【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告、いつも助かってます。感謝です。
多分、次でキリノ編は終了です。
無駄に長くなりましたね。
最近、兄の様子が変だ。
リュウ兄が変なのは今に始まった事ではないが、何かいきなりポケモンバトルに積極的になりはじめたのだ。
元々、兄はバトルには消極的なトレーナーだ。そんな兄が勝てるようトレーニングを始めた。放課後は技や連携を訓練し、バイトをした金で栄養剤を買い、休日は近くのテラレイドに参加したりしていた。
おかしいし、何かがあったのだろうとは思う。いくら何でもヤバげな宗教にハマってるなら止めるし、脅迫とかされてるのならカチコミする用意がある。けれど、それが兄にとってプラスになってるのかマイナスになってるのか分からなかった。
見るに、心身を削っている訳ではなさそうだし、別に闇堕ちしているとかではなさそうだが……。
ちょっと、痛々しいと思ってしまった。
一心不乱にトレーニングするリュウ兄が、そんなに幸せじゃなさそうだったから。
助けて欲しいと言うなら、いつでも助けてあげるのに。
「てなわけで! お姉ちゃんもアカデミーに入学しました!」
リュウ兄が変になってしばらく、アカデミーにカヤ姉がやってきた。
聞くに、パルデアに来たのもごくごく最近の事であり、入学も突発的な行動によるものだという。
「ねぇねぇカヤ姉! バトルしようよバトル!」
「うん! お姉ちゃんにかかってきなさい!」
ともあれ、大好きなカヤ姉が帰ってきたのは普通に嬉しい。
アタシは割とパンパンになっていたスケジュールに半ば無理矢理カヤ姉の時間をねじ込む事にした。これからは定期的にカヤ姉成分を補給できる。とても健康に良い。
負けてしまったが、姉とのバトルは楽しかった。やっぱり、こういう対戦は自分が負ける相手と戦るのが一等楽しい。
またバトルしたいものである。
「カヤノさーん? こっちこっちー!」
「うん、今行くー! キリちゃんまたね!」
「うぃ!」
ややあって、カヤ姉はすぐにアカデミーの人気者になった。
流石のコミュ力であり、カリスマだ。文武両道で皆に優しいのだ。人気が出ない訳がない。
リュウ兄やアタシに敵意ビンビンなドラゴン使いズも、どうにもカヤ姉には攻撃性を向けられないらしい。サスガダァ……。
やっぱり、カヤ姉は凄い。
そんな姉に、リュウ兄は何故かコンプレックス感じちゃってるらしいが、それこそアタシには分からない。
本当に欲しいものが分かってない人は、多くを持ってる人に憧れちゃうものなのだ。
● 〇 ●
「ロモジちゃーん!」
二年生になった。
「キリノちゃーん!」
新入生が入って来た。
「「会いたかった~~~!」」
アカデミーに、ロモジちゃんがやってきた。
大都会テーブルシティはド真ん中で、アタシとロモジちゃんは手と手を取って再会を祝った。
去年の長期休暇以来、久しぶりの再会である。時折、オンライン上でお勉強を見てあげた甲斐あって、ロモジちゃんは無事アカデミーへと入学できたのだ。
「ロモジちゃんまた大きくなった? 何食べたらそんなに大きくなるの?」
「特には! キリノちゃんこそおおき……くなってないな! 2㎝くらいしか伸びてへんのちゃうか!」
「3㎝伸びてますー!」
二人、アカデミーで抱擁を交わす。そしてロモジちゃんはシームレスにアタシを持ち上げてみせた。気分は名作カエンジシ・キングの冒頭のシシコ王子である。
久しぶりにあったロモジちゃんは、前にもまして大きくなっていた。身長は同い年の男子を余裕で超えていて、初対面の人には童顔の大学生に見えるだろう。
アタシと並ぶと身長差がエグい。目算20㎝差くらいありそう。
「同じクラスちゃうけど入れてよかったわ! ホンマありがとうなぁキリノちゃん!」
「元々ロモジちゃんが特進クラス入れるなんて思ってなかったよ。そうじゃなくてもギリギリだったのに」
「ははは! 素直さは時に人を傷つけるんやで!」
