【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告ありがとナス!
マノキ編、初回兼最終回です。
実質子供編の総括みたいな感じです。
アンケートで決まりました。マノキの相棒ポケモンはナミイルカ。願望は「自然」です。
ナミイルカ。高さ1,3メートル。重さ約60キログラム。
よろしくお願いします。
俺は、記憶力がよくない。
好きな事や良かった思い出などは覚えていられるのだが、興味ない事とか嫌だった時の記憶は1、2のポカンで忘れてしまう。
そんな俺だが、まだ物心つくかつかないかくらいの記憶に、少しばかり残っているものがあった。
良い思い出というやつである。
俺の中にある最も古い記憶は、姉に抱っこされて見た“みだれづきの滝”であった。
囂々と響く滝の音、幼児心に、グッと来たのを覚えている。ただただ、雄大な景色に圧倒されたのだ。
母に曰く、その記憶は俺が3歳の時に行った小旅行での事だったらしい。
我が家は大の旅行好き一家である。
6歳の時にはガラル地方のワイルドエリアでキャンプをした。
8歳の時にジョウト地方のいかりの湖に行ったのはしっかり覚えてる。
大自然の旅行以外にも、ミアレやヒウンといった大都市にも行った。これはほんの少ししか記憶にない。
色んな所に行かせてもらった俺は、最古の記憶にあるような大自然が生み出す神秘……みたいなのに強く惹かれる性質の持つようになった。いや生まれつきかもしれんが、とにかく森やら山やらが好きだった。
実際、ミアレもヒウンもそんなに覚えてない。
ともかく、昔から俺には“自然”への憧れがあったんだな。
それこそ。将来の夢にしちゃうくらいには。
俺の家族は、所謂大家族だ。
父と母、姉三人に兄二人、俺を加えて計八人。なかなか多いだろう。
でもって、俺除く七人は皆さんとんでもないお方ばかりであった。
父はフリーランスのポケモンレンジャーであり、たまに四天王の手伝いなんかをしている。
四天王と言えばポケモントレーナーの憧れの的である。ありがたい事に、俺はその才能を少しばかり受け継がせてもらった。
当然、バトルの腕は超一流で、おまけに伝説ポケモンを手持ちに入れている。いや凄いね。
母は有名な会社の社長であり、この家一番の稼ぎ頭だ。
お陰で毎日美味しいご飯にありつけるし、ひもじい思いをした事もない。
おまけに、俺を生んだ時には既に30歳を超えてたはずだってのに、クラスメイトのママさん方と見た目年齢に差がないんだから凄いもんである。
親が親なら子も子である。
一番上の姉はというと、俺が幼稚園児やってた頃にはもうパルデア地方のリーグチャンピオンであった。
四天王同様、チャンピオンといえばパルデア在住トレーナーにとって憧れの的のド真ん中である。要するにパルデアで一番強い人なのだ。
曰く、先代より親しみやすい系で通しているらしいが、少し前に生放送で「彼氏募集中!」と言ってしまって若干炎上したとか。
兄は、なんと二人も奥さんのいるハーレム野郎だ。
あと、この兄は当代最高のドラゴン使いとか何とかで、イッシュ地方にあるホワイトフォレストでドラゴンサファリゾーンみたいなのを作ったらしい。
けしからん事に二人の義姉はすごい美人であった。
次女の姉は地方を跨いでブイブイ言わせてる系のイケイケビジネスパーソンだ。曰く、落ち目だった会社を立て直した後、寂れ往くマサゴタウンの経済を上向かせたとかで、界隈では伝説的な存在になってるらしい。
で、なんか色々あって女同士で結婚した。結婚式の時に食べたケーキが凄い美味しかったのを覚えている。
話によると、この姉も母同様にゴーストポケモンの使い手で、その腕前はチャンピオンの長姉に勝るとも劣らないとか。盛り過ぎでは?
