【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告も助かっています。ありがとうございます。
いつもの事ですが、独自設定多めです。ご注意。
ボチすき。
冬休み明け、ウーラオスを手持ちに加えた俺は、マスタード師匠の推薦状もあり正式に協会公認ポケモントレーナーの資格を得る事になった。
これで、普通の子供じゃ行けないような所にも行けるようになり、ちょっとした雑用程度のお仕事も可能になった訳である。
ケヤキ少年、未だ齢十に満たぬ頃の事であった。
ところで、トレーナーの才能を計る指標をご存じだろうか。
例えば、一部タイプのポケモンとの意思疎通がめちゃくちゃ上手くいくとか。
これは各タイプのジムリーダーが該当する。それで言うと俺はあくタイプとの親和性が高い訳だ。当時その自覚はなかったので、俺は俺の事をオールマイティ・トレーナーだと思っていた。
もうひとつに、手持ちの数がある。
何となくは分かるだろう、一匹より二匹、三匹より四匹の手持ちがいるトレーナーの方が大変だという事が。
基本、多くの人たちは相棒ポケモンが一匹である。少しでも才能がある奴は二匹、で、ある程度才能のある人は三匹くらいを手持ちにする。六匹持ってて十全に扱える奴などは結構珍しいのだ。
当時の俺の手持ちは、前から一緒だったイーブイ二匹とウーラオス。この三匹である。
年齢の事を考えると、普通に秀才だ。あまつさえそのうち一匹は伝説のポケモンであり、資格取得の過程で彼の元チャンピオンの推薦まであるのだから倍率ドン。
まさに神童、まさに天才。まさにナックルシティのスターのタマゴであった。
「ケヤキさんですよね? 握手してください!」
「君のウーラオスとうちのボーマンダを交換してはくれんかね?」
「見ろよ! ケヤキだぜ! 写真写真!」
言いふらした訳ではないが、人の噂は止められない。名実ともにポケモントレーナーとなった俺は、スクールの人気者からナックルシティの人気者へと進化していた。
街を歩けば声をかけられ、「ウーラオス見せて」とせがまれる。時にサインをねだられたり、無断で写真を撮られたりもした。
「ウーラオス、“どくづき”だ」
「べあーく!」
そして、目と目が合えばポケモンバトル。下校時や休日など、俺は色んなトレーナーとバトルし、その全てを打倒した。
ウーラオスの強さは言うまでもないが、俺のトレーナーとしての腕前も相当だった。中には現役のエリートトレーナーとのバトルもあったが、前述の通り俺は勝ち続けた。それはウーラオスを抜いたバトルでも同様であった。
「やー! ケヤキくんてばホント凄い子ねー! うちの子も見習ってほしいわー!」
「そうそう! 伝説ポケモンとまではいかなくても、勉強くらいちゃんとしてほしいわよねぇ」
「その点ケヤキくんは全部できるんだから偉いわねぇ!」
そんな俺の状況を見て、我が両親は鼻高々の様子だった。
自慢の息子の才能が確かな実績として認められ、カンストしていたご近所好感度も上限突破したのだ。俺への評価は両親への評価につながり、調子に乗った父はナックル出版から「天才のつくりかた」なる謎の育児本を出していた。
ちょっと外出すれば知らない人から挨拶され、塾に向かえば勉強勉強。スクールでは常に誰かと一緒であり、道場では広告塔として使われた。父の書籍にサインを書き、演奏のコンクールでは俺目当てに大量の観客が来場してきたりした。
休日も平日も、いつも誰かに観られていた。子供らしく遊ぶ時間が、どんどん失われていったのである。
子供の頃から図太い性根の俺だったが、さすがにこれは堪えた。幼少の日、フェアリーの笑顔と称された俺の笑顔は、いつのまにかヒンバスの真顔へと変わってしまった。
両親もその状態には気づいた様で、ハッとなって俺の健康を気遣うようになった。ちょっとお調子者な両親だが、根は善良である。現状が俺の心身に悪い影響を与えている事に、ようやっと目が行くようになったのだ。