元来、ロモジちゃんは趣味以外に情熱を傾けられない類の人種だ。にも関わらず、決して好きでもない勉強を頑張ってこれたのは、偏に件の想い人に会いたいが為であった。
なんたる行動力、なんたる原動力だろうか。動機はともかく、その勇気と根性には敬意を抱かずにはいられない。
と、いう訳で。
「はい、こちらアタシの親友のロモジちゃん。仲良くしてね」
「え……?」
早速、アタシはロモジちゃんとマント君を引き合わせる事にした。
やり方は単純。教室にいたマント君に近づいて「放課後空けといて」「待ってるから“まいど・さんど”に来て」「マント脱いでおしゃれしてきてね」の三連コンボで呼び出したのだ。
ロモジちゃんには普通にメッセージ送って来てもらった。日和ってたが、放課後凸って引っ張ってきた。
「は、は、はっ! はじめまして! ろろろろロモジ言います! 末永く宜しくオナシャス! センセンシャル!」
「え、あ……こちらこそ?」
マント君に会う前、アタシは部屋に助っ人を呼んでロモジちゃんの戦備えをする事にした。
恋を知って以降、一応オシャレにもある程度の関心を向けるようにはなったらしいが、如何せんセンスがアレだ。なので、アタシとギャルちゃんの二人で全力で着飾らせたのだ。結果、今のロモジちゃんは芋さ0のクッソ可愛いすがたにフォルムチェンジしていた。
対するマント君も言っておいた通りいつものクソダサマントを着ておらず、シンプルながら仕立てのいい服を着ていた。パッと見お似合いだと思う。
「……ほぇ~、顔が良すぎて溶けるぅ~」
「えーっと……」
そして、現在に至る。
方やガチガチに緊張して言葉が出てない様で、方やあからさまに困ってますみたいな顔している。前者がロモジちゃんで、後者がマント……名前なんだっけ、ロラ……トラ……。
「ごほん。僕はロライマ。キリノさんとは同じ教室で、適性タイプはドラゴンです。手持ちは……」
そうだ、ロライマだ。
ロライマは流石のコミュ力とでも言おうか、緊張しっぱなしのロモジちゃんをリードするように会話をはじめた。ロモジちゃんは返事をするのにやっとで、何とか会話の体を保っている状態だ。
いいぞ、がんばれロモジちゃん。ちゃんとお話しできなきゃ付き合うなんて夢のまた夢だぞ。
と、ある程度話が進んだところで、アタシはカカッと席を離れる事にした。
あとは若い二人に任せて……っと。
「キリノちゃん……!」
「おっと?」
……したところで、ロモジちゃんに手を掴まれてしまった。
その目は口よりも雄弁に、「ヘルプミー」と言っていた。
どうヘルプすりゃええねん、である。
仕方ないので席に戻ると、ロモジちゃんは俯いて黙りこんでしまった。
え、アタシ今から積んでたアニメ観る予定だったんだけど……。
「えーっと、何か頼むかい? もちろん奢らせてもらうよ」
「いや借り作りたくないし自分で買うよ。じゃあ……」
その後は、3人いる机でアタシとロライマ君が喋る事となった。
なんでだよ。
で、色々話して門限が近づいた頃に、解散となった。
寮に戻る最中、ずっと茹でオクタン状態だったロモジちゃんが、一言。
「めっっっちゃええ匂いした……!」
せやろかロモジちゃん、という気持ちである。
それからも、アタシは度々マント君を呼び出してはロモジちゃんとコミュをさせた。
初回の時は上手くいかなかったが、回数を重ねるにつれロモジちゃんにも耐性がついたのか、一応会話らしい会話ができるようになっていた。
「は、はい! 此処に入れたんもキリノちゃんに勉強みてもらったからで! ホンマ感謝してるんです!」
「へぇ、ロモジさんは努力家なんだね。何か目標があって入学したのかい?」
「え!? あ、えっと……画家になりに?」
うん、一応会話はできるようになった。
それはいいのだが……。
「アタシいる?」
何故か、その都度アタシが同伴する羽目になっていた。
どうやら、ロモジちゃん一人じゃ対面状況に耐えられないとの事で……。
こんなんで不純異性交遊なんかできるのかよと思った。
● 〇 ●
速報、アタシの友達のオタクくんと情報屋ちゃんが付き合う事になった。