次男の兄と三女の姉は一卵性双生児の兄妹で、今も昔も菓子職人を志すべく努力している。
上三人と違い、双子二人とは物心つく頃から一緒に住んでいた。よく試作品のお菓子を食べさせてもらっていたものである。
あと、最近ジムリーダー試験を突破したとか言ってた。パティシエでジムリーダーなんて凄いわねである。
そんなとんでもない家庭に末っ子として生まれたのが俺。ポケモントレーナーのマノキだ。
御年12歳、アカデミー入学前である。
凄い家に生まれた末っ子、まぁ注目されたよね。
けど、俺には父譲りの無根拠な自信と、母譲りのエゴの強さがあった。だから、そういう目線はあんま気にならなかった。
あと、俺は一つ図抜けた能力を持って生まれてきたので、多少周りから何言われても平気であった。その気になれば、何とでも出来る。
理由は単純。
俺、力持ち。運動、できる。
ギフトという奴だったっけか。幼稚園から今に至るまで、俺は同世代の人にスポーツで負けた事がない。
喧嘩なんかしたら確定で勝っちゃうので、した事はない。空手や柔道も習った事あるけど、二年くらいで師範超えちゃったもんね。割と化け物だと思う。
ともかく、俺は根拠のない自信と根拠のある自信で以て、かなり根明な人格を形成するに至った。
ところで、子供の時分、最も貴ばれる能力とは何か。
身体能力である。
4歳の頃、俺は運動会のエースだった。
7歳の頃、俺の握力は50キロだった。
10歳の頃、俺は100mを10秒フラットで走れた。
ゴリランダーかな?
父曰く、「俺よりマサラの血が表に出てる」らしい。なにそれマサラ人こわ! と思ったので、増長はしなかった。
で、個人でも団体でも運動ができる俺は、幼稚園でもスクールでも超がつくほど人気者であった。
昼休みも放課後も休みの日も、俺は友達と外で遊ぶ事を好んだ。
海に行ったり、自転車乗り回したり、まぁ色々と。
「マノキ! 海行こうぜ海!」
「おう!」
中でも俺は、海で泳ぐのが好きだった。
マリナードタウンは湊に程近い漁業と運航の町である。自然、近所の子供からするとマリナードの海は良い遊び場であった。
海や浜辺には、たまに危ないポケモンがいる事もあるが、定期的にポケモンレンジャーが巡回しているのでそうそう危ない目には遭わない。
うん、そうそう……だ。稀にはある、という事。
運が悪ければ、危ない目に遭うし、俺は先天的にも後天的にも自信家であった。
だから、痛い目を見た訳で。
ある晴れた日の事であった。
いつもの様に友達を連れて浜辺に行くと、そこでは一匹のナミイルカとカイデンの群れが戦っていた。
カイデンの群れが一斉にでんきショックを放ち、ナミイルカは砂に足を取られながらも賢明に攻撃を避け続けていた。
それはバトルではない、ポケモンの狩りの様子であった。
「あっ、おいマノキ!」
考えるより先に、身体が動き出していた。
危ないから逃げようと言う友達を無視して、俺はナミイルカの方に突っ走っていった。
「うぉおおおおおお!」
俊足の俺である。剛腕の俺である。俺は、ふんすとマッスルパワーを解放し、危うくトドメを刺されそうになっていたナミイルカを抱え上げ、Uターンしてダッシュした。
当然、ナミイルカを抱えた俺はカイデンの群れに追い回される事となった。友達も逃げる。俺も逃げる。たまに攻撃が当たりそうになったが、こなくそ負けるかと大人のいる方へ走って行った。思えばナミイルカを海に逃がしてやればよかっただけなのだが、それはそれ。
やがて巡回中のレンジャーの元まで辿り着き、レンジャーにカイデンを追っ払ってもらった。その足でフレンドリーショップでキズぐすりを買い、ナミイルカを治療した。
「きゅきゅ~い!」
回復したナミイルカは、お礼を言うようにひと鳴きして夕陽の海へと帰って行った。
良い事すると気分が良いものである。俺は意気揚々と家に帰り、寝た。
翌朝、全身筋肉痛であった。
「あれ? お前、あの時のナミイルカか?」
「きゅい!」
それからの事、俺が海に行く度、決まって件のナミイルカと顔を合わせるようになった。
