うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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よりよい明日を願いましょう

「神社に到着。……したからには、参拝RTAを敢行しなければならない」

「参拝RTA?」

「そう。神社の各所を回り、最後におみくじで大吉を引けばゴール」

「真面目にやると、最後のおみくじで屑運を披露しそうなルートですわね……」

 

 

 まぁそもそも、他の方が危ないのでやるな……という話なのですが。

 

 そんなAUTOさんの言葉に小さくむぅ、と唸ったTASさんは、「じゃあ仕方ない。おみくじで全員に大吉を引かせるルートで我慢する」などと呟いていたのだった。……そっちはそっちでダミ子さんが鬼門な気がするな?

 

 ともあれ、神社に到着である。

 それなりに急いでやってきたことも幸いし、太陽はまだ水平線から登ってきてはいない。

 周囲の明るさからして──お参りをしたあとちょっと暇を潰していれば、そのまま日の出が拝めるのではないだろうか?……と予測できる感じの状況であった。

 

 

「お決まりな感じに、段差に引っ掛かって転けそうになっていたダミ子が今回の短縮ポイント」

「お兄さんが反応してくれて助かりましたぁ」

「完璧に顔面から行くルートだったからね、お兄さんも流石に顔面紅葉おろしは見たくないからね」

「そんな酷いことになる予定だったんですか私?!」

 

 

 なお、道中ちょっとしたトラブルがあったがそこは割愛。……この人やっぱりお子ちゃまなのでは?……的な疑問が俺を襲ったがそこも割愛。

 

 とにかく、目的地にたどり着いたのだから、あとはやることやって朝日を待つだけである。

 今は人も疎らだし、邪魔になることもないだろう。

 

 

「じゃあお参りをしましょうか。皆様は、なにを願いますの?」

「この世の中からありとあらゆるラグの消去を」

「無病息災無事故家内安全」

「今年こそTASに勝ち越せるように……」

「私はお兄さんと同じ感じかな?今年も平穏無事でありますように、というか」

「元に戻れたらいいなぁ、なんて……」

「寧ろ私は願われる側ですので……」

「んー、この纏まりのない集団……」

 

 

 そんなわけで、境内へと進み始めた俺達なのだが。AUTOさんからの問いに皆が答えたのは、そんな感じのバラバラな願いなのであった。……まぁ、仕方ないね。

 

 

 

・A・

 

 

 

「やり過ぎた。無いはずのモノを引いてしまった」

「無いはずのモノってなんだい……?……ウワーッ!おみくじじゃなくて温泉旅行のチケット引いてる!?」

「福引きでも引いたんですの貴方?」

 

 

 無難にお参りを終えた俺達が、近くの売店……社務所?に移動し、おみくじを引いていた時のこと。

 TASさんはいつもの謎の踊り(儀式)を行ったのち、宣言通りみんなに大吉を引かせようとしていたのだが……どうも変な乱数に触ってしまったらしく、結果として彼女が引いてしまったのは温泉旅行のチケットなのであった。

 ……どうにもここに勤める巫女さんの個人的な所有物が紛れ込んでいたらしく、真っ赤な顔をしてすみませんすみませんと謝る彼女にそれを返すことに。

 

 こうして謝られはしたものの、結局TASさんが無茶なことをしようとした結果起きたことというのも確かなので、苦笑いを浮かべつつなぁなぁに済ませることになったわけだが。

 これで懲りるようなTASさんならば、TASさんなどと呼ばれるわけもなく。

 

 

「……今度はこんなもの引いた」

「ウワーッ!寧ろどうやって引いたんだそれ!!?」

「印鑑……印鑑……???」

 

 

 思わずDMさんが宇宙猫となる横で、TASさんが掲げたのは印鑑。……いわゆる御朱印ではなく、普通に私物っぽい印鑑である。

 これまたさっきの巫女さんの持ち物だったわけなのだが、なんだろうか、乱数があの人の持ち物に固定されてる……?

 そんな疑念を浮かべつつ、さっきより更に慌てたような顔の巫女さんに印鑑を返すことに。

 

 ……さて、世の中には三度目の正直、という言葉がある。

 二回失敗しても三回目ならば、という希望を歌う言葉だが、悲しいかな人間社会はバランスを取るもの。

 三度目の希望を謳う言葉があるならば、同じように三度目の絶望を謳う言葉もあるというもので。

 

 

「……これは流石の私も困惑」

「ウワーッ!名前の書かれた婚姻届ですぅ!!?」

 

 

 それは()()()()()()()()()()()、というあまりに直球の言葉なわけだが、そうしてTASさんがその手に掴みとったのは、なんと名前の記載された婚姻届。……そこに書かれた名前の片方に覚えがあるのは、さっきの印鑑の名字と同じだからということになるわけだが。

 ……これ、巫女さんが宮司を口説き落とそうとしてるやつだな?温泉旅行に誘って云々、みたいな。

 

 この予想が正解かどうかは不明だが、件の巫女さんが汚い悲鳴(フギャーッ!!?)をあげていることは確かな話。

 さっきまでの二度のそれより遥かに慌てた彼女の姿を見て、苦笑を通り越し最早虚無に近い心境の俺は、TASさんが婚姻届を巫女さんに返すのを見ながら、ふと空を見上げたのだった。

 

 

「……あ、初日の出」

「なるほど、新しい二人のための夜明け。このための遅延行為だったということだね」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「参拝客から謎の激励を受けてる!!?なにこれ!?」

 

 

 タイミング良く(?)登ってきた太陽に、恐らくお日様も巫女さんの恋路を応援してるのだろうな、と適当な感想を抱くことになった俺達なのであった。

 ……まぁ、新年早々縁起が良かった、ということで……。

 

 

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