「色々考えた結果、ネットに繋いでないゲームとかならいいんでないかなー、ってことになりました」
「はぁ。ええと、これはいったい?」
「みんなで乱闘するタイプのゲームです。相手を挟むように
「それは乱闘というよりリンチでは?」
「おおっとお目が高い。昔ルールの整備されてなかった時は『おきらくリンチ』、なんてものが跋扈してたりしましたのでその感性は間違ってませんよ」
「にんげんこわい……」
一瞬知性の光が宿ったが、すぐに元に戻ってしまったDMさんに苦笑を返しつつ、改めてゲーム機のセットを行う俺。
……困ったことに、この人こう見えて神様──それも邪神の類いなので、遊戯環境には最大限気を使う必要があるのだ。
と言うのも、この人「わたしはよわくてむがいなかみさまです」みたいな空気を醸し出しつつ、その裏でパッドの無線機能を勝手にオンオフしたりしていたのである。
いやまぁ、今までとはまったく違う環境に普通に馴染めているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが……この人、どうにもこっちが思っている以上に順応性が高いみたいなのだ。
なので、素知らぬ顔で外の世界に
……まぁ、この辺りの無線はTASさんが難解怪奇な暗号キーを設定しているため、それの解読中に彼女の反抗がバレ、あえなく御用となったのだが。
そんな風に、パソコンとかパッドとかスマホならまだマシなのだが。これがことゲーム機の話になると、事情が変わってくる。
ところで、話は変わるが。……うちに集まっている人達って、どういう系統の人だろうか?
そう、ゲームに関わるようなキーワードを、自身の説明とするタイプの人々である。
そのため、彼女達のメインコンテンツみたいなものであるゲーム機というのは、原則ネットに繋がないなんてことがあり得ないのだ。バグの更新とかするし、そもそもネットで対戦とかもしてるしね。
個人的には、TASさんがいつチート扱いされてBANされるか、わりと気が気でないのだが……まぁ、俺の感想は置いとくとして。
ともかく。
彼女達の主戦場となるゲーム機、迂闊なことはさせられない。
とはいえ、相手は現状電子生命体みたいなことになっている存在、肉の体しか持たない俺達にできる対策では、いつしか押し切られてしまうという可能性もあるだろう。
「……と、言うわけでそんな時に有効になるのがこちら、物理的な対策。今回のゲーム中は周囲の無線全部切ってあります」
「なんというちからおし……」
そうして編み出されたのが、物理的な対策である。
アナログと侮るなかれ、相手が操作できない位置にある物理的な断絶というのは、なによりも高いセキュリティを誇るモノなのだ。
例えば、工業機械。あれらに使われているOSは、最新のパソコンに搭載されているそれに比べると、遥かに性能が低い……もっと言えばとても
いや、新しいものを使った方が楽なのでは?……と思われるかも知れないが、複雑な動作を必要とするものならいざ知らず、例えば目的の形にモノを削り出す、みたいな工程
なにせ、そういう機械で必要なことは、極論目的の場所に刃を持っていくことだけ。三次元の移動を処理するだけで済むことも多く、それ以外は無用の産物となったりすることも多い。
そして、そういう機械に共通する特徴として──ネットワークへの接続機能が付いていない、ということがあげられる。
これは、寸法や形状などの必要なデータを入力する際、フラッシュメモリなどに入った情報を読み込むようにしている……要するに古い機械のまま更新がされていないことで起きる現象なのだが、これが意外と情報漏洩の防止に役立つのである。
まず、物理的に断絶されているため、その機械を操作するためには
ハッカー達の得意技『遠隔操作』が端からできないため、対応が凄く限られてくるのだ。
つぎに、コンピューターウィルスなどに
これは、コンピューターウィルスもプログラムの一種であることから発生する盲点。……要するに、古い機械用に作っていないウィルスは、例え機械の中に侵入できても活動できないのである。それだけのスペックがないので。
これに関しては古い機械用のウィルスを作ることで代替はできるが……ウィルス以外の様々な侵入・破壊工作に対しても『専用の対策を必要とさせる』という点で、意外と引っ掛かってくれるモノとなっていたりする。
……最新の機械だとその辺りの互換を切っていることも多いので、わざわざそれだけのために専用の環境を構築するところから始めないといけない……なんてこともままあるわけだし。
そんな感じで、物理的にどうしようもないというのは、プログラムに関わる存在からするとわりと死活問題になるのだ。
なにせ、自身の手の内だけでは絶対に対処しきれない。極端な話、無線機能がないのなら有線接続しない限り直接端末に触れないとなにもできない、ということになるわけで。
その時点で、電子生命体としては九割がた詰みである。……一応、遠隔操作のロボットとかを駆使して目的の端末に触れる……みたいな手段はあるだろうが、どちらにせよそういう迂遠なやり方を強いられる時点で敗けみたいなもんなのである。
「……ふういんには、むしろなかみをまもるいみもある、みたいなはなしですか?」
「んー、違う気がするけど……まぁいいかぁ、よろしくお願いしまーす」
「えっ?……ええと、よろしくおねがいします……?」
長々と話しているうちにセッティングが終わったので、コントローラーを構え対戦を申し込む俺。
……結果は俺の惨敗だったが、距離感は縮まったんじゃなかろうか?
「ひゃっほー!ホームランたのしー!」
「十割打者、だと……?!」
代わりに、なんかヤバイものを降誕させてしまった気がするけど、まぁ誤差である、誤差。……いややっぱり誤差じゃないかな?