【宿敵】
①かねてからの敵。
②年来の敵。
【共闘】
「共同闘争」の略。二つ以上の組織が共同して闘争する事。
【眷属】
①血の繋がっているもの。一族、親族、身内。
②従者、配下、家来のもの。
魔法少女、千代田桃と魔族の末裔、シャミ子こと吉田優子の関係は複雑だ。しかし、その複雑さが二人の関係のバランスを保っているのも確かな訳で、やはりよくわからないのも事実なのだ。
「ねー結局ちよももとシャミ子の関係ってどうなん?もうこの際親友とかでいんじゃね?」
「え…!」
放課後の教室、杏里の唐突な発言に狼狽える桃。
「ダメです!桃は私の宿敵で町を守る仲間で配下だけど、いつか私が桃に勝って闇の眷属にするんです!! それはまあ、妹には最初親友と紹介しましたけど……」
「いやあーシャミ子、それ日本語的には言ってる事滅茶苦茶だぞ? まあ私らはわかってるけどさー。 てか、眷属と配下って意味一緒じゃね?」
そう、これまでの二人の経緯を知る者にはなんとなくはわかる。そもそも【宿敵】という言葉は本来相容れない関係であるものだ。【好敵手】なら少年漫画的にマイルドな感じなのだが。
「そうねえ、ライバルじゃ駄目なのかしら? あなた達ニュアンス的にはそんな感じよね?」
「ライバル…!それはそれでカッコいい!! でもまぞく的にはしっくり来ない……」
「うむ 余達は曲がりなりにも闇の一族だからな。光の眷属とは本来相容れない間柄故、宿敵のがなんか良い感じなんじゃないかと余は思うぞ」
「ですよね!!」
「そんなもんっすか」
議題に友人の魔法少女ミカンと小うるさいダサ像…もとい、シャミ子のご先祖リリスさんが加わる。
「もう…桃はどうなの?」
「私は…」
桃はどうなんだ?と改めて考えを巡らせる。
最初は単に小さくて面白可愛い子だと思った。
勝負を吹っ掛けられても魔法少女は引退していたつもりだったし、なあなあにしていた。
「私はシャミっ…シャドウミストレス優子!! 一族の復興と闇世界のしゃは…支配のため(スゥー……)魔法少女の息の根を止めに来ました!!」
「これで勝ったと思うなよー!!」
シャミ子は戦闘力的にははっきり言って弱い。そしてとても優しい。だから私の当初の思惑は置いておいて、もし他の魔法少女の襲撃があった時の為に私が護らなきゃ、それから鍛えてあげようと思った。
━━━でも……
「お父さんは このみかん箱に封印されています!!」
「「ええええええええええええ!!?」」
やむを得ない事情があったとはいえ、姉がシャミ子の父ヨシュアさんを封印してしまっていた。この時初めて、私はシャミ子にとって本当に宿敵だったんだと思った。そして逃げ出したのだ。
だけど、シャミ子はそんな私を探しに来た。その彼女の口から出たのは意外な言葉だった。
「桃…魔法少女やめちゃいませんか? 私と契約して私の眷属になって下さい」
「完全に取り戻せなかったら諦めて撤収するんですか? 私は諦めない!」
シャミ子は本当に強い子だと思う。実際私なんかよりずっと強い子だ。 呪いの影響もあって元々は身体が弱いのに、誰よりも頑張り屋で、泣き虫で怖がりなのに一生懸命辛い事や困難に立ち向かって、いつも誰かの為に行動出来るのは素敵な事だし、とても好ましいと思う。
「みんなが!! 仲良く!! なりますようにー!!!」
姉と考えが近いのもあるかも知れない。
だからシャミ子が姉から町を託されたのも納得しているし応援したい、協力したいと思った。
いや、だからシャミ子との関係はどう現せば正解なのだろう。もっと単純なはずではないかと宿敵以外に相応しい呼び名を探す中、ふといつかの記憶が桃の頭を過る。
「きさま またジャンクなお昼を過ごしているな!! 油断も隙もない」
「…昼だし何でもよくない? シャミ子が何か作ってくれるなら食べる」
「私はメシ炊きまぞくではなーい!! 何系が食べたいですか!!」
姉…母…おかん? いやいやないないないない!むしろ妹的な感じだろうシャミ子は。
「おーい…ちよもも? そんな無理に考えなくてもいいよ。最初に変なこと聞いたあたしも悪かった」
桃がふと我に帰ると、杏里は自身がつい聞いてしまった事に対して気まずそうな表情をしていた。
「いや、もう少し考えさせて」
「あっ桃!」
桃は教室を後にして駆け出して行った。
━━私が魔法少女でシャミ子が魔族である以上、万に一つもない事だけど、もし出会い方が違えば素直に親友になってたのだろうか? いや……前提が違えばどのみち今とは違う関係が築かれたはず。それは何か違う気がする…ダメだ、あまり深く考え過ぎると闇墜ちしそう。
黒いもやもやとしたオーラを出しそうになった桃は、多魔川の河川敷で黙々とダンベルで筋トレを始めた。
━━思考の整理にはやっぱり筋トレが一番の特効薬……私と…シャミ子は…あ…!