クッソびっくりである。
前々から気の合いそうな二人だなとは思っていたが、まさか付き合うまでいくとは。
さて、そんな幸せムード全開な二人に対し、ロモジちゃんとマント君の関係はというと……。
「はぁ~! 今日もかっこよかったな~! なっ、キリノちゃん!」
「何で毎回アタシが一緒してるの?」
全然進んでいなかった。
あれから、食事以外にも色々策を弄してデートもどきをさせてみたりしたのだ。アタシ同伴だったが。
その都度、ロモジちゃんは途中でヘタレてアタシにバトンタッチしてくるのだ。何なの? ホントに付き合う気あるの? という気持ちである。
マント君もマント君だ。ロモジちゃんが顔真っ赤にしてオバヒ状態になってるんだから、軽く“休憩”くらいすればいいのだ。なーにが「歩き疲れたね、あそこのカフェで少し休もうか?」じゃボケェ。きんのたま付いとるとは思えんわ。
ロモジちゃんといれるのは嬉しい。プラスだ。
けどマント君も一緒なのはマイナスだ。
完全に、プラマイゼロである。いやむしろ時間分マイナスだ。
「……って事があってね。どうやって進展させればいいと思う?」
「それ、あたしに言っていい話なの?」
という訳で、マント君のせいで溜ったストレスは全部ヘリアンにぶちまけて解消していた。
ヘリアン家は好きじゃないが、ヘリアン自身は割と好きだ。こうしてお茶をするのも慣れたもので、アタシとヘリアンは度々本音を言い合う関係になっていた。
アタシはフスベソウリュウコンビも好きだが、ヘリアンも好きなのだ。兄が誰とくっつくか、くっつかないかは知らないが、妹的には全員アリだと思う。
「ていうか、あんたよくそんな状況で平常心保てるわね。気まずくなんない? 心臓ハガネールか何か?」
「んー、心拍数に変化はないね。ほら、その時のデータ」
「え、マジじゃないの。なにそれ怖!」
お嬢様フォルムのヘリアンより、素のヘリアンの方が話しやすい。一日一日適当やってますみたいな感じが心地よいのだ。
願わくば、卒業後も関係を維持したいところである。
そんなこんな色々あったりなかったりして時が過ぎ、今年も課外授業の季節がやってきた。
「俺はリーグ制覇を目指す。今年こそ、絶対チャンピオンになってやる……!」
どうやら、リュウ兄は去年同様チャンピオンを目指すらしい。
けれど、その気迫は去年とは比較にならない程に強く、洗練されていた。
よくやるなぁと思う。つまり、リュウ兄はこれまでずっとこの時の為に努力してきたのだ。そんなの、アタシじゃ耐えられない。
「今年はフリッジあたりでゴロゴロしよっかな~」
カヤ姉に訊かれ、アタシはその場の思いつきを言ってみた。
そんなにやりたい事はなかったが、とりま打倒カヤ姉でも目指してみようかと思ったのだ。その為に、生まれて初めて修行なるものに挑もうかなって。
修行の拠点は雪と鎮魂の町・フリッジタウンだ。そこで己と手持ちポケモンを鍛え上げ、課外授業の後のバトル大会でカヤ姉とバトルだ。
うん、楽しそうだぞ。
そんな訳でタクシー乗ってフリッジへ。そこで宿を借りてトレーニング開始である。
何やらフリッジには“すごい特訓”なるものを施してくれる人がいたので、一度見せてもらって自分でもすごい特訓をできるようになっておいた。これでアタシのポケモンたちはより精強になった。
ついでにアタシ自身の鍛錬もやってみた。超能力の訓練である。昔々ママに習ったように、座禅や瞑想で超能力を引き出すのである。
まあそれもこれも、やってりゃ強くなるでしょという軽い気持ちでいた。
「あれ? ロモジちゃんじゃん。どうしたのこんなトコで」
「おぉキリノちゃん! キリノちゃんこそこんな寒いトコで何やっとん?」
そんな感じで修行6割観光4割の気分で過ごしていると、ばったりロモジちゃんと再会した。
ロモジちゃんは今しがたナッペ山を登ってきましたみたいな恰好をしていた。実際雪山登山をしていたらしい。ついてきてた相棒のデリバードは暖かそうだが、インドアロモジちゃんは実に辛そうであった。
