【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 感想・お気に入り登録など、ありがとうございます。
 誤字報告ありがとうございます。いつもすみません。

 リュウキ編最終回です。
 一気に時間が進んでいきますが、後に他視点で補完する予定です。

 文字数を考えずバーッと書いたので、ちょっと気の抜けた文章になってるかもしれません。推敲甘いです。
 まぁ1話からそうですが。


【リュウキ編9】この素晴らしい家族に祝福を!

 俺の名前はリュウキ。

 どこにでもいるごく一般的なポケモントレーナーだ。

 御年14歳、生まれて初めて彼女ができました。

 二人も。

 

 金髪お嬢様のシンラと、褐色黒髪のアニス。。

 初対面からしばらくはちょっと気に入らない二人だったが、いつしか気の置けない友人になり、今ではかけがえのない存在になった。

 そして、色々あって諸々ぶちまけて、俺は俺の中の感情を自覚した。二人と、ずっと一緒にいたいという欲望を。

 割と最低な事に。

 

 さて、脱童貞した俺は、決意を固めて両親にも色々ぶちまけた。

 まぁ両親は事前にこの事を聞かされていたらしいし、全容を知ってはいるのだが、筋は筋だ。通すべきだろう。

 あと、何か知らんがキリノがヘリアンとできてた。かなり衝撃的だった。

 

 俺と妹の話を聞くと、両親はうんうんと満足そうな顔になっていた。

 双子はよくわかってないようだったが、なんか喜んでた。

 姉さんは白目剥いて気絶していた。

 

 まあ、姉さんには関係のない事だ。

 いい加減、弟離れしてもらおう。

 

 

 

 時は過ぎ、アカデミー最後の長期休暇。

 俺は二人と一緒に、前と同じようにフスベとソウリュウに向かう事にした。

 

 シンラの実家に着くと、シンラパパは俺を快く迎えてくれた。

 諸々の挨拶を終え、書面だけでなく口頭で話し合った。今後の事、俺を取り巻く状況と、シンラの将来の事。

 シンラアニスを含めた4人のお話は、夜遅くまで続いた。雰囲気は結構よかったと思う。喧嘩とかじゃなく、単に話が盛り上がったのだ。

 

「孫はいつできるかね?」

 

 と、酒が入った義父からの絡みがちょっとウザかった。

 

 翌日、俺は竜の穴に向かった。

 竜の穴はフスベ北部にある洞窟である。そこに潜って、予約していた試練を受けるのだ。

 曰く、シンラが受けたのは優しい奴らしいので、俺は上の難易度の奴に挑戦である。

 示さなくちゃいけないのだ、素質を。

 

 洞窟内に入り、長老とお話して、なんやかんやあってOKをもらった。ここまでは通常通り。

 で、試練の本チャンは何とびっくりワタルさんとの一騎打ちであった。

 

 ワタルさんといえば、長年ポケモンリーグを牽引してきたレジェンド級の元チャンピオンである。今でこそバトルからは身を引いているが、ドラゴン使いにとっては大人も子供もおねーさんも憧れる大大大スターだ。

 そんなレジェンドと俺は戦う事になった。

 

 レジェンドからのリクエストで、お互い繰り出したのはカイリュー。一対一、シングルバトルだ。

 竜の穴でのバトルは、熾烈を極めた。当然である。相手はあのワタルさんであり、元チャンプなのだ。普通に考えて、俺なんぞが勝てる相手ではない。

 だが、俺もここで負けてやる訳にはいかなかった。試練なんか余裕とか言ってたシンラアニスに言いたい事はあるが、選んだのは俺である。

 

「カイリュー! “はかいこうせん”!」

「“しんそく”だ……!」

 

 そして、最後の最後。俺のカイリューの決死の“しんそく”により、ワタルさんのカイリューは倒れた。勝ったと同時、俺のカイリューも倒れた。

 多分、6対6のバトルなら普通に負けてたと思う。だが、勝ちは勝ちだ。これで、俺は一流のドラゴン使いとして認められた訳だ。

 

「いやぁ、別に勝てとは一言も言っておらんのじゃがのぅ……」

 

 と思ったら、どうやら試練自体はバトルするだけでOKだったらしく、別にワタルさんには勝たなくて良かったし、まさか勝つとも思ってなかったとか。

 

「ワタルさん本気でしたよね?」

「そうだな。つい熱くなってしまった」

 

 いや試験官が熱くなるなよと思った。レジェンドも意外と抜けてるんだな。

 

 まあ、ともかく。

 ドラゴン使いの称号、ゲットだぜ。

 

 

 

 聖地での試練を終え、俺たちはアニスの実家のあるイッシュ地方へと向かった。

 

 ソウリュウシティに着くと、これまたアニス祖父に歓迎を受けた。両親にも挨拶したかったのだが、二人とも忙しくしてるらしく会えなかった。

 挨拶の最中、アニス姉が乱入してきて、何やら変な計画の事を話し始めた。

 

「ホワイトフォレストで土地買ったから、今そこにモトトカゲ牧場を作ってる最中なの。イッシュにレース文化を根付かせようってね。で、そこの余った土地でリュウキ君の手持ちポケモンを預からせてもらえないかなって思ってるんだ。増えるでしょ? これから」

 

 どうやら、アニス姉はパルデアのモトトカゲレースをビジネスにしたいらしい。

 で、買った土地の余りで俺のポケモンを預けさせてもらえると……。

 

 確かに、今後も俺の手持ちが増えていく事を考えるとちゃんとドラゴンの世話ができる預かり屋は欲しいものである。信頼できるお世話係がいるのなら、それはとても素晴らしい事だ。でも、それちょっと俺に都合よすぎない?

