うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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なお、猥雑は一切ないこととする。

 なお、自己申告である。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 同居人がTASさんである……などと呟けば、おおよその場合においては頭の病気を心配されるか、はたまたTASってなに?……みたいな疑問が飛んでくるか、大体はそんな感じで話が進むだろう。

 

 要するに、真剣に受け取って貰えることはほとんどない……ということになるわけなのだが、しかしてこれが事実である以上、俺としては主張を続けるしかないというのが悲しいところである。

 ……いやまぁ、別に信じて貰ったからなにかがある、というわけでもないのだが。

 

 

「だって、別に同居人がTASだって信じて貰えたとして、次に言われることって言えば『じゃあ、そのTASさんってのを紹介してよ』とか、そういうもんだろ?いやまぁ、これに関しては別に信じて貰えてなくても、同じようなことを言われるパターンもあるわけだぐぇ」

「ここでお兄さんの口をぶにっとすると、大体一秒ちょっと(100フレームくらい)の短縮。とても嬉しい」

「……おにひひゃんは(お兄さんは)れんれんうへいふないんらへろ(全然嬉しくないんだけど)?」

「…………」

返答保留(むごん)で乱数を回そうとするの止めない?」

「また短縮できた」ムフー

「ああはいはい、良かったねー」

 

 

 わしわしと、人の胡座の上に陣取る少女の頭を撫でてやれば、彼女は無表情・されどほんのり嬉しそうなまま「あーうー」と声をあげ、こちらにされるがままとなっているのだった。

 

 ──前略中略後略皆々様、どうやらTASさんは金髪ようじょではなく、黒髪おさげの無口系っ娘のようです。

 いやまぁ、先述通り自己申告なんだけどね、これが。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 TASさん。

 それは、『Tool-Assisted-Speedrun』ないし『Tool-Assisted-Superplay』という言葉の頭文字を集めた結果出来上がった名前であり、その言葉達が意味する通り、特殊な機械の補助を得て特殊なプレイをする……という、そういった行為そのものを指したゲーム用語の一つである。

 

 大雑把に言ってしまえば、複数かつ一つ一つは短い『凄いプレイ』を数珠繋ぎのように組み合わせ、一つの大きな動画を作る……というものになるわけだが。

 そういった裏事情を知らない者からしてみれば、まるでチートでも使っているかのような挙動で、あっという間にゲームをクリアしたり、はたまたシビアな操作を必要とする技などを連続で繰り出したり──という、まさに『スーパープレイ』の名に違わない動画にしか見えない、ということでもある。

 まぁ最初に言った通りに、それらの個別のスーパープレイ自体は、本当は連続して行っているものではなかったりするわけなのだが。

 

 ともあれ、一時期は動画サイトなどで一大ジャンルを築いていたことからも分かる通り、その動画が人を()()()という面において、とても優れたモノであったということは間違いではないだろう。

 だからこそ、今現在は『特殊な機械を使って』の部分で色々と無理が出てきたがために、似たようなジャンルのRTA──『リアル(Real)タイム(Time)アタック(Attack)』さんに取って変わられてしまったことに、ちょっと寂しさを感じてしまうわけなのだが。

 

 

「でもねー、だからってキミ(自称TASさん)までそういうの(RTA)に対抗意識を燃やす必要性、ないんじゃないかなってお兄さんは思うんだけどナー?」

「別に気になんてしてない。単に調子乗ってるから、わからせてあげてるってだけ」

「……リアルTASさんがリアルでゲームプレイし始めたら、それは最早RTAみたいなもんなんよ……」

「!?」

 

 

 いや、そこで驚かれても困るわけだが。

 動画で見ている人からすれば、基本的には『凄いことやってるなー』って感想は変わらないわけだし。

 こちらの言葉に驚愕の表情(当社比。表情筋が仕事してないのでわかり辛い)を浮かべる彼女の姿に、思わずため息を吐く俺である。

 

 さて、今彼女がなにをしているのかというと……世間様のRTA記録の更新、すなわち道場破りである。

 なに言ってるかわからん?大丈夫、俺にもわからん。

 

 彼女の自称(TAS)は自己申告であり、ついでに言うなら俺に対して分かりやすく噛み砕いて説明する際に、その言葉(TAS)を使うのが一番時間を短縮できる……みたいな理由から選出されたものでしかない。

 もうこの時点で、色々とツッコミ処の多いことになっているわけなのだが……ともかく、今の彼女の行動が結果として普通のRTAさんとほとんど変わらないものになっている、ということには間違いない。

 

 そもそもTASさんの大前提である『機械の補助』が見受けられない以上、本当に彼女がそうだと主張しているだけでしかなく。

 擁護しようにも、もはや気持ちの問題以下の話なので反応に困る……みたいな感じであった。

 

 まぁ、度々フレーム短縮云々言っているので、なにかしらの基準からなにかが短縮できている、ということは確かなのだろうが。

 ……真面目に考察するのなら、並行世界とかその辺りかな?

 

 ともあれ、そこら辺の子細を聞いてもはぐらかされるのは、今までの彼女の対応から確認済み。『説明すると仲間フラグが立つから(余計なフレームが増える)……』という、あまりにも斬新なお祈りメール的なものに涙を呑まされた俺からすれば、ここで焦るのは二流の仕事である。

 彼女には少なくとも未来視的なものがある、ということは確かなので、焦ってもいいことがないのも確実なわけだし。

 

 

「ここでハンドルを右、それから左左右右上下足踏みして逆立ちからのリセット」

「……一応聞いておくけど、その逆立ちの意味は?」

「地球の裏側での気候変動を誘発することにより、この部屋の中のゲーム機の温度がちょっと下がる」

「…………はぁ、なるほど?」

 

 

 だからあれだ。反応に困る行動で、こちらの話のタイミングをずらすの止めて欲しい。

 それ絶対、ついで感覚で会話回避(たんしゅく)狙ってるだろお前。

 

 こちらを決して見ようとしない彼女との戦いは、今日もまだ始まったばかりなのであった。

 

 

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