子供の時、アニメやゲームのキャラクターの動きや技を真似したことがない、という人は少数派だと思う。
特に雨が降りそうだけど今は降ってない……って時に持たされる傘。
これはまず間違いなく武器扱いにされ、人によってはストラッシュしたり天衝したりカリバーしたりしていたはずだ。……突き系に関しては真面目に怪我しかねないので、やるなって大人とかに厳命されていたような気がするけど。
「だからってさ、君らがやると洒落になってないんですわ、マジで」
「はい?」
「大丈夫、人死には出ないし人が来ないように(乱数調整も)してある」
「巻き込まれる俺が堪ったもんじゃないんですけど???」
そんな微笑ましい遊びのはずのチャンバラごっこも、この二人に掛かれば一大騒動に発展するのであった。……巻き込まれるこちらの身にもなってほしい。
「むぅ、今なら剣圧を飛ばすためのアドレス値がわかりそうだったのに……」
「変な方向から新技開眼しようとするのやめなさい。……え?アドレス探査ができるようになったら、もっと別の技もできるようになる?むしろ、今までそれやらずにあれこれしてたの?TASさんもまだまだ成長するの?」
「技術の発展する速度は凄いですものね……」
一先ず、ガキンガキン傘で打ち合っていた二人を近くの芝生に正座させ、くどくどとと説教をかます俺。
周囲に迷惑かけなくても、近くにいる俺は髪型とか凄いことになっているので、その辺り気にしてほしい……みたいな気持ちもなくはない。
っていうか、AUTOさんは真面目キャラ的にももうちょっと節度を持って行動してほし……え?最初に『周囲への安全のための配慮はしている』と聞いたから大丈夫だと思った?……ルールに則ってるなら問題なし、ってわけじゃないんだよ気にして?
……そんな感じで話す中で、TASさんにはまだまだ成長の余地がある、なんて話題が飛び出し、思わず嘘だろと驚愕してしまう俺であった。
まぁ、よくよく考えれば数年前と今とではやれることとかが変わっている、なんてことはよくある話なので、そりゃあ彼女にも成長の余地はあって然るべき、というのはわからないでもないのだけれど。
「なんというかこう、TASを名乗る以上はもう最強みたいなもんなのかなー、みたいな気分もなくもなかったから……」
「それは勘違い。私だってまだまだ成長する」
「へー……」
「ぱんち」
「ぐへぇっ!?……な、何故いきなり顔面にパンチを……?」
「その
「流石に今のは貴方様が悪いと思いますわ……」
はたから見れば、
そんな感じで、まだまだ成長の余地がある……と豪語するTASさんを眺めていた俺は、唐突に顔面に拳を受ける羽目に。
……横のAUTOさんと見比べてしまったのが、どうやら良くなかったらしい。いやでも、確かTASさんとAUTOさんって一学年くらいしか違わな耳が痛いっ!!?
「貴方の耳を右右左左ABAB……」
「ねぇー!?そのコマンドはどういう効果!?」
「
「ですよねー!!?」
「ふ、二人とも落ち着いて下さいましっ!?」
どうにも人の思考が読めるらしいTASさん。
なので千切れるほどに強く耳を引っ張られても、ある意味仕方のない話なのでありましたとさ。
「食べ物で遊ぶな、という話をよく聞く」
「ああうん、確かに。勿体ないし、色々と失礼だからな」
とある日の午後。
そろそろお昼だ、ということで昼食を用意しようとした俺だったのだが、なにかを思い付いたらしいTASさんに止められた結果、今に至る。
目の前では、深い鍋にタイミングを見計らいながら、材料を投入するTASさんの姿があるわけなのだが……ははは、今日はカレーかな?(乾いた笑い)
……まぁうん、言いたいことは幾つかあるのだが、一番大きいのはこれだろう。……なんで深鍋にすると、中身が非公開情報に変わるんです???
非公開情報。要するに、他から中身を確かめられないということだが……これをTASさんに扱わせると、色々と話が変わってくる。
端的に言うと、『TASのアトリエ~データの海の錬金術師~』開幕だ。
見るがいい、テーブルの上に並べられた食事の数々を。
「……焼き魚に、ステーキ。それから……ええと、これは?」
「それは失敗作」
「はへー、貴女でも失敗することがありまs「
最近のお決まり通りに昼食に同伴していたAUTOさんはと言えば、そこにある料理達の節操のなさに、思わず呆れ返っている。……いやまぁ、この
ともあれ、鍋から出てくる料理じゃない、という彼女の感想には頷くしかないだろう。どこかのピンク玉のコピー能力を思い出す節操のなさである。
非公開情報ということは、中でなにが起きていてもおかしくない、ということ。……いやおかしいんだけど、それを扱うのがTASさんである以上おかしくはないというか。
ともあれ、なんだか張り切っているTASさんは──特定の手順を踏まないと出てこないレシピ、とやらに御執心のようで、これらの料理はその副産物、ということになる。
最終的には全部鍋にぶち込むとも言っていたので、現状ではまだ食べることはできないわけだが……最終着地点が今から恐ろしい俺なのであった。
「……右に三回、左に一回。材料を掬って──今、全部投入」
「あいよー」
「恐ろしいと口では述べつつ、わりと協力的ですわよね……」
「怖いもの見たさ、ってやつだなー」
まぁ、怖くても手伝っちゃうんですけどね、初見さん。
……ってなわけで、TASさんの合図で全ての食材を再投入。ぼわんと湯気を上げる鍋の中、出来上がったものは……。
「……って、カレーやないかーい!」
「?……お兄さん、カレーが良いって言わなかった?」
「あー、カレーかな?……とは思ったけども」
鍋の中で輝く、茶色の液体。
……紛れもなくカレーなわけですが、ここまでやってカレーなんです???
という俺の疑問は、TASさんからの疑問返しによってあえなく封殺されてしまうのであった。
……なお、カレーの方は今まで食べたことがないレベルで美味しかった、悔しいことに。