桃がふと何か思い付いたその時、たったった…と聞き慣れた足音が近付いて来る。
━━この足音は…シャミ子が追いかけて来たのか。ちょうど良い。
桃が筋トレを中断してその場に腰かけると、シャミ子が心配そうに桃の横に腰かける。
「桃、やっぱりここにいたんですね」
「ねえシャミ子……思ったんだけど私達宿敵じゃなくて相棒じゃ駄目かな?」
「あいぼう…?」
【相棒】
①駕籠や畚などをかつぐ相手。
②一緒に仕事などをする相手。仲間、パートナー。
「シャミ子、町を守れるようになる為にこれまで色々頑張っているし、何より今のシャミ子になら背中を預けられる。だから相棒」
「なるほど!… いや、ええ!? そんな私なんてまだまだヘッポコですし、正直桃がいないと不安です。そんな私が桃と肩を並べられる自信がない…。でも今は時々、私も桃を護れたらって……」
「? シャミ子、私を護ってくれるの?」
桃がキョトンとして顔を覗くと、シャミ子は急にかああっと顔を赤らめて恥ずかしそうに慌てふためく。しっぽもピンと立ってからジグザグしだした。動揺しているのを隠せていないようだ。
「はっ! さ、桜さんのコアを預かっているからであってですね。それに配下を護れないボスにはなりたくない」
「くすっ…ふふふ…」
「なにがおかしい!!」
「うん、改めて変な関係だなって」
「それは…はい。 杏里ちゃんの言ってた事もわかります。桃に相棒って言ってもらえたのも嬉しい。…でも、私達の関係は宿敵から始まったんです! だから一番はそれが相応しい! それに、勝負に勝てば眷属になると約束したのはきさまだろう!! 忘れてないからな」
「ふふっ…そうだね」
別にいがみ合っている訳でも、憎みあっている訳ではないけれど、一つくらいそんな宿敵関係があったって良い。シャミ子の姿勢を知っているからこそ、【宿敵】という関係を受け入れているのだから。
そして━━
「さ、もう遅いので帰りましょう。 晩ごはんは何がいいですか?」
「シャミ子が作るものならなんでも」
そう、やっぱり単純な事だったのだ。何故ならこの町は聖域桜ヶ丘、魔法少女と魔族が共に暮らす町━━
【共存共栄】
2つ以上のものが互いに敵対する事なく、共に協力して栄えていく事。
《頑張れ二人とも、これからも色々な事を経験してより良い関係を築いていくんだ》
読んでいただきありがとうございます。
イメージ的には「まちカドまぞく2丁目」の後くらい?を想定して書いてます。桃視点のものが書きたいなーという原動から書き始めた感じです。
描写や表現とかは手探りなのでこれで良いのかな…?という感じではありますが、それでも良いなと思ってもらえれば幸いです。
一応、pixivの方にも同じものを投稿しています。