 実際に訊いてみた。

 

「ううん、そうでもないよ。君が捕まえたドラゴンに直に触れる事で、一族全体の強化が見込めるの。強いドラゴンのお世話をしていけばドラゴン使いの才能を伸ばす事だって出来るだろうし。ま、他にも細かい事はあるけど、こっちとしても得のある事なんだよね」

 

 そういう事ならと、話に乗る事にした。

 どれだけ増やすのかは分からないが、多分たくさんゲットするだろうから。

 

 実際にホワイトフォレストに行ってみると、そこは沢山の人で賑わっていた。ほとんどが土木系の人たちだったが、中には見覚えのあるマントを着た人もいた。

 小屋を作り、柵を作り、人が住む家も建てている様であった。他にも畑や駐車場や色々と。その分食べ物が売り買いされ、仮設の露店が立ち並び、今現在ホワイトフォレストは凄まじい量の活気に満ちていた。

 

「見て見て、池があるよ。ポケモンはまだ住んでないみたいだけど」

「ドラゴン用の池じゃないか? ヌメラあたりが好みそうだ」

 

 人工池以外にも、預かり屋予定地には自然の川や森があり、滝なんかもあった。自生している木からはポケモンが食べるきのみが採れるとか。 

 

「アニスの家って、金持ちだったんだな」

「ん、まぁ一応」

「リュウキ様、ここには我が家も出資しているんですのよ?」

 

 金持ちは金の使い方が派手だなと思っていると、さっきまで管理者っぽい人と話していたアニス姉が戻ってきた。

 

「預かり屋の方はもう動かせるってさ。どうする、リュウキ君」

 

 モトトカゲ牧場の方はまだだが、預かり屋は既にほぼ完成しているようだ。人員も足りていて、やや手持無沙汰になってると。

 預ける事を勧めてくるアニス姉だったが、俺は俺で手持ちとの別れに抵抗があった。

 何気に、最初の課外授業からずっと一緒だったのだ。居場所も何もハッキリしているが、それでもいざ預けるとなると気持ちが揺れてしまった。

 

「オレスシー!」

 

 と思っていると、自らボールから出てきたシャリタツから「ここは任せろ!」との思念が飛んできた。

 確かに、シャリタツほどコミュ力の高いポケモンがいれば、今後増えていく群れをある程度まとめる事ができるだろう。それに、こいつは信用できる。

 

「ああ、そうだな……」

 

 なんか、背中を押された気分であった。

 

 俺は手持ちから、ドラパルトとガブリアスとセグレイブを預ける事にした。ドラパルトは単純に強いのでシャリタツのサポートができるだろうし、ガブはバトルや旅より飯が好きだし、セグレイブは友達が多い方が嬉しいだろうから。

 一生の別れではないが、ホワイトフォレストから離れる時、ちょっと泣きそうになった。

 

 イッシュを去る前、別れの挨拶にアニス宅に再度訪問すると、家にいた一番強いオノノクスからタマゴを手渡された。訊いてみると、それは友好の証なのだという。

 当主の了承を得て、俺はタマゴを持ってアカデミーへと帰って行った。

 

 

 

 長期休暇明け、テーブルシティを歩いている時、タマゴからキバゴが生まれた。

 当時、隣にはシンラとアニスがいたので三人できゃいきゃいと喜んでいたのだが、そのキバゴには違和感があった。

 色違いだった。なんと珍しい。

 

 その日、俺はジニア先生に連行された。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 時は過ぎ、アカデミー卒業の日がやってきた。

 

 別にまだいてもいいのだが、俺はさっさと卒業して成すべきを成そうと思ったのだ。

 英雄とやらに、さっさと成ろうじゃんである。

 

「ちゃんと一日一通はメールしてくださいましね?」

「おう」

「ちゃんと野菜食べてね」

「おう」

「くれぐれもキャッチなどに引っかからないように」

「わかってるって!」

 

 同じくアカデミーを卒業したシンラとアニスはそれぞれ実家に帰っていった。 

 俺は諸々の準備をして、旅に出た。

 三人とも、違う船に乗ってお別れである。

 

 色を好んでも大丈夫、そう思われるくらいの英雄になる。

 何をすればいいか分からないが、とにかく旅に出てみて各地のドラゴンと友達になろうと思ったのだ。

 多分、俺に向いてるのはこっちだ。強い奴を倒して回るとか、どっかで修行するとかよりは俺らしいだろう。

 

 あと、婚約者曰く俺たちの関係性は既に他一族にも伝わってるらしいので、道中襲ってくる事もないだろうと。

 

「え? 俺、もしかしたら襲われてたかもなの?」

「うん、契約せず一人旅してたら多分拉致られてたと思うよ」

「それくらい、貴方の血が魅力的だったという事ですわ」

 

 とは結構前にした会話。

 怖い話だ。これまでの付き合いで分かるが、ドラゴン使い一族ってのは何か色々すごい。おっかないのである。

 

