うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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そして彼女はこう答えた

「……つまり、色んな意味で胸を無くすのは不可能……というか無理筋、ということですわね?」

「そう。そもそもダミ子の胸が大きいのは、そこに詰まっている過去()が多いから、というとても単純な話だった」

「字面だけだと馬鹿馬鹿しいのに、実態を思うとまるで笑えないのはなんなんだろうね……」

 

 

 まさかの二重苦!

 ……というわけで、ダミ子さんの一部分の重要性、というものに触れてしまった俺達は、皆なんとも言えない表情で唸っていたのであった。

 いやだって、ねぇ?一部分の差異がそこまで重要な意味を持っているのも驚きだし、そこに詰まっているのがダミ子さんの失われた過去だ、というのも驚きだし。……驚きすぎて頭痛くなってきたわ、マジで。

 

 ……ともかく、無くすという方向性は良くない、ということがわかった以上、俺達は別方向の解を求めなければいけない、ということになったわけなのだが。

 

 

「……というか、そんなに大切なモノをあんな感じに潰して大丈夫なのか?」

「物理的に詰まってるわけじゃなく、概念的なモノなので問題はない」

「……あ、さいですか」

 

 

 途中気になったことを尋ねたりしつつ、思考を重ねること数時間。

 

 

「……やっぱりこっちでできることというと、どこか邪魔にならないところに保護して置いとく……くらいだよなぁ」

「ですわねぇ」

 

 

 あれこれ協議を重ねた結果、議論は最初に出した答えに戻ってきてしまっていた。

 ……そう、()()()()()()()()()()()()質量をどうにかする、というのはとても難しい。

 大きなモノを運ぶのに、それを運ぶための更に大きな機械が必要となる……みたいなことが頻発するのが、この世界の常である。

 ゆえに、いっそ荷物そのものを飛ばそうだとか、はたまた届け先で組み立て直すことを前提にして、モノをバラして運ぶ……みたいな方法が生まれたわけなのだから、それを大きく逸脱した方法はこっちも取れないわけで。

 

 いやまぁ、ある程度は無茶もできるのだ。

 ただ、その無茶というのも『この世界のどこかに判定を置いておく』みたいなものであり、三次元空間上から逸脱しているわけではない。

 TASさんがよく使うZ軸移動も、その本質は異次元に行かない程度の異次元航行──つまりはギリギリを攻めるものであり、自分の体でやるならばいざ知らず、他人にやらせるとなると限界の見極めができないので無理、みたいな話になるようで。

 

 

「多分、やり過ぎてどこかの世界に繋がる」

「うーん、本末転倒……」

 

 

 他所と繋げないための人物なのに、その彼女のために他所と繋がる技術を求める……なんてことになってしまっては、まさに元も子もないだろう。

 ゆえに、下着の内部にゲートを設置し、かつ到達先には核でも壊れないような保護を掛けることにする、などの対策を協議し、その結果──。

 

 

 

;・‐・

 

 

 

「──出来上がったのがこちらですわ」

「は、はい?」

 

 

 皆の力を合わせ、出来上がった特殊下着。

 外見上は今までのものと同じく、フルフラットになるように成形。その裏地には約二百億光年以上先の宇宙空間へのワープゲートが開かれている。

 無論、そのままゲートの先にほっぽり出すと、宇宙線やら気圧差によるこちら側の吸引やらの様々な問題が露呈するので、それを防ぐために向こう側にはビッグバンの衝撃すら無に帰し、かつ有害な放射線を完全にシャットアウトする特殊な空間を用意。

 外から見ると単なる岩石の破片でしかないそれの中に、彼女の大切な記憶を保護する……という形式を取らせて貰った。

 

 また、下着だってお洒落の対象では?……というMODさんからの提言により、日によって色や柄・デザインを変えられるような機能を搭載。

 スイッチ一つでどんな場面にも対応するよう設計されているため、なんなら水着代わりに着ることだって可能。

 

 そこまであれこれ詰め込んでおきながら、お手入れはなんと他の服と同じように洗って干すだけでオッケー。

 

 

「そんな多機能ブラジャー、本来値段は付けられないところ、なんと今回プレゼント!プレゼントのため無料となります!」

「は、はいぃ?えと、ありがとう、ございますぅ……???」

 

 

 なお、使われている技術には異次元航行技術は一切なし。

 他世界からの侵略に備える戦士の装備としても、十二分に実用に足る商品となっております。……いや怪しい通販番組かっ。(セルフツッコミ)

 

 まぁともかく。

 最早国家プロジェクト並みの技術の投入によって生まれたこの下着、ダミ子さんの抱える問題を解消するための手段として、これ以上のものは生まれようがないだろう。

 そう自身を持って言えるだけの、会心の作だと俺達は皆確信しているわけなのだが。……当のダミ子さんの反応はなんだか微妙。いやまぁ、喜んではいるんだけど、なんかこう想定していたよりもテンションが低いというか……?

 

 思わず首を傾げる俺達だったが、対するダミ子さんは暫く考え込むようにむむむと唸ったあと、意を決したように顔を上げ、こちらにこう言い放ったのだった。

 

 

「とりあえず……皆さん、一回寝ましょう?私のことを思ってあれこれしてくれていたのはとても嬉しいのですがぁ、正直これはやりすぎですぅ。私個人が持ってていいモノの範疇を越えてますぅ」

「……はい?」

 

 

 冷静に考えて、ビッグバンに耐えられる耐久力のブラジャーとか意味がわからんだろう?

 ……そんな感じのことを暗に述べる彼女に、俺達は虚ろな目をしながら顔を見合わせる。

 

 ──いわゆる徹夜テンションによる暴走、とすら言えるこの暴挙が一定の結果を見たのは、実に最初に会議を初めてから一週間経過してからのこと。

 つまり寝ろ、と言われればだーれも否定できない、どう考えても狂気の沙汰でしかないのであった。──これはひどい。

 

 

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