うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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真冬に雪が降るかの如く

「……突然ですが、雪かきをします」

「えー」

「えー、じゃないわ!散散(さんざっ)ぱら雪降らせて遊んでたの君らでしょうが!」

「……てへ♪」

「可愛子ぶってもダメなもんはダメじゃー!!」

 

 

 はてさて、いきなり俺の怒鳴り声から始まった今回。

 なんでこんな大声で俺が怒鳴らなければならなくなったかというと、それは偏に彼女達の迂闊な行動が起因となっていたのであった。

 

 

「……天候の操作、ですか?ええまぁ、できますけど、神ですので」

「なんと」

「もしかしたら今までで、一番神様らしい特技なのではありませんこと……?」

「そんなことできたんなら早く言ってよDMぅーっ!!」

「な、何故かはよくわかりませんが、未だかつてないほどに私への信仰心が高まっているような気が……!?」

 

 

 ことの始まりは、そんな感じの彼女達の会話であった。

 まぁ冷静に考えてみると?最大限力を発揮できれば、日本とか世界とか沈没させられる級のパワーの持ち主が、ここにいるDMさんの正体である。

 まぁ、あとからあの時なにを言っていたのか、と言うことを聞かされた結果、どっちかというと自分の意思で滅ぼすってよりは誰かに願われて滅ぼすタイプの、いわゆる善悪の区切りがない・もしくは薄いタイプの神様だということがわかり、そこまで怖がる必要もないんじゃないかなー?……なんて結論に至ったわけなのだが。

 

 それはともかく、彼女をその気にさせれば大抵のことはできる、とTASさん達が知ってしまったのが運の尽き。

 休みの日になるとこうして、彼女は自身ができることを根掘り葉掘り聞かれるようになったのであった。

 で、今回は『神様なんだから、天気とかも操れたり……?』というCHEATちゃんの疑問に対し、『できますよ?神様ですので』と答えたのだという。

 

 ……まぁそこまではよい。いやよくないんだけど、それができるのがDMさんだけならば、最悪彼女に言い含めておけば無用なトラブルは回避できる。

 さっきから何度か言うように、DMさん本人に善悪の基準がないとしても、周囲からの嘆願などを聞くだけの理性はあるのだから。流石にダメと言われたことを勝手にやるほどアレでもない、というやつである。

 

 しかし、しかしである。

 この場において、彼女の発言を聞いていたのは三人。

 そしてその中に一人、危険人物が居ることを俺は失念していたのだった。そう、その人物というのが。

 

 

「……天候操作スキルが生えましたわ」

「はっ?」

 

 

 ──そう、みんなお馴染みAUTOさんである。

 この人、『そういうものがある』という認識さえあれば、どんな技術でも身に付けられるとかいう、わりと意味不明な能力を持っているわけなのだが。

 今回、彼女はDMさんの話を聞き、天候操作スキルを入手してしまったのだ。とはいえ本来、こんなことが起きるとは誰も予想していなかった。

 では何故、こんなことが起きたのか?……その理由は、彼女達が直前に見ていたモノにある。

 

 

「雨乞いかー。……AUTOはこれ、使えたりしねーの?」

「いえその、流石に眉唾なものはちょっと……」

「AUTOのそれは、なんでもありに見えてちょっと制限がある。だから覚えられないのは仕方ない」

 

 

 そう、それは五穀豊穣を願っての祭りの映像。

 たまたまニュースで流れていたそれを見たCHEATちゃんが、AUTOさんに『これできないの?』と問い掛けたのだが……実は彼女、なんでも覚えられるわけではない。

 彼女が意識的にしろ無意識的にしろ、()()()()()()()()と認識しないと覚えられない、という制約があるのだ。

 なので、どこぞの銀行に関しては『少なくともあの会社のままであれば無理』みたいな認識になって最適行動に移れない、みたいなことになるとか。

 

 今回の場合、彼女の認識では『雨乞い』などの祭りは非科学的なもの。言い換えれば、それをすること()その結果を引き寄せられる()明確な理由が見えてこないため、幾ら彼女の技能でも答えを引き寄せられないのである。

 

 なので、それを聞いたCHEATちゃんは「そっかー」と諦めの姿勢を見せたのだけれど。

 ふと彼女は、そういえばこういう祈りを受ける相手(DMさん)がいるじゃん、と思い出してしまったのだった。

 で、さっきの質問に繋がる……と。

 

 結果としてはドンピシャだったわけだが、これによって認識を覆されたのがAUTOさんである。

 さっきまでの彼女には、祈りを捧げるという行為が結果に繋がる理由がさっぱり理解できなかったが、今の彼女は原理はともかく祈りという行為が結果に繋がることがある、ということを明確に理解してしまった。

 

 ──ゆえに、彼女の異能は正しく機能し、結果彼女は天候操作技術を手にしてしまったのだった。これにはDMさんも宇宙猫。

 とはいえ、ここで終わっていればAUTOさんスゲー、くらいで終わっていたのだけれど。そこで黙っていないのが我らがTASさん。

 

 検証相手が一人だと心許ないが、二人ならば比較検証ができる──そう睨んだTASさんは、二人に天候操作を依頼。

 両者が天候操作中に動いているパラメーターを精査し、どの数値が天候操作に関わっているのかを突き止めた彼女は──、

 

 

「──成功。これで雨の日も風の日も雪の日も安心。ラグることなく進められる」

「なにやってんの!?」

 

 

 ついに、フィールド操作の技術を自らのモノにしたのだった。

 ……あーうん、雨とかのエフェクトって場合によってはラグになるからねー、止められるんなら止めたいよねー。

 もしくは、意図的にラグを発生させて、オブジェクトを抜ける時とかにも使えるよねー。そりゃ覚えたがるよねー。

 

 ……うん、まぁ理由はいいよ、理由は。

 この、局所的に猛吹雪やら大雨やら竜巻やら、あれこれやってきたせいで無茶苦茶になっている我が家の惨状を思えば、それくらいどうってことないわな、ははは。

 

 ──そんなわけで、我々の周辺掃除が始まったわけなのでありましたとさ。

 なお、楽とかしちゃダメ、ということで彼女達には能力禁止の通達をした俺である。

 

 

「むぅ、横暴」

「流石に三人であれこれやったのはよくありませんでしたわね……」

「いやその、それより私への信仰心が零に……」

「また地道に集め直そうな、DM!」

「……ふ、不幸です……」

 

 

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