「……むっ、」
「む?」
「むむむ、むーりーでーすーぅー!!そそそ、そんなこと、できるわけないじゃないですかぁ!?」
はてさて、今回の案件において、唯一無二の実行部隊として選任されることとなったダミ子さんなわけだが。そんな彼女はご覧の通り、無茶苦茶嫌がっていたのであった。
その嫌がり方はまさしく駄々っ子の如くである。……ダダミッ子さん?
まぁ変な冗談はともかく。
いきなり唐突になんか重要な案件を投げられたに等しいこともあってか、ダミ子さんは凄く及び腰なわけだが……そうは言ってもうちのメンバーだと彼女以外に丁度良さそうな人が居ないので仕方ない、というか。
「いいいやいやそもそも!そもそもですぅ!!仮に私がやらなきゃいけないとしても、それでなにをすればいいんですかぁ!?」
「それに関しては既にレポートに纏めてある。読んで」
「レポートぉ!?……ってうわぁ結構多いですぅ!?」
「傾向と対策を中心に、起こりうる事態とか突発的な対応のうち推奨されるものとかを纏めておいた」
そんな状況でもなお、私には無理だと首を振る彼女に対し、逃げ道を無くすかのようにTASさんが手渡したのは、今回の事件における攻略本……もとい行動指南書的なレポート。
これにはダミ子さんの性格面などを考慮して、彼女にもできるような回避手段などが事細かに記されているらしく。
突然そんな分厚い資料を渡された彼女は、事此処に至って自分に逃げ場がないこと、かつ周囲のみんながわりと本気で自分に任せようとしていることに気付いたのであった。
「……っ、いやでも、私じゃ……」
「大丈夫だ、なんたって俺も手伝うからな」
「はぁ、お兄さんも手伝……
「なんですって……いや、よく読んだかそれ?初めの方に書いてあるはずだけど」
「へ?え?……っ!」
それでもなお、怖じ気付いていた彼女だったが……安心させようと吐いた俺の言葉に、一瞬呆けたような表情を見せたあと──バッと日頃ののんびり具合が嘘みたいな機敏な動きで資料を捲り直し、そこに書いてある文章を見付けてわなわなと震え始めたのであった。
……いや、それに気が付かないほどに動揺してたのか、この人。
「そりゃあ、あの木の下に行くには
「私だとお兄さんに合わせなきゃいけないから無理。……まぁ、洗脳解除しながらだから大差ないかもだけど」
「私もまぁ、無理な方ですわね。正直この方を振り回してしまう予感しか致しませんし」
「物理的に振り回されそ~……あ、私も無理。下手するとこいつがうちの視聴者達にボコられそうというか……」
「私はもう全般的に無理だね!洗脳耐性もないし彼がボコられるのも避けられなさそうだし!」
「なんで俺のボコられる確率が意外と高いんですかね……」
「……う、嘘ですぅーっ!!!?」
そんなことをみんなで述べれば、ダミ子さんは目をぐるぐるさせながら悲鳴をあげるのだった。
「──で、話は戻る、と」
「?なにか仰いましたかぁ?」
「いんや、こっちの話」
──で、話は冒頭に戻る、と。
まぁうん、洗脳耐性をCHEATちゃんに付与して貰う、ってのはわりと初期の内に纏まっていたのだが、それができるのは一人だけ。
一応頑張れば二人分もどうにかなるかも、という話だったのだが……その分彼女の負担が単純に倍加するとかってことだったので、それなら最初から洗脳無効な人は加えておこう、という話になったのだ。
で、そうなってくるとさっきの『スペック的に釣り合うか』ってところが問題になってくる。
ダミ子さんは姿こそ異世界のサンタと同一だが、あくまでも同じなのはその姿だけ。……例えば当の本人が持っているだろう能力などは、引き継いではいない。
要するに身体能力的には一般人、ということになるわけで。
……そうなると、さっきの俺の話と同じく、ほとんどのメンバーが『相手側が戦力過多』になるのだ。
まぁ、徹頭徹尾彼女が振り回されるのを許容するのであれば、そっちの方が早く済む可能性はあったが……本人からの強い希望でその案は却下された。
あと、早く済むかもとは言うものの、今回のこれは強制カップル成立空間をどうにか回避する、ということを前提とするもの。
……言い換えると、同性同士の場合は強制力が
「どうしてそうなるんですかぁ?」
「言葉の上では認めてる、なんて風に言うものの……実際に同性同士の恋愛が一般的となったか、と言われるとまだまだ疑問が残るところが多いだろ?……それがここでは普通にそこらに居る。……ってことは、
「ほへぇー」
まぁ、この辺りの話は全部TASさんからの受け売りなわけだが。
ともかく、同性同士のカップルで突っ込むと、洗脳耐性があっても危ないかも?……などという話になれば、そりゃまぁ異性同士のメンバーで挑んだ方がいい……みたいな話になるのは目に見えているわけで。
そういうわけで、スペック的に対等であること・メンバーの片方はダミ子さん固定であること・できれば彼女とは異性となる人物の方がいいこと……などの点から、俺が同行者に選ばれるのは自然な流れだった、というわけなのである。
……まぁ、この話には実は一つ落とし穴があって。
(……この人元男なんだけど、そういう場合ってどうなるんだろうなぁ)
調子を取り戻したのか、呑気に鼻唄なんて響かせているダミ子さんを見ながら、心中で溢す俺。
……後天的に異性になった相手は、この空間内ではどういう扱いになるのだろう?
どうにもカップルに気ぶっている空気のあるこの空間において、元同性なんて設定をはたして相手が見逃すのか否か。
そんなことを思った俺は──まぁ洗脳無効なんだしどうにかなるかぁ、と早々に思考を放棄したのであった。面倒臭くなったとも言う。
「よーし、とにかくさっと行ってパッとやってしまいましょー!」
「おー」
気合いを入れるダミ子さんに合わせ、適当に腕を突き上げる俺がどうなるのか。
それは、大いなる神のみぞ知る……!
──あ、一応特に大きなトラブルも起きないままに大樹を斬り倒し、世界はカップル論争より解き放たれた、と付け加えておきます、はい。