うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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できることとできないことの差

「……そもそもの話、TASさんを目指すのだとしても、どうやって?……という疑問が出てきますわよ?」

「え?そりゃ勿論、いつものAUTOさんみたく……んん?」

「……ご存知無かったようなので言っておきますけれど。一応、彼女のことを参考にしようとしたことは何度か有りますのよ?欠片も取っ掛かりが掴めませんでしたが」

 

 

 ──彼女の強化プランとして、TASさんを模倣するのはどうだろう?

 無論、単なる模倣では相手を越えることなどできないので、それに加えAUTOさんとしてのパゥワー()を加えることで、更なる飛躍を目指すのだ……。

 そんな突飛な提案をした俺なわけだが、やっぱり突飛過ぎたため敢えなく却下された次第である。ですよねー。

 

 いやまぁ、なにも欠片も勝算のない話、というわけではなかったのだが。

 AUTOさんのそれは、基本的にルールに則った最適解を出力する、というタイプのモノ。それゆえにルールから逸脱することはできない……というのが基本である。

 なので、ルールの方を改変するというのは考え方としてはごく自然なものなのだ。今回の場合で言うのなら『TASさんの真似をしながら行う』みたいなルールを追加する、みたいな?

 

 ……それってAUTOさんがかつて行っていた『ドレスでダンスしながら音ゲークリア』となにが違うのか?……と思われそうだが、本質的には全然違う。

 AUTOさんのやってたことは物理的な枷だが、今回のそれは心理的な枷なのだ。

 

 そもそもの話、何度も言うようにTASさんのやっていることは、極論『その道のプロの動きを継ぎ接ぎしたもの』というのが近い。

 一つ一つの動きはあくまでも人間ができる最高峰の動きでしかなく、そういう意味であればAUTOさんは初めから普通にできていることでしかないのだ。

 つまり、彼女がTASさんのような動きをすることは、スペック的に考えてもできて当然のことなのである。

 

 それなのに、何故彼女はTASさんの動きを模倣できないのか?……その答えは、まさにさっき説明した通り。

 そう、彼女の認識だと『その道のプロの動きを継ぎ接ぎしたもの』になってしまうから、である。

 彼女が()()()TASさんを真似しようとする場合、それぞれの動きに対し別々の最善を算出し、それを繋ぎ合わせるという形になってしまうのだ。

 

 それのなにが問題なのか?……と思われそうだが、AUTOさんの技能とは『特定のルールに対して最適解を出す』モノであることを思い出せば、それもまた単純な答えとなる。

 ……要するに、普通にやろうとするとさっきの『ドレスでダンスを~』の比ではないくらいに()()()()()()モノになってしまうのだ。

 

 件の『ドレスでダンスを~』の方にしても、実際は言葉面ほど軽い条件ではなく、実際には数十種類くらいの条件が重なっているらしいが……TASさんの動きを単純解釈してしまう場合、その条件付けは総数にして数百を下らない。

 下手をすれば彼女のたまにいう『追記数』分の条件付けになっている可能性すらあり、そうなってくると最早AUTOさんがTASさんの動きを真似する方がバカ、なんてことになりかねないだろう。

 

 だがしかし、である。

 音ゲーのTASを見たことのある人ならわかるだろうが、追記数が一つもない作品、というのはとても珍しい。音ゲーなんて極論()()()()()()()()()()()()()()()なのにも関わらず、だ。

 これは、使用する機器の遅延や相性など、様々な要因から来るモノであるが……つまるところ、音ゲーという舞台においてはTASさんにもAUTOさんにも、大きな差はないということでもある。

 つまり、既に彼女はTASさんの動きができている、という風に解釈することは可能。

 ゆえに、ルールを変えるという方便で、自身の認識をずらすことは十分に可能だと判断した次第だったわけである。

 

 ……まぁ、ご覧の通りAUTOさんからは『無理』の二文字を叩き付けられたわけなのだが。……なんでぇ?

 

 

「察するに、彼女のあれそれは一つの行動に対して無数の動きを必要とするもの、だからなのでしょう。……ゲーム機という二次元上ではわかり辛いですが、今私達が生きている現実という三次元にTASという概念を拡張する場合、それが操作しているモノは予想以上に多岐に渡る、とでも言いましょうか」

「えー?でもそれだとAUTOさんもそうなるんじゃ?」

「……何度も言いますが、私のそれは『ルールの遵守』です。未来のそれさえ引っ張ってくる、という部分に引っ掛かりを覚えるのでしょうが……その実、システム的にはどこまでも二次元ですのよ?」

「むぅ」

 

 

 そんなこちらの疑問に対し、彼女は冷静に自身の見解を述べてみせる。

 彼女という存在とルールという概念は密接に結び付いているが、その『ルール』というものは所詮紙面の上のもの……言うなれば二次元のモノでしかない、と。

 言ってしまえば、小難しい三次元の理を二次元のそれに貶めているようなもの……と語る彼女は、幾分哀しそうな表情をしていたのだった。

 

 

「……いや待った、未来……未来か」

「……?貴方様?」

 

 

 しかして俺は諦めきれない。

 見よ、AUTOさんの背後、筐体の前で待ち続けるTASさんの余裕たっぷりの表情を。

 あの野郎、『はー?私は負けませんがー?』みたいは表情でこっちを見て笑ってやがる……!(※お兄さんの被害妄想です)

 

 そんな顔されたら俺だってむきになるというもの、どうにかしてAUTOさんの勝ち筋がないかと熟慮して──そういえば、彼女が未来の技術を持ってこれることに思い至るのであった。

 

 

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