 

 

 さて、マリナードタウンから船に乗り、俺はカロス地方へとやってきた。

 カロスに来た理由は特にない。一応、ドラゴンをゲットするのが目的だが、どこぞの悪の組織みたいにがっついてる訳じゃない。

 なので、ミアレ観光などしつつ色んなところを歩いて回る事にした。

 

 すると、とある道の草むらでヌメラを発見した。

 ヌメラはパルデアでも見かけるポケモンだ。体表面を粘液で覆っていて、割と人懐っこくてドラゴン使い以外にも人気のドラゴンである。

 

「ぬめぇ~」

 

 件のヌメラはひどく鈍重であった。ヌメラなんて皆ぬぼーっとしてるじゃないかというとその通りなのだが、この個体は俺が近づいても無反応に表面をぷるぷるさせるだけであった。ぬぼ感が極まっている。

 知能はどうかと思念を送ってみると、「腹減ったなぁ~」みたいな事しか返ってこなかった。腹減ってるらしいのできのみをやると、もしゃもしゃと食い始めた。

 見つめ合うことしばし、「仲間になる?」と訊いてみたら「なる」との事で、俺はカロス地方でヌメラをゲットした。

 何のドラマもない出会いであった。

 

 カロスでは他にも色々あったが、割愛。良い感じのドラゴンには出会えなかったとだけ。

 で、俺はガラル地方に向かった。

 

 ガラルでは非常に多くの出会いがあった。

 カジッチュにジジーロンにモノズと、ワイルドエリアには沢山のドラゴンがいて、俺は彼ら一匹一匹に声をかけてはゲットしていった。

 カンムリ雪原では、何とあのチゴラスをゲットできた。チゴラスは古代に生きた化石ポケモンであり、本来なら化石を見つけてそれを復元しなければいけないのだが、ガラルの土地がそうさせるのか幸運にも生きたチゴラスをゲットできた。

 しかも、このチゴラスは妙に人懐っこく、初対面の俺にとっしん紛いのじゃれつきをブチかましてきた。死ぬかと思った。

 

 色違いオノノクス。ヌメルゴン。アップリュー。ジジーロン。ジヘッド。チゴラス。

 

 旅の中、気がつけば俺の手持ちから最初の相棒達がいなくなっていた。

 寂しいというか、独り立ちできたような気持ちだった。

 あいつら、ホワイトフォレストでも元気にやってるかな。動画では元気そうだったが、また会いたいものである。

 

「リュウキ様!」

「リュウキ!」

「おっと……! 久しぶりだな、二人とも」

 

 寂しくなったのでイッシュに行くと、ホワイトフォレストでアニスとシンラに再会した。

 モトトカゲ牧場はほとんど完成しており、俺の手持ちを預けている所もつつがなく運営されてるらしい。あと、アニスは此処の責任者になったとか。

 

 預かりエリアではシャリタツを頂点としたドラゴングループが形成されている様だった。最初の仲間達とも再会して、新入りにも挨拶させた。

 すると、ドラパルトやセグレイブも旅に出たいと言うので、一旦オノノクスとヌメルゴンを交換し、ジジーロンとアップリューを預ける事にした。

 

 その日はホワイトフォレストに建てた家で三人で過ごした。

 PPは回復したが、HPを半分失った。

 

「じゃ、行ってくるわ」

「ん、お土産楽しみにしてる」

「気を付けてくださいましね」

 

 フキヨセ空港で、またしばしの別れである。

 俺は新たな地へと向かった。

 

 シンオウに到着すると、そこで父とばったり会った。

 どうやら父はレンジャーの仕事でテンガン山に向かうらしい。

 

「いい機会だ。リュウもテンガン山登ってみるか?」

「いや、でも仕事の邪魔しちゃ悪いし……」

「何言ってんだ。お前はもう立派なトレーナーだよ」

 

 で、協力者扱いで同行させてもらう事になった。

 前までの俺なら、絶対行かなかっただろう。けれど今は、これもいい経験と一歩踏み出す事ができた。

 

 初めて登るテンガン山はすごく過酷だった。流石に山慣れしている父はズンズン進んでいたが、俺はついてくのがやっとであった。

 雪に洞窟に野生ポケモン。豪雪地帯ではセグレイブが無双していた。洞窟ではジヘッドやチゴラスを積極的に戦わせた。道中、ジヘッドはサザンドラに、チゴラスはガチゴラスになった。

 

「あ? なんだこれ?」

 

 

 そうやって何日か過ごしていると、何か硬いものを蹴ってしまった。

 蹴っ飛ばしたのは大きめの石だった。拾ってみると、それは随分と綺麗な黒石だった。

 

「どれどれ? え、これ“くろのきせき”じゃねぇか。何でこれがテンガン山に?」

「何かおかしいの?」

「ああ、これは今じゃもうめったに採れない石なんだ。それに表面が綺麗過ぎる、妙だな……」

 

 何気なく拾った石は、父曰く山の異変の手がかりになるかもしれないらしい石だった。

 分からないが、何かが起きてるのは間違いないようだ。

 ちょっと怖くなってきた。

 

「よし、そろそろ着くぞ。がんばれリュウ」

「うぃ~」

 

