「へいお兄さん、スキーは好きかい?」
「なにをまた藪から棒に……まぁ、別に嫌いではないかな」
ある晴れた寒い日のこと。
……晴れてるのに寒いとはこれ如何に?と思われるかもしれないが、雨が降ったとかでもなければ、前日曇りだった日の方が意外と暖かかったりするので、実際これはよくあることである。
とまぁ、よくわからないナレーションを内心で流しつつ、いつも通り突拍子のないことを聞いてくるTASさんに声を返す俺であった。
……彼女が突拍子もないことを言い出すのは最早いつものことなので、逆に突拍子もなくなってきているような気がしないでもないわけだが。
「む、それは盲点だった。私も時々は普通に過ごすべきかもしれない。ギャップのために」
「おう、是非ともそうしてくれ。毎日が非日常っていうのは、それはそれは大層疲れるモノなんだ」
「わかった。∂%日後にそうするように考えておく」
「……いきなり『#♂∧∀∇』語で話されても、俺にはまったく理解できないんだが?」
「もうお兄さん、それは迂闊に使うとよくない……って前にも言ってたでしょ?これは『∀≒&』語。全然違うところの言葉だよ?」
「悪いけど、違いがまったくわかんねーんだわ」
なお、こっちのツッコミが有効に働いているかどうかは、それこそ神ならぬTASのみぞ知る、みたいな感じである。……九割くらい無意味な気がするって?ははは。本当のことを言う奴は嫌われるんだぞ?()
「つーわけで、これまた唐突に、一面白銀のゲレンデに連れてこられたわけなのですが……」
「ワープ走法を多用すれば、日帰りで北海道旅行だって余裕。ぶい」
で、それから数分後。
半ば無理矢理スキーウェアに着替えさせられた俺は、彼女に手を引かれ、北の大地へとその一歩を踏み出していた……というわけなのでありました。
……なお、その道中及び過程は吹っ飛んだのではなく、そもそもそんなに時間を掛けていない……もとい時間の方が吹っ飛んだ、ということをここに記しておきます。
最近(比較的)大人しかったような気がするけど、彼女がTASであることはなんにも変わってないからね、仕方ないね。
……ともかく、北の大地なら雪くらい積もってるやろ……という、かなり雑な場所選定によってここまで連れてこられたわけなのですが……よくよく見回してみたら、ゲレンデって言う割に周りに人、居なくない?……という、なんか嫌な予感がする実態に気付いてしまった俺である。
「流石はお兄さん、周囲をよく見てる。嫉妬とか微笑ましいとかみたいな煩わしい周囲からの視線がないところ、来たかったでしょ?」
「あーなるほどーこれ要するに人の入って来られない秘境とかそういうあれなのねー。……って加減しろこのお馬鹿!」
そんな俺の反応に、うんうんと頷きを返してくるTASさん。……案の定、周囲に人影が居ないのは彼女の仕業だったらしい。と言っても、周囲の人を
……いやまぁうん、それだけなら別に彼女のことを怒鳴る必要もないんだけどさ?まず日本において完全に人が居ないような場所、というのがどういうものなのかを想像すると、彼女のやっていることの危なさがよーく理解できるってものでね?
まずもって、日本という国は国土が……より正確に言えば、普通に暮らすことのできる
田舎街のうち、山中にあるため交通の弁が悪く、昔は人が住んでいたが今では廃村となっている……みたいな話がそこらにあるように、昔はとにかく住めればいいや、くらいの感覚で色んなところに居住区があったものである。
……そこから逆に考えると、日本という国において、まったく人の生活の気配がしない場所、というのは。
つまり北の大地において、周囲に人の痕跡がなく・かつこれほどの銀世界が一面に広がっている場所、というのは。
「……どう考えても、国立公園とかのいわゆる自然保護区の類いじゃないですかヤダー!!」
「お兄さんは相変わらず察しがいい。──はいスキー板。今日は楽しく密漁者狩りだよ☆」
「なにー!?今日のTASさんのテンションなんなのー!?怖いを通り越しておぞましいの類いなんだけどー!!?っていうか仕事かよー!!!」
「ふふふ。この間はMODと楽しそうにしてたみたいだから、今日は私と楽しもうね☆」
「ぎゃー!!バレてる上に絶対怒ってるこれー!!?」
「ほらほらお兄さん、こんなところでそんなに大声出しちゃダメ。雪崩がおきるよ、ほら」
「ほら、じゃないんだよなぁ!?」
まぁ要するに、MODさんとばかり遊んでいて()ずるい、という話になるらしい。
……そんなわけで、試される大地編、スタートです()……生きて帰れたらいいなぁ……。