「さて君、今日は私だよ!」
「なんでMODさんまで扉が壊れそうな開き方すんの?」
はてさて、秋も終わってそろそろ冬になろうか、なんて時節。
そろそろストーブとか用意しなきゃなぁ、なんてことを思いながら押し入れを漁っていた俺は、唐突に部屋の中に入ってきたMODさんに、それはそれは渋い顔を見せていたのだった。
そんな俺の様子を見たMODさんは、「これは失敬」と一つ咳払いをして、
「これが君の部屋に入る時の礼儀だ、と聞いたものでね」
「よーし誰だそんな馬鹿なことを言った子は。お兄さんが直々にその勘違いを訂正してやるぞー」
多分TASさんか、はたまたCHEATちゃんだろははは絶対に許さねぇ、と笑みを見せたのだった。笑顔は威嚇!
……まぁそれはともかく。MODさんが俺の部屋に来るのは珍しいので、ちょっとばかり首を捻る俺である。
「ん、そうかい?」
「そもそも君らが居る時に自室に籠ってる、ってことがないからね俺。そういう意味では、別にMODさん以外でも珍しいってことになるんだろうけど」
ただ、それでも出会いの近い順に呼びに来る頻度が高くなるー、みたいな感じなので、かなりあとの方に知り合ったMODさんだと珍しいを通り越して滅多にない、というレベルになるというか。まぁ、八割以上TASさんが呼びに来るのを思えば、正直五十歩百歩でしかないわけだが。
なお、ダミ子さんだけは例外である。あの人、TASさん以外では唯一の同居人だからね。……まぁ、あくまでもAUTOさんより頻度がちょっと多い、って程度だが。
「……ふむ、つまり寝起きにあの危険物を眺めることがままある
「その辺りを突っ込むのはやめようか?」
「ははは、これは失敬。乙女としてははしたなかったね」
「乙女……?」
「む、そこで首を傾げられるのは流石に心外だぞ?」
ところで、なんでこの人はこうあれ()なんですかね?……単なるユーモアとして切って捨てていいものか真面目に悩むんだが。
……などと、微妙に反応に困る会話を投げてくる彼女の様子に若干たじたじとしていれば、自分から言い出した癖にちょっと照れているMODさんの姿が。
いやまぁ、確かに元義的?には彼女は性別:女性だってことは知ってるけどさ?
「……今のMODさん、贔屓目に見ても男装の麗人だよね?」
「おおっとこれは一本取られた。確かに今の私は槍を一つ携えた騎士だね」
「ねぇ?本当にその言動で乙女を自称できると思ってるのMODさん?」
いやまぁ、任務で歳上の男性とかと一緒になると、仲良くなるための会話がなんかあれ()になる……みたいな話は聞いていたので、その辺りの影響なのだろうなぁとは思うのだが。……それにしたってこう、もうちょっと恥じらいをだね?
まぁ、こんなことを言うと「恥じらいで命は守れないよ?」とかなんとか、唐突にシビアな話が飛んでくるのがMODさんなのだが。……うーん、一人だけ世界観が違う感。
まぁ、その辺りの話は長くなるので置いとくとして。
結局、何故彼女が俺の部屋にやって来たのか?……という一番重要な問題が放置されているので、そこを尋ねることにする俺。
それを聞いたMODさんは小さく笑みを溢したあと、俺に対してこう告げるのだった。
「実は財布忘れてね。──奢って♡」
「────昼食ならさっき食べたばっかりでは?」
そういうんじゃないんだよ、と溢すMODさんに手を引かれながら、俺は家を飛び出すこととなっていたのだった。……せめてコートくらい着させて?!
「……で、わざわざ俺を引っ張ってきた理由をいい加減話して欲しいんですが?」
「おおっと、流石に適当なこと言ってることはバレてたか、流石は君だね」
「微妙に褒められてない気がするのはなんなんだろうなぁ……」
はてさて、いつの間にか姿が変わった──今の彼女は金髪のモデルみたいなスタイルの女性──MODさんに腕組み状態で引き摺られながら、呆れたような視線を彼女に向ける俺。
対する彼女はと言えば、こちらの訝しむような視線を涼しい顔で受け流しながら、「行きたい所があるのさ。奢って欲しいってのは、そこのことだよ」と耳元で囁いてくる。
……なんでわざわざ耳元で囁くのか、的な睨みを返しながら、はぁと小さくため息を吐く俺。
どうにもこれは、たまにある彼女の仕事のお手伝いイベント、ということになるらしい。TASさんと彼女は時々こういう突発的なイベントを引っ張ってくるので、いい加減慣れ始めてはいるものの……まぁ、事前に言っておいて欲しいのはいつまでも変わらない、というか。
「いや君、予め言っておくと嫌がるだろう?今回は二人じゃないとダメだったから、君に手伝って貰わないと困るんだよ」
「……二人じゃないとダメ?」
そんな俺の様子に、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べてくるMODさんだが……俺は知っている。これは謝ってるけど謝ってないやつだ、と。
だが、その事を指摘するより前に、気になる単語があった俺は首を傾げていた。
二人じゃないとダメ、しかもこうして話を聞く限り両者の性別は違っていなければならない……。
猛烈に嫌な予感がしてきた俺は、どうにか彼女の拘束を振り払えないかと身を捩ろうとするも、ふと視線を周囲に向けた時、
「──さて、着いたよ。ここの『カップル用ジャンボパフェ』が、今回の目的さ」
「────俺に死ねと?!」
やがてたどり着いた喫茶店の、その扉に目立つように貼り付けられた『カップルフェア』のポスターに、自身の死を確信することとなるのだった。