自然、このままではマズいという話になった。
なので、引っ越す事になったのである。
引っ越し先はアローラ地方だ。
元々、父には転勤の話がきていたらしい。それに乗っかる形で、我が家はガラルを離れアローラへという流れだ。
とはいえすぐに引っ越すという訳ではない。まだしばらくはガラルで過ごし、次の春が来たら出発となったのだ。
「という訳で、ボクはアローラに引っ越すよ」
「「「えええーっ!?」」」
引っ越しは確定事項である。もう決まった事なので、俺はその旨を友達に云って回った。
寂しいと泣き出す友達もいたが、俺はどうにもその気持ちが分からなかった。会えなくなる訳じゃないんだし、よくない? という感じしかなかったのである。
「え……?」
そして、ムクノちゃんにもその旨を伝えたところ、彼女は呆然としていた。
そりゃ、唯一の友達である俺と離れたら、彼女はスクールで一人になってしまう訳で、悲しいのは分かる。
けど、じゃあムクノちゃんもアローラ来る? とは言えないだろう。寂しいだろうが、またいつか会おうよと誓い合った。
「どうしようどうしようどうしようどうしよう……!」
ムクノちゃんの眼には、ぐるぐるとした情念が渦巻いていた。
さて、引っ越し確定から数か月。
俺はガラル最後の思い出作りとして冬休みに旅行に行く事になった。
行先はカンムリ雪原。ガラル地方の最南端。雪と自然がいっぱいで、人が全然いない癒やしのエリアだ。
旅行にはヨロイ島の時と同様にムクノちゃん一家も同行する事になった。
引っ越しを伝えて以来、ムクノちゃんの情緒はおかしな事になっていたが、対する俺はきたるカンムリ雪原のポケモンたちにワクワクが止まらなかった。
やはり、人よりポケモンだ。
「おぉ……キルクスより雪降ってる!」
「そ、そうなの? 行った事ないから、わからない……」
カンムリ雪原に着くと、そこはあたり一面雪景色。人の手が入っていない未開拓のパラダイス。大自然という神秘の世界が俺たちを歓迎していた。
宿泊施設に入るなり、俺とムクノちゃんは早速カンムリ雪原の冒険に出かけた。
「雪深いから気をつけてね! おっ、これユキノオーの足跡かな?」
「ユキノオー? あ、ユキメノコじゃない方かな」
多分、これが二人でする最後の冒険になるのだと、能天気な俺でも分かった。
だから、いつもよりテンションが高くて、ヨロイ島での冒険よりもはしゃいでいたと思う。
カンムリ雪原には、ガラル地方では珍しいポケモンたちが沢山生息していた。
空にはふわふわとチルットが浮いていて、ニドランの雌雄が仲良さげにご飯を食べていた。なにより驚いたのは、他地方では化石で発見されるポケモンが普通に闊歩していた事だ。
「すごいね! ムクノちゃん! あれプテラだよ! 生で見れるのすっごい貴重なんだって! 来てよかった!」
「うん……!」
カンムリの冒険は、俺たちにかけがえのない思い出をくれた。
この思い出があれば、俺がいなくてもムクノちゃんは元気にやっていけるだろう。
例え寂しくなっても、雪を見る度思い出すはずだ。
だから、ムクノちゃんは大丈夫だ。
当時の俺は、根拠もなくそう思っていた。
カンムリ旅行最終日、それは起こった。
朝、宿泊施設にムクノちゃんの姿がなかったのである。
宿泊施設には、ムクノちゃん用の防寒着だけがなかった。
他の家にも村の付近にもいない。居場所を特定しようにも彼女はポケギアを持っていない。カンムリ雪原は過酷である。すぐにムクノちゃん捜索部隊が組まれ、プロのポケモンレンジャーが出動した。
俺も探しに行こうとしたのだが、両親に止められてしまった。如何に才能のあるポケモントレーナーでも、俺はまだ子供だった。
その時、俺は初めて自分の無力さを思い知った。
捜索開始から時間が経っても、ムクノちゃんは発見できなかった。
次第に顔色を悪くしていくムクノちゃんの両親と、必死に祈る俺の両親。現場で指揮をしていたポケモンレンジャーの表情も険しいものになっていた。
