うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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精神的余裕のないやつは基本負ける

「なんとわがままで勝手気ままな少女なのだろう。よもや自身をヒロインだとでも思っているのではなかろうか」

「相変わらずお兄さんの言葉のナイフの切れ味が鋭い」

 

 

 よせやい、照れるだろ?

 

 ……とまぁ、怒り心頭熱気カンカン……といった様子だったCHEATちゃんは、こちらに「いいからさっさとここまで来いやぁっ!!」と叫びながら、受話器を叩き付けるかの如く通信を一方的に切断したのであるが。

 それを聞いた一同、特に急ぐ気まったくなしの有り様である。

 いやほら、戦いって準備の時点で始まってるって言うじゃん?で、基本的に相手の余裕を削ぐのって基本戦術じゃん?

 

 

「つまり現在の状況は完璧なる好機!CHEATちゃんが怒れば怒るほどこちらの勝ちは磐石となるというもの!」

「ええ、それで相手が掟破りの行動に手を染めなければ、という注釈は付きますが」

「……ええと、怒ってらっしゃる?」

「いいえ、怒ってはいませんわ。勝負とは無情なもの、という道理は私も修めていますので。……ただまぁ、CHEATさんもやられてばかりの人間というわけでもないでしょう、と思っただけの話ですわ」

「ううむ……」

 

 

 なのでこちらは牛歩戦術を選択し、相手の冷静さを極限まで削るのもありなのでは?……と案を出したのだが、それに関してはAUTOさんにやんわり『やめた方がいい』と忠告を受けたわけなのでございます。

 

 ……まぁうん、怒らせ過ぎた結果、後々の関係にまでヒビを入れるのは良くない、という彼女の主張は間違いではない。

 ないのだが、なんとなーく私怨が混じってるような気がするのは、俺の気のせいなのだろうか?

 ほら、彼女TASさんに時間飛ばしとかいう盤外戦術食らってたし……。

 

 結果として、彼女はその盤外戦術を相殺する術を得たものの、そうでなければボッコボコにされていたのも容易に想像できるため、その辺りの心配というか懸念というか、結構な頻度で混じっていてもおかしくないというか。

 

 

「……でも、CHEATは追い詰めた方が面白いよ?」

「……いえまぁ、そこは否定しかねますが」

「そこで同意する方が酷くないか?」

 

 

 なお、そこまで擁護しておきつつ、彼女の本領ってやっぱり追い詰められた時だよね!……みたいな態度を取ってしまったため、微妙に締まらない感じになってしまうAUTOさんなのであった。

 ……彼女にまでそう思われてるとか、哀れCHEATちゃん。

 

 

 

TAT

 

 

 

 結局、そもそも家を出て五時間経過しそうということもあり、牛歩戦術もなにも既に完遂済みみたいなもんだろ……というもっともな指摘が飛んできたため、それもそっかと納得して一先ず目的地に急ぐことにした俺達である。

 

 

「にしても……勝負の内容って基本部分は前回と変わらないんだろ?……やっぱり納得できないんだけど。なんであのホログラム越しにやらなかったし」

「真面目に考察するのであれば……目的地にCHEATさん側が有利になるなにかが用意されている、とかでしょうか?」

『なるほど、カンペとか大量に仕込んでいるわけですね!』

「いやだよそんな言葉の原義通りの動きしてるCHEATちゃん」

 

 

 確か『イカサマ』だったっけ?

 ……まぁともかく、彼女の能力によるチートではなく、物理的な手段のイカサマとかTASさんの裏を掻ける気がまったくしないため、仮にお出しされても鼻歌混じりに踏破されるだけじゃねーかなー、と思う俺である。

 それはそれで、『じゃあ結局向こうのCHEATちゃんはどんな準備をしているのか?』という疑問が晴れないわけなのだが。

 

 そんなことを喋りつつ、時に坂を登り時に坂を下り時に角を右に曲がり時に角を左に曲がり……と迷宮内を歩くことしばし。

 俺達はようやく目的地である『噴水広場前』にたどり着くことに成功したのであった。……なお、経過時間はさっきのホログラムCHEATちゃんとのやりとりから、およそ十分ほどである。

 

 

「……やっっっっと来やがって。おっせぇんだよテメェらぁっ!!」

「な、その姿は……!」

 

 

 そして、俺達がようやく目にしたCHEATちゃんはというと。

 その両肩に謎の人形をセットし、なんかワイヤー的ななにかで動かしている……ぶっちