転ヴェル、転生したらヴェルドラだった件 P.S.タスケテ   作:転生しても物書きだった件

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4話

その後、リムルは想像通りに彼女を……シズエ・イザワを捕食した。

その結果、人間の擬態を手に入れ

この世界で初めての喪失を味わった。

 

『……リムル大丈夫ですか?』

(ヴェルドラ……これしかなかったのか?)

『たらればの話ですが……もし、他の手段を取ったとしてもシズエ・イザワの死亡は免れなかったでしょう。それはなにより……』

(ああ、わかってる。どうしようもない現実だって……お前がくれたスキルが教えてくれる……)

 

それでもなお諦められないのはわかります。ただ……

 

『彼女の最後は安らかで幸せでした。だからしみじみとするのはやめましょう?』

「そう、だな……こんなんじゃシズさん心配するもんな」

『……』

 

分身を用いてリムルの前に現れる。

 

「ヴェルドラ……?」

 

空色の瞳に金色の毛髪。褐色の肌を衣服で隠す。

 

「今は泣きましょう。きっとそれがあの人への弔いにもなります」

「わるい……」

 

リムルは僕の胸に収まり声を殺して泣く。

魔物の長という自負が泣き叫ぶことも許せず、このままだとひどく脆くなってしまうかもしれない。

そして何より、自ら頼まれて殺したのは初めてだからだ。

 

※※※

 

「あー!泣いた泣いた!ヴェルドラありがとうな!……ってヴぇるどらぁ!?」

「大声だしたら不都合が……」

 

落ち着いたリムルはようやく今の異常性に気が付いた。

 

「サラマンダーを捕食しリムルが得た【分身体】のスキルで僕の魔素を使い体を作ってみましたが……」

「いや手段じゃなくて……」

「無限牢獄の解析が進めば進むほどリムルの胃袋から外にスキルを用いた干渉ができるようになったのです」

「なるほど……?でもあの時みたいな威圧感もないし妖気も少なめだな」

「まあ、封印される前の何万分の一程度の魔素で作った分身ですからね」

 

しかも使用可能スキルは【以心伝心】と【捕食者】のみ。

ゆえにできることは劣化版リムルと考えてもらっていい。

【究明者】と【探求者】を僕が使うには無限牢獄の完全解除が前提になりそうだ。

 

「……久々に人の姿で抱き着いたけどやっぱハグはいいな。安心する」

「そうですか。それならこの体も作ったかいがあるというもの。あとそれとですが」

「なんだ?」

「服着た方がいいですよ」

「でてけ!!」

 

というやり取りを経て僕はテントからたたき出され外にいる。

そして

 

グルルルルと唸り声をあげる嵐牙狼(カームウルフ)のランガ。

それと冷や汗をかき頭を垂れる人鬼族(ホブゴブリン)のリグルドが僕を歓迎していた。

 

「ヴェルドラ様であられますでしょうか……?」

 

小鬼族(ゴブリン)のリグルドは無限牢獄があった洞窟に一番近い村の村長でもあったためか

僕がヴェルドラだということを薄々感じているようで。

 

『なれば晴嵐竜がなぜリムル様がいるテントの前にいる!』

 

これはあれだな。リムルの着替えを待って……

 

『ヴェ、ヴェルドラ……リグルドに服持って来させてくれ……』

『今そのリグルドとランガに絡まれてるので無茶です……』

 

この事態を解決し、人間の冒険者三名が去るまでにひと悶着あったのは言うまでもない……が

問題はその後だった。

リグルドやリグル、職人であるカイジンと僕とリムルを含んだ五人による会談が行われた。

 

「議題は言うまでもなくヴェルドラ様らしきお方とリムル様の関係についてです。昨日のイフリート騒ぎに置いてリムル様はかつてヴェルドラ様が用いてたような恵みの雨をお降らせになられました」

 

そこで僕は手をあげる。

 

「なんでしょう」

「そこについては僕から。僕ことヴェルドラは知っての通りその昔勇者により無限牢獄に囚われてしまいました。無限牢獄内からでも漏れ出た魔素による威圧感と以前魔王たちと結んだ不可侵条約により300年はジュラの大森林を守護できました。ですが無限牢獄内で日々弱る力。残すところ50年もあればそこらの名有り(ネームド)程度の力しか残らなかったでしょう」

「そんなに弱ってたのか……」

「まあ、それでも一度解放されたら半年もあれば回復しますが……まあ、それはさておき。数えれるほどの日々を過ごしていたところにリムルがやって来たのです」

「ほうほう」

「リムルに名付けを行い、リムルが元より保有していたスキルでの解析受け続ければ無限牢獄からも出ることができる可能性があると思いリムルに無限牢獄ごと捕食されました」

「それがヴェルドラ様の魔素喪失という形でジュラの大森林に影響を及ぼしたというわけですか」

「ええ、今こうして現身を現わしているのはリムルによる解析が進んだためです」

 

こちらの解説は終わるしかし

 

「もしアンタがかの晴嵐竜っていうならかつてドワルゴンがおくった剣はどうしたんだ?」

 

とドワルゴン出身のカイジンが問いを出してきた。

それに対する答えは……

 

「記憶が正しければ……晴嵐を祀る者の長が持っているはずですが……」

「となると樹精霊(ドライアド)の方が持っているのでしょうか?」

「かと思われます。といってもあの剣の本文である大質量による攻撃は出来ませんが……」

「それで、リムル様とのご関係は?」

「僕からすると友であり命の恩人でしょうか?」

 

そして全員の目がリムルに集まる。

 

「んー……友達ではある。けどなんだろうな……声を聞くと安心するっていうかなんというか……?」

「まあ、ずっと頭の中にいたようなものですし?」

「とりあえず、だ。リグルドも知っての通り、オレはヴェルドラの力をほんの少し得ている。だけどだ。オレはヴェルドラの代わりには成らない。いや、成れない。オレとこいつじゃ何もかもが違うからな」

『とおっしゃいますと?』

「オレは正直、今の集落を守るだけがいい。ヴェルドラみたいにジュラの大森林全域を守護だとか恵みだとかは無理だ。だから友であり目標っていうのが正直なところだな」

 

目標……か

そこまですごいものであるつもりはないけど、そう思われるのはいい事のはず。

 

「目標というのなら……大鬼族(オーガ)豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)を配下にでも付けますか?」

「ジュラの大森林周辺に住まう知恵ある魔物たちか……別に縄張りしえ守れれば……いや、たしかもうジュラの大森林の覇権争いが始まってるんだったな」

「そういうことです。今もなお、牙狼族と小鬼族の群れだと思われているここは取り込もうとする輩がいてもおかしくはないでしょうし」

 

以前の力がすべて戻ったわけではないため現状の僕では付け焼刃程度の手助けしかできない。

それがなによりも悔しかった。

目標とされているのにそれに足る手助けができない。

兄上が知ったらどう思われることか……

 

「それの対策もしないとだな……言っておくがオレは侵略行為はする気ないぞ?」

「もちろん把握してますとも」

 

※※※

 

その後、僕の想定通りというべきか……

宴を開くことになり、食料確保のため狩りにでむく一団に無理を言って付き添い

その結果まさか、いや

やはりというべきか

 

大鬼族(オーガ)……」

 

六名の大鬼族と出くわした。

すでにこちらは複数名が魔法に眠らされここに立っているにはリグルド、ゴブタ、ランガのみ。

 

「ランガは思念伝達でリムルに救援を……ここはどうにか足止めしましょう」

 

支給された盾と剣を構え相手に備える。

 

「何者かは理解しかねますが……とりあえず、責任者が来るまで待つ気は?」

「魔人がよくしゃべる……」

「魔人?」

 

そう首を傾げた結果、老人の大鬼族が刀を抜きはらい襲いかかってくる。

 

「ふむ」

 

落ち着いて剣で斬りはらう。

もし変に刃と刃で撃ち合った場合こちらの剣が斬られる可能性もあるための処置だ。

 

「魔人ではありませんよ。いわゆる擬態です」

「では元の種族を応えてもらおうかの!」

 

元の種族……剣閃を凌ぎながらそう考える。

竜族……と今応えるとさらに波紋を呼ぶだろう。

そもそもあの会議の後、僕はヴェルドラではなくヴァロ・カームという偽名を名乗り、竜族であることは隠すことになった。

 

「さあ、なにでしょう?」

 

ゆえに問いに問いで返すことにした。

答案としては0点だろうが、会話を引き延ばすというのでは問題ないでしょう。

しかし、気を抜いたら切り捨てられると思うほどの剣気はどれほどの魔物だったのだろうか。

この人が配下になってくれればありがたいのだけれど。

 

(300年の鈍りは簡単には取れないか……)

 

そんなことを考えている際にリムルから

 

『おいヴェルドラ!たしかランガたちといたよな!いまどうなってる!』

(狩りをしていたら大鬼族六名と遭遇、ただいま戦闘中です。僕はまだ余裕がありますが……リグルドやゴブタはそろそろ危ないでしょうね。来るなら急ぐことをお勧めします)

 

リムルにそれだけ伝え相手を見据える。

さて、中々楽しくなりそうだ。

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