二週目(※二週目とは限らない)の変化を確認するため、以前のイベントをチェックする作業を開始した俺達。
そうして訪れた一つ目のイベント場所・AUTOさんとの出会いがあったゲーセンには、何故か彼女と入れ替わるかのようにしてTASさんが待ち受けていたのであった。
……いや、そもそもTASさんってば、本来家に残って待ってるはずなんだけど?なんで居んの??
「まぁまぁ、細かいことは気にせずに。それよりほら、早く早く」
「……?早く、とは?」
「そりゃ勿論、ここに来たんだからすることは一つ。──私と対決、だよ」
「…………はい?」
そうして困惑する俺達のことは気にも留めぬ、とばかりにマイペースな発言を繰り返すTASさんだったが、彼女がここでこちらに要求してきたこともまた、なんというかマイペースな内容なのであった。
そう、それは突然の対戦要求。勿論相手はAUTOさんである。……いや、なんでまたそんな急に?
こちらの困惑が更に加速するものの、相手は説明する気など全くなく、ふんすふんすとAUTOさんが隣に並ぶのを待ち続けるばかり。
……要するに、彼女の相手をしないことには話が進まない──いわゆる強制イベントと化してしまったため、呼ばれていたAUTOさんは観念したように肩を落とし、いそいそと彼女の横に並んだのであった。
「ああ、でも一つ。別に対戦するのは構いませんが──」
「ん?」
「別に、倒してしまっても構わないのでしょう?」
「なんで今、無駄にフラグ立てたのAUTOさん????」
なお、そうしてTASさんの隣に立ったAUTOさんは何故か、とても有名な敗北フラグを立てていたのでした。……いや真面目な話、何故にそのフラグを立てた?
さっきからずっと困惑しかしていない気がするが、そんな俺のことは放置したまま、話は先へと進んでいく。
どうやら今回は三セット勝負になるとのことで、先に二セット先取した方の勝ち……という形式で進めるらしい。
で、最初はじゃんけんで選曲権を決め、二戦目は負けた側が曲を選び、最後の三戦目はどちらでもない第三者……つまりは俺が選ぶとのこと。
……いや、そこで俺に決めさせる必要性なくない?
「どっちかが決めるとそっちに有利になる。だからお兄さんも必要」
「むぅ……そう言われると、そうかぁ」
暗に巻き込まないでほしい、という気持ちを込めた台詞だったのだが、TASさんは気にせず正論で殴ってくるのだった。
……あーうん、ダンスもドレスも着てない状態のAUTOさんだと、基本的にTASさんが勝てる見込みもないもんね。
そう、なんだか忘れてしまっていた気がするが、そもそもAUTOさんの名前は『音ゲーのAUTO機能』を由来とするもの。
他のなによりも音ゲーが得意であることは疑いようがなく、根本的にTASさんが勝つ目はないのである。
唯一、彼女に勝つ目があるとすれば、それはAUTOさんの技能をラグらせること。……つまり、処理過多状態に持ち込むしかないのだ。
「具体的に言いますと、この筐体に収録されている楽曲の中には三曲ほど、私がパーフェクトを逃す可能性のあるモノが存在しています」
「逆を言うと、それ以外の曲ではAUTOさんの勝ちは揺るがない……ってことか」
処理過多……要するにビジー状態とか、もしくはオーバーフローというか。
まぁともかく、とにかく譜面がエグいやつでもない限り、彼女がタイミングを逃すようなことはあり得ない。
つまり、TASさんがそれらの曲を選択しようとするのはほぼ確定事項であり、かつAUTOさんはそれを避けるだけで確実に勝利できる、ということになるわけで。
……改めて考えてみると、これってAUTOさんに大幅に有利な対決なのでは?
「そうなりますわね。……だからこそ、ここで勝負を挑んできた理由がわからないのですが」
「ごちゃごちゃ言ってないで。ほら、じゃんけんしよ」
言うなれば、針に糸を通すかの如く、か細く頼りない道とでもいうか。
……そんな小さな可能性さえ掴むのがTASさんだが、それも相手がAUTOさんかつ音ゲー、という時点で怪しい話。
ゆえに、AUTOさんはこの勝負が何故申し込まれたのか?……という部分に疑念も持ったのだが、対するTASさんはその辺りを答えることはなく、ただ『さっさと選曲権を賭けてじゃんけんしよう』とこちらを急かすばかり。
……わけがわからない、と首を捻るAUTOさんだが、とはいえこのまま立っていても埒が明かないのも確かなため、一つため息を吐いたあとTASさんの望み通りじゃんけんをして。
「ふむ、勝ちましたわね」
「むぅ。じゃあそっちが選曲の権利をゲット」
わりと危なげなく、AUTOさんは選曲権を入手して、ほどほどの難易度の曲を選び出し。
「さあ、よくはわかりませんがこてんぱんにして差し上げますわ!」
「お手柔らかに。──じゃあ、勝負」
そしてそのまま、ある意味因縁の対決とも言える、二人の勝負が始まったのであった。