うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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ファイナルデッドオータム・3

「───はっ!?」

「どうしたのお兄さん?なんだかひどく魘されてたみたいだけど」

 

 

 突然、視界が大きく開けたような感覚に、思わず身震いをしてしまう俺と。

 そんな俺を横から覗き込んで、不思議そうに首を傾げているTASさん。

 

 そんな彼女に大丈夫だと告げながら上体を起こせば、そこはいつも俺が寝る時に使っている和室だった。……どうやら俺は、先ほどまですっかり惰眠を貪っていた、ということになるらしい。

 窓から差し込んでくる日差しは暖かく、秋の陽気はまだまだ翳りを見せていないということを、俺達に静かに教えてくれている。

 

 ……()()()()()()()()()、と脳のどこかが反応している気がするのだが、それがなんなのかわからない。

 ええと、確かなんというのだったか……。

 

 

「──未視感(ジャメヴ)?」

「ああそうそう、既視感(デジャヴ)の反対の……俺の思考読んだ?」

「読んでないよ?」

 

 

 そんな俺の疑問を晴らすように、横合いから投げ掛けられたTASさんの言葉。

 ……未視感(ジャメヴ)。確かに、今の俺に付きまとう違和感は、『見たことがあるはずなのに』という感覚のそれ、ということができそうな気がした。

 まぁ、それがわかったとて、俺にできることはなにもないのだが。だって俺一般人だし。

 

 

「…………」

「凄い顔になってるけど?TASさん」

「いや……なにか今絶対に反論した方がいい、って脳裏に開きが……」

 

 

 ……本当に人の思考を読んでないんですかね、この子。いやまぁ、気分だけ引っ掛かりを覚えている、って辺りに本当に読んでない、って事実が詰まっているのは確かなわけだが。

 

 ともかく、こうして布団の上でだらだらしていても仕方ない。

 いい加減に起きよう、と決心して布団を出ようとして。

 

 

「──あべっ!?」

「お兄さん?!」

 

 

 突如額に走った衝撃に、意識が白く飛んでいく。

 驚いたような声をあげるTASさんに一瞬意識を向けつつ、倒れた俺がその目に写したのは。

 遥か空高くから、俺の額目掛けて飛んできた小さな隕石と、それによって空いた天井の穴。

 

 いや、どんな確率だよ──などというどこか呑気な感想と共に、俺の意識は闇へと溶けていくのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「──はっ!?」

「どうしたのお兄さん?なんだか酷く魘されてたみたいだけど。はい、タオル」

「え、ああ、ありがとう」

 

 

 突然、大きく視界が開けたような奇妙な感覚に、思わず身震いをしながら目を覚ました俺と。

 そんな俺を()から覗き込んで、不思議そうに首を傾げているTASさん。

 彼女から渡されたタオルを手に上体を起こせば、そこは見慣れた俺の部屋であった。

 

 ……どうやら、さっきまでの俺は自室で呑気に眠りこけていた、ということになるらしい。

 窓から室内に差し込む日差しは暖かく、秋の陽気はまだまだ健在であるということを、静かに俺達に教えてくれているかのようだった。

 

 ……ええと、なんだっけ?

 ああそうそう、未視感(ジャメヴ)

 何度も目にしているはずのものが、全くの未知に感じられるというそれ。

 ──正しくそれだ、と確信できることに少し違和感がないでもないが、それでも今の俺が感じたのはそれだ、と胸を張って言うことができるだろう。

 

 などと考えながら、布団を離れる俺。

 TASさんはなにも言わず、ただ首を傾げたままこちらの背を追ってくる。

 で、そのまま部屋を出ようとして。

 

 

「あっ」

「なに?……って、あ」

 

 

 突然襲ってきた既視感(デジャヴ)に、思わず振り返る俺と、それに釣られて一緒に後ろを向くTASさん。

 そうして振り返った俺達が目にしたのは、空高くから室内に飛び込んできた闖入者(隕石)により、俺の自室が無茶苦茶に荒らされた姿なのであった。

 

 

 

・o・

 

 

 

「酷く大きい音と衝撃だな、などと思ってはいましたが……」

「いやはや、燃えカスみたいな小さな隕石が、ピンポイントにうちに降ってくるとか……確率的にどんなもんだ、って気分になったよマジで……」

「聞いた話によれば、人が隕石によって死亡する確率っていうのは、大体七十万から百六十万分の一くらいなんだとか」

「誰が計算したんですかぁ、そんな確率……」

 

 

 あのあと、最低限の片付けを終えた俺達が居間に向かったところ、いつまでもやって来ない俺達に変わって、朝食を準備しているAUTOさんやダミ子さんの姿があった。

 ……まぁ、とりあえず破れた……というかずたぼろになった布団や枕をゴミに纏めたり、大家さんに現場確認して貰えるように連絡とかしていたため、時間が大幅に掛かりすぎていたので有り難いと言えば有り難い。……今から準備してたら、どう考えても彼女達の登校前に間に合わないだろうし。

 

 ともあれ、出来上がった鮭の切り身の焼き物やら卵焼きやらを並べ、いただきますののちに食べ始める俺達。

 ……AUTOさんのあれこれって料理にも反映されるんだな、などと呑気なことを考えながら、彼女達の会話に耳を傾ける俺なのであった。

 

 ──内心を違和感でいっぱいにしながら、だが。

 

 

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