うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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嗚呼、我が青春のげぇむせんたぁよ、永遠に

「う、上手く行くでしょうか……?」

「行かなきゃ嘘だ、堂々とやれぃ!」

「は、はいっ!」

 

 

 AUTOさんの背を叩き、決戦の場へと送り出す俺。

 待っていたTASさんはようやくか、みたいな態度で姿勢を崩し──瞳に一筋の希望を輝かせるAUTOさんを見て、不敵に笑った。(当社比)

 

 

「その目は勝てると思ってる目。──中々に不遜」

「……その傲り、必ずや砕いて見せましょう」

 

 

 相も変わらずこの二人、なんというかバチバチである。

 AUTOさん側からは言わずもがな、TASさん側からしてもハッキリと『勝てないことがある』という認識があるからこそなのだろうが、だからこそよき好敵手になり得るとでも言うか。

 

 ──ゆえに、今の状況は双方に取って望ましくないもの。

 確かにTASさんはAUTOさんを突き放す、新たな可能性を見せ付けたが……それで相手が止まってしまっては、そこから先に繋がらない。

 TASさんが一つ壁を越えたのなら、AUTOさんもまた一つ壁を越えなければ嘘になるのだ。

 

 だからこそ、彼女は今進化しなければならない。進化せねばならないのだ。

 ……それを理解しているからこそ、TASさんはただ待ち続けている。AUTOさんがこちらに食らい付いてくることを、己を脅かすモノとしての更なる成長を……!

 

 ……なんかこう書くとどこの格闘漫画?ってなるが、まぁ大筋はそう間違ってはいまい。

 単に勝ちたいだけなら、相手に休む暇や考える暇を与えずに叩き潰すのが一番早いわけだし。

 

 そんなわけで、AUTOさんがこうして再び彼女の横に立つのは予定調和のはず。あとは、本当に彼女が昨日までの──さっきまでの自分を越えられるか、それだけである。

 

 

「見せて欲しい。貴方達が見付けた答えとやらを」

「──ええ、必ずや」

 

 

 並んだ二人は互いを一瞥したのち、筐体へと向き直る。

 

 本来、己との勝負という面の強い音ゲーだが、今この場においてのみ、元のそれとは性質を異にしている。

 それは、先程TASさんが見せた謎の現象──過程の省略にあった。

 

 人々の認知のみを停止し、時間だけはしっかりと経過させるそれは、ともすれば超常現象としか言い様のない異常事態であるが、しかしそれを行ったのがTASさんである以上、本質的には()()()()()()()()()のはずである。

 なればそれは──今の人類には無理かもしれないが、何処かの何時かの人類ならば説明できる、歴とした物理現象ということになるわけで。

 

 

(──そこに、私の勝機がある)

 

 

 ゆえに、それはAUTOさんにも真似できて然るべきもの、ということになる。

 

 CHEATちゃんのやることが良い例だが、あれは彼女個人の技能によって成立しているモノであり、TASさんも彼女の動きをそのまま真似することはできない。

 なにかしらの裏技を使って真似をするか、別のモノを組み合わせて似たようなことを起こすか、そのどちらかしかないのだ。

 

 そしてそれは、AUTOさんにしても同じこと。

 彼女もまた、CHEATちゃんのやることをそのままそっくり真似をする、ということはできない。

 彼女のやっていることに近くなるようなルールを見出だし、それを遂行するしかないのだ。

 そういう意味で、AUTOさんとTASさんのできることというのは、わりと似通っているとも言える。

 ──ゆえに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 

 無論、それぞれに課せられた枷がある以上、そっくりそのまま真似ることはできないだろう。

 今のAUTOさんにできないというのは、つまりそういうこと。

 

 

「──ところで、ご存知かと思いますが」

「……?」

 

 

 再び、微細に拍のズレた呼吸を行い始めるTASさん。

 ……恐らく、この呼吸に過程跳躍の肝が含まれているのだろうが──少なくとも、俺にはそれがなんなのかはわからない。

 

 そしてそれは、AUTOさんにしても同じこと。()()彼女では、そこにどんな術理が働いてあの現象を起こしているのか?……ということが掴めない。

 そして掴めないがゆえに、()()()()()()()()()()()()()()()

 彼女がTASさんを真似できないのは、つまりそういうこと。

 ルールに沿って動く彼女には、ルールが定められない状況下では満足な動きができないという欠点があった。

 

 

「私、ルールさえ掴めれば()()()()()()()()(たち)ですの。──それを掴むのに、何年掛けさせられたことか。ですが……()()()()()()()()()()()

「……そう、じゃあこれからが本当の勝負」

 

 

 ゆえに、彼女は()()()()()()()()をした。

 技術とは、基本未来に向けて洗練されて行くものである。

 昨日まで一時間掛かっていたことが、明日には五十分に短縮されるように・もしくはそうなるようにと磨いていくそれは、なるほどTASの更新合戦のようである。

 

 ──そう。記録というものは、いつか破られるモノである。

 AUTOさんはルールを掴めさえすれば、例え未来の技術だとしても存分に使いこなせる……という技能を持っている。

 そこに、TASとは基本的に()()()()()()もの、すなわち技術であるということを掛け合わせれば──必然、答えは見えてくる。

 

 そう、今のAUTOさんはただのAUTOさんではない。

 彼女は今、()()()()のAUTOさんへと、この一時だけ進化しているのだ。……一時だけの理由?千年先の技術にアクセスするのが思ったより負担が掛かることだったからですがなにか?

 

 まぁ、使い続ければその内慣れてしまうかもしれないが……ぶっつけ本番の今、千年先のそれを繋ぎ続けることに無理が生じているのは致し方なく。

 ……というか、あの過程省略千年先の技術なのかよ怖っ。

 なんて他愛のないことを思いつつ、俺は気炎を燃やす二人を後ろから眺めている。

 

 ……うん、これ色々大丈夫なんかな?

 そう困惑する俺の周りでは、本来この時代においてぶつかり合うはずのない技術がぶつかり合ったことによる空間の歪みにより、なんかこう時間と時間の狭間?っぽいものが生まれ始めていたのであった。

 

 ……まぁ、二人が楽しそうだからまぁいっか!!

 

 

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