 せっかくだし、とりあえずテッペン目指そうぜとなって、ひぃひぃ言いながら“やりのはしら”の前までやってきた。

 父は「妙にあっさり来れたな」と謎の発言をして、何か考え込んでいた。そりゃ、上に行きゃ着くでしょうよ。

 

「おぉ……!」

 

 で、辿り着いたやりのはしらは、とんでもない場所だった。

 こういう古代ロマン的なものにそれほど憧れない俺でも、此処が凄い場所ってのは分かった。

 写真を撮ろうとしたが、やめておいた。この景色は記憶の中だけでいいと思った。

 

「いや……やっぱ、なんか変だ。前来た時と雰囲気が違う。空気がザワザワしてる気がする」

「ざわざわ?」

 

 父はというと、何やら変な事を言いだした。

 空気も何も、山の空気だろう。

 雰囲気ったって、なんか凄いなーとしか……。

 

 その時であった。

 

 突然、テンガン山の青空に亀裂が生じた。

 空間にヒビが入ったというか、そんな感じだった。するとそのヒビから渦巻き状の靄が染み出てきて、俺たちの頭上に小さい嵐みたいなのを作った。

 

「リュウ! 逃げろ!」

 

 言われた通り逃げようとしたら、嵐の中心から細い雷みたいなのが落ちてきて。それは俺の足元に着弾した。

 かと思えば視界一面を薄暗いモヤが覆った。

 

「何だこれ? 何だ!?」

「リュウ! とりあえずポケモン出せ!」

 

 するとどうだ、体温か何かが狂ったのか、いきなり真夏のアローラに放り込まれたような暑さを感じた。

 さっきまで青空の下の綺麗な神殿だったのが、謎の暗黒空間に入ってしまった様だった。

 父がウーラオスを出して警戒していた。俺もドラパルトに守ってもらう。

 

「父さん、これは?」

「知らん。けどヤバげな感じはする。ウルトラホールとは少し違うが、とにかくドラパルトから離れるなよ。いざとなったら乗って逃げろ」

「あ、ああ」

 

 そして、数秒後。

 それは何事もなかったかの様に終了した。

 PCの電源でも落としたように、プツンと元の景色に戻ったのだ。

 

「確認だ。リュウ、今の見たか? 体調は?」

「あぁ……。体調は大丈夫。でも、さっきかいた汗が気持ち悪い」

「俺もだ。エスパー攻撃って訳じゃないか……」

 

 一瞬、幻覚を疑いもしたが、父もそうならそうなのだろう。

 

「父さん、あそこ」

「さっきまでは無かったよな?」

 

 ふと、俺は柱の後ろから飛び出た変なモノを発見した。

 父と共に向かうと、それは一匹のポケモンであった。

 弱っているのか、四肢を投げ出してぐったりしている。

 

「何だこいつ? 見た事ないポケモンだな」

「見たことないけど、多分こいつドラゴンだ。そんな感じする」

「マジか」

 

 それは、紫の四足ポケモンだった。

 体表面には金属的な光沢があり、何だかモトトカゲのリージョンフォームみたいな雰囲気があった。スマホロトムに訊いても分からないし、父も見た事がないという。

 

「傷ついてる。父さん、キズぐすり使うぞ」

「おう。けど警戒は解くなよ」

 

 それより、この紫モトトカゲが心配である。ドラゴンタイプならと思念を送ってみると、やはり弱ってるようでキズぐすりを使った。

 キズぐすりを使うと、ある程度回復したのか目を開けてくれた。その眼はモトトカゲとは違って電光掲示板の様に発光しており、どこかコイルとかギアルみたいな雰囲気があった。

 その光る目は、俺をじぃっと眺めていた。冷静に、俺というトレーナー……いや、人間の本質を見ている感じがあった。

 やがて紫ドラゴンは四つ足で立ち上がると、俺に頭を寄せてきた。撫でてやると、

 

「アギャス」

 

 と鳴いた。

 

「どうすんだ、これ」

 

 これ捕獲するの? しないの? みたいな感じの父だったが、俺は既にこいつから「ついていく」との思念を受けているので手持ち入りは確定である。こいつ、シャリタツ並に賢いぞ。

 仕方ないなと言った感じの父からレンジャー用のプレシャスボールを貰うと、俺は謎の紫ドラゴンをゲットした。

 

「名前は?」

「わからん」

 

 ボールによる解析の結果、こいつはドラゴンとでんきの複合タイプらしい。

 しかし、その他一切の事は分からなかった。

 

「新種のポケモンかな?」

「まあ、あんな出現方法なんて聞いたことねぇよな。噂のウルトラビーストって感じでもなさそうだし、パラドックスポケモン……いや、シンオウで出るもんなのか? うぅん……」

 

 何も分からない事はわかったので、とりあえず神殿前の洞窟でキャンプする事に。

 焚火を囲んでご飯タイム。紫ドラゴンは存外食いしん坊な様でギャスギャス言いながら飯を食っていた。

 

「元気になったな」

「ふむ、土とかを食うポケモンじゃないのは分かったが」

 

 翌朝、いざ下山となった時、いきなり紫ドラゴンが出てきて「乗れ」と言ってきた。

 困惑しつつ父共々ライドすると、それは脚部を変形させてバイクみたいに走り出した。

 

