【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告アギャス。感謝の極み。
カヤノ編最終回です。
独自設定とか独自解釈とか多めです。
その朝、我が家には二つの春があった。
我が弟、リュウくんの春。
我が妹、キリちゃんの春。
私はそれを、朝食の後に知った。
当の二人から、直接。
しかも、二人とも結婚を前提としたお付き合いをするらしい。
しかもしかも、リュウくんは当人両親諸々公認で二人と恋人になったらしい。
しかもしかもしかも、キリちゃんは女の子同士で結婚するらしい。
らしい、らしい、らしい……。
「アバ、アババ……!?」
愛に貴賤はないと思う。
色々な形があっていいと思う。
けど、飲み込む準備くらいはさせてほしかった。
「ん? どうしたのカヤ姉?」
知らぬ間に、私の弟妹は凄い事になってました。
そう、知らぬ間にである。どうやらパパママには既に伝えられていたらしいし、キリちゃんも知っていた……というか企てた本人だとか。。
文字通り、蚊帳の外であった。
「エフッ、エフッ、エフッ……!」
幸せな事なんだろう。祝福すべき事なんだろう。それはいい、それはいいのだ。
ただ、ハーレムとか同性婚とか、そういうのよりも。
ほったらかしにされたのがショックで、私の脳はふにゃふにゃになってしまった。
理由を訊いてみると、
「え、カヤ姉絶対バラすじゃん。あと余計な事しそうだし」
私は気絶した。
まあ、うん。
その通りだと思うから。
薄れゆく意識の中、私は心でサムズアップした。
弟妹たちよ、幸運あれ。
● 〇 ●
アカデミーに帰ると、生徒会長の私は相も変わらず学生なりに忙しくしていた。
学業もそうだが、在籍生徒数の多いアカデミーの生徒会は普通に仕事が多い。それを片付けているとあっと言う間に寮の門限になるし、部屋に帰ったら手持ちポケモンのお世話もしなきゃいけない。
休みの日だって、リュウくんもキリちゃんも以前にもまして色々やってて家族と遊んで癒やされるなんてできない。実家に帰るというのも、前と違って簡単じゃない。
二人は、将来の為に努力しているのだ。邪魔しちゃいけない。
リュウくんは本格的にドラゴン使いの道を進むらしく、空いた時間の多くをトレーナーとしての訓練に使い、残る時間を恋人達と共に過ごしていた。
姉が入る隙間がない。
キリちゃんも卒業後の為に色んな勉強をはじめていた。かと思えばこれまで興味を示していなかったスポーツなんかにも手を出して、苦戦しているらしい。私が手伝おうかと思ったら、恋人がサポートしてるみたいだった。
姉が入る隙間がない。
弟も、妹も、恋人ができて、姉を構わなくなってしまった。
幸いなのは、二人とも前より活き活きしてる事だ。
けど、うん、お姉ちゃんは寂しい。
未だ私には分からないのだが。
恋人というのは、交際とは、そんなに良いものなんだろうか。
パパとママを見ていたので、結婚の良さは分かるのだ。いつか私も結婚したいし、子供もほしい。
けど、彼氏が欲しいかというと、そうでもない。そうでもないが、相手がいないと結婚できない。
寂しさを埋める為のツール……という訳ではないが。
弟や妹に触発された……とかでもないが。
私も、恋をしてみたいものである。
「書記ちゃんってさ」
「何です?」
「彼氏いるの?」
書記ちゃんと二人きり。キーボードを叩く音が響く生徒会室で、何気なく訊いてみる。
ちょっとした雑談だ。私の場合、こういう無駄口を叩いてる方が作業が捗るのだ。
「彼氏ですか?」
「うん」
「いますよ」
「そうなん……いるの!?」
意外な返答に、思わず立ち上がってしまった。
すごいビックリであった。書記ちゃんは如何にも生真面目堅物ガールといった雰囲気の子なので、そういうのには興味がないものとばかり思っていたのだ。
「ええ」
「誰!?」
「副会長ですが」
「えぇ!?」
「皆さん、気づいてるものかと。隠してませんし」
「えぇーっ!?」
これまた、私の知らない間にすぐ傍に春が来ていた。
全然気づかなかった。生徒会室では、彼と書記ちゃんは事務的な会話しかしてなかったし、それほど仲が良いとは思ってなかったのである。