「アタシはここで適当やってただけ。ロモジちゃんはジム巡り?」
「うん! まぁその……ロライマ君にええカッコ出来るかなぁ思って。へへっ、頑張ってます」
ジム巡りは課外授業で最もポピュラーな目標だが、完遂できるのはそのうち一割もいない。
挑戦者の半分は4ジムくらいで断念し、5つ目以降のバッジ取得率は結構低いのだ。
順当に進んでいるのであれば、ここまで来たロモジちゃんは既にジム半分を突破している事になるが。
「んー? んー? どぉうしよっかなー?」
と感心していると、ロモジちゃんはうんうん唸って悩んでいた。
悩んでるなら助けてあげたい。これは反射であり、リスクもリターンも考慮しない。
こういう時、見返り求めずに助けちゃうのが友達である。
「何か困ってる? 助けになるよ」
「困ってるっちゅうか……ウチのプライドの問題なんやけど……。まっ! 今更やな!」
言って、ロモジちゃんはその場で90度腰を折った。アタシ視点、ちょうどロモジちゃんのうなじが見える角度である。
「キリノちゃん! ウチを強くしてください!」
ははーん、である。
ロモジちゃん、結構ガチでジム挑んでるんだ。
なるほど、つまりジム巡りを完遂してマント君の気を引きたいから、実力をつける為にアタシに頼ってきたと……。
そんなのさぁ……。
「オッケェーイ!」
普通に嬉しい。快諾、快諾である。
カヤ姉は頼られると無条件で嬉しいらしいが、アタシは友達限定で頼られるの嬉しい系である。
アタシの修行とかどうでもいい。これからの課外授業時間は全部ロモジちゃんの為に行動するぞ。
「じゃあまず手持ちを教えてくれるかな?」
「4匹です」
そんなこんな、アタシはロモジちゃん専属教官に就任した。
ロモジちゃんの適性タイプは“ひこう”であり、スクール時代からデリバードを相棒としていた。で、課外授業の中で彼女はデリバード以外に3匹のひこうポケモンを手持ちに加えたらしい。
今のロモジちゃんの手持ちは、デリバード。オドリドリ。イキリンコ、ルチャブルの4匹だ。
適性タイプとはいえ、4匹しっかり手持ちに入れているあたり普通に優秀なトレーナーである。あとこの4匹だけでここまで来たのも何気に凄いのではないだろうか。
ロモジちゃんの頑張り次第では、あと1匹くらい今授業中に増やせそうな感じするし、いけるとこまでいけそうだ。
「ポケモンバトル教官のキリノ軍曹である! 話し掛けられた時以外口を開くな! 口でクソたれる前と後に“サー”と言え! 分かったか!」
「サーイエッサー!」
「デリバー!」
この後めちゃくちゃ指導した。
ロモジちゃんは、飲み込みは遅いが根気がある。できない事をできるまでやれる能力があるのだ。曰く、「マゾゲーのお陰」らしい。ゲームは人生を助けるね。
軍曹的指導で地力をつけた後は、ちょっと遠出して新たな仲間をゲットしてもらった。カイデンもよう懐いとる。
これでロモジちゃんの手持ちは5匹だ。もう一流のトレーナー名乗っていいくらいには仕上がっている。あと1匹のゲットは流石に今期中は難しいが、ジム制覇をできる可能性は高いと思う。
「おや? 奇遇だね。キリノさんとロモジさんじゃないか」
フリッジに戻ると、偶然にもマント君と会った。すると彼は聞いてもいないのに此処に来た理由を話しはじめた。
曰く、腕を上げて新たなドラゴンを手持ちにすべく修行していたとの事。新しい手持ちを入れてナッペ山を登っていたとか何とか……。
「ドラゴンポケモンを3匹。これで僕も一端のドラゴン使いになれた」
「も、モトトカゲの王子様やぁ……!」
そのまま二人で話してくれたので、アタシはそそくさと宿に戻った。この頃になると、ロモジちゃんはアタシ抜きでも会話できるようになっていたのだ。
まあ、ロモジちゃんはかなり仕上がったので、ええカッコができるくらいの成果は持ち帰ってくれると思う。
翌日、アタシは勇ましい顔でジムに挑むロモジちゃんを見送った。
時は過ぎ、今年の課外授業は終了した。
結果、ロモジちゃんは四天王戦で敗退。ええカッコはできたんじゃない?
