うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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知らぬは本人達ばかりなり(人それをキャラクターと言う)

「ええと、まず大前提として。わりと大袈裟に話題に挙げたけど、お兄さんの未来がない云々は、そこまで気にするモノでもない」

「ええ……?」

()()()()()()()()()()。足りないのは前提条件だけ。だから、そもそも裏切り者が居るのなら、その裏切り自体も前提条件」

「ええ…………?(困惑二割増し)」

 

 

 さて、謝罪のあと再びTASさんの話が続いたわけなのだけれど。

 俺はともかくとして、他の面々は出てきた言葉に困惑しっぱなしである。……まぁうん、裏切られてることは把握済み、みたいなこと言ってるんだからそりゃそうだ、という感じなのだが。

 とはいえ、相手は未来視持ちの人間である。視座が人とは違うのは仕方のないことなのだ。

 

 

「寧ろ裏切ってくれないと、お兄さんの生存ルートが完全に途切れる」

「……ええと、さっきの話によれば、その裏切り者とやらが犯人の可能性も拭いきれないにも関わらず、ですか?」

「さっきも言ったけど、現状のお兄さんの生存ルートは()()()()()()()()一切ない。──これはつまり、その人が裏切ってない場合でも、お兄さんはなにかしらの要因で死んでる……ってことでもある」

 

 

 彼女が言っていることは、要するに恋愛シミュレーションやアドベンチャーゲームなどに存在する『ルート』のようなもの。

 

 特定の選択肢を選ぶことで、世界は分岐し新たな可能性を見せる──しかしこと俺の生存において、現状提示されている選択肢ではゲームオーバーにしか繋がらない……。

 ゆえに彼女は、幾度の繰り返しの中で『そうならない選択肢』を探し求めていたわけだけど。……その中で有用だと思われるモノが、彼女達『不思議ガールズ』との関わりだった、というわけである。

 

 とはいえ、現状はまだまだ検証が足らず、本当に必要な要素、というものは判明していない様子だったのだが。

 

 

「……ええと、思ったよりも深刻な話、ってことでいいのか?」

「そうとも言える。……とはいえ、貴方達にして欲しいことは、基本的にお兄さんと一緒にいる、くらいしかないけど」

「……ふむ、それはなんでだい?」

「私の未来視がないと、ルートの選択肢を認識することができないから」

 

 

 どうにも規模が大きすぎて、全容を把握できていない様子のみんなに、TASさんは彼女達の役目を『俺と一緒にいること』と定義していく。

 これは、彼女一人のループにおいて、『答え』を導き出せなかったがゆえのモノなのだが……どうにも納得できない様子のメンバーがぽつぽつと。

 

 それもまぁ、仕方のない話。

 人の役目を勝手に決めているようなものであるし、なにより彼女の様子があまりに淡々としていて、そこに熱を感じられないというのが大部分だろう。

 ゆえにちょっと、険悪な空気になったのだが。

 

 

「……なるほどぉ、すっごく頑張ってるんですねぇ、TASさんはぁ~」

「……ダミ子君?」

「だって、今の時点で十万回、なんですよねぇ?それってそれだけ真剣だってことの証左ですよねぇ」

 

 

 ほにゃ、とした笑みを浮かべながら、どこか微笑ましそうな声音で述べたダミ子さんに、TASさんがぴしりと動きを止める。

 ……いわゆる図星、というやつなわけなのだが、まさか彼女に指摘されるとは思わなかったようで、いつもより過剰に反応しているらしい。

 

 そんな姿をみれば、ちょっとした反抗心を抱いていた面々も、仕方ないかという空気を醸し出すようになり──。

 

 

「……はぁ。で、必要なモノは埋まったのかい?」

「…………そ、その検証はこのループで行う。特にDMは大分後に加わったから、どれくらい分岐を生むのか検証が必要」

 

 

 ほんのり言い淀んだTASさんに、周囲のみんながニヤニヤした結果、暫く追っかけ回されていたが問題はないだろう、多分。

 

 

 

・A・

 

 

 

「……しかし、あまり驚かれてはいませんでしたね、貴方様は」

「んー?あーうん、忘れてたってだけで、何度かTASさんから話は聞いてたからねぇ」

 

 

 一先ず話が一段落し、休憩しようとなった俺が人数分のお茶を淹れていると、手伝いますと付いてきたAUTOさんから、一つ声が掛かってきたのであった。

 内容は、さっきの話を聞いて、然程驚いていない当人……というものだったわけだが、それに関してはそもそもループの起点になっている俺が知らないはずがないということ、及び実感が薄いことに理由がある。

 

 いやまぁ、確かに今のままだと死ぬ、というのは分からないでもないのだが。……同時に、死んだ時の記憶とやらについては残っていないので、危機感が浮かんでこないのだ。

 無論、TASさんからの度重なる忠告により、俺の命が危ない……というのは分かっているのだが、それが危機感に結び付く前に霧散している感じ、とでもいうか。

 

 

「なんでまぁ、そういう気の弛みを是正する役割……みたいなのをみんなに期待してる節が、TASさんにあるんじゃないかなーというか」

「なるほど……彼女がその視点からプレイヤーの立ち位置になるのなら、私達はゲームの中のキャラクターみたいなもの、ということですか」

「……あんまり気を悪くしないであげてね?TASさん、アレで全然悪気とかないから」

「ええまぁ、その辺りはしっかりと。……ただ」

「ただ?」

 

 

 そんな感覚を正直に伝えれば、彼女は苦笑を浮かべつつ、こちらの補助をすると確約してくれる。

 とても有難い申し出に、思わず目頭が熱くなる俺であったが……台所を立ち去る際に、彼女はどうにも気になる言葉を残していくのであった。

 

 曰く、なにかとんでもない思い違いをしているような、という言葉を──。

 

 

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