「──というわけで、どう?お兄さん。あれこれ思い出せたんじゃないかと思うんだけど」
「あーうん、ボケてたのは確かだけど、同時に思い出したくなかったんだなー俺、って気分も蘇ってきたというか」
はてさて、かれこれ十分ほどTASさんにぽかぽか殴られた結果、
それもそのはず、蘇ってきたその記憶は俺の思考を乱すには十分過ぎたのである。
「……よもやこの世界がサ○エさん時空だったとは……」
「固有名詞が入ってるのは良くないから、『蓄積閉環時空』って呼んで」
「へいへい」
そう、その記憶というのが、彼女と出会ってからの一年を何度も繰り返している、という俄には信じがたい情報だったのだ。
閉じた環のような世界、ということで閉環時空という呼び方にしたようだが……ともあれ、これはとても異常なことである。
……というか、蓄積するのって閉じた環とは言わなくない?
「そこら辺はまぁ、この概念にはよくあることだから……」
「でしょうね!完全に閉じた環だったら、変化のへの字もあったもんじゃないからね!!」
なお、そんな野暮なツッコミは『
うんまぁ、完全に同じもの垂れ流しとなると最早ただの拷問でしかないからね、仕方ないね。……それをTASさんが言うのはどうなんだ、みたいなところはなくもないけども。
「というか、蓄積じゃないと一周で必要要素全部集める苦行になる。私は別にそれでもいいけど、お兄さん的には良くないでしょ?」
「まぁうん、ループの起点がTASさんに会って暫く経ってから、ってことになってるみたいだしね……」
具体的には去年の今頃というか。
TASさんと出会ったのは十二月頃で、そこから暫く経った四月からがループの起点になっている……というか。
なので例えばAUTOさんの場合だと、彼女に出会ったのは五月頃になるため、蓄積なしループだとまた彼女との出会いを繰り返す必要がある……ということになってしまう。
彼女はまだマシな方だが、これがDMさんとかになると……異世界旅行とそれに伴う船の修理だの、本人と出会うための北の国の遺跡攻略ツアーだの、正直二度同じことするのは勘弁……みたいな行程を再度こなす必要が出てきてしまう。
TASさんも言う通り、彼女単体なら特に苦にもしないのだろうが……いやほら、漏れなく俺も巻き込まれてるじゃん?その辺り。
なので寧ろフラグの蓄積型である、というのは有難い要素ということになるのであった。
「TAS的にはちゃんと通しでやるべきだから、全部のフラグを確認し終わったらリセットしてやり直すつもりではあるけど」
「はははそれが俺達の最終回と言うことだねははは」
なお、TASさん的には不満ありありで、その内再走するとのこと。……その時が来たらその時の俺が頑張ってくれるでしょう、と未来にお祈りを残しながら、俺は静かに目を閉じたのでしたとさ。
「……蓄積型ループですか」
「そう。それを認識できるのは一部の人だけだけど」
はてさて、いつもの不思議ガールズ大集合の上、今回思い出したことを共有したわけなのだけれど。
メンバーの中で一番真面目かつ理性的なAUTOさんを中心に、これからの行動をどうするのか?……みたいな会議が執り行われる運びとなったのであった。
「この場合の該当者は……
「それはノー。正確にはお兄さんの方」
「ふむ?」
「え、俺?」
で、ループすることを認知していないと、折角蓄積型なのにその辺りの要素を活かせない、なんてことになりかねないので条件の確認が行われたのだけど。
……え、ループの認識に俺の認識が関わっているんです?なんで?
よもや俺にもいつの間にか不思議なパワーが備わっていた!?……なんて風に戦慄するも。
「あ、そういうのじゃないから」
「あ、はい」
「お兄さん……」
ですよねー。
まぁ、TASさんと出会ったことのある人という条件になると、結構な人が対象になってしまうからね、仕方ないね。……それはそれで、俺が家とスーパーとバイト先以外に行動範囲がない、と言われているようであれなのだが。
「お兄さんは知ってるけど、私はあれこれやって世界を巡っている。そういう意味で、基本的に一都市程度に留まるお兄さんの方が起点にはぴったり」
「ああうん……ソウダネ……」
規模がちょっと広がっただけなのですがそれは。
……というツッコミは呑み込みつつ、改めて話を元に戻す俺である。
「ええと……つまりお兄さんと面識がある方が対象、ということで?」
「概ねそれで間違いない。一応、私達みたいな変な人……という条件もあるけど」
「それ自分で言うんですかぁ……?」
「というか、ナチュラルに私達まで混ぜん
そりゃまぁ、変な人の筆頭でしょう君は。
……みたいな視線に晒されたCHEATちゃんが、マジ泣きし始めたので軌道修正したはずの話題がまた複雑骨折しましたが、なにも問題はありません。多分。