そんなビックリ情報を知った私は、自室で独り決意した。
私も彼氏作るぞ、である。
リュウくんがあんなにも幸せそうにしてるのだ。あのキリちゃんが凄まじい気力を発揮してるのだ。恋には、恋人にはそれだけの魅力とエネルギーの源泉があるに違いない。
言ってしまえば興味本位であった。私もその幸せを感じてみたいのである。
そう決意した私だったが、心は穏やかだった。焦燥感も何もなかった。ぶっちゃけ余裕であった。
なにせ、私はモテる。それも男女から。子供の頃から告白されまくりで、アカデミーでも同様だった。むしろ、魅力が増した今が一番のモテ期と言っても過言ではあるまいよ。
入学当初など、毎日の様に交際を申し込まれたものである。
なに、恋人くらいすぐできるさ。
「できませんでした……」
「そうですか」
決意して約一ヵ月、クラスでの会話の最中ちょくちょくと「私も彼氏欲しいなぁ~」みたいな事を言っていたのだ。
そうすれば私の交友関係からカヤノさん彼氏募集中の情報が伝わり、我こそはという男子がトライアタック仕掛けてくると思っていたのだ。
結果、何の成果も上げられませんでした。
え? 何で? なんで誰も私に告ってこないの?
入学してしばらくは一日数人レベルで来てたじゃん。
直はともかく、メッセージでくらいあってもよくないか?
「会長ってモテたいんですか?」
「そりゃ……」
書記ちゃんに訊かれて、思う。
いや、そうでもないなと。
私がしたいのはあくまでも結婚……というか、パパとママみたいな関係を構築する事であって、不特定多数の男子から告られまくってちやほやされるという状況を欲している訳じゃあないのである。
気分はいいが、それだけだ。そこにママにとってのパパはいない。
「別にモテたい訳じゃない、かなぁ?」
「ならいいんじゃないですか? 無理して恋愛しなくても」
「でもなぁ……」
モテたい訳じゃないが、恋はしたい。その上で結婚したいし、幸せな家庭を作りたい。だからモテるに越したことはないと思う。
本気で作ろうと思えば作れるとは思うのだ。作るだけならば。けど、それって恋愛なのか? と思わなくもない訳で……。
うんうん呻く私に、書記ちゃんは平坦な声で云った。
「会長って何がしたいんですか?」
結局、何も解決しなかった。
問題は残ったままで、私の頭には靄がかかったままだった。
雑談の内容も、恋とか愛とかの悩みも、いつの間にか頭から離れていった。
けれど……。
――会長って何がしたいんですか?
あの時の書記ちゃんの言葉が、妙に頭に残った。
● 〇 ●
もやもやしたまま時が過ぎて、リュウくんもキリちゃんも卒業してしまった。
今やアカデミーで家族成分を摂取する事叶わず、自棄になった私は生徒会長の座を降りた。
ちゃんと引継ぎはした。私は前会長とは違うのだ。
「将来、かぁ」
テーブルシティの公園で、ポケモンたちとピクニック。
リクライニングチェアに寝そべりながら、空を見る。
あれから時が経っても、私の中に明確なビジョンはなかった。
あと、彼氏もできなかった。
目標、ビジョン、将来の夢……。
ぼんやりとなら、あるのだ。
結婚して、子供が欲しい。パパとママみたいな関係を作りたい。多分、私にとっての最高の幸せって、これなんだと思う。
けど、この夢は相手がいないと叶わない
そもそも、私は結婚したいと思える人……付き合いたいと思える人と会った事がない。
その事を友達に訊いてみたら、まずどんな相手と結婚したいかだと言われて、例えを訊くと「顔っしょ!」とか「身長っしょ!」とか「性格っしょ!」とか返ってきた。
で、それら要素をまとめて理想の相手を考えてみると……。
顔は、まぁ……パパみたいな顔だったらいいな。
身長も、パパくらい高かったら良いよね。
性格? 一緒に遊んで楽しい人がいいなぁ。あと、すぐ怒る人とか他人の悪口言う人とかは無理。
趣味も共有できる人がいいな。アウトドアとか好きだし、ある程度運動ができる人じゃないと。そうなると筋肉ある人がいいなぁ。
ポケモン好きってのは絶対。私がポケモン大好きだし、ダークライの存在を怖がる人はNGだ。
