「あっという間に時間は過ぎるんだ、俺は詳しいんだ」
「……?お兄さんは、なにをぶつぶつ独り言を言っているの?」
「光陰矢のごとし、ってこういうことを言うんだろうなって」
「む、光陰より私の方が早い」<シュババババ
「……いや、時間と張り合わなくていいから」
時間軸歪めてタイムスリップとかしなくていいから。『後ろ!?』とか言わせないでくれマジで。
……とまぁ、初っぱなからぐだぐだしている俺達だが、今日は二人で買い物中である。
時期としてはそろそろクリスマス。なので、飾り付けとかもみの木とかを調達しに出てきた、という感じだ。
いやね?TASさんの好きにさせると、どこからかバカデカイもみの木を斬り倒して持ってくる、などという明らかにヤバいことし始めるのが目に見えているので、その辺りの牽制の意味もなくはないというかね?
なお、他の面々が付いてきていないのは、彼女達は彼女達であれこれ準備してるからだったりする。
ともあれ、それ以外に特に他の用事があるわけでもないので、さっさといるものを調達して帰ろうと思っていたのだけれど。
「……ん?あれ、ダミ子さんじゃね?なんでこっちに……」
「あっ」
ふと視線を向けた先に、ショーウィンドウ越しに並べられた服やらなにやらを眺めている、わりと見覚えのある背中が見えたことで、俺はそちらに意識を向けることに。
……その時TASさんがなにやら『やべっ』みたいな声を出していたのがちょっと気になったが、それよりも他の場所で買い物しているはずのダミ子さんがここにいることの方が気になったので、そのまま彼女の元へと近付いていき。
「おーいダミ子さ……(……いや待てよ?服装さっきと違くね?)」
声を掛けてからようやく、違和感に気が付いた。
──そう、このダミ子さん、さっきまでと服が違うのである。
家を出る時の彼女の服装は、寒くないようにと滅茶苦茶に厚着した状態。それに対して今目の前にいる彼女の服装は、いわゆる
「……その声は、ここであったが百年目ぇ!!」
「ぎゃー!!?世界を滅ぼすサンタだーっ!!?」
「はっ!?……ああいや、そうじゃなく!人聞きの悪いことを言わないでくださいますかぁ!?」
こちらを振り向いた彼女の
「……危うくしょっぴかれるところでした……」
「見た目痴女なのに、寧ろさっきまで無事だった方が不可解」
「そこはほら、サンタ視界ハックを使ってましたので」
「サンタ視界ハックisなに?」
人通りの真っ只中で大声をあげたため、危うく警察沙汰になるところだったが……気を利かせたTASさんの取り成しにより、俺達は命がらがら(?)近くの喫茶店へと逃げ込むことに成功していたのであった。
……いやまぁ、冷静に考えると公衆の面前でこんな格好してるサンタさんだけ捕まる、ということで収まるとは思うんだけどね?その時に彼女が俺達のことを知り合いだのなんだの言ったりしたら、任意同行を求められるのも目に見えてたってやつでね?
まぁそういうわけで、一緒に逃げてきたのである。
で、改めて確認し直してみたところ、やっぱりこの人は以前こっちに迷い込んできたサンタさん当人のようで。
思わずTASさんの方に視線を向けるも、彼女は『思いもしない・知らない・あれは事故だ・済んだこと』などと関与を否定してくるのであった。
「でも、なんで彼女がここにいるのか、ということを推測することはできる」
「ほう?それは一体?」
「簡単なこと。──お兄さん、今は
「ん?
けれど、何故彼女がここにいるのか、という理由を推測することはできる、と豪語するTASさん。
その自信ありげな様子に、俺が問い掛ければ、代わりに返ってきたのは別の質問。
……なるほど、そりゃいるわな。
「クリスマスシーズンなんだから、サンタが居てもおかしくない……ってことか」
「そう。でもそれだけだと八十点。彼女がここにいるのは、
「……あー」
そして再度、そりゃそうだと呻きをあげつつ首肯する。
……確かに、彼女がこっちに来る理由としては明白であり、本来二度と帰ってこないであろう彼女が、再びこちらの前に姿を表すきっかけともなりうる。
そう、それは。
「ええそうです。私は
「「あー……」」
「……なんで二人して呻き声を?」
──サンタの袋。
サンタの仕事をするための必需品とも言えるそれを探しに来たのだと言う彼女に、俺とTASさんは思わず顔を見合わせながら大きく呻く羽目になったのであった。