うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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良いも悪いも人の作った指標

「……厳正な調査の結果、彼女はシロとなりました」

「ほ、ほらー!やっぱり私は悪くありませんでした!」

「……いや、多分喜ぶところじゃないぞこれ」

 

 

 具体的には、大分馬鹿にされてるぞ君、みたいな。

 

 ……とまぁ、前回から引き続きDMさんの行っていた指導を確認していた俺達だが。

 正直、思った以上に抜けているというか、呑気すぎるというか……まぁ、そんな感じのことを思わざるを得なかった俺達である。

 

 いやまぁ、ところどころキナ臭くはあったのだ。

 さっきの遠隔操作もそうだが、伸ばしている方向性そのものは確かに、有用性に溢れた素晴らしい提案なのだが。

 ……こう、容易に悪用手段が思い付くような感じがある、というか。

 遠隔操作を例にするのであれば、彼女達の技能を遠く離れた位置で使えるとなると、それこそそれが誰であれチートみたいなもんでしかなくなるというか。……いやそもそも映像越しの時点で大概だわ。いやまぁ、認知の力であると言うのなら、できない方がおかしいのだろうが。

 

 ともかく、指導方向に間違いはないけど、成長しきった先が悪用に向きすぎている、というのは事実。

 なので、彼女自身もその辺りを密かに狙っているのかなー、なんて風に思っていたのだけれど。

 

 

「……?えと、便利になるのはいいことなのでは?」

「これだよ(呆れ)」

「えっえっ、私変なこと言いましたか!?」

(変なこと言ってないのが問題なんだよなぁ……)

 

 

 極論を言えば、力そのものには善悪はない。

 それを悪用する側に悪があるだけで、なにかを行使することそのものに悪性などは存在し得ない……みたいな話があるが、まさにそんな感じ。

 こっちとしては『悪用法から逆算したような指導』に見えるが、その実DMさん自体は『あっ、これ便利そう』だとか『これができると凄いですよね』とか、言い方を変えると()()()()()()()()()()()()()なのがすぐに理解できてしまうのである。

 ……いや、君邪神と違うんかい。世界滅ぼそうとしてたやろ確か。

 

 

「な、なんでエセ関西弁なのかはわかりませんが……ええ、私は貴方達の価値観で言うところの邪神。日本やら世界やらを滅ぼすことに躊躇はありませんよ」

「……その尖兵にするために、彼女達を鍛えている?」

「いえまぁ、なってくれたら嬉しいなー、とは思いますけど。……その、無理強いすることではなくないです?そういうのって」

「……困った、ちょっとよくわからない」

「TASさん!?」

 

 

 うん、自身が悪いものという認識はちゃんとしてる。……というか、()()()()()()()()()()と言うべきか。

 そう、普通そういう悪役というのは、周囲の者を利用し尽くして目的を果たそうとするもの。

 ……なんだけど、どうもこの人、その辺りの押しが弱いのである。

 

 悪役なら悪役らしく、相手を洗脳でもなんでもすればいいというべきか。いや、実際にそんなことし始めたら、予兆の時点でTASさんにボコボコにされてそうではあるのだが。

 ともかく、悪を標榜するわりにやり口が余りに穏当すぎる、とでもいうか。これにはTASさんも困り顔、というやつである。

 

 

「……え、ええと。私、なにかやっちゃいましたかね?」

「やっちゃったというか、やってないことがおかしいというか……」

 

 

 結論、この人わりといい人だな?

 結局単に不思議ガールズの戦力が上がっただけ、ということになってしまってる辺り、妙なことになってるなぁという感想が漏れてくる俺なのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「ふむ……自身以外、それも遠方への異能の適用、ですか」

「おっ、AUTOさんも気になる感じ?」

「気になるというか……私の場合はそこまで関係がなさそう、という感じの方が強いかもしれませんわね」

「あら」

 

 

 後日談として。

 遠方への異能の適用は、基本的に強化手段として適しているので、引き続きDMさんにはその辺りの訓練を引き続きお願いすることになり、その話をAUTOさんにしてみたところ。

 彼女は興味を示し……たわけではなく、寧ろその逆。自身には関係ないことだろうな、と素っ気ない態度を取ったのだった。

 

 

「私のそれは、大抵のことを人並み以上にこなすこと。その基準には()()()()()()()という冠詞がいつも付与されています。……簡潔に言うのであれば、私が遠方に届けられるものがなにもありませんのよ」

「……自分以外を対象にできるはずがない、みたいな?」

「まぁ、そんな感じでしょうか?」

 

 

 その理由は、彼女の異能にあった。

 彼女のそれは、大抵のことに対して『最善手』を打てる、というもの。()()()()()()()()()()()という点において、常に自身を意識しているものである。

 端的に言えば、他者に付与する(やらせる)時点で『最善』かどうかがあやふやになる、というか。

 

 実際、TASさんとかはわりと普通に使っているのである、他者付与を。主に被害者は俺だが。

 それは彼女のいう『最速』が、誰にとっても『最速』であるがため。……そこからすると、人によって変わる『最善』というものは、本来他者付与に適さないのである。

 

 

「そも、私には()()でなくとも、例えばTASさんからしてみれば『最速』が『最善』なのでしょう?……もうこの時点で色々とずれているではありませんか」

「うーむ、なるほど。……でもほら、試してみない?一応」

「……人の話を聞いていらっしゃいましたか?……いえまぁ、一応やってはみますが、一応」

 

 

 ……まぁ、この辺りは普段の行動にも『最善』……もとい規範を求める彼女自身の言い訳、みたいな部分もあったわけなのだが。

 そうして彼女は、俺が差し出したタブレットに触れて。

 

 

「……システムの最適化ができましたわ」

「そっち!?」

 

 

 画面の向こうではなく、今手に持ってるタブレットを『最善』にしてしまったのでありました。……いや、それはそれで凄いな!?

 

 

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