「……うーむ」
「な、なんですか?わたしをみてもなにもありませんよ?」
はてさて、色々あったあの日から、暫く経ったとある日のこと。
掃除洗濯家事おやじ……おっと最後は違った。
まぁともかく、そんな感じで家の中のことをせっせと終わらせていた俺は、偶然目に入った物体──ダンジョン
……え、名前?なんで英語なのか?いやまぁ……癖?
「なにをいってるのかはわかりませんが、とりあえずほっといてください!ここどこにもつながってないから、わたしひきこもるくらいしかすることないんですから!」
「あー、反省するまで天岩戸、だっけ?……いや、それだとこっちが迷惑を被る側になるから違うか」
まぁともかく。
一枚の板切れ……というにはちょっと高性能すぎる
あの遺跡が北の大地にあったことから、恐らくはその辺りで信仰されていた神様、だと思われるのだが……まぁ、周囲に集落の影もなかった辺り、かなり古くて文献とかも残ってなさそうなので呼び名は適当でいいかなー、というか。
その時『よくありませんー!』的な抗議が行われたが、パッドを持ってにこやかに笑ったTASさんに『なにか、問題が?』と聞かれ、『なんでもありません……』と涙声で主張していたのは記憶に新しかったり。
まぁともかく、そんな感じでなし崩し的にうちのメンバーに加わった彼女……彼?は、こうして日がな一日ぶつぶつと何事かを呟き続けていたわけである。
とはいえ、それも仕方のない話。なにせこの人……人?は、ネットに繋がっていないパッドに押し込められていたのだから。
元々日本を沈没とか世界を崩壊とか、わりと物騒な目的を持っているとTASさんから警戒されていたDMさんである、そりゃまぁネットの海に放流することになりかねないようなこと、やるわきゃないというか。
……だがしかし、こうして一人でぐだぐだうじうじしていると、自家中毒で毒性がさらに高まる……もとい、恨み辛みが折り重なってミルフィーユになるのは既定路線、下手をするとパッドのまま謎の飛行物体になってそこいらを飛び回りかねないので、なにかしら対策の欲しい俺なのであった。
とはいえ、俺になにかできることがあるか?……と言われると微妙なところ。
ネット接続させるのが一番手っ取り早いのだろうが、それはさっきから無理、と言っている以上選択肢としては下の下である。
じゃあ他の人に頼むか?……となると、ちょっと上から目線なところのあるDMさん相手だと喧嘩になりそう、みたいな懸念もなくはないというか、寧ろ相手側の方がワケわからんことし出してDMさん側が困惑しきりになりそうというか。
「またまたぁ。あのたす?とかいうのいがいは、そこまででもないでしょう?」
「──とりあえず、AUTOさん相手だと君は『わたし、きれいなじゃしん!』とか言わされる羽目になると思うよ」
「ミ°」
……おお、ひらがな以外の文字が出てきた。
読み上げ音声的な感じで、画面に文字が出たあとに声が出る……というのが今のDMさんの話し方だが、そのせいなのか画面の文字は基本ひらがなしかなかったのだ。
それがカタカナ?的なものが出てきた辺り、頑張れば他の言葉も使えたりするのかもしれない、流石神。
……神認定のハードルが低すぎる、的なことを言うDMさんに苦笑を返しつつ、ずれた話を本筋に戻す俺。
さてはて、うちのメンバーが大体あれ、というのは皆さんご存知の通り。
筆頭のTASさんは言わずもがな、最近目立たないがAUTOさんは元々規律規範に殊更うるさい部分があったりするし、CHEATちゃんは最近遺跡マニアである、なんて情報も加わったため、迂闊にDMさんと関わらせてはいけない人間の代表と言えるだろう。
MODさんは比較的常識人だが、あの人基本形態の女子高生以外の時は結構はっちゃけるので、慣れていないとまず酷い目に合うだろう。……ダミ子さんに関しては、まず向こうが警戒して見てるので多分問題なし。
とまぁ、そんな感じで。
迂闊に今のDMさんを放り込んだが最後、彼女は自身のアイデンティティを見失って失墜すること間違いなしなのである。
「ひぇえ」
「だから、あの子達の前で恨み言とか迂闊に口走っちゃダメだぞ。じゃないと……」
「お兄さんちょっと話が」<ガシッ
「こうなるからねぇええぇぇぇぇぇぇぇ……」
「ひぇっ」
そうして彼女に注意を促す最中、突如現れたTASさんに襟首を捕まれ引き摺られて行く俺。
咄嗟に近くのクッションに放り投げられたDMさんは、奥の方の部屋から響いてくる「うわぁごめんってー!」「ダメ、許さない、風評被害」「いや風評被害ではなぐぇーっ!?」などの言葉に、ガタガタ震えながら嵐が過ぎ去るのを待ってたとかなんとか。
「……貴方も、変なことしたらこうなるから」
「ひぃっ!?しませんしませんもうしませーん!!」
……ふ、いい反面教師になれたみたいで嬉しいぜ、がくっ。