俺は、部屋で二匹のイーブイを抱きしめて過ごしていた。
こうまで不安な気持ちになったのは生まれて初めてだった。
不安とは警戒のサインである。それを感じた時点で、行動の選択肢が生まれるのだ。
俺はいつも、誰より早く行動し、最も正解に近い選択をして、問題を解決し不安を取り除いてきた。
俺に、できない事などなかったはずなのだ。
けれど、その時の俺は子供だった。
守られるべき存在で、少しばかり才能があるだけの新米トレーナーで、大人の庇護下でのみ輝くスターだったのだ。
俺は、多分強い人間なのだと思う。
心身の強度に優れ、才能に恵まれ、努力が苦ではない。
自信に満ち、人の目を引きつけ、自分一人で何でもできる。
対し、ムクノちゃんは弱い人間だ。
心身共に脆く、必要以上に繊細で、好きな事以外の努力が嫌で仕方ない。
常に自身を卑下し、人の眼に怯え、いつも誰かの影に隠れないと安心できない。
そんな強い俺が、今こうまで不安なのだ。
そんな弱いムクノちゃんは、今どれほど不安なのだろう。
「イーブイ……」
イーブイたちを抱きしめる腕に、力がこもる。
ずぶとい方はされるがままで、ひかえめな方は俺の目をじっと見ていた。
ウーラオスが入ったボールが震えている。何か強い思念が飛んでくる。俺に、何かを成せと言っている。
「ウーラオス……」
ウーラオスは伝説のポケモンだ。伝説というだけあり、その能力はかなり高い。力に満ち、戦いを好み、より強い相手との死闘を渇望する。純粋なる戦闘の化身だ。
そんなウーラオスを、ケヤキくんこそ相応しいとマスタード師匠は渡してくれた。ヨロイ島の秘伝の鎧。伝説ポケモンという特別な存在を。それは何故か。俺に才能があるからか、単に試練を突破できたからか。
分からない。分からないが……。
今、ウーラオスは俺に何かを伝えようとしている。明確な言葉でなく、感性に……否、俺という人間の魂に、強く雄々しく訴えかけていた。
ただ強いだけのポケモンではあり得ない行い。そこに、ウーラオスの伝説たる所以があるように思えた。
イーブイたちもまた、その柔らかな身体で震える俺を暖めてくれていた。何かの“熱”を分け与えるかのように。
ポケモンたちは、ただ俺の隣にいて……俺を勇気づけてくれていた。
何でもできるケヤキくんではない。
ポケモントレーナー・ケヤキの隣に、寄り添ってくれていた。
「……俺なら、出来る」
気がつくと、俺は立ち上がっていた。
心の奥で、名前も知らない感情が轟々たる雄叫びをあげていた。
子供らしい理不尽な怒りが、俺の心身を燃やしていた。
そうだ、俺は強い。何でもできる。ポケモンバトルで負けた事などないし、勉強やスポーツ、ガラル空手の試合だって、いつも一位の天才なのだ。
手持ちには頼れるイーブイたちがいて、あまつさえ伝説ポケモンのウーラオスが味方なのだ。例えカンムリ雪原のポケモン相手でも、負ける気はしなかった。
俺は強い。俺ならできる。そんな俺が、友達ひとり探し出せない理由がないではないか。
相棒のイーブイズを見る。ボールを触り、その中のウーラオスの存在を確かめる。
俺ならできる。何度も何度も言い聞かせ、心を決めた。
「行くぞイーブイ、ウーラオス……!」
プロの迷惑になる? 知ったことか。
大人の言う事を聞くべき? その結果が今だろう。
強いトレーナーに任せろ? 俺のが強い。
誰が何と言おうと、ムクノちゃんを救うのは俺なのだ。
そう決めた。俺が決めた。止められるものなら止めてみろ。
俺は防寒着とリュックを手に取り、たった独りの大冒険に出た。
子供一人とポケモン三匹。危険を冒して、友を救いに向かうのだ。
カンムリ雪原の地理は頭に入っていた。
吹雪の中、俺は迷う事なく目的の場所へと脚を進めた。
恐らく、プロのレンジャーは子供が迷いやすいところを探しているはずだ。彼らは俺なんかよりずっと捜索慣れしているはずなのだ。