「うぉぉぉ! すげぇー!」

「あはははは! いやっほぉう!」

 

 雪も段差も何のその。俺たちはスピード任せにテンガン山を駆け降りていった。

 飛べるというのでジャンプさせてみると、今度は翼を展開してハンググライダーみたいに滑空した。

 

「いやっほぉぉぉう! 最高だぜぇー!」

「ああ! すごいなお前! 名前分かんねぇけど!」

 

 俺と父は、子供みたいにはしゃいでテンガン山を下山した。

 降りると、山の管理人さんにめちゃくちゃ怒られた。親子で。

 

 で、謎ドラゴンの了承を得てから近くの研究所で診てもらう事に。

 結果、身体の組成はモトトカゲにほとんど合致していると。けれど、その身に宿したパワーはモトトカゲとはダンチであり、ウーラオスやダークライに比肩する程の力があるらしい。

 それと、レンジャー協会に連絡すると、父のゴリ押しでこの謎ドラゴンは俺預かりとなった。まあ、こいつ父には全く懐いてないからな。

 

「……って事があってさ、そっちでもこいつについて調べてみてくれよ。昔の文献に似たようなのいるかもだし」

 

 と、アニスに連絡すると、それは瞬く間に俺の知り合いに伝わっていき……。

 

「その子、我が家でお披露目してほしいのですわ!」

 

 という流れになった。

 シンラもアニスも、ついでに二人の家族親戚もこの謎ドラゴンに興味津々であり、一度生で見て見たいらしい。

 そういう訳で、諸々の報告を終えてから父と一緒にジョウトに行く事になった。

 

 フスベでは、それほど久しぶりでもないのに久しぶりに会った感のある恋人たちと再会した。

 二人の家族たちとも挨拶をして、我が父もあちこちに話しかけていた。ここで初めてアニス父母に挨拶したのだが、どちらも如何にもデキるビジネスマンって感じであった。握手した手が痛いのなんの。

 

「アギャギャ?」

 

 で、お待ちかねのお披露目である。

 謎ドラゴンをボールから出すと、そいつは四足でお座りしていた。「何か用か?」と言っていた。

 

「おぉ……! かわいい! かっこいい! はがねモトトカゲみたい!」

 

 謎ドラゴンに一番興奮していたのは、モトトカゲ好きのアニスだった。

 アニスは物怖じせずに謎ドラゴンの身体をべたべた触ると、終いにゃ顎を撫でくり懐かせようとしていた。謎ドラゴンはされるがままになっていた。

 他のドラゴン使いたちも興味があるようで、代わる代わる謎ドラゴンとご対面。大人組は落ち着きながらも興奮していて、アニス祖父などは陶然と謎ドラゴンを眺めていた。

 

 これストレスになってないかな? と思って思念を送ってみると、当の謎ドラゴンは存外図太いのか、「別に平気」と帰ってきた。

 見世物になってるドラゴンは、目の前に現れる人間一人一人をじっと見て観察していた。

 

 そうしてわちゃわちゃやっていると、シンラ家のやべーやつことシンラカイリューが現れた。

 シンラカイリューは謎ドラゴンに興味があるらしく、鼻を近づけてクンクン匂いを嗅いでいた。

 かと思えば、急に眦を吊り上げて戦う姿勢になったのだからビックリである。

 

「戦いたいのかな?」

「でも、俺こいつの戦うトコ見た事ないしな……」

 

 そういえば、この謎ドラゴンをバイクめいて乗り回した事はあるが、一度も戦うところは見た事はない。好戦的な性質って訳じゃなさそうだったし、機会がなかったんだよな。

 力を見るのにはいい機会かもだが、相手は俺のカイリューを素殴り二発でノックアウトするようなヤバイ奴だ。流石に荷が重いか。

 

「アギャァアアス!」

 

 と見ていると、急に全身を発光させた紫謎ドラゴンは空中に浮かび上がると、まるで進化でもしたかの様に姿を変えた。

 その姿はヴァイオレット・メタリック・スタイリッシュ・ジジーロンといった雰囲気で、モトトカゲ然としていた四足形態の頃とは様変わりしていた。

 前脚は細長く発達し、後ろ脚は折りたたまれジェットエンジンみたいな機関? 器官? になっている。どういう原理か、元の位置に戻ったそいつは低空を浮遊しており、チューブめいた尻尾がゆらゆら揺れている。

 全身にはバチバチと稲妻が奔っており、如何にも強そうな印象を受けた。研究者曰く凄いエネルギーをお持ちらしいが、実際見てみると納得であった。

 

「ん、やる気みたいだね」

「ならば、このわたくしがカイリューの指揮をしますわ!」

 

 どうやらこいつもやる気らしいので、一同バトルコートに行ってカイリューと戦う事に。

 いざ始まると、意外にも善戦できた。最初は技とか知らんしこいつ任せになるかなとか思ってたが、何か脳内に技一覧みたいなのが流れてきた、多分、謎ドラゴンからの思念だ。

 あっちもあっちで前と違って今度はしっかりシンラの言う事を聞いており、バトルらしいバトルができるようになっていた。

 

「カイリュー! “はねやすめ”ですわ!」

「え、マジで使えるのそれ? よし、“パラボラチャージ”!」

 