ポケモンに言葉は通じない。けれど感情は伝わるものだ。ナミイルカは、俺を友達として認めてくれたのだ。
「きゅい! きゅい!」
「え、乗っていいのか!?」
促されるままナミイルカの背に乗ると、水上バイクかサーフィンみたいに海の上を走る体験をさせてもらった。
俺の友達も乗せてもらって、皆ではしゃいだ。ナミイルカも人間と遊んで楽しんでるらしかった。
それからというもの、放課後も休日も、海に行ってはナミイルカと戯れて遊んだ。
海にポケモンに自然に運動。好きなモンのフルコースであった。
そんな中、俺がナミイルカライドに慣れた頃、事件は起こった。
いつもの様にナミイルカの背に乗って海を移動していると、小さめのクルーザーがポケモンの襲撃に遭っているのを発見した。
「うわ! ありゃヤバいな! 近づくと巻き添え食らうな。離れよう、ナミイルカ」
「きゅい~」
船を襲っていたのはギャラドスだった。そいつは船上の護衛トレーナーと戦っていた。バトルは護衛優勢に見えるが、互いの技の余波が船を激しく揺らしていた。
「あっ……!」
その船から、小さな影が海に落下していくのが見えた。
小さな影、それは子供だった。大人たちは船の揺れに耐えるのに必死で、子供がほっぽり出された事に気づいていない。
「ナミイルカ!」
「きゅい!」
俺とナミイルカは、迷う事なく子供を救う事を選んだ。
子供は泳げないのか、水面でばしゃばしゃやっており、苦しそうだった。あのままでは溺れてしまう。ナミイルカだけでは無理だ。俺だけだと速度が足りない。協力プレイだ。
泳ぎの速いナミイルカにターゲットまで近づいてもらって、掴める手のある俺がその子の手を掴んで引っ張り上げた。さながらバスラオ一本釣りの様に。俺の筋力と、ナミイルカの勇気の賜物だ。
半分パニックになってる子供に、俺は落ち着かせるよう呼吸を促した。プロではないのでやり方は分からないが、とにかく「大丈夫だ」とかそれ系の事を言いまくった。
「ゲホッ! ゲホッ! うぇぇぇ……!」
「船には……近づくと余計危なそうだ。ナミイルカ、マリナードタウンに戻ってレンジャーに助けてもらおう!」
「きゅいー!」
子供は女の子だった。金色の髪をポニーテールにしていて、ミニスカートを履いていた。なんとなくカロス人っぽい雰囲気がした。
「ごめんだけど急ぐよ! 捕まっててね!」
「えっ? うわぁあああ!」
少し申し訳ないが緊急事態である。俺は女の子をがっちりホールドして、ナミイルカに全速力で泳いでもらった。
すると運悪く、カイデンの群れに鉢合わせしてしまった。あの時のカイデンかそうでないかは知らないが、そいつらは狩りでもないだろうにナミイルカを襲ってきた。
「攻撃当たるのが一番まずい! 避けるの重視で動いてくれ! 上の事は気にするな!」
「きゅきゅー!」
右に左に裂けるナミイルカ。上に乗っている俺も体幹を整えるのがやっとで、女の子を手離さないのに必死だった。
かと思えば群れの長であろうタイカイデンまでやってきて、彼らの攻撃はいっそう激しくなった。
「うわぁあああ!」
「くっ! ナミイルカ!」
やがて、タイカイデンの攻撃を避けた際の衝撃でナミイルカが海面を跳ね、俺と女の子は飛ばされてしまった。
数瞬の浮遊感、俺と女の子は大きく飛んで着水し、すぐに女の子を抱えて水面に出た。
「ひっ……!?」
「あぁこりゃマズい……!」
立ち泳ぎのまま、空を見る。俺たちを取り囲むタイカイデンと、カイデンの群れ。ナミイルカの姿はない。俺はポケモンを持っていない。
流石に万事休すか。見ると、マリナードの方角からヘイラッシャに乗った顔見知りのポケモンレンジャーが近づいてきていた。けど安心はできない。レンジャーが来る前に、俺等は殺される。
時間を稼げばいい。そう確信した俺だったが、何も思いつかなかった。ポケモントレーナーではない俺には、手札がなかった。とにかくカナヅチの女の子を離すまいと、彼女の身体を抱きかかえていた。
タイカイデンが電気を溜めている。カイデンも追い風を起こしている。マジかよ殺す気じゃん。
あ、これダメだな、そう思った。
――次の瞬間である!