と、色々妄想してみると……。
パパになってしまった。
ファザコン過ぎだろ、私。
「あ、これ未婚ループだ」
ふと気づく、アカン奴や。
昔、パパの専属オペレーターさんが似たような事言ってた。
あの人、もう結婚してるのかな……。
「どうすりゃいいんだろうね、ダークライ」
「……、……、……」
ダークライは何も言ってはくれない。
そりゃそうだ。ポケモンだもの。
そういえば、前にも似たような事があったな。
そう、私が島めぐりを終えてしばらくして、旅に出る前の事だ。
その時も、私はダークライに話してみて、決めたのだ。
「旅、かぁ……」
確かに、旅は楽しかった。
色んな出会いがあったし、色んな事があった。辛い事もあった気するけど、あんまり覚えてない。
結局、ある程度外に出てみて家族が恋しくなった訳だが。
「でも、またしたいとは思わないかなぁ……」
行くにしても、旅行レベル、キャンプレベルでいいと思えた。
そうなのだ。やってみて分かったが、旅が好き……というのはちょっと違う。
どっちかというと、私は家族が好きなのだ。ポケモンが好きなのだ。だから、家族であるポケモンとの旅が楽しかったのだ。
そう気づいたはいいものの、だからどうしたという話である。
選択肢がひとつ減っただけではないか。
「ん?」
ふと見ると、遠くの方でふさふさ揺れる黒い毛を見つけた。
モサモサの髪、スッと通った背筋。パルデアリーグチャンピオンのオモダカさんだった。
そういえば、オモダカさんって私が子供の頃からチャンピオンなんだよね。
一生現役というか、スーパーエネルギッシュビジネスウーマンって感じの人だ。それでいて、バトル以外の仕事もしっかりやってる凄い人だ。背筋はビシッと、スーツはかっちりと、男女共に人気のある人なのだ。
でも、流石にそろそろ世代交代していいんじゃないかな……。
「あっ!」
その時、カヤノに“10まんボルト”走る。
見つけてしまった。私の夢が全部まとめて叶うかもしれないウルトラビースト的ひらめき。
ポケモンと居れて、人の役に立てて、皆から注目が集まるお仕事。
才能が活かせて、好きな事で、皆から人気が集まるお仕事。
あるじゃん。
「私がチャンピオンになる事だ」
目標が見つかれば、私の行動は早い。
シュバっと起き上がって、私はダッシュで校長室に向かった。
待ってろオモダカさん、下剋上だぜ。
● 〇 ●
卒業後、私はパルデアポケモンリーグに就職した。
それから諸々の試験を受けて資格を取り、正式にオモダカさんとバトルをして、これに勝利した。
結果、私は新たなるパルデアチャンピオンになった。
オモダカさんもいい歳だ。そろそろ代替わりがあってもいいだろう。
「あとはお任せしますね、カヤノさん」
「はい! 任せてください!」
チャンピオンになった私は、オモダカさんから少しずつ仕事を引き継いでいった。
広報に交渉に実務に監修……チャンピオンって意外とやる事多いんだなとか思いつつ。
思ってたんと違ったが、確かにそりゃそうだである。何もどこぞのRPGの魔王の様に、玉座でふんぞり返ってばかりな訳がない。
あくまでも、公務員であった。アイドルアスリート然としたガラルとは大違いである。
「そろそろ課外授業かぁ。楽しみだな、どんな子が来るんだろ~」
しかし、やっぱチャンプと言ったらリーグのてっぺんで待ち構える魔王ポジだろう。
けど、魔王は魔王でもプロの私は「やさしい」モードの魔王である。リーグ挑戦者に対し、流石にガチパを繰り出すのはNGだ。ダークライ出す訳にもいかんしね。
なので、私は新たに得意でも苦手でもないポケモンを揃える事となった。
フローゼル、デンリュウ、ファイアロー、バンバドロ、デカヌチャン、マフィティフ。
あく以外適性タイプじゃないが、やってやれない訳じゃない。皆、私が見つけた良い仲間達だ。
我ながら器用なものである。
パルデアポケモンリーグは他地方のリーグと同じく、常時挑戦者を待っている。
ジムや四天王には、課外授業中のアカデミー生徒だけでなくプロトレーナーを志す多くの人が挑戦するものだ。
そこのテッペンで待ち構える私、気分最高である。代替わりして初のお相手は誰かな?