 バトルは一進一退で、若干こちらが押していた。あの化け物カイリュー相手にである。

 やがて、二匹とも戦いの熱が最高潮になったあたりで現当主からの待ったが出て、バトルは終了となった。

 

「グォオオオオオ!」

 

 なんか不完全燃焼っぽかったので、最後に「イナズマドライブ」という技を指示すると、謎ドラゴンは何もない場所に思い切り謎電気技をぶっぱした。ぶっぱされた場所の被害は、凄まじいものだった。金持ちのシンラパパが口元をひくつかせる程度には。俺はスライディング土下座をした。

 カイリューは満足したように去っていくと、謎ドラゴンも黙って見送った。何か通じるものがあったらしい。

 

「ねぇ、この子に名前つけないの?」

 

 夕食時、アニスが訊いてきた。

 つけるも何も、多分こいつ新種だから学者先生がつけるだろうとなったのだが、その会話を聞いていた謎ドラゴンは、俺に思念を飛ばしてきた。

 言葉じゃない。思念の連続だ。昔はできなかったが、今の俺にはキャッチできる。

 多分、音にすると……。

 

 み、ミ? ラ……い、ド……ん? ン、かこれ。

 ふむ、なるほど。

 

 どうやら、この紫謎ドラゴンは“ミライドン”

というらしい。

 もっと早く訊いとけばよかった。

 

「ミライドンって言うらしいぞ」

 

 ミライドンからの思念をそのまま伝えると、

 

「へえ、それはどちらの先生が名付けたのですか?」

「研究所の人かな? そんな話してたっけ」

「ふむ、センスがあるね」

「口当たりがよいですな。ミライドン、ぴったりじゃないか」

「ん、可愛いしかっこいい」

 

 なんか、会話が噛み合ってない気がする。

 こういう時、前は黙っていたものだが、脱童貞した俺は無敵だ。はっきりと否を言うぞ。

 それに、自分で名乗った名前をどっかの学者に付けられたものと勘違いされるのも、ミライドン的に癪だろう。

 

「ミライドンが名乗ったんだよ」

「え~? そんなバカな」

「マジマジ。前にも言ったじゃん、俺ドラゴンと会話できるって。子供の頃はこう……信号送り合うみたいなんしかできなかったけど、最近は結構細かい意思疎通ができるんだぜ」

「会話っていっても、感情のでんた……つ……。リュウキ、それマジでそうなのか?」

「ん? ああ、そうだよ。まぁしっかり会話らしい会話ができるのはミライドンとかシャリタツくらい賢いポケモンだけだが」

 

 言うと、みんなして俺の方をじっと見ていた。

 なんだよと思って見返していると。シンラとアニスは溜息を吐き、我が父は口を開けたまま硬直し、シンラのパパはフォークを落とし、アニスの祖父は震えるカップをソーサーに戻していた。

 その他にも、この場にいた人は皆、じっと俺とミライドンを見ていた。

 

「いや、すまん……リュウキ。多分、俺と母さんがもっと早く気づいてやるべきだったんだろうが……」

 

 そんな中、父が震えた声を出した。

 

「それ、できれば、もっと早く言ってほしかったな……と」

 

 いつもナチュラルに笑ってる父が、引き笑いをしていた。

 そんな父に、一言。

 

「俺はずっと言ってたよ」

 

 そして、俺はその夜、知った。

 どうやら、ドラゴン使いはドラゴンとお話できないらしい。

 そんな不便な。

 

「できねぇの?」

「「できねぇよ!」」

 

 この時、知ったのだ。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 ミライドンと出会って、数年の時が経った。

 

 19歳になった俺は、懐妊したシンラと結婚した。

 

 身重のシンラに代わるように、俺とアニスはドラゴン使いの会合に出席していた。

 その都度、俺は力を見せつけた。ミライドンやジャラランガ。時にシンラ家のカイリューやアニス家のオノノクスも、これ見よがしに披露してみせた。

 奇異の目で見られたし、陰口も叩かれた。若い子には直接因縁ふっかけられた事もあったし、年寄り連中からはチクチク嫌味も言われた。

 けど、そのうち表立って俺達の関係に文句を言う奴はいなくなった。一応、認められたらしい。

 

「お、おぉ……これが俺の子……。あ、ヤバい怖い怖い! 俺なんかが抱っこしていいのかコレ!」

「もう、慣れてもらいませんと困りますわ」

「ん、私の時までには克服しといて」

 

 生まれてきたのは、シンラ似の男の子だった。

 金髪で、目がクリッとしていて、俺に似ずフェアリータイプ的な愛らしさがあった。

 なんでもいいから、元気に育ってほしいと思う。

 

 翌年、アニスが妊娠した。俺は一旦シンラと別れ、アニスと結婚した。

 ホワイトフォレストの牧場経営は順調で、今年からイッシュでモトトカゲレースが開催されるらしい。まだまだ発展途上だが、パルデアとは違う盛り上がりを予感させた。アニスの夢は形を変えて、家族に支えてもらって叶えられたのだ。

 俺のドラゴン預かり屋も賑やかになっていた。いつの間にか数も増えていた。シャリタツは三色揃ってるし、ガブリアスの周りではフカマルが遊んでた。滝つぼではミニリュウとタッツーが泳いでいて、昼寝中のジジーロンの隣でヌメラが草を食んでいた。

