うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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大自然のお仕置きかもかも

 さて、事件である。

 前回突如現れたサンタさんは、自分の袋を回収することを目的とし、それを見事果たしてみせたわけだが。

 

 

「……出てこないな、ダミ子さん」

「君が折角目隠し(なにも見えねぇ)してるにも関わらず、ずっと部屋にこもりきりだねぇ」

 

 

 MODさんの言う通り、袋……もといブラジャーを奪われたダミ子さんは、あれからずっと部屋にこもりきりである。

 異性の視線が気になるのでは?……と目隠しをして行動できるように気を付けてみたものの、それでも彼女が外に出てくる気配はない。

 

 ……そう、ブラジャー。

 あの時、サンタさんは何故か(?)ブラジャーに加工された自身の袋をゲットし、困惑と焦燥の感情に包まれていた。

 それもそのはず、彼女の使ったモノはあくまでも袋の回収のためのもの。……それによって目の前の相手が消える可能性すら覚悟した彼女が目にしたのは、自身と同じ背格好ながら、()()()()()()()()自身とは比べ物にならないことになってる相手と、それから自分が右手に掲げた下着の姿。

 

 あれ?想像していた状況と違うというか、っていうかデカっ、いやちが、なんで私の手にこれが???

 ……みたいな感情が彼女の中を駆け巡ったことは、容易に想像できる。想像できたうえで、彼女が機能停止してそのまま自身の世界に逃げ帰ってしまった、というのも理解できる。

 

 まぁ、サンタさんについては、ある意味それで終わりなので構わない。……問題は残されたダミ子さんの方だろう。

 サンタさんは、自身の存在が周囲に違和感なく溶け込むような特殊な『なにか』を使用していたため、周囲からの視線に晒されることは(ほとんど)無かったが。

 だがしかし、ダミ子さんの方にそういうものはない。その結果なにが起こったかと言うと……。

 

 

「まさかまた使うことになるとは思わなかった……」

「周囲の人がみんなして『目がー!目がー!!?』って言い出したのは、ある種爽快ですらあったよ」

「あー、プールの時のあれかー」

 

 

 そう、TASさんによる視界ジャックである。

 直前に見たものを忘れてしまうような、そんな悪魔的なモノを見せられてしまった人々は恐慌に陥り、その隙に俺達は家へと帰ってきた、というわけである。

 ……で、それ以降ダミ子さんは引きこもっている、と。

 

 恐らく、衆人環視の状況下で凄まじく恥ずかしい目にあったために、お外に出るのが怖くなった……とかだと思うのだが、如何せんそれを解消する手段がこちらにはない。

 なので、せめて家の中くらいは自由に動けるようになって貰おう、と俺も「なにも見ねぇ」スタイルで頑張っているのだが……今のところ、それが功を奏した様子はないのであった。

 

 

「……っていうかさぁ、そもそも私達がダミ子のあれを知ったのってプールの時が初めてだろ?……ってことは、以前はどうにかしてたってことじゃん?」

「言われてみれば、そうですわね……。以前の彼女はあの特殊なアイテムが無くとも、周囲に自身の体型を知られずにいた。……ということは、そもそも対処法そのものは彼女が既に持っている、ということなのでは?」

「いやまぁ、それは一理あるけども。……それがあの時のショックを解消する手段になるかと言うと、正直微妙というか……」

 

 

 ダミ子さんの部屋の前に集まり、あれこれと話し合う俺達。

 ……だが、それで彼女が部屋から出てくる様子はなく、そもそもこうして部屋の前であれこれ言ってる時点で出辛いなんてものじゃない……。

 そう考えた俺達は、とりあえず暫くそっとしとくしかないかなぁ、と部屋の前を離れようとして。

 

 

「……えと、その」

「!ダミ子さん、出てくる気になりましたの?」

「あ、えと、その、えと……先に、お兄さんの目隠しを外してあげて貰えませんかぁ?」

「はい?……ええと、宜しいので?」

「あっはい、じゃないと私の方が申し訳ないのでぇ……」

「申し訳ない……?」

 

 

 扉が微かに開いた音と、そこから聞こえてくる微かな声に、立ち去ろうとしていたみんなが一斉に振り返る。……いやまぁ、俺は目隠ししてるから、実際には見えてないんだけども。

 で、こちらを代表してAUTOさんが話し掛けたところ、ダミ子さんは外に出てくる気になったらしい。……ただ、何故かその流れで俺の目隠しに言及が。

 いや、なんで俺?……と困惑するも、出てくる気になっている彼女が、俺の返答如何で再び引きこもる可能性もある以上、ここでは彼女の話に付き合うしかないわけで。

 

 そうして目隠しを取った俺は、

 

 

「……お、おおー。なんという荒涼たる大平原……」

「貴方様の言い方は気になりますが……確かに、あれほどの山岳地帯がこうなるとは……」

「すげー!魔法かなにかか?」

「いや、その反応はどうなんだい……?」

 

 

 モジモジとしているダミ子さんの全身を確認し、思わず称賛(?)の声をあげていた。

 ……正直AUTOさんの表現もどうかと思うのだが、その言い回しに頷くしかないくらい、彼女の一部分は平坦と化していた。

 その平坦ぶりは、あのアイテムがあった時と大差なし。初めて会った時と同じシルエットなのであった。

 

 どういう原理かはわからないが、これならば不埒な視線は向けられまい。

 そう喝采をあげる俺達に、ダミ子さんは曖昧な笑みを浮かべ。

 

 

「…………」

 

 

 俺達の輪から外れた位置にいたTASさんは、感情の読めない眼差しでダミ子さんを見つめ続けていたのだった。

 

 

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