うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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私が私を見つめてましたけどどっちが本物ですか?

「…………」<ジーッ

「こ、こわいですぅ~……なんか凄く睨んで来ますですぅ~……」

「いや、だからって俺を盾にされても困るんだけど」

 

 

 はてさて、店内で大騒ぎしたため、店員さんから「どうぞお静かに」とお叱りの言葉を頂いてから早十分ほど。

 流石に隣に座らせるのもなー、と席を交換し、サンタさんの横に(彼女が暴走した時の抑え役として)TASさんが、そうして空いた席にダミ子さんが座ったわけなのだけれど。

 さっきからずーっとサンタさんが怖い顔をしているため、ダミ子さんはすっかり怖がってしまい、俺の背に回って隠れてしまっているのであった。

 そのため、肝心の会話の方はまったく進んでいない。

 

 

「とりあえず、説明をしたいのでせめて睨むのは止めてあげて貰えませんか?」

「…………はぁ。まぁ、なんとなく理由はわかりましたので、別にいいでしょう」

「……猛烈に嫌な予感がする」

 

 

 なので、このままでは埒が明かないと悟った俺が、せめてその怖い顔を止めましょう、と提案。

 ……したのだが、なんか話が変な方向に行ったような?

 具体的にどう捻れたのかと言われると困るが、多分なにか勘違いしたよねこの人、みたいな感じというか。

 隣のTASさんも微妙な顔をしているが、一先ず彼女の話を聞いてみることに。

 

 

「以前こちらにお邪魔した時、散々『私の存在はこの世界にとって毒』みたいなことを言っていましたね?そこから逆算するに、二度と私がこちらに来ないようにする必要があった、ということは理解できます」

「はぁ、なるほど。……それで?」

「ですので、私という存在がこちらに馴染めないよう、予め似たようなモノで埋めておく、という対処を取ったのだということは理解できます。その結果生まれたのが──」

 

 

 朗々と自説を語るサンタさん。

 意外なことに、その言葉に大きな破綻は認められない。

 細かいところに差違はあるだろうが、概ね正解と言っていい論説が語られていたのであった。

 ……意外とまともなんだなぁ、この人。服装は痴女なのに。

 

 そんなことをこちらが思っている、と知ってか知らずか、彼女はある種得意気な表情を浮かべたまま、びしりとダミ子さんを指差し、その論説の結びの部分を語るのであった。

 

 

「──そこの、私の偽物!貴方は恐らく、私の袋から錬成されたホムンクルス的なモノですね!」

「三点。事実は小説より奇なり。というか他人を作り物だの偽物だの扱いするのはどうかと思う」

「……あ、あれ?」

 

 

 なお、微妙に外していたため、TASさんからの評価は散々なモノであった。まぁ、仕方ないね。

 

 

 

・A・

 

 

 

「ダミーデータ……?代入?防波堤………???」

 

 

 ダミ子さんの見た目は確かに作られたものだが、その存在までが偽物というわけではない……。

 そこから始まる諸々の説明を受け取ったサンタさんは、よく分からないとばかりに頭から煙を吹いていたのであった。……まぁ、TASが名前みたいなもの、と言われて困惑していた人なので、『ダミ子』という名前とそこに込められた意味にも混乱する、というのはある種予定調和であるとも言えるわけだが。

 

 では誤解は解けた、と言えるのかと聞かれると……一つ問題点が残っている。しかも、わりと重ためなのが。

 

 

「……い、いや!でも待ってください!私の袋の反応は、目の前のこの人から出ています!それはつまり、最低でも彼女が私の袋を持っている、という証明なのでは?!」

「あーうん、そうだねぇ」

「ほらやっぱり!」

 

 

 その問題と言うのが、彼女の袋の所在。

 元々彼女がこちらに来た理由であり、こちらに来れた理由でもあるそれは、確かにダミ子さんが所持をしている。いるのだが……。

 

 

「……む、無理ですぅ」

「無理?無理とはなんですか?!それは元々私のモノです!それとも、返せない事情があると?!ならばやはり、貴方は作られた存在なのでは!?」

「あ、あうあう……」

 

 

 なんとも言えない表情で狼狽するダミ子さん。

 袋を返したくない理由がある、という彼女の様子に、サンタさんはやはり自分の説こそ正しいのだ、と気炎を上げるが……あーうん、実際にはそこまで深刻ではなく、されど重篤ではある理由があるとかなんとか云々かんぬん。

 

 ……さりとてそれを口頭で説明するのは憚られ、ゆえに勘違いは是正されず。

 

 

「……もういいです!流石にこの距離ならば強制回収(アポート)も十二分に可能!貴女という存在を消すことになるのは心苦しいですが……サンタ法第二十六章三条・緊急時の超法規的処置の許可に従い行動させて頂きます!」

「ぬぉわっ!?」<グキッ

「とても素早い目逸らし。お兄さんのそういう判断の早さは好印象」

 

 

 サンタさんは最終手段として、自身の袋を無理矢理回収する、という手段を取った。……アポートという辺り、なにかしらの超能力的な方法らしい。それならば相手がどこに袋を隠していても、問題なくそれを回収できるだろう。

 問題があるとすれば、それはただ一つ。

 

 

「……は?え、あ、え?」

…………へんたいさんですぅ…………

「えっ!?え、ええっ!!?」

「うわぁもう滅茶苦茶だぁ」

 

 

 彼女がその手に掴んだのは袋ではなくブラジャーであり、それを取られたダミ子さんが恥ずかしさのあまりしゃがみこんでしまった、ということだろう。

 ……え?目を逸らしてるんだからわからんだろうって?話を聞いてりゃ想像はできるよね!あんまり詳細に想像すると、TASさんに目潰し喰らいそうだからぼかしてるけど!

 

 

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