくてチャンプになった訳じゃない。
計画は上手くいったが、アタシへのダメージは大きかった。
見られる事に報復はできない。煩わしいが、甘受すべきだろう。
● 〇 ●
長期休暇である。
嫁候補たちのしつこいお誘いもあり、結局リュウ兄はシンラアニスの実家があるフスベとソウリュウに行く事となった。
既に作戦の成否は二人から聞いていたので、二人にはお祝いとしてリュウ兄の好みの女性像を教えておいた。うぶな二人は顔を真っ赤にしていた。良かったな、どっちも脈ありだぞ。
リュウ兄が出かける朝、アタシは兄に抱きついて最後になるかもしれない童貞臭を胸いっぱいに吸い込んだ。
父と母はそれぞれ兄へ贈り物を渡していたが、そんなんじゃ甘い。賢いアタシはシンラとアニスに両親が兄に渡していたのと同じモノを贈っておいた。
実に出来た妹だろう。上手くいけば、休み明けの兄はタイプ・ワイルドになってるはずだ。上手くいけば、の話だが。
さて、兄が去った後、我が家も久しぶりに旅行に行こうぜとなった。
行き先はどうしようと考えていた時、ちょうどマリナードタウンにサントアンヌ号が停泊するとの情報を訊き、急遽チケットを購入する事にしたのだ。
とりあえずカントーまで行って、ちょっと観光して帰ろうとなった。計画性? 知らない言葉だ。
「え? き、キリノちゃん!? キリノちゃんやんな!? なんたる僥倖! 宿命! 数奇!」
「そう言う君はロモジちゃん!」
で、サントアンヌ号で、アタシは運命的な再会を果たした。
スクール時代唯一の友達、ロモジちゃんだ。彼女も長期休暇中にサントアンヌ号に乗っていたのだ。お互いネットでの付き合いは保っていたが、こうしてリアルで会うのは久々だ。
久しぶりに会ったロモジちゃんは、以前より明るく話すようになっていた。あと、アタシよりずっと大きくなっていた。同い年とは思えないくらい背が高く、肉付きも良くて全身がムチッとしている。どうやら既に二次性徴を迎えているみたいだ。
けれど中身は相変わらずで、会話の内容も「今期何観てる?」等のオタクトークが主であった。
「出ておいで、タクちゃん」
「ぬぉ!? こ、これがモノホンのパラドックスポケモンちゃんか! はえー、すっごいカワイイ……」
「あ、不用意に頭撫でると噛むよ」
「いぎゃー! 先に言うてぇな!」
再会したアタシたちは、船内でずっと一緒だった。
綺麗な海の上、アタシたちは色んな話をした。アタシはアカデミーで起こった事やチャンプになった事や課外授業でやらかした事などを話した。
ロモジちゃんはスクールで友達ができたと言っていた。曰く、アタシのお陰でコミュ力がついたのだと。嬉しい事言ってくれるじゃないの。
「え、ちょ待って! 今の写真もっかい見せて!」
「ん、いいよ?」
そんな中、アタシがスマホで撮った写真を見せてると、何気ない一枚にロモジちゃんが強く反応した。
それは教室で撮った奴で、ギャルちゃんが勝手に撮ったアタシの居眠り写真だ。盗撮犯曰く、休み時間で眠ってるアタシが堂々とし過ぎてて面白かったとの事。
「これ! この人! この人だれ!?」
ロモジちゃんが指差したのは、背景に映っていたドラゴン使いの優男マント君であった。
その事を教えると、ロモジちゃんは顔を赤くして色々訊いてきた。
「イケメンでドラゴン使いで頭ええなんて……そんなんズルやん、チートやチート! チーターや! ひょえー!」
まあ、何となくロモジちゃんが好きそうだなとは思ったが、それはあくまでオカズとして好きそうだと思っただけで、実際こんな普通? の女子みたいな反応をされるとは思ってなかった。
ロモジちゃんは、どう見てもそういう目をしていた。ママがパパを見る目。シンラアニスが兄を見る目である。
マジかよ、となった。彼の人格も知らぬのに、惚れてしまったらしい。
「はぁ~! ほんまかっこええ~! なな、その写真送って送って!」
「いいけど」
大事なのは中身! とも、人は見た目が10割! とも言う気はないが、いずれにせよ一つの要素だけで他人を好きになるなんてナンセンスだと思う。
結局、知り合うなり友達なり恋人なりで関係性を構築し、時間をかけねば意味がないと思うのだ。今のロモジちゃんはアイドルを見てきゃーきゃー言ってるのと同じで、関係性を構築する前から自分の中でイマジナリー彼ピ優男マント君を作ってしまっている。ちょっと怖いが、楽しそうではある。
ロモジちゃんが幸せなら何でもいいが。
「決めた! ウチもアカデミー入る! そんで、この人と付き合う!」
「えぇ……!?」
それを聞いて、アタシはびっくりした。
奥手なはずのロモジちゃんが、凄いアグレッシブな事を言いだしたのだ。ついでにそこまでさせる恋のエネルギーにも驚いた。理性を疑っちゃうほど、今のロモジちゃんは最高にハイになっている。
実現可能性が未知数な目標だ。全くもって理解できない。けれど、彼女はそんなモノに全身全霊で挑もうというのだ。勇者、勇者である。絶対真似できない。したくもない。
まあ、やってみなきゃ分からないとも思うので、達成不可能ではないとは思うが……。
「キリノちゃん! ウチがアカデミー入ったら、この人紹介してぇな!」
「う、うん」
それに、何だろうねコレ。この胸のざわめき。
別にアタシはロモジちゃんに恋愛感情など持っていないし、第一ロモジちゃんはアタシのじゃあないんだが……。
アレだ。うん、多分アレだ。
マント君に、ロモジちゃんを、寝取られたような気がしたのだ。
やな感じである。
● 〇 ●
「キリノさん、君の事が好きだ。婚姻を前提に、僕と交際してほしい」
長期休暇明け、アタシはマント君に告られた。
ちょうど、ロモジちゃんの為に彼の情報を集めていた時の事である。呼び出されて、人気のないところで、何故か交際を申し込まれた。
念の為、普段は制限している読心術を使ってみると……彼はマジだった。マジで、コイツはアタシに好意を抱いていた。
正直、わけわかめだった。
アタシ、君にめっちゃ恥かかせたよね?
めっちゃボコしちゃったよね?
そもそも、ろくに話した事なかったよね?
「えぇ……?」
恋は人を愚かにするとよく言うが、まさにそれだ。
こいつ、頭おかしくなったんじゃねぇの?
ロモジちゃんも、マント君も。
全くもって理解に苦しむね。
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