 そこには時折、二人の分家や懇意にしている一族の人たちが来るらしく、その中には預かりエリア内のポケモンに気に入られて、新たな相棒とするケースもあったのだとか。預かり屋というか、なんかドラゴンサファリゾーンみたいになってる様だった。

 

「おぉ~ヨシヨシヨシ! 俺に似ず可愛いな~!」

「赤ちゃん恐怖症、克服したと思ったら親バカになったね」

「まぁ怖がられるよりは全然良いと思いますわ」

 

 アニスから生まれてきたのは、これまたアニス似の褐色肌の女の子であった。

 ただ、目元は姉さんに似ていて、アニスのジトッとした目つきとは似ても似つかない。

 

 あと、フキヨセシティに小さな別荘を買った。

 俺の金でだ。

 

 フラフラ旅などしていた俺だったが、今は立派な収入源を持っていた。

 俺は、フリーランスのポケモンレンジャーになったのである。

 

 経緯はこうだ。

 ある日、父からの電話でイッシュの協会本部に呼び出され、そこで偉い人――昔、父の専属オペレーターをしていた女性だ――とお話をしたのだ。

 そんで、俺をドラゴン関連専門のポケモンレンジャーとしてスカウトしたいとのお話。

 

 これには、俺もちょっと悩んだ。返答は少し待ってもらって、シンラとアニスとも相談した。

 結局、俺はそれを受ける事にした。

 

 俺自身、これからどうしようかと迷っていたところだった。

 ドラゴン使いの一族には、既に力を示した。あとは舐められないような仕事なり何なりをすればぃいと思っていた。

 候補はあった。今から勉強して、医師や博士を目指すのもアリかと思った。

 だが、俺はレンジャーになる事を決めた。

 

 理由のひとつに、父の存在があった。

 言わずもがな、俺の父は皆から尊敬されている。

 家ではちゃらんぽらんでも、BBQの時めちゃくちゃはしゃいでても、いい歳して母とイチャついてても、それでもレンジャーとして出動する父はなかなかに格好良かったのだ。

 少し気持ち悪いけど、まぁ憧れたという気持ちがないではなかった。

 

「おぉ! 君がケヤキ君の息子さんか! はぁ~! 親子そろってレンジャーとは凄まじいな! 期待しているよ、リュウキ君」

「はい、よろしくお願いします」

 

 それから、勉強して、資格を取って、晴れて俺はポケモンレンジャーになった。

 常勤のそれではないが、たまにドラゴン関連の依頼があれば、俺にお任せされる感じだ。

 現場の反感買いそうだなとか思ってたが、意外とそうでもなかった。俺のオペレーターさん曰く父と違ってトラブル起こさないから全然良い、らしい。父さん、実績のゴリ押しでダークライとかミライドンとか家族に渡しちゃう人だもんな……。

 

 レンジャーとしての仕事はほとんど無いが、たまに来る依頼は割ととんでもないのばっかである。

 最近だと、パルデアの大穴から湧き出てきた“トドロクツキ”の群れの侵攻を食い止めたりした。

 父やハッサク先生と協力して事に当たったそれは、辛くも被害ゼロで収める事ができた。

 暴れていたトドロクツキのうち、大人しい個体はホワイトフォレストで預かっている。

 

「リュウキくん、帰る前に小生とバトルしませんか?」

 

 あと、任務後に何故かハッサク先生とバトルをする事になった。

 ホントにギリギリのバトルだったが、何とか勝利できた。一応、俺は世代最高のドラゴン使いって事になってるから、多少はね。けど、ミライドンがいなけりゃ負け戦だった。

 バトルの後、ハッサク先生とは宝食堂で酒を酌み交わした。いつの間にか俺は酒の味が分かるようになってたし、ハッサク先生には白髪が増えていた。

 

「ん、おかえりリュウキ」

「ただいま。あれ、みんなは?」

「今はお昼寝中。シンラも寝ちゃったの」

 

 まぁそんな感じで買った別荘では、時たま家族で集まって交流していた。

 二人はそれぞれ当主さんの手伝いなどしているので、そんな頻繁に揃う事はないが。

 

 一児の母になったシンラは、美しさに磨きがかかっていた。

 趣味の芸術も続けられている様で、最近描き上げた絵のモデルはだいたい息子だ。

 あと、おっぱいも大きくなった。

 

 同じく経産婦になったアニスも、童顔にそぐわぬ色気が出てきた。

 流石にモトトカゲレースに出てはいないが、暇があれば牧場のモトトカゲのお世話をしているらしい。

 おっぱいはあんまり大きくなってないが。

 

「ふわぁ~、おはようございますわ。あら、リュウキ様、帰っていらしたのですね。起こして下さればよかったのに」

「おはよう。ほら、ここ寝癖ついてるぞ」

「ん、二人は?」

「まだグッスリですわ」

 

 俺には、妻が二人いる。

 しかも、今後も離婚と再婚を繰り返す予定だ。

 まともな夫婦じゃあないが、まともじゃなくて何が悪いというのだろう。

 

 俺というどうしようもない男を、好きだと言ってくれる。

 そんな女性が二人もいるんだ。最高だろう。

 

「あぁ……なるほどな」

「なに?」

「どうしたんですの?」

 