「あれ? 課外授業終わってない?」
「ええ、今年は四天王が限界でしたね」
と思っていたのだが、大本命である課外授業期間中に私の前にチャレンジャーが訪れる事はなかった。
考えてみれば、そりゃそうだである。挑戦者の半分はバッジ4つで脱落し、四天王に挑めるのは一握り。チャンプに挑めるのは一握りの中の一握り。
魔王様の出番は、基本ない。
「それよりカヤノさん、次期ジムリーダー候補のトレーナーについてなのですが……」
「あ、はい」
てな感じなので、チャンピオンである私の仕事のほとんどは、事務的な書類仕事かポケモンレンジャー紛いの警邏活動ばかりであった。チャンプの姿か、これが……?
それなりにやりがいはあるが、やっぱ思ってたんと違う。本業こっちじゃん。
オモダカさん、やっぱアンタすげぇよという気分であった。
私がチャンピオンになって何年か経った。
あぁ今年も課外授業の季節かなと思いながらいつも通りの仕事をしていると、久々にチャンプとしてのお呼び出しがあった。
どうやら、私の元に挑戦者が来るかもという話だ。
私はウキウキでポケモンを持っていき、髪や衣装をセットしてスタンバっていた。
すると、私の前に現れたのは弟のハスキくんであった。
「あ、ハスくん! 四天王突破おめでとー!」
「うん、がんばった!」
そっか、ハスくんもアカデミー生徒だもんね。あの小さかったハスくんがねぇ……。
と、感慨深い気持ちにはなったが、公私混同はしない。
「じゃ、お話はここまで。本気で来てね、チャレンジャー」
「はい、対戦よろしくおねがいします!」
そして、私はチャンピオンとして迎え撃った。
「デカヌチャン、“デカハンマー”」
「ニンフィア、“まもる”!」
ハスくんは強かった。少なくとも、私がチャンピオンになってから相手してきたトレーナーの中でも指折りに。
けど、ハスくんの腕前がチャンピオンランク相応かというと、ちょっと違う気がする。
違和感があった。ポケモンとトレーナーの間に、これまでのものとは別種の関係性があるように思えた。
何か、ピースがひとつ欠けてるような気がするのだ。
「対戦ありがとうございました。あと一歩だったね」
「うん、そうだね」
結局、私はハスキくんに勝った。
強かったが、チャンピオンランクには相応しくない。でも、間違いなく超一級の才能がある。
なんとも分からん。
「ハスくんハクちゃん、ごめんね呼び出しちゃって。ほら、好きなもの注文していいよ」
「あざーす!」
「もう、兄ちゃんもっと慎み持ってよ」
翌日、気になったのでオフの日に合って話を聞くと、あぁやっぱりと思うところがあった。
どうやら、ハスキくんはどちらかというと妹のハクちゃんと一緒に戦うマルチバトルのが得意なのだという。
で、ハクちゃんはバトルより育成のが得意なんだと。
「バンバドロ、ファイアロー、出番だよ」
「ゆけ、マリルリ!」
「がんばってオーロンゲ!」
なので、試しに1対2でバトルをしてみると、双子タッグはそれはもう強かった。
少なくとも、チャンピオンとしてのパーティで負けちゃうくらいには。
ガチパで、勝てるかどうかであった。
「うん、二人とも強いね」
これは、アレだ。評価されない項目ですからねという奴だ。二人、マルチバトルなら他地方含めても屈指の才能あると思う。
なので、二人がもしその気ならリーグに推薦するよ、と言っておいた。
もしかしたら、将来ジムリーダーあたりになるかもしれない。二人の決断次第だが、選択肢を増やしておこうと思ったのだ。
そんな事もあったりして、私はそれなりにチャンプ生活を満喫していた。
していたのだが……。
「えっ! あの子結婚するの!?」
「えっ! あの人子供できたの!?」
「えっ! あの娘逆玉したの!?」
気づくと、私の友達という友達はどんどん結婚していった。
対し、パルデアが誇る超人気チャンピオンになったはずの私には、一切男の影がなかった。
おかしい、こんなはずじゃなかった。
認知度が上がれば私を知る人が増え、私を好きになる人が増え、私ガチ恋勢がわんさとやってくると思ってたのだ。