それでもなお見つかっていない事を考えると、ムクノちゃんは普通の子供が行かないようなところにいるのだと思う。
当てはある。二人きりのカンムリ冒険。その時に行って、かつ子供が行こうとしないような場所。そういうところにいる可能性が高い。そこに賭ける。
第一のポイントに着く、いない。
第二のポイントに着く、いない。
第三のポイントに着く、いない。
第六も第八も、俺たちが行った場所には何の痕跡もなかった。絶えず降り続く雪の中、足跡など残るはずもないが、それでも何か手掛かりを見つけるべく行動し続ける。とにかくイーブイの嗅覚を信じるしかなかった。
この頃になると、雪のせいで俺の体力はかなり削られていた。
天才トレーナーとて人の子である。大人でも厳しい環境ではどうしようもない。ガラル空手で鍛えたとはいえ、身体が出来上がっていなかったのだ。
結局、バトル用に温存したかったウーラオスにおんぶされて先に進む事となった。
カンムリ雪原には強いポケモンが多い。できるだけ野生のバトルは避けなければならない。
普段なら、つい先日の冒険なら、ウーラオスで蹴散らしていたそれらをその時は隠れてやり過ごしていた。
惨めな気持ちになりかけたが、なにくそと心を奮い立たせて前に進んだ。
そして、第十の候補に辿りつくと、イーブイが雪の中からムクノちゃんの防寒着の切れ端を発見した。
匂いが新しいのか、イーブイの主張が激しい。つまり、この近くにいる可能性が高いという訳だ。
動き回って周囲を観察すると、雪の積もり方に不自然な箇所を発見した。
イーブイと共に掻き分けてみると、そこには小さな洞窟が見えた。ちょうど子供一人なら入れる程度の大きさだ。
イーブイが反応している。ここだ。俺はウーラオスをボールにしまうと、件の洞窟へと入っていった。
暗い洞窟には光源がなかったので、ライトを点けて進んだ。時折、ムクノちゃんの名を呼びながら歩いていくと、それは呆気なく見つかった。
明かりもない、暗い暗い洞窟の奥、一匹のポケモンを抱いて眠る女の子。
黒くてボサボサの髪。大きな瞳は閉じられていて、眠っているのかこくりこくりと船を漕いでいる。
ムクノちゃんだ。
「ムクノちゃん!」
俺はすぐに駆け寄り、彼女の身体を揺すって起こそうとした。
が、ムクノちゃんの腕の中にいたポケモンが先に目覚めて、俺に向かって体当たりしてきた。
いきなりの事でびっくりはしたが、なんとか回避に成功し、改めて件のポケモンを見た。
「えっ、ドラメシヤ……!?」
ムクノちゃんに抱かれていたポケモンは、“ドラメシヤ”というカンムリにはいないはずのポケモンだった。ただでさえ珍しいポケモンが、珍しく生息地以外で発見されるなど、驚きである。
件のドラメシヤはかなり傷ついている様で、一度攻撃動作をし終えると浮遊する力を失ったらしくそのまま地面へと落っこちてしまった。
「イーブイ、ムクノちゃん起こして! こっちもかなりヤバい!」
俺はさっき攻撃された事は置いておいて、ドラメシヤにキズぐすりを使ってやった。
最初は抵抗されたが、有無を言わせず回復してやると害はないと判断されたのか次第に治療を受け入れてくれた。
「んぅ……え……?」
そうこうしていると、ムクノちゃんも目を覚ましたらしく目をパチパチして辺りを伺っていた。イーブイ二匹が彼女にくっついて暖めてくれたおかげだ。
「ムクノちゃん!」
俺が名前を呼ぶと、ビクリと過剰反応させてしまった。その身体は弱々しく震えていて、何かに怯えているかの様であった。
「ムクノちゃん! 良かった! 生きてるな! 生きてるよな!?」
ぶっちゃけ、俺は安堵と興奮で言葉を選ばずに口を動かしていた。
それに気づいて、今度はちゃんと安心させようと俺は出来るだけ力強い笑顔を作ってみせた。
俺が思う、最高に頼りがいのある笑顔。フェアリータイプではなく、ウーラオスみたいなあくタイプの笑顔だ。
「助けに来たぞ!」
