うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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躍進は誰の身にも訪れるもの、良いか悪いかは別として

「……ん?私にも成長の余地があるんじゃないか、だって?」

「そうそう」

 

 

 ある晴れた日のこと。

 自宅であれこれと作業をしていた俺は、ふと思ったことをこちらの手伝いをしていたMODさんに尋ねていたのだった。

 その内容というのが、『貴女ってMODって呼ばれてるけど、なんか適用範囲狭くない?』というもの。

 具体的には、対象が自分だけなのっておかしくね?……って疑問である。

 

 

「ふーむ、まぁ言われてみると確かに。MODとは改造データ全般のことを言うもの、そうなると私以外の誰かに適用できてもおかしくないといえばおかしくないね?」

「でしょー?……でもまぁ、仮にそれができたとするとすっげぇ悪みたいになりそうな気もするんだけども」

「あー確かに。相手に触れてその姿を自在に変える──今私ができることから考えると、普通に相手を人間以外のモノに変化させることもできる、ということになってしまうからね」

「……人体錬成?」

「どっちかと言うと呪いとかの方が近いんじゃないかい?いやまぁ、私は魂の形とかは見えてないけどね」

「怖ー……」

 

 

 その疑問に対し、彼女はふむ、と一つ頷きを返してくる。

 ……できてもおかしくなさそうの言葉通り、恐らく彼女のスキルツリーを深掘りしていくと、他者変化系のモノが現れるのは半ば確定事項だろう。

 実際、ゲームする時とかはMODパワーを反映させられているわけだし。

 

 ただ、その道の先に待ち受けているのは、どう考えても悪役への道。……相手の姿を無茶苦茶に変えて無力化できてしまうそれは、例え変化が姿のみに留まっていたとしても恐ろしいモノだと言えるだろう。

 

 

「まぁ、スペック変化が含まれていない以上、例えばTAS君相手に成功させたとしても、どこぞの最強の飴玉みたいな無法存在が生まれるだけのような気もするんだけどね」

「怖ー…………っ」

 

 

 ……ただ、その恐ろしい能力があったとしても、結局地力は自前という制約がある限り、TASさん相手には足止めにすらならない……みたいな結論がでてきてしまうわけなのだが。

 

 

「……え、そのレベルなんですあの子?」

「おや。TAS君にコテンパンにやられたと聞いたけど、まだ彼女の実力を見誤っていたのかい?」

「いや、姿を変えられても戦力が変わらないとか、ほぼほぼ神様の領域だと思うんですけど???」

 

 

 なお、横でこちらの話を聞いていたDMさんはガチで引いていた。

 あれだけボッコボコにやられていたわりに、なんとも抜けたことを言っているなぁと思わなくもなかったのだが……彼女が言うには、自分の姿形に関わらずあの動き(※空中で空気を蹴って方向転換など)ができるのはおかしいだろう、とのこと。

 

 ……まぁ確かに。あくまでモノの例えとして例示された『飴玉』だが、恐らくTASさんはその姿でも普通にいつもと同じ動きができると思われる。

 というか、彼女の特異性のほとんどは、彼女の持つ未来視に由来しているため、そこをどうにかできない限りはデバフにすらなってないのである。本当に見た目を変えただけ(※当たり判定はそのまま)、みたいな?

 

 

「……それは本当に未来視なんです???」

「TASそのものではないけど、TASの擬人化とは呼べる……みたいな存在が成立する条件とは?……っていう疑問から逆算されたかのような技能だ、そりゃ困惑もするというものだよ」

 

 

 首を傾げるDMさんには悪いのだが、彼女の基礎技能は特に意味不の部類、まともに考えるだけ無駄なのである。

 なので、一先ずTASさんの話は放置。当初の話題に立ち返り、MODさんについての話に戻していくことにする。

 

 

「ふむ、私の話と言うと──他者付与について、か。……実際どうなのだろうね?私は自身のそれを一種の変身・変化だと捉えているが、それを他者へと適用するために必要なモノとは、一体なんなのだろうね?」

「んー……これはあの子(CHEAT)にも言ったのですけど……少し傲慢になること、でしょうか?」

「傲慢?」

 

 

 悩むMODさんに対し、DMさんがしたアドバイスは『傲慢になること』。

 これはCHEATちゃんについても同じことだが、彼女達二人は明確に元となるものを変化させるタイプの異能者である。

 TASさんとAUTOさんが基本的には自己強化タイプなのとは違い、彼女達はロケーションや得物などを変化させるタイプというか。

 今でこそその対象が自分、というものに留まっているが……本来・もしくは将来的には、彼女達のそれは世界を変革するモノとなりうる可能性を持っている。

 

 そして、そういう能力を行使する時に必要なのが──ある程度の傲慢さ。

 自分の意思で世界をねじ曲げることを良しとする意思、とでも言うべきか。

 逆を言えば、今の彼女達は世界を慮り過ぎている、ということになるわけで。

 

 

「その辺りの意識改善ができれば、貴女の能力も更なる飛躍を迎えられるかもしれませんね」

「……んー、正直余りそそられないかなー。私があれこれやってるの、結局は()を護りたいから、みたいなところがあるからね。その道は、どう足掻いてもそれ()を乱す方向のそれだろ?確かに便利にはなるかもだが、今の私には必要ないものだよ」

「そうですか?些か勿体ないような気もしますが。貴女なら、私の神官になることも容易いと思うのですが」

「ははは。興味深くはあるけど、流石に邪神の眷属は遠慮させて貰うよ」

「むぅ、残念ですが、無理強いは良くないですね」

 

 

 なので、ちょっと悪になれば彼女はすぐにでも飛躍できるだろう、とDMさんは告げるのだが……その道には進めないと、MODさんは断りをいれたのだった。

 

 ……ううむ、なんか俺を無視して結構ヤバい話が飛び交ってた気がするな?というか、

 

 

「──DM、少しお話しが」

え゛。……いやその、今のは言葉の綾と言うやつでですね?」

「問答無用。CHEATの教育に悪いことをしているのなら、私はお前を滅ぼすだけ」

「ひぃーっ!!?ご勘弁をーっ!!?」

 

「……なにやってんだこの人」

「ははは。……まぁ、悪さをしすぎると()()()に至る、ということを知ってるからこそ、そっちの道は歩き辛いってところもあるんだけどね?」

「ほぎゃーっ!?ごめんなさーい!!?」

 

 

 こう、TASさんを前に魔王とか邪神とか、心置きなくぶっとばしても良いものを置いといたら酷い目にしか合わねぇよな?

 ……みたいなことを思えば、DMさんの誘いが完全な死亡フラグでしかなかったというか。

 

 そんな結末が見えていたMODさんは、小さく苦笑しながら追い掛けられているDMさんを眺めていたのだった。

 

 

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