モテたい訳ではないとは言ったが、モテたくない訳ではない。ともかく母数を増やそうとして、行ったのがコレだ。チャンプ婚活大作戦。
が、現実はどうだ。
弟も妹も結婚し、今や私は叔母である。
「こんなのおかしいよね書記ちゃん!」
「飲みすぎですよ、会長」
という事を、同じくポケモンリーグ職員になった書記ちゃんに愚痴ったりしていた。
場所は宝食堂。私の前には空ジョッキ。彼女の左手には指輪があった。
「私人気者なのにぃ! チャンピオンなのにぃ!」
仕事に不満はない。忙しいが、結構やりがいある仕事だと思うのだ。
実際、最初は不満の多かったチャンピオンのお仕事も、やってくうちに楽しくなってきた。
真っすぐ熱いトレーナーと相対するのは刺激的だし、パルデアトレーナーの顔ってのも悪くない。書類ひとつひとつ、バトルひとつひとつで多くの人を守ってるのだという自覚が持てるから、否応にもやる気が出るというものである。
頼られるのが好きな私、元気いっぱいである。
「やっぱ私からガンガン行った方がいいのかなぁ~?」
「どうでしょうね。少なくとも、全部受け身なのは問題では?」
「マッチングアプリは……」
「それはダメです。チャンプの自覚を持ってください」
最初は不純な動機でなったチャンプも、今では誇りを持ってやっている。
パルデアには家族がいて、ポケモンともいれて、やりがいもある。
私は、皆が帰るパルデアを守ろうと思うのだ。
パパみたいにレンジャーとして動くのではない。パルデアのポケモントレーナー代表として、皆の帰る場所になろうと思ったのだ。
今は、その夢を叶えている最中だ。
なかなか、悪くないと思える。
「すみません! 生ひとつ!」
まぁそれはそれとして結婚したいし子供欲しいし彼氏欲しいのだが。
何故かそれだけは上手くいってない。
やっぱ、書記ちゃんの言う通り受け身じゃ何ともならないのかもしれない。
明日からは、もっと積極的に良い人探そう。
そう、思った。
店を出て、書記ちゃんと歩く。
フラフラになった私を、彼女は支えてくれた。
思えば、長い付き合いである。
アカデミーからずっと一緒だったのだ。
大人になってもこういう付き合いができる関係ってのはいいもんである。
「ねぇ~、私なんでモテないんだと思う?」
なので、こんな絡み方さえできてしまう。
遠慮のない、気の置けない会話だ。
軽~い適当な愚痴みたいなものである。
「チャンピオンだからじゃないですか?」
と思ったら、なんか鋭い返事がきた。
「え……?」
どゆこと?
ちょっと酔いがさめた私は、書記ちゃんに疑問の目を向けた。
「いや、会長って外から見ると完璧超人過ぎてちょっと近寄りがたいというか。話してみるとそうでもないんですけどね。そういう、完璧に見える人って、モテないんですよ」
「え、そうなの?」
私からするとビックリな心理であった。私ってそんな風に見られてたんだという気持ちもある。
いやでも、あのチリちゃんのモテモテ伝説は耳にオクタンが住み着くくらい聞いてるし、四天王のポピーさんもめっちゃモテるじゃんである。
他地方でもアイリスさんの人気は凄かったし、キバナさんなんてモテモテのモテだ。凄い人は、凄いモテるじゃんだ。
凄いチャンプがモテない訳ないのである。
「オモダカさん、モテてなかったでしょう?」
「あっ……」
なんか納得できた。
グルーシャさんが女の子に群がられても違和感ないけど、オモダカさんが校舎裏に呼び出されてもバトルしかしなさそうである。
なるほど、そういう事かであった。
「そうですよ。どれだけ人柄を見せても、チャンプはチャンプ。相手にも相応の器がいるものです」
「えぇ……はいぃ……」
ちょっとチャンプ辞めたくなってしまった。
辞めないけどさ、辞めないけどさ……。
「……書記ちゃん」
「何ですか?」
「有給使っていい?」
まぁ、うん。それはそれとして。それはそれとしたい事ばかりだけど、ともかく。
少し、休みたい気持ちになった。
明日から頑張ろう。
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