「ここはいわゆる交流会用の会場のうちの一つ、というやつでね?まぁ、雑に言えば
「……MODさんに関わると、こういうのばっかり出てこない?」
「ははは。……まぁ、私のやってることは大抵が特殊工作員みたいなものだからね。そういう場所に顔を出す機会というのも、それ相応に多いってことなのさ」
いつの間にか俺の目元にも装着されていたマスク……いわゆるヴェネチアンマスクに辟易しつつ、先導するMODさんに続いて歩を進める俺。
周囲の人々は大体がスーツ(+マスク)なので、普通の服装の俺はそれはそれは目立つかと思っていたのだが……意外なことに、俺の姿を訝しむような視線を感じることはなかった。
まぁ、代わりにMODさんに向けて『マジか』みたいな視線が飛んでいたわけだが。……察するに、こんな平凡な奴をここに連れてきたの?的な視線だろうか。
「平凡、平凡ねぇ。……君、そうやって自分を卑下するのは良くないよ?」
「いや、そんなこと言ったって平凡以外の何物でもないでしょ、俺なんか。幸か不幸か、周りにいるみんなは非凡な人ばっかりだけど」
「んー、そこを突かれるとなんとも言えないなぁ」
周りがおかしいのも確かだし、と笑う彼女にどうも話が噛み合ってないような空気を感じつつ、とりあえずこの話は置いておくことにする俺である。……いやまぁ、言っても変わらないのなら、いつまでも拘る必要がないって言うかね?
……まぁともかく、割りと早足なMODさんの背を追いつつ、周囲をお上りさんの如くキョロキョロと見渡す俺である。
その観察によって気付いたのだけれど、どうやらここは地下洞窟的なもののようだ。
時々壁の隙間から見える岩肌はとても無骨なもので、その地味さというか花のなさとでもいうか……まぁそんな感じのものを、調度品や煉瓦などによって見事に隠していたのだった。
え?それがわかったからなんだって言うのかって?
……
地下鉄より上だと私有地だし、それより下なら国有地みたいなものだから……まぁ、大っぴらにやれるのなら国が関わってるだろう、という話になるというか。
それと、それらの話はこの場所が地下深くにあることの証左でもあるので、下手に暴れたりすると崩落の危険性が高いんじゃないかなー。……みたいな感じのことを、ボケッとした表情のまま考えていた俺なのであった。
「まぁ、そうだねぇ。……でも、崩落するほど暴れまわる人、というのはそうはいないんじゃないかな?」
「そうかな?……そうだわ」
「……君が誰を基準にしていたのかは、今は聞かないでおくよ」
なお、地下空間って意外と頑丈だよ?……というMODさんの言葉により、どうやら俺の基準がおかしくなっていたらしい、ということに気付かされたけどそれはとても些細なことである。……些細なんだってば!
「……些細、だったはずなんだけどなぁ」
「ははは口は災いの元、というやつだね!まぁなんとなくこうなるんじゃないかなー、なんてことを実は思ってたりしたんだけどね!」
はてさて、時間はさっきの会話をしていた時から少し進み。
隣に並んだ俺達はそんな軽口を飛ばしあいながら、せっせと歩みを進めていたのであった。……いや、歩みって言うと語弊があるので言い直すと、今の俺達は全速力で走って逃げている最中である。
で、なんでそんなことになっているのかというと。
……勘の良い人ならば、さっきからの会話とかから気付けているんじゃないかなー、というか。
そんなことを思いながら、チラリと肩越しに背後へと視線を向ける俺達。そこで起きていたのは──、
「秘密組織壊滅ならまかせろーばりばりー」
「はっはっはっ!モノを剥がす音じゃなくて壁を剥がす音なの怖いなぁ!」
「言ってる場合かアンタら!?おかしいだろどう考えても!?空間ごと剥がしてないあれ?!」
「ははは見知らぬ誰かよ、あの子相手に常識は通じないぞ!諦めて走りたまえ…って、あ」
「あっ?あ、あーっ!!?」
「無茶しやがって……」
そう、そこでは唐突に現れたTASさんが、周囲の人々ごと地下空間を千切っては投げ千切っては投げ……という完全な無双展開を繰り広げていたのである。
その姿はまさに獅子奮迅。……あいや、テンションとかはそこまで上がってない(表面に感情が出てるので、実際はとてつもなくハイテンション)ように見えるので、どっちかというと見ている方には空恐ろしさの方が勝ってしまうかもしれないが。淡々と作業のように周囲の駆除を行っているように見えるし。
……ともかく。
マスクをしているせいで相手が誰なのかわからないのか、はたまたわかっていてスルーしているのか。
それはTASのみぞ知る……とばかりに俺達も巻き込まれそうになったので、こうして逃げている……というのが、今の俺達の状況なのであった。
「んー、ブッキングしたかなこれは!じゃあ仕方ない、先方には無理でしたと言っておこう!」
「そんな雑な……」
「
「なにその無理矢理感ある当て字!?」
まぁ、そんなわけで。
途中で巻き込まれて空中に吹っ飛ばされた参加者に心の中で敬礼を送りながら、俺達は命からがら地下空間から逃げ出したのでしたとさ。