「ギュォォォオオオン!」
SPLAAAAAAASH!
激しい水柱が吹き上がる。
みだれづきの滝を逆さにした様な水柱は発電中のタイカイデンの身体にヒットして、奴の注意を逸らした。
陽の光でキラキラ輝く飛沫の中、青のボディがギラリと光る。そいつは、自身の強さを誇示するように大きく右腕を振り上げた。海の中から、筋肉モリモリマッチョマンのポケモンが現れた。
そいつは胸に大きなハートのあるポケモンだった。それは、図鑑で見た事のある奴だった。ちょっとマイナーで、たまに知らない人がいる、アイツだ!
「あ、あれは何!? カイリキー? ニョロボン?」
「いや……イルカマンだ!」
イルカマン・マイティフォルム!
あのナミイルカが進化して、変身して帰って来たのだ。
「ギュオン!」
私が来た! とばかりにポーズを取るイルカマンは、威風堂々とタイカイデンの前に立ちはだかった。
タイカイデンも負けじと威嚇をする。カイデンもいる。以前数的有利はあちらにある。が、何故か負ける気は一切しなかった。
「イルカマン! “ジェットパンチ”ィ!」
咄嗟だった。レンジャーが来る直前、とにかく時間を稼ぐ必要があると思った俺は、気づけば思い切り叫んでいた。
トレーナーでもない俺の指示を聞き、イルカマンは水面を跳躍してタイカイデンの眼前に接近。
そして、唸る拳を振り上げ……!
「ギュゥゥゥ……」
それは、ナミイルカの進化系というには、あまりにもマッチョ過ぎた。
大きく、分厚く、大雑把に強過ぎた。
それは、まさに筋肉だった。
「ォォォオオオオオンッ!」
SMAAAAAAAAASH!
一 撃 必 殺!
筋肉の化身の如きイルカマンの攻撃を受け、タイカイデンは盛大にぶっ飛ばされた!
驚き、慄き、長の指示もなく去って行くカイデンたち。
遠くで着水したタイカイデンも、負けを悟ってそそくさと逃げていった。
「ありがとうイルカマン!」
俺はイルカマンにサムズアップした、すると、彼もヒレを立ててマッスルポーズを返してくれた。
女の子は、ぼーっとしていた。何故か俺の顔を見て、イルカマンの勇姿を見てはいなかった様である。
勿体ない。
その後、俺と女の子はヘイラッシャ乗りのポケモンレンジャーに救出された。
女の子は船に乗っていた両親に合流でき、俺はレンジャーに無理無茶無謀とお叱りを受けた。助けた女の子とその親からは感謝された。
連絡を受けて駆けつけて来た母には、とても心配をかけてしまった様だった。いつも落ち着いてる母にしては珍しく、俺を抱きしめて少し泣いていた。申し訳ないね。
家に帰り、父にこの事を離すと、これまた父も狼狽していた。
そして、父は神妙に頷くと、こう言った。
「マノキにも、守ってくれるポケモンがいるな」
翌日、俺はいつもの海でイルカマンと再会し、彼にボールへと入ってもらった。
イルカマンも了承してくれて、俺はこの時にポケモントレーナーになったのだ。
ともかく、俺はこの事件で思い知った。
自然は美しいが。危険である。
ポケモンは親愛なる隣人だが、怖い生き物である。
俺は、将来漠然と自然に関われる仕事をしたいと思っていた。
色んな地方に行って、色んな景色を見たいと思っていた。
まだ、何を目指すかは決めていないが、とにかく俺は俺の身を守れるようにならないといけない、そう思い知った。
だから、俺は強いポケモントレーナーになろうと心に留め置いた。
相棒はナミイルカ……もといイルカマン。
普段はかわいいコイツも、やる時はやる凄い奴だ。
仲間を増やして、夢を叶えるのだ。
「カントー、アローラ、イッシュ……色んな海に行こう、イルカマン」
「きゅきゅいー!」
そうして時が過ぎ、俺はアカデミーに入学した。
ポケモンと、自然と、生物学。それ系統を重点的に。
学ぶ事は多いし、学びたい事も多い。
