うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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寒い日にはこたつが恋しいもの

「……雪だねぇ」

「一面真っ白。個人的には初詣の効果がなくてイライラ」

「あー、ラグよ滅べって言ってたもんねー……」

 

 

 はてさて、正月・三が日も過ぎ去ったとある日のこと。

 今日はどうにも一日中吹雪くようで、窓の外の景色は一面銀世界。

 どんよりと曇った空からは絶えず雪が降り注ぎ、結果としてTASさんはほんのり不機嫌なのであった。……まぁうん、ゲームとかだとラグの元だもんね、雪とか雨とかって。

 とはいえ、今のTASさんは天候変化も覚えてしまっているので、その辺りのことを今更気にする必要性も薄そうなものなのだが……?

 

 

「できることと、やりたいことというのはイコールではない。この場合、余計な調整が必要になるという時点で嬉しくないのは確実」

「そもそも天候を変化させられると言っても、いきなり雲が消えてなくなるわけではないですしね。こう、バーッと雲が左右に割れていく……みたいな?」

「あーなるほど、自然現象の結果として晴れる、みたいな感じなのね……」

 

 

 どうも話を聞く限り、好き勝手に天候を変えられると言っても、いきなり雲が現れたり消えたりするような話ではないらしい。

 前回の時は、既に変化したあとしか見てなかったので勘違いしていたが。

 

 そういうわけなので、今から天候を変化させようとしても、暫く雪が降り続くのは変わらないとのこと。

 つまりラグが続く環境も暫く変わらないわけで、そりゃTASさんのイライラも鰻登りになるというものなのであった。

 

 

「むぅ、本当なら今日は外に出て、お兄さんの訓練の予定だったけど……」

「ちょっと待って訓練?訓練ってなにやらせるつもりだったのTASさん??」

「……つもりだったけど、今日は諦めてゲーム攻略の時間を更新しようと思う。DM、記録の準備を」

「はいはい、ポチッとな」

 

 

 暫くして、午後の予定を変えて家の中で過ごすことにしたらしいTASさん。……なんか聞き捨てならない台詞を吐いていた気がするが、普通にスルーされたため聞けずじまいである。

 ……それはともかく、なんか今ナチュラルに変なことしてなかったDMさん?そのボディがメカだからって、遠隔操作であれこれ準備し始めるのはどうかと思うよ俺???

 

 そんな俺の疑問は放置して、ちゃくちゃくと進められるTAS……もといRTAの準備。

 どうやら今回は伝説の勇者のゲームの更新作業を進めるようだ。……あれだよあれ、以前TASさんが『これは使える』って真似してた盾サーフィンのやつ。

 

 

「お兄さんは甘い。今のトレンドは最早盾は不要、真の英雄はスタート地点から一歩も動かずにボスを倒す」

「……んー、お兄さんの気のせいならいいんだけど、いつの間にか誰も知らない謎のバグとかグリッチとか見付けてない君?」

「TASとRTAは互いに影響を与えるものでもありますし、彼女のそれもそういう流れの中で磨かれたモノだと思いますよ?」

「やだ、DMさんがすっかりTASさんのノリに染まってる……」

 

 

 なお、以前の技術は既に過去のもの。最新の私を見せ付けると意気込むTASさんと、それを応援するDMさんの二人とも、なんだかいつもより生き生きしていたのだった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「……なるほど、それでゲームを遊んでいたと?」

「私のそれは遊びであると同時に仕事でもある。真剣さこそ命なので、そこは勘違いしないでほしい」

「あーはいはい、そこはわかっていますので今は流しますわよ」

「……むぅ、最近AUTOの私に対する扱いが雑になってる気がする」

 

 

 さて、あれから暫く経過して。

 現在居間ではAUTOさんの事情聴取……尋問?的なものが、TASさんとDMさんの二人に対して執り行われている。

 なんとも穏やかな話じゃないが、何故そうなったのかというのは、彼女達以外の面々の様相が、その答えを示していたのだった。

 

 

死ぬ……寒くて死ぬ……

焼け死ぬかと……思いましたぁ……

「空から魚が降ってくる、というのはたまに聞くけど……いや、カジキマグロはやめようねマジで、死人が出るやつだからねそれ」

 

 

 そう、それはうちに来るために外からやって来たCHEATちゃんとMODさんと、それからたまたま外に買い物に出ていたダミ子さんの三人の死屍累々な姿。

 ……ゲームの更新作業に夢中になっていたTASさんは、自分が()()()()()()()()になっていたことを失念していたのである。

 そのため、彼女がゲームの中でアクロバットな動きをする度、やれ外では吹雪が猛吹雪に進化したり、はたまた大風でなにもかも吹っ飛ばされそうになったり、雨と雷でびしょ濡れになったり、はたまた唐突に気温四十度代の晴天と化したり……と、いや最早そのレベルの気候変動は普通に突然って言ってもええやろ、みたいな天候変化が巻き起こっていたのだった。

 そりゃまぁ、AUTOさんも額に怒りマークを付けて怒髪天にもなる、というものである。

 

 なお、DMさんは記録のために他より俯瞰視点で周囲を見ていたので、途中でTASさんを止められたはずでしょう……という意味でついでに怒られているのだった。

 ……え、俺?最初から土下座ですよ?気付けと言われればせやね、としか言えないからネ!

 

 まぁそんなわけで、新年早々幸先の悪い感じのスタートを切ってしまった俺達なのでありましたとさ。

 

 

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