「……とまぁ、そんな感じのあれこれがあった結果、最終的にこのパッドの中に封印されたのが、件のダンジョン主さんになります」
「うわぁー!!だしてー!くらいよせまいよー!!」
「うわぁ」
開幕早々、AUTOさんらしからぬ唖然と驚愕の声から始まりましたが、皆さま如何お過ごしでしょうか。俺はあちこち痛いけど(比較的)元気です。
前回、山の中から出土したというすごろくゲームに、三人揃って取り込まれてしまった俺達は、いつも通りのTASさんの活躍により、以前やった山崩壊RTAを遥かに凌ぐ、おおよそ八分台での攻略を成功させたわけなのだが。
その結果に憤慨……というか発狂?したのが例のダンジョン主さん。なに言ってるかはわからんけど、多分「ふざけるんじゃねー!!」的な言葉を叫びながら、唐突にガス状生命体的な姿で俺達の前に登場したのである。
……え?ガス状生命体がよくわからん?えーと、創作とかでたまーに見掛ける、『気体だけど生き物』みたいなやつだよ、うん。
ともかく、そんな感じで黒い霧のような姿で現れたダンジョン主は、本来えげつないほどの強敵である。
なにせ気体である。どういう原理で
いやまぁ、霧散させれば普通に死ぬタイプじゃない、ってだけの話なのだけれど、それがどれくらい恐ろしいことなのか、というのは実際に相対してみないとわかるまい。……わからないはず、なんだけど。
「必殺・TASふらっしゅ」
「ぎゃあ!?まぶしい!?」
「なんで掃除機にライトが?」
こんな時でも冷静沈着なTASさんは、なにを思ったか俺の背中で相変わらず気絶中のCHEATちゃんに駆け寄り、そこで何事かを呟き始めた。
……断片的にしか聞き取れなかったが、多分良からぬことをしているのだろうな、と思わず相手の冥福を祈る心持ちになってしまった俺の前で、やること終えたらしいTASさんが虚空より取り出したるは掃除機。
なんで掃除機?と首を傾げる俺と、「あれ!?きょかだしてないのになんかだしてる!?」と、多分凄く驚愕しているのだと思われるダンジョン主。そんなこちらの困惑を嘲笑うかのように、TASさんはホースの横に付いていたスイッチをオン。
……結果、周囲を真昼のように照らす目映い光──いわゆるフラッシュが一瞬焚かれ、それに怯んだ黒い霧は空気中で不自然なほどに固まり。
「逃げる方向とは逆、逃げる方向とは逆」
「ほぎゃああぁあぁああすわれるぅうぅううぅう!!?」
「わー……」
その隙は逃さん、とばかりに掃除機のノズルを相手に向けたTASさんは、大方の予想通り相手を吸い込んでしまったのでした。……あー、幽霊退治屋……。
「あっちだと危ないから、どっちかというとマンションの方」
「ああ……使っている機械の形は似通っていますが、原理的には結構違うと聞いたことがありますわね」
「……なんの話かはまっったくわからんが、なんとなく危ない気がするからその辺りにしておこうな」
はーい、と返事をする二人になんとも言えない視線を向けつつ、さっきから無視していたもう一方を見やる俺。
そこにあったのは、
「…………」
「げ、元気だしてくださいCHEATちゃん!ほら、前の遺跡は埋まっちゃいましたけどぉ、こっちはちゃんと形が残ってますよぉ~?」
「……中にもう居ないから、あの時みたいなのはもう見られないじゃん……」
「いやいや、ほら向こうを見たまえよ。中身はあそこに居るんだから、一緒に遊んで貰えばいいだろう?」
「中に居ないから、理不尽ゲームマスターパワーもう使えないじゃん……」
「「……ダメだこりゃ!」」
じめっ、とした空気を周囲に放出しながら、畳に寝転がってぶつぶつと嘆きと悲しみを吐き出しているCHEATちゃんと、その横で彼女をどうにか立ち直らせようと頑張っている、MODさんとダミ子さんの姿であった。
あーうん、凄く残酷なことを言うと……今回のすごろく攻略、最終的にあの掃除機が必要だったのだが……持ち込みすると警戒されるしそもそも最終戦以外で使わないので邪魔。
……といった感じに、端的に言ってしまうとCHEATちゃんがあの場に居た理由の八割くらいが、『最後に掃除機を取り出すためのアイテムボックス代わり』だったようで。
なので、端から彼女が遺跡を楽しめる可能性はなかった、ということになるらしい。……いやまぁ、九割くらい彼女が勝手に興奮して勝手に倒れたのが原因、みたいなところもなくはないのだが。
その辺りは彼女も理解しているため、誰に突っかかるでもなくああして凹んでいる、ということになるようだ。
……まぁうん、キャラ変わるくらいに喜んでたから無理もないね、はい。
とはいえ、そのまま加湿器みたいに湿気を放出され続けても困る話。
なので、彼女を立ち直らせるきっかけが必要、ということになるのだけど……。
「……アイテムボックス」
「……ああ?」
「便利な物運び屋、遺跡マニアなのに実際に目にするとダメダメ、肝心な時に役に立たない奴……」
「キョエアァアアアッ!!カッテヤルヨソノケンカァアァアアッ!!!」
「ふっ、それでこそCHEAT」
「……なにこれ?」
「さぁ?」
「……あ、なんかともだちになれそうなきがする」
その役割は私が受け持つ、とばかりに挑発を繰り返したTASさんにより、見事CHEATちゃんは挑戦者としてのプライド(?)を思い出したのでしたとさ。……結果?聞くな。