「負けましたわー!」
「ええ……」
「勝った」<フンス
「ええー……」
そういうことになった。……いやどういうこと?
そんな感想が浮かんでくるが、結局のところあくまでも『お手本である』のが『AUTO』さんの特徴である、と理解すればこの結末も納得できようというもの。
そうして、後天的な超人達のランク付けは終了したのであった。……え?過程が飛んだ?そんなのTASさんの調整以外に何があると?(真顔)
「……かれこれ、これで十連敗くらいしているのですけれど。一向に自分が凄い、なんて風に思えないのですけれど」
「うわぁ、なんだかめんどくさいことになっちゃったぞ……」
「聞こえてましてよー!?」
あんまりにもあっさりとした敗北からはや何週間。
件の『AUTO』さんは、その一件から闘争本能を刺激されたらしく、あくまで気分転換であった太鼓以外にも、様々なゲームに手を出すようになった。
その流れで、何故か彼女の特訓に付き合わされるようになった俺はというと、結構な頻度で彼女の愚痴を聞く羽目になっている。
……なにがアレって、TASさん側が余裕勝ちしているように見えるけど、毎回毎回結構な綱渡りをしている、ってことでね?
AUTOさんは本人にその気は無いのだろうが──自然と基本の鬼、みたいなことになっているので、あらゆるゲームで必ず平均点以上を出すのである。
それがなんというか、TASさん的には「未熟な自分には丁度いい相手。気を抜くとやられそう」ということになるらしく、こうして毎度毎度ぼこぼこにしている、ということに繋がるのだった。
いやまぁ、さっきも言ったけど、正確にはそういう風に見えるってだけであって、AUTOさんが少しでも搦め手とか覚えれば、あっさり崩れかねないくらいの戦力差なんだけど。
……搦め手が使えるAUTOさんはAUTOじゃないだろう、という反論は認める。
(そもそもの話、正攻法だと勝てないからTAS的技術を磨くのに適している、とかそういう理由だからなぁ、TASさんがAUTOさんと遊んでるの)
「……何故私は、可哀想なものを見るかのような眼差しを向けられているのです……?」
「おおっと、つい思っていることが如実に眼差しに現れてしまった」
「遠回しに肯定するのはおやめくださいませー!!」
まぁ、個人的には面白いので、別に構わないのだが。
基本に忠実、というのが性格にも現れているのか、わりと生真面目というか正直というか、ともかく戯れていて面白い人、というのは確かなのだし。
「またやってる」
「うおわっ!?」
そんな風にAUTOさんを弄って遊んでいると、いつの間にか台所から戻ってきたTASさんが、俺の脇からするりと抜けて、いつもの定位置にプット・オン。
人を座椅子にしたTASさんはと言えば、特になにを気にするでもなくコントローラーの片方をAUTOさんに投げ、くいくいと指で挑発をするのであった。
「──休憩終わり。次はレースゲーム」
「ぬぅううう、負けませんわよー!!!」
なお、結果はきちんとコースを走るAUTOさんに対し、ショートカットやらバグやらを駆使したTASさんが周回差を着けて勝利という形で終わり、AUTOさんの連敗記録はさらに伸びることとなるのだった。
「ふと思ったんだけど」
「なに?」
次は負けませんわよー!
……と、変わらぬ闘志を燃やすAUTOさんが自宅へと帰宅するのを見送ったのち、部屋に戻った俺とTASさん。
夕食も既に(AUTOさんと一緒に)食べ終えてしまっているので、あとはまぁ適当にだらだらしながら就寝を待つ、といった感じなのだが。
その中でふと、とあることに気付いた俺は、テレビのチャンネルをカチャカチャしながら、なにかを呼び出そうとしているTASさんの背に向けて、その気付きが正解なのかどうかを問い掛けることに。
「前々から、『お兄さん弱すぎ♡ざーこざーこ♡レースゲームで三周も周回遅れ♡』とかなんとか言いながら俺をボコってたけど……」
「……なにその声。私そんなこと言ってない」
「いや、似たようなもんでしょ。……って、それはどうでもよくて」
「よくない。イメージの問題。訂正しないならお兄さんをロリコンだって周囲に吹聴するよ?」
「社会的に死ぬから止めて。……ああいや、問題はそこじゃなく」
……問い掛けたかったんだけど、言い方の問題で暫く無駄な争いをすることに。
結局、数分押し問答した結果俺が折れたことで、その話は終わりを迎え、改めて本題を話すことに。
「まぁとにかく、俺だと練習台にもならない、みたいなこと言ってたじゃん?」
「……似たようなことは言ったと思う」
「うん、まぁそれを踏まえて聞くんだけどさ……
「…………」
「おいこら、こっちを見なさい」
その内容は、AUTOさんの出現に際し、なにか細工をしなかったか、ということ。
流石に存在そのものを創造した、ということはないだろうが……あの場所でああして出会うこと、すなわち遭遇フラグを弄ったりした可能性は大いにあるわけで。
こちらの詰問に対し、彼女は顔を背けるだけ。
……ただし、その視線は泳ぎ、口はきゅっと閉じられているため、気まずいと感じていることはバレバレ。
──結論、TASさんは世の中のゲームプレイヤーの持つ苦しみの一つ、『一緒にゲームをプレイする友達がいない』というものを解消できる、ということが明らかになったのだった。
……乱数調整で友達発生、は卑怯じゃないですかねぇ?