「……私達自身はバレンタインしないのか、って?」
「ええまぁ、他人のあれこれに関わるだけで終わるのかな、と思いまして」
はてさて、悪漢共を無事に警察に引き渡したあと、警察署からの帰り道にて。
ふと思い立ったように声をあげるAUTOさんに対し、首を捻るTASさんである。
……まぁうん、別に料理が下手ってわけじゃないけど、TASさん自体あんまりお菓子とかご飯とか手作りしたりしないからね、仕方ないね。
え?貰えば嬉しいだろうって?そりゃまぁバレンタインだしねぇ。
「お兄さんの好感度稼ぎはもう終わってるので……」
「本人を目の前にその発言は、その稼ぎ終わったという好感度下がってもおかしくない気がするんだけど???」
「大丈夫、そこも含めて調節済」
「わぁ事務的かつ効率的ぃ~」
とはいえ、TASさん的に恋愛イベントはノーサンキュー、恋にかまけている暇があるならタイムの短縮に精を出すのが正解、というもの。
なので、こんな感じで大分雑な扱いを受ける俺なのでありましたとさ。
で、ここまで話を黙って聞いていたAUTOさん、なんだか知らないが悪いことを思い付いた時のような笑みを浮かべていらっしゃるわけで。……この人がこういう顔するの珍しいな?
「なるほど。では私が端正込めて作ったチョコレートなどをお贈りしても、TASさんとしてはなにも含むところがない、というわけですわね?」
「……なるほど挑戦と見た。私は負けない、なんであっても」
「ええ、ではそのように」
「……んん?」
そんなAUTOさんは、こちらが口を挟む暇もなく、あれよあれよとなにやら良からぬ話を進めてしまう始末。……気のせいじゃなければ俺、勝負のための出汁にされてない?
そう問い掛ければAUTOさんは、「まぁまぁ。美味しいチョコレートが食べれると思えば、なんてことないでしょう?」と艶やかに微笑んでいたのであった。……この子、時々はっちゃけるよね。巻き込まれるこっちの実にもなって欲しいんだ(白目)
「──と、言うわけで突然始まったバレンタインチョコ対決。解説はこの私・MODと、」
「私ことCHEATがお贈りするぜー!……ところで、MODはチョコ渡した?」
「まぁ一応は。お世話になってるしね。……そういうCHEAT君は?」
「チ○ルチョコを山ほど!」
「んー、微妙に嬉しいような顔が引き攣るような……」
「因みに全部コーヒーヌガーだぜ!」
「──前言撤回、絶対苦い顔してただろうそれ?」
「?わりと喜んでたぜー?」
「あー、貰えるんならなんでも良いタイプの人だったかー」
……司会進行役の二人が、人のことを好き勝手あれこれ言っている今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか?
わたくしめは何故か椅子に縛られ、逃げ出せないようにされたままステージに設置()されている次第でございます。……備品かな?
何処から引っ張ってきたのか、テレビ番組でしか見ないようなセットの両サイドで、せっせとチョコを作っているのは皆様ご存知、TASさんとAUTOさんのお二人。
突発的に始まった料理対決なわけですが、わたくしとしましてはとっとと逃げ出したくて仕方がありません。なにせほら、
「~♪」
「……あれ、なにやってるんだと思う?」
「そりゃ勿論、錬金術だろう?」
「だよねぇ……」
片やTASさん、この間の七草粥(という名前のなにか)の材料の残りや、店で買ってきたカカオ(果肉付き)やらサトウキビやら、とにかく材料を大きな鍋に放り込みまくっている。
……いやまぁ、いつぞやかのカレーのように、鍋の中身は非公開情報・恐らくはこちらの予想を遥かに上回るような不可思議な反応により、多分まともなチョコが出てくるのだろうとは思うのだが……なんだろう、冷や汗が止まらないんだ。
「これはこうして、ここをこうして……」
「ひぃっ!?ななな、なんですかあれぇ!?」
「……ええと、鮟鱇……ですかね?大きいので吊るして切っているのではないかと」
「チョコになんで鮟鱇が必要なんですかぁ!?」
「……滋養強壮、とか?」
「なにを狙ってるんですかそれぇ!?」
対しAUTOさん、こっちは安心して見られる……はずだったのだが、なにをトチ狂ったのか、彼女が用意していた具材が問題であった。
……うん、からだによさそうなものがいっぱいあるんだけど、それはたぶんちょこのざいりょうとしてはふてきせつだよね???
AUTOさんに掛かればとりあえずまともな見た目にはなりそう、というところが更に恐ろしさを加速させる。ははは、なんだこれ。
……ともかく、そんな両者に挟まれた俺が、ともすれば正気を失って発狂しそうだ、ということはわかって貰えたと思う。
その上で、今はまだ準備段階・俺の死は彼女達の料理が出来上がってから始まる……ということを思えば、もう気絶してしまった方が早いんじゃねーかなー、なんて世迷い言もポンポン飛び出してくるというものなわけで。
──はてさて、マジでどうしよう?
なんでバレンタインの日に、こんな酷い目に合わなければならないのか。
思わず天を見上げる俺を、助けてくれる者は誰も居ないのであった──。