「……まぁ、これを未来視って言っていいのかは、ちょっと疑問だけど」
そんな言葉を溢しながら、頭を掻くTASさん。
その呑気な姿に、俺は──。
「……パードゥン?」
「なんで英語?」
思わず、間抜けな顔で聞き返すことになるのであった。
そうして、彼女の口から説明された彼女の能力。
それをキチンと理解した俺は、一言こう叫ぶのであった。
「……TASじゃん!!?」
「最初っからそう言ってる」
ええと、貴方が神か。
……思わず変なことを口走ってしまったが、それも仕方なし。
彼女から説明されたものが、思っていたよりワケわかんない能力だったため、ちょっと困惑しっぱなしなのである。
それと同時、その能力を簡潔に説明しようとすると『TASと同じ』となるのは、まさになるほど……という気持ちにもなっていたのであった。
……ともかく、あまり焦らしてもアレなので、詳しく解説すると……。
「個人を起点として、そこから起こり得る未来を
「……チートでは?」
「好き勝手にパラメーター弄れるわけじゃないから」
「あー、うん……」
改めて聞いても、全くもって意味のわからない技能である。
まぁ、全てというのは語弊があるらしいのだが……それでも、現在を起点にしてプラスマイナス二十四時間内の全ての事象──正確には
……いやなんやねん、未来視したことで変動する未来とか、そもそも発生確率一パーセント未満の事象とか、それらの細かいものさえも全て逃さず認知するって。
「正確に言うと、体感してる。全部ちゃんと試して、最終的にどれにするか選んでる。その時の
「……眩暈がしてきたんだけど」
大前提として、それらの選択肢を確認する際、時間経過は起こらないとのことだが……体感的には何十・何百・何千時間と過ごしているのも同じ。
出来上がった動画を現実と同義として、それを作るために動画を作り続けるような苦行──そのようなものに身を置いている、という彼女の言に、今更ながら薄寒さすら感じてくる俺である。
「……?」
「いやだってさ、それって君の自由はほとんどない、ってことじゃんか」
思わず、彼女の肩を掴んでしまう。
無限に等しい未来を見て、それを望む形に組み換える作業。
彼女の言う修行とは、その繰り返しを積み重ねるもの。
つまり、外から見えるよりも遥かに、彼女は無理をしているということなのだから。
……そのはず、なのだけれど。
「大丈夫。もう慣れた」
「慣れたって……」
「というか、最初に私は言ったけど?」
「はい?」
彼女はあっけらかんとして、こちらに笑みすら返しながら、次の句を告げるのだった。
「──ずっとTASでいるわけじゃない。休む時もあるって」
「……あー」
「というか、真剣に捉えすぎ。私はTASさん。それでいいし、それ以上は貴方には余分」
貴方の側に居る時はわりと休んでる──。
そのような趣旨の言葉をぶつけられてしまえば、心配のし過ぎという彼女の言葉も否定しきれず。
仕方なしに、俺は深々とため息を吐いて、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でるに留めることとなるのだった。
「わ、私の居ない間に、そんなシリアスな話が……!?」
「そう、ここで私の事情を開示することで、お兄さんの反応を調整できる」<フンス
「……ええと、シリアスな話、だったのですよね???」
「どうなんだろうなぁ……」
思わず遠い目をする俺と、おろおろしているAUTOさん。
……まぁうん、世が世ならヤベー使命を背負っている人、という感じになりそうなものなのだけれど……。
この通り、TASさん本人はあっけらかんとしているため、周囲がシリアスしてみても空気が持たないのである。
いや、どう考えてもシリアス系の裏事情のはず、なんだけどねぇ……?
「最速を目指すのは私のライフワークみたいなもの。可哀想とか言われても、困る」
「……ってわけで、悲壮感が秒も持たないんですわ」
「えー……」
ともすればドゥエり始めようとするTASさんが、悲壮さに染まるはずもなく。
今日も今日とて、何処かに姉○城でも転がっていないかなー、と探す彼女は、正直いつも通りとしか言いようがないのであった。
……なので、慣れて頂きたい。
慣れないとドゥエるって言ってたんで、本当に今すぐこの場で慣れて欲しい。マジで。
「い、いえ、そもそもドゥエるとは一体……?」
「だーくめたもるよろしく頼む」<ズサーズサーバッサバッサ
「あー!もー、AUTOさんがさっさと納得しないから、TASさん色即是空し始めちゃったじゃんかー!!」
「え、ええ?!……ってきゃあ、キモい!?」
なお、対処が間に合わなかったため、TASさんはまるで地面に落ちたセミのような動きを始めてしまい、思わず二人して安全な位置にまで後退りする羽目になってしまったのだった。
……有耶無耶にされてる気がする?そうねぇ……。