うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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バカ真面目にバカをやる様子

「さて、さらしで圧迫された結果、体調に影響が出ているというのであれば……」

「やるべきことはただ一つ、さらしを止めさせること……ですわね」

「うむ、全く以てその通り。……なんだけど、ねぇ?」

 

 

 任せておけねぇ今この時俺は女になる!

 ……だのなんだの意味不明の言葉を口走った俺が、「よし任せろ」とサムズアップしたTASさんに、期間限定性転換を受けてはや十分。

 期間限定性転換とはなんぞや?とか、元の俺の性別を知ってるのであれば(ごまかし的な用途としては)無意味なのでは?……などの諸々の懸念を極力スルーしつつ。

 みんなで意見を出しあった結果決まったのは、やはりダミ子さんに無理をさせるべきではない、という意思表明だったのだけれど。

 ……うん、それができれば苦労はしない、ってわけで。

 

 彼女の()()()のなにが問題って、とにかく大きすぎるのである。

 その巨大さは、ゲーム作品とかでしか見ないような類いのもの。……文字通りスイカが二つ付いている、と言えばその大きさは想像できるだろうか?

 そんなものを平坦になるように潰しているというのだから、胸部にどれほどの圧迫感が発生しているのか、想像するだけで恐ろしいというものである。

 

 そして、そんな彼女の大問題を今まで解消していた件の下着は、別世界の技術を応用して作られたモノであった。

 

 

「目標の物を異次元格納する、という画期的な手段を見出だした例のアレは、もし量産化に成功した暁には世界を変えるに足る力があった」

「正確には、発明したのではなく既にあるものを素材として流用した、だけどね。……とはいえ、あれが今の私達の目標になるのは間違いない、というわけか」

 

 

 潰さず・形を損なわず・重量を感じず……()()の利点を上げると限りはないが、ともあれ()()が理想のアイテムである、ということは間違いない。

 しかし、あれをそのまま再現するには、問題が幾つも存在していたのであった。

 

 

()()()()()()()関係上、どうしてもこの世界の安全とトレードオフになる」

「胸のために滅ぶ世界、というのはちょっと笑えませんわね……」

 

 

 そう、あれは他所の世界からもたらされた物品を、そのまま素材として流用した形のもの。

 さらに細かく言えば、その素材の持つ特異性について()()()究明せず、『とりあえずこれを使えば上手くいくから』という雑な理解度で作り上げたモノだった。

 

 これは、袋の仕組みを明確に理解してしまった場合、ダミ子さんの必要性が薄れてしまう、というところがとても大きい。

 ……()()()()()とトレードオフの人生、というのは笑い話にもならないが、実際彼女があの姿をしているのは、他所の世界からの侵略を防ぐため。

 にも関わらず、他所から来た素材と、そこに秘められた他所の世界のシステムをこちらから取り入れてしまっていては、それこそ空き巣にどうぞと言って部屋に上がらせるようなもの。

 ゆえに、あの袋に紐付いていたシステム──異次元関係の技術というのは、原則使わない方向で進めるしかないのであった。

 

 

「……ただそうなると、こちらが目指すべきなのは既存技術を組み合わせての目標達成、ってことになるんだけど……」

「もっと簡単な式があるのに、わざわざわかりにくいやり方で数式を解くようなもの。煩雑になればなっただけ、正解にたどり着きにくくなる」

「一つのミスが波及する範囲が広くなってしまうから、ですわね」

 

 

 ただ、そうなるとのし掛かってくる問題が、質量をどうするのか?……というもの。

 バグなりチートなりを使って別の座標に出現させる、というのが一番正解に近いと思われるが、それはそれでそうして別の座標に出現させたモノの保護、という問題が立ち塞がってくる。

 

 

「……うーんダメだ、絵面が酷い!別方向から考えてみよう」

「と、いうと?」

「そもそもなんでダミ子さんのアレは大きいのか、ってことだよ。サンタさんはほどほどなのに、ダミ子さんはあれだろう?だから、いっそのこと本当に無くしてしまうのが一番なんじゃ……」

「お兄さん、色々ツッコミたいところは山ほどあるけど、とりあえず一つ。……それは無理な相談」

「なにっ」

 

 

 なので、考え方を変える。

 本来、ダミ子さんのあの姿は別世界のサンタさんの写し見だ。……にも関わらず、一部分に大きな変化が見受けられる。

 それはおかしいことでもあるので、別にあれが無くても構わないのではないか?……という考え方だ。

 

 字面は酷いが、方向性としては間違ってないのでは?……と思っていた俺は、しかし返ってきたTASさんの言葉に困惑することに。

 

 

「見た目が完全に同じというのは、即ち相互に代替ができるということでもある。つまるところ、ダミ子の姿が完全にサンタと同じだと、それはサンタがここにいるのと変わらない」

「……えーと、つまり?」

あれはダミ子の個性。だから無くすのは論外(装備が呪われているので外せない)

「とんでもねー結論にたどり着いた!?」

 

 

 そう、二人の差異はそのまま個性であり、それを無くしてしまうと最悪ダミ子さんが消えてしまう、なんて可能性もあるのだという。……やっぱりひでぇなこの状況!?

 そんな風に驚愕する俺に、TASさんは更なる追撃を仕掛けてくる。

 

 

「あと、男の人が胸を指して言う言葉に『そこには夢が詰まっている』というものがある」

「……それをTASさんの口から聞くことがあるとは思ってなかったけど、それが?」

「夢、という言葉には色んな意味がある。ある種の理想だとか、はたまたその日起きたことを整理している(眠っている)時に見るものだとか」

「……あー、やだ聞きたくない、なんとなく想像できたけど聞きたくない!」

「敏いお兄さんは嫌いじゃない。……そう、あの大きなモノに詰まっている夢というのは、()()()()()()()()()

「わー!!やっぱり思ったより重い話になったー!!」

 

 

 人の記憶というのは、本当の意味で失われることはほとんどない。なにかしらの切っ掛けがあれば、遠い記憶もすぐ手元に手繰り寄せられたりする。

 ……その事実と、眠った時に見る方の夢が『一日の記憶の整理を行っている最中に見るもの』である、という事実を思えば、簡単にたどり着けてしまう答え。

 

 ……まさかのあれ、外付けの記憶媒体扱いかよぉ!!

 そんな悲鳴を溢す俺なのであった。

 

 

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