 ふと、俺の心の奥で腑に落ちる思いがした。

 どうにもこうにも、むずがゆい。

 

 誰でもいい。

 通り過ぎた人でもいいが。

 俺の身では、ちょっと溢れ気味である。

 

「父さんと母さんって、こんな気持ちだったんだな……」

 

 家族がいる幸せを、分けてやりたい気分だぜ。

 

 

 

● 〇 ●

 

 

 

 イッシュ地方、ホワイトフォレスト。

 そこは、今や言わずと知れたドラゴン達の楽園にして、ドラゴン使いにとっての最新の聖地である。

 

 白い森の竜の園。

 ドラゴン使いを志すならば、一度は訪れるべきだろう。

 

 ある者は、運命の相棒と出会い。

 ある者は、竜と触れ合って心を癒やし。

 またある者は、ただただ昼寝にやってくる。

 

 この場所は、ある伝説的なドラゴン使いによって築かれた。

 ドラゴンはいいぞ、と。

 その男は、満面の笑みで云った。

 

 

 

 そろそろ太陽が真上に来ようとする時の頃。

 

 竜の楽園の真ん中に、一人の少年がいた。

 彼は大きな木の影で、仰向けになっていた。昼寝である。隣では相棒のタツベイが少年と同じくぐぅすか眠っていた。

 両者の寝顔は安らかで、互いが隣にいる事が当たり前という雰囲気であった。

 

「おーい! ザリアー! どこー?」

 

 遠くで、少年の名を呼ぶ声がした。

 それは少女の声であった。声は次第に近づいてきて、探していた少年を見ると駆け寄って来た。

 

「おいゴルァ! 起きろぉ! 免許持ってんのかぁ!」

「うるせぇ……」

 

 かと思えば、少女はザリア少年の耳元でバクオングもかくやの大声を出した。

 対し、ザリアも慣れているのかちいさく呻くのみであった。タツベイは未だ眠っていた。昼寝が大好きなのである。

 

「んあぁ~……アルス、今何時?」

「午前11時。時間過ぎそうだよ」

 

 アルスと呼ばれた褐色肌の少女は、腕時計を見ながら云った。その声音には呆れの感情が含まれていた。

 

「マジ?」

「マジ」

 

 現在時刻を聞き、上体を起こしたザリアの顔色が見る見る青くなっていく。

 ちょっと寝るつもりだったのが、気づけば予定の時間間近になっていたのである。

 

「やべーじゃん!」

「だから言ってんの!」

 

 シュバッと起き上がったザリアは相棒のタツベイをボールにしまうと、一目散に駆けだした。

 起こしてくれたアルスを置いてけぼりにして。

 

 ほどなく、走るザリアの後方からモトトカゲに騎乗したアルスが悠々併走し始めた。

 無論の事、人の脚よりモトトカゲの脚のが速い。この後長い橋を渡るのを考えると、徒歩じゃあ絶対間に合わない。

 

「頼む! 俺も乗せてってくれ!」

「えー? どうしよっかなー?」

「お願いだ! 流石に今日遅刻はマズい! あとで何か奢るから!」

「しょうがないにゃ~」

 

 差し伸べられた手を、ザリアはしっかりと掴み取った。

 そのままアルスの後ろに乗せられると、モトトカゲは更にスピードを上げた。

 

「うぉぉぉ! 急げモトトカゲ! ここでレコード叩き出せ!」

「大声出しても速度は上がらないって!」

 

 やかましい少年少女を乗せて、モトトカゲは大自然を駆け抜ける。

 途中、池で泳いでいたシャリタツを通り過ぎ、きのみドカ食い中のガブリアスを通り過ぎ、昼寝をしているカイリューを通り過ぎ……。

 低空を飛ぶドラパルトに追い抜かれ、手を振るセグレイブに手を振り返し、瞑想中のジャラランガを邪魔しないようちょっぴり迂回したりして……。

 二人は、ホワイトフォレストを出た。

 

 長い長いワンダーブリッジを、二人を乗せたモトトカゲが駆ける。

 さっきまで言い合っていた二人は、いつの間にかこの先の楽しみについて話していた、

 あれだけ急げ急げと騒いでいたザリアだったが、制限速度を超えさせるつもりはないようで。

 

「やっぱチュロスだろ! 本場の奴食ってみてぇんだよな!」

「えー? パルデアっていうとハイダイさんトコの料理じゃない? 一回でいいから食べてみたいなー」

「予約取れっかよ」

「してみようよ。運が良ければいけるかも」

「そだな。予約だけはしてみっか!」

 

 ザリアとアルス。

 同じ父を持ち、異なる母から生まれた兄妹。

 二人のドラゴン使いの冒険は、これからはじまる。

 

 ライモンシティへゲート前、父と母達が待っていた。

 ザリアの母の腕には赤子がいて、アルスの母の腹は少し大きくなっていた。

 三人とも、遅刻ギリギリの兄妹に苦笑していた。

 

 目が合い、通り過ぎる。

 

 交錯は一瞬であった。

 昨日、さんざん言ったのだ。

 右手ひとつで全てが伝わる。

 

 仲良し兄妹は、家族に向かって後ろ手にサムズアップを送った。

 行ってきます、と。




 感想投げてくれると喜びます。



 あ、リュウキのミライドンは別個体です。
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