「……ふむ、駅に謎の黒板出現……とな?」
「ええ。……ようやく、腹が決まったということなのでしょう」
ある日の朝。
駅に現れた謎の黒板に、『XYZ』と末尾に添えられた文章が掲載された、という噂を伴って家にやって来たAUTOさんの姿に、こちらもいよいよかと意気込みを新たにする俺達である。
……まぁ、時は流れに流れて、世間は現在ゴールデンウィーク真っ只中までずれ込んでたりするんだけどね!!
でも彼女の出現タイミングも明言はされてなかったから、ここまでずれ込んでも許容範囲なんだよね!びっくりすることに!!
……とまぁ、それだけ待たされたこともあって、若干気の立ってる感のある我々である。
見てみろよTASさんを、あまりに待たされたもんだから、他のゲームのTAS記録の短縮しまくってるよ。配管工の
「宇宙線を利用するのは良くないって怒られた」
「宇宙線……?」
なお、ダメだった理由についてはよくわからなかった()ため、スルーすることにした俺達一同である。……天文学まで絡むのはちょっとどうしようもないというか……。
まぁともかく、ようやく今年二つ目の大型イベントである『CHEATちゃん初登場』の開幕というわけで、勇み足で駅に向かった俺達はというと。
「……なに考えてんだアイツーゥッ!!?」
「よっぽど嫌だったんでしょうね……」
地上の迷宮となった駅舎内を、延々と歩き回らさせられる羽目に陥っていたのでありました。……いや、なんでやねん。
俺達の現在位置が何処なのかはわからないが、かれこれ三時間くらいずっと歩かされているというのは事実。
その間、俺達の視界に移り込んでくるのは、深緑の板で仕切られた道。……要するにこの迷宮の壁、全部黒板なのである、恐ろしいことに。
以前、CHEATちゃんの私物である黒板が、実はDMさんのところから流出したものかも知れない……みたいな話を覚えているだろうか?
どうやらあの話のあと、彼女はDMさんと一緒にあの黒板に秘められた謎を探り続け──結果、あの黒板に隠された機能にたどり着いたのだという。それが、
『私のところの迷宮の再現、ですね。ほら、あのボードゲームみたいな』
「なんであんな呪物がポンポン出てくるんだよ……」
『そりゃまぁ、元々邪神ですからね、私』
ボスなんだから、そういうアイテム備蓄しててもおかしくないでしょう?……と笑顔で告げるDMさんに渋い顔を返しつつ、黒板迷宮を進む俺とAUTOさんである。
……なおこの迷宮、黒板から特殊な磁場が発生してるとかで、電子機器のほとんどが通信不可能になるという嫌がらせ付きだったりする。
このままだと攻略不可能になる、と久しぶりにタブレットモードになったDMさんが俺の鞄に紛れ込んでいなければ、今頃AUTOさんと一緒に途方に暮れていたところだろう。
まぁ、彼女が居ても楽々攻略できるってわけでもないんだけどね!!クソァッ!!
……まぁそんなわけで、タブレットを構えながら迷宮内を歩いているのが今の俺達、というわけである。
「ねーAUTOさん、なんかこう上手い感じに迷宮踏破とかできないわけ?ほら、トレジャーハンター的な最適解を見出だすとか」
「……別にやっても構いませんけど、その場合貴方様はここに放置になりますが?」
「え、なにゆえ?」
「それは勿論、懸垂状態で腕の力のみで一メートル以上の幅を横に跳ぶ、みたいな非常識極まる工程が混ざるからですが?」
「うわぁ、本気でトレジャーハンタールートじゃんそれ」
具体的にはこう、『やべぇ』的な台詞がよく飛び出すタイプのやつ。
……軽業師かなにかか、みたいなアクロバティック過ぎる変態軌道を当たり前に攻略に持ち出されるとなれば、基本的に一般人の俺としてはお手上げでしかないわけで。
というかなに?この迷宮平面的なやつかと思ってたけど、もしかして上下にも広いの?……などというツッコミすらすぐに出てこない有り様だが、なんにせよこのままだといつまで経ってもCHEATちゃんにたどり着かないこと確定である。
「……かといって、壁をぶち破るのも非現実的なんだよなぁ」
「──せいっ!」
なおこの迷宮、元がDMさんのところからの流出物であるせいか、どうにも変な機能が備わっているようで。
その一つがこれ、迷宮の自動補修である。
今しがたAUTOさんが、気合を込めて正拳突きを黒板に向かって繰り出したわけなのだが……呆気なく叩き割られた黒板はしかし、
……いや、ここまで来ると最早黒板の見た目をしているだけのなにか別のものでしかないわけだが、ともかく地道にルートを探すにしても今の段階で三時間。……何処までCHEATちゃんに近付いているのかもわからない以上、このまま歩くのは精神的に無理がある。
「……なんとか、TASさんと合流するなり、TASさんが攻略してくれるなりってなればいいんだが……」
「連絡が付きませんからね。こればっかりはなんとも」
ううむ、と唸る俺達。
現状はぐれてしまったTASさんとは、未だに連絡が取れていないがゆえの諦感であった。