カヤ姉はチャンピオンを倒した。順当だと思う。
そして、リュウ兄はオモダカさんに負けた。資格はあるだろうに。オモダカさん、あんたそれでもプロトレーナーか。
リーグ本部から出てきたリュウ兄は、心ここにあらずといった雰囲気をしていた。
声をかけようと思ったが、やめておいた。兄の性格的に、余計落ち込みそうだったから。
濡れたまま寮に帰るリュウ兄を、アタシは見送った。
翌日、リュウ兄はいつも通りの兄に戻っていた。
我武者羅になってリーグ制覇を目指していたリュウ兄は、もういない。
元に戻った事に安心すればいいのか、覇気を失った事を嘆けばいいのか。個人的には、何でもいいと思う。だって、リュウ兄はそのままで十分素敵なのだから。
生きている。これ以上に素晴らしい事は、ないと思う。
課外授業の後、学校最強大会にて。
「サーフゴー! 戦闘不能! カヤノ選手の勝ち!」
アタシは決勝で敗北した。
今度こそガチでやったが、カヤ姉に再度負けてしまった。
頑張って、戦って、負けた。
うん、勝負はやっぱりこうでなくちゃと思った。
で、その後の選挙でカヤ姉は生徒会長になった。
もちろんアタシはカヤ姉に投票した。
カヤ姉がトップに立てば、色んな事が上手くいきそうな気がしたからだ。
カヤ姉も、全生徒から頼られて幸せだろう。
「僕と付き合ってほしい」
「え、普通に嫌だけど」
あと、バトル大会の数日後、またマント君に告られた。
前に諦めろと言ったはずだし、言外にロモジちゃんとかどうですかと押しまくっていたのだが……。
「ロモジちゃんの事は嫌いなの?」
「……素敵な女性だと思うよ」
「じゃあさ、試しに付き合ってみたら? ロモジちゃんの気持ちくらい、分かってるんでしょ?」
「ああ、分かってはいるさ……」
言うと、マント君はとぼとぼと去って行った。
今はそうでもなくても、付き合ってデートしてるうちに好きになるさ。
だから、マント君にはロモジちゃんとお付き合いしてほしいと思うのだ。
「ありがとうキリノちゃん! ウチ、ロライマ君と付き合える事になってん!」
それから数日後、二人は無事交際をはじめたらしい。
実に嬉しい事である。アタシはギャルちゃん含めプロジェクトの協力者一同でロモジちゃんを祝福した。
ロモジちゃんとの時間が減るのは悲しいが、彼女の幸せが一番である。
● 〇 ●
日常が戻り、授業を受けて、友達とおしゃべりして……。
ある日、それは起こった。
何でもない日の事だった。
寮部屋を出た時、廊下の先で目を赤くしたロモジちゃんを発見したのだ。
その目は充血して、まぶたが腫れ上がっていた。涙の跡があり、さっきまで落涙していた事がわかる。
それを見て、アタシの中に強い怒りの感情が湧き上がってきた。
それと同時に、久しぶりに報復フェチが鎌首をもたげた。
誰だ、誰がロモジちゃんを泣かせたのか。あれは感動のソレじゃない。ショックを受けて、傷ついて流した涙の跡だ。
クラスでイジメを受けているのか? だったらそいつらを潰してやる。
上級生に罵倒されたのか? だったらそいつらを消してやる。
あるいは、あのクソマントがロモジちゃんに暴力でも振るったのか? なら、どうしてくれようか。それが事実だったなら、ただでは済まさない。理不尽でも何でもいいが、アタシのフェチの餌食になってもらう。
仄暗い算段と、親友を案じる心が矛盾なく燃え上がっていた。
アタシは、友達を傷つける奴が世界一嫌いなのだ。
だが、物事には順序がある。
報復より、事実確認より、まずロモジちゃんの心のケアが先だ。
「ロモジちゃん!」
友を救うべく、アタシがロモジちゃんに近づいた。
次の瞬間だ。
「ぐぅ……ッ!}
ロモジちゃんは、アタシに背を向けて走り去ってしまった。
まるで、アタシの目から逃れるように。アタシの顔を、見たくないとでもいう様に。
そして、反射的に使ってしまった超能力で垣間見た、ロモジちゃんの感情は……。
「え……?」
――キリノちゃんが憎い。
思考が停止した瞬間というものを、アタシははじめて体験した。
思考も感情も停止して、生理現象だけが活発になっていた。
呼吸が早い。心臓がうるさい。
目の前がぐるぐるして、キーンと耳鳴りがしてきた。
これは、マズい状況なんじゃないのか?
「ん? キリノ?」
視界が歪み、平衡感覚が崩れていくのが分かる。
「どうしたの? 顔色悪いわよ?」
かと思えば、思考が暴走して現状を認識しようと躍起になりはじめた。
けれども建設的な思考回路は機能不全だ。なぜなぜなぜと疑問でいっぱいで、脳の赤信号と青信号がカチカチカチカチと切り替わっては衝突事故が起きている。
「何で突っ立って……あんたホントに大丈夫?」
目の前が暗い。音だけが聞こえる。
声が、誰かの声が聞こえる。
理性が崩壊して、本能だけで立位を保っていた。だが、これも2秒後に……、
「え? ちょっと!? すごい冷や汗! ほら! 深呼吸、深呼吸なさい?」
触感がない。未だ声が聞こえる。言葉の意味が理解できず、吐き気と耳鳴りが増してきた。
「とりあえずベッド運ぶわよ!? いい? 抱っこするわよ?」
ああ、これはダメな奴だ。
アタシは、生まれて初めて気絶した。
感想投げてくれると喜びます。
無敵メンタル(傷つかないとは言っていない)