うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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出会わないはずのモノが出会う時

(というかTASさん、なんでこの人こっちに来れてるの?ダミ子さんがいる限り、他所の人は入ってこられないんじゃないの?)<ヒソヒソ

(今の季節とビーコン代わりの袋のせい。時期的な強制力はとても強力な縁となる。それに加えて『目指すべき世界を示す発信器』も揃えば、ある程度の力を持ったものなら無理矢理やってくることも不可能ではない)<ヒソヒソ

「……人の目の前で堂々とひそひそ話をするのはどうかと思うんですけど?」

 

 

 これまでの会話により、なにを求めて彼女がここにやって来たのか?……ということを理解した俺だったが、ここで別の疑問が一つ。

 ダミ子さんの役割は、彼女のような『こちらの世界の概念を歪めかねない存在』を、決して侵入させないことにあるはず。

 そのために彼女は本来の姿すら忘れ、別世界のサンタの姿を写し取ったはずなのに、何故今俺達の目の前に当のサンタさん本人が居るのか?

 ……そんな当たり前の疑問は、今の季節と残されたサンタの袋、それからとある一人の超越者の存在が絡んでいると明かされるのであった。

 

 ……え?超越者云々は今やってたひそひそ話の方に含まれてない?

 目の前のサンタさんにそれを知られると(色んな意味で)ややこしくなるので、脳内会話で済ませていただけですがなにか?

 まぁ、超越者云々で連想される人物なんて、うちには一人しかいないわけだが。

 

 

「──へっくしゅ!」

「機械の体なのに、なんでくしゃみしてんの?!」

「ああいえ、最近アップデートを行いましてね?より自然な動きができるようになったんですよ、私。今のは多分……誰かに噂されてた感じですね、恐らく」

「虫の知らせセンサーだって?!カッケー!!」

 

 

 ……なんか変な電波を受信した気がしたけど、まぁそういうことである。

 

 ともかく。ダミ子さんを取り巻く環境が以前とは変化し、あからさまに超常現象由来の存在が近くに居るようになったことや、今の季節がクリスマスという、サンタの力が強くなる時期なことなどが合わさり、こうして本来起きるはずのないことが起きた……ということになるようだ。

 なので、一応クリスマスシーズンを越え、かつビーコン代わりの袋を返却しさえすれば、ダミ子さんの要石としての役目は今まで通り遂行できるようになる、らしいのだけれど。

 

 

「……返せるのか、あれ?」

「うーん…………」

「えっ、なんですかその反応?まさか私の袋、なにかとんでもないことになってますか?……はっ!?まさか誰かに奪われて悪用されてるとか……!!?」

「いや、そういうんじゃないんだけど……」

 

 

 ……正直なところを話辛い、というか。

 いやまぁ、悪用はされてないのだ。寧ろそのなんでも入る、という性質を活かしてとても有効活用されているというか。

 ただその、ねぇ?……わりと目を疑う活用法ではある、というか?

 思わず口ごもる俺達に、サンタさんは不審そうな眼差しを向けてくるが……。

 

 

(……!お兄さん、とても不味い)

(不味い?なにが不味い、お兄さんに言ってみなさい)

(このエリアにダミ子が入ってきた。というか、一直線にこっちを目指して走ってくる)

(ダニィ!?)

 

 

 そんなことは気にならないくらい、喫緊(きっきん)の問題が差し迫っていたのであった。

 

 隣のTASさんが耳打ちしてきたところによれば、どうやら件の人物・ダミ子さんがこちらに向けて爆走中とのこと。

 いやなんというバッドタイミング!……いやある意味ベスト?ともかくこの状況下で二人を会せるのはとても不味い。

 目の前のサンタさんがこっちに再訪できたのは、ビーコン代わりのサンタ袋があったから。……それは裏を返せば、彼女には自身の袋を探知するなにかがある、ということでもある。

 

 ほら見てみろ彼女の様子を!

 なにかを察知したのか周囲を見渡してるじゃないか!

 これ絶対、目的のブツが近付いてきていることに気付いてるやつだよね!

 なんなら『え?なんで私の袋、こっちに向かって移動してきているんです???』みたいな疑問も抱えてるよね!だって普通袋は自走しないからね!自走する袋ってなんだよ!!

 

 落ち着いて、と隣のTASさんは声をあげるけど、当の彼女も表情そのものはいつもの平坦さながら、額に冷や汗を掻いている辺り現状がとても不味い、ということは認識している様子。

 とはいえそうして焦ったところで、俺達になにができるわけでもなく。──その時は、あっさりと訪れてしまうのであった。

 

 

「TASさんお兄さん、なんだか変な感覚……って、あれ?」

「……わ、私?私がもう一人居る??というか、袋の反応がする???え、なに、どういうこと????」

「あちゃー……」

「もうどうにでもなーれ」

 

 

 現れたダミ子さん──寒いの苦手らしく、滅茶苦茶モコモコした服装──と、その前に対峙した薄着のサンタさん。

 喫茶店の中は俄に慌ただしくなり……。

 

 

「ち、ちちちち、痴女ですぅぅぅううっ!!!?

「なぁ!?だだだ、誰が痴女ですか、この偽物っ!!」

 

 

 二人の叫び声に、俺達は揃って頭を抱えるのであった。

 

 

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