やがて俺の存在に気が付いた様で、目に涙を浮かべたムクノちゃんが抱き着いてきた。
「うぇええええええ……! ケヤキくん! ケヤキくん! ケヤキくぅぅぅぅん……!」
狭い洞窟に女の子の泣き声が響く。
イーブイ二匹もムクノちゃんを慰めるように寄り添っていた。
俺はできるだけ安心できるように、優しく彼女の頭を撫でてやった。
しばらくして、泣き止んだムクノちゃんの話によると、こうらしい。
曰く、ふと目が覚めたムクノちゃんはポケモンに助けを乞われた気がして外に出たのだと。
それから声の方向に行ってみると、怪我をしたドラメシヤがいた。
すぐに救助して帰ろうとしたが、運悪く野生のポケモンに襲われてしまい、逃げているうちにこの洞窟に入り込み、すぐに雪によって入口が塞がれてしまったのだとか。
悲しい哉、俺の推理は何一つ当たっていなかったが、結果オーライだ。
「そ、それで……私このまま此処で死んじゃうんじゃないかって思って……」
まあ、なんというか。
もし、ポケモンの救援要請があったとしたら、俺もそうしたと思う。
それで、多分俺なら大丈夫だった。ウーラオスがいるし、何とかなって無事に宿泊施設でドラメシヤを治療できただろう。めでたしめでたしだ。
ただ、俺ならだ。俺は天才トレーナーだ。自分が強い事を自覚しているし、実際強い相棒がいるからできると思っただけだ。
仮に、ウーラオスなしでやれと言われたら困難だろう。イーブイなしで助けに行かねばならないなら、どうなっているか。
多分、何の行動もしなかったと思う。勇気と蛮勇は違うし、無謀な行動は避けるべきだと色々理屈を捏ねたはずだ。
けれど、ムクノちゃんはやってのけた。
遭難こそしたが、無事ドラメシヤを救出し、助けが来るまで生き延びさせた。
それに、眠っている時にポケモンの声を聞けるなど、俺にだってできない。悔しいが、ゴーストかドラゴンかどっちかは分からないが、それらタイプへの親和性はムクノちゃんのが上らしい。
なにより、ムクノちゃんには勇気があった。
俺には、到底真似できない。
「……ムクノちゃんは、凄い子だな」
「え……?」
その事を言うと、ムクノちゃんはきょとんとした顔になっていた。
何言ってるの、みたいな顔で固まっていた。
「ううん、マジマジ。ムクノちゃんは本当に凄いよ」
「えぇ……?」
ああ、尊敬するとも。
誰が何と言おうと、俺は今日のムクノちゃんの行動を賛美する。
俺でも、大人でも、絶対できない。しようと思わない。
ムクノちゃんは、凄い子だ。
「ほんと、かっこいいよ……」
こういう生き方が出来たらいいな。
そう思うくらいには。
施設に戻ると、俺とムクノちゃんはしこたま説教を食らった。
無理無茶無謀の三拍子、大人の言う事を聞きなさい。もし二人とも遭難したらどうするんだと、まぁ正論パンチをされた訳だ。
実際そうだろう。理屈は通っている。正論なのも認める。
「けど、先にムクノちゃんを助けたのは俺とポケモンたちだ」
そう言い返してやると、レンジャーも両親も目を丸くしていた。ムクノちゃんまで驚いた顔をしていた。
呆れた、というか。何というか。
そうして思う、つい昨日までの俺なら、思ってても言わない事だったなと。
けれども、本心であった。
率直な物言いは、気分が良い。
そうして、俺とムクノちゃんの最後の冒険は幕を閉じたのだった。
んでもって、ムクノちゃん家に新たな家族が増えた。
あの時助けたドラメシヤだ。曰く、何度言っても野生に帰ろうとしないのだとか。
ムクノちゃんの両親は複雑そうな顔をしていたが、彼女とドラメシヤの関係はかなり良いように見える。以心伝心とはこの事かと思うほど。
ムクノちゃんに、良い友達ができたのだ。
ところで、ドラゴンタイプというのはポケモンの中でも一等扱いが難しいタイプなのだが……。
ムクノちゃん、実は才能があるトレーナーなのかもしれない。
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