チャンピオンでもドラゴン使いでも、社長でもパティシエでもないが、俺は俺のやりたい事の為に努力しようと思う。
頼れる相棒と共に。
アカデミーに入学して、三年目。
俺は三回目の課外授業で、身体を鍛えまくった。
そして、パルデアボディビル大会10代の部で優勝した。
決め手は勿論、相棒ポケモンとの協力技。
「はい! サイドチェストー!」
「ギュォォオオオン!」
その年、俺は筋肉のチャンプになったのだ。
● 〇 ●
それなりに時が経ち、けれどそれほど遠くない未来。
カントー地方はハナダシティ北西、ハナダの洞窟。
その入口の前に、複数の人影があった。
彼らは一様に探索用と思しき装備を身に付けていて、周囲にはこれから危険地帯に挑むという緊張感に満ちていた。
「ポケモンよし、ボールよし、ベルトよし、荷物よし、機材よし……」
その中に、緊張からか何度も装備の確認をしている少女がいた。
金の髪をポニーテールに結った少女は、新米の自然保護官であった。まだ資格を取って日が浅く、経験も少ない。
そんな彼女が、こうして危険な洞窟の調査に同行しているのは彼女が将来有望な自然保護官である証左……というより、早いうちに現場慣れさせようという先達の思惑故であった。
だからこそ、護衛に“彼”が指名されたのだ。
「あ、おはようございまーす!」
そこに、張りのある快活な声が響き渡った。
声の主は少女とそう年齢も変わらないだろう少年であった。日に焼けた肌に、ガラル人とカロス人の良いトコ取りをした様な美貌をしていた。
「え……?」
そして、少女は彼を見て、不意に胸が高鳴った。
記憶がフラッシュバックする。若い身で自然保護官になれる程優秀な記憶力が、あの日の感情を呼び起こしたのだ。
「あっ……」
声をかけようとして、できなかった。
少年は先輩保護官と少し話した後、こちらを向いて元気に挨拶してきた。
「どうも! 今回同行させてもらう事になったカメラマンのマノキです! レンジャー資格も持ってるので、道中の護衛は任せてください!」
マノキ。彼はそう名乗った。
少女の中の、あの日の憧憬が形を成す。名前も聞けず、ろくなお礼をする事もできなかった命の恩人。
多分、初恋の人。
「あの……!」
思わず声をかけた。かける事ができた。
今はそんな時じゃない。真面目にやれと脳内の冷静な自分が窘める。が、少女の心は今も高鳴り続けていて、理性と感情がギガインパクトを撃ち合っていた。
故にこそ、暴走中の少しの勇気が少女の本能をプッシュしたのだ。
「ん?」
少年と目が合う。吸い込まれそうな大きな瞳が、あの海で見た輝きのまま少女の瞳を射抜いた。
少女は、スカートを掴む動作をした。けど、今はミニスカートを履いてはいない。ギュッと握られた手は、何も掴む事ができなかった。これ以上の勇気が、湧いてこない。
けれど、どうしても、目の前の少年に伝えたい事があった。
「あ、あ、えと……!」
その、第一歩を。
自然保護官を志すきっかけになった憧憬を前に。
思い出が、勇気をくれた。
「あの、私の事、覚えてますか?」
「ごめん、覚えてない」
残念ながら、彼は覚えてなかったらしいが。
ともかく、こうして二人は再会を果たした。
この先、二人の間には何かあるかもしれないし、何もないかもしれない。
ドラマチックな展開か、あるいはクッソしょうもない話が紡がれるかもしれない。
それはそれ、別のお話だ。
マノキは夢を叶え。
少女は憧れと再会した。
二人の物語は続く。続くったら続く。
ボールの中、イルカマンは知っていた。
彼女の目に宿る、その熱い炎の意味を。
何故なら、彼の心には“愛”があるのだから。
感想投げてくれると喜びます。
次回、最終回。
ホントに最終回です。
ちょっと間隔空けます。
アンケートは終了しました。
ご協力ありがとうございました。