うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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仲良く喧嘩しな?

「前回は聞き流してしまいましたが、よくよく考えれば聞き捨てならぬ話題が飛び交っていましたわね!ゆえに……勝負ですわ!TASさん!」

「ん、おかのした」

 

 

 生真面目委員長気質のAUTOさんは、悪逆無道の勇・TASさんの悪行の数々に、ついに立ち上がることを決めたのだった!

 ……どうでもいいけど、その台詞使うのは止めようね、TASさん。女の子が使うような言葉じゃないからね。

 

 ……え?RTAではみんな使ってる?

 それはほら、彼処は先駆者に敬意()を払うのが普通だから……それに君、由来については知らな……知ってる?なんで?(素)

 ……クイックセーブとかロードとかしてると、使わなかったルートの記憶も記録としては覚えているから?

 いや寧ろ、クイックセーブとかロードとか使ってる、ってことを初めて聞いたんだけど?

 え?「それを使えないんなら、TASとしては片手落ち」?……そりゃそうだ。

 

 

「わーたーくーしーのーはーなーしーをーきーけーでーすーわー!!!」

「うるさい。近所迷惑」

「誰が叫ばせたと思ってますのー!?」

 

 

 ははは。AUTOさんは構われたがりだなぁ(棒)

 

 ともあれ、都合何度目かの対決は、いつも通りにTASさんの勝利で幕を下ろしたのであった、まる。

 

 

 

・∀・

 

 

 

「そういえば」

「……なに?」

 

 

 今日も今日とてAUTOさんを粉砕玉砕大喝采し、「覚えてろですわー!」と凡百のお嬢様()みたいな捨て台詞を吐かせたTASさん。

 逃げ帰っていくその後ろ姿には哀愁を誘われるが、次の日にはけろっとした感じでまた挑んでくるので、心配するだけ無駄だというのはここだけの話。

 

 ……生真面目な彼女は、TASさんの姉を気取ってる部分もあるようで、「いつか全うな道に戻して見せますわ!」と意気軒昂、倒れても立ち上がるバイタルに溢れている。

 なので、ああして逃げ帰っても次の日には再び使命に燃える(ので、けろっとしている)ということらしいのだが……端から見ていると魔王に立ち向かうよわよわ勇者にも思えてくるので、なんというか平和だなー()という気分になったりするのであった。

 

 

「……って、そうじゃなくて」

「……?一人でぶつぶつ言って、なにを納得したの?」

 

 

 いやいやそこじゃねーし、問題なのはそれじゃねーし。

 ……と頭を振る俺を、不思議そうに見つめてくるTASさん。

 以前、ある程度人の思考は読める……みたいなことを言っていたわりには、なんとも不可思議な反応である。

 

 

「……別に、いつでもわかる訳じゃない。お兄さんしか居ない時は、そもそもセーブもロードもしてないし」

「なんと。常日頃から乱数調整しているものかと」

「昔だったらそうしてた。今はそういう気分じゃない」

 

 

 そんな俺の疑問は、彼女が普段はあんまりTASしてない、という発言によって氷解する。……いや氷解したかこれ?余計な疑問増えてない?

 っていうか、普段からTASしてないのならTASさんと名乗るのもおかしな話なのでは???

 

 そうして首を捻る俺に、彼女ははぁ、と一つため息を吐いて、開いていた小説本を閉じてこちらに向き直る。

 

 静かに本を眺める先程までの文学少女然とした姿とは打って変わって、今の彼女の姿は無機質な氷のよう。

 感情の読めない眼差しをこちらに向けながら、彼女はゆっくりと言葉を発し始めるのであった。

 

 

「私はTAS。それは、貴方に分かりやすく説明するためのもので──本来の私の名前は別」

「えっ」

「……そこで躓かないで欲しい。話が進まない」

 

 

 そうして放たれた衝撃の事実に、思わず愕然とする俺。

 いやだって、本名あるんなら自己紹介して欲しかったというか、そもそもTASとかAUTOとか明らかに人の名前じゃないモノで呼んでも普通に反応するじゃん君達!?

 

 こちらの本気の困惑を感じたのか、はぁと再度ため息を吐いて、顔を手で覆うTASさん。……呆れているような、疲れているような態度を見せた彼女は、先程よりも三度ほど温度の下がった眼差しでこちらを見ながら、続きを話し始めるのだった。

 

 

「まぁ、所詮はあだ名。貴方の好きなように呼べばいい」

「……いやまぁ、そっちがいいんならいいんだけども。……やっぱり、本名とか知っといた方が……」

「話が、進まないから、後にして」

「アッハイ」

 

 

 むぅ、そこまで怒らなくてもいいのに……。

 珍しく大声を出したTASさんの迫力に圧倒されつつ、素直に彼女の話を聞く体勢に移行する俺。

 その姿に満足したように鼻を鳴らした彼女は、咳払いをしたのちに再び口を開く。

 

 

「TASという呼び方は、ラベル付けみたいなもの。貴方に分かりやすくするためのものでしかないから、普段の全ての行動までそのあり方に縛られる必要はない」

「……ええと、所詮は類似してるだけだから、常日頃からTASっぽい行動をする必要はない、と?」

「そう。……まぁ、ある程度()()()()()()()()止めるようにはしてるから、今みたいに普通にしてるのが珍しい……っていうのは確かだけど」

「なる、ほど?」

 

 

 つまり、彼女はTASそのものではないので、TASとしての行動を一時的に中止することもあるけど、そもそもとして『TASらしからぬことをする』こと事態が稀、なので自身をTASと主張しても問題ない、ということになるのだろうか?

 こちらの言葉に、彼女は小さく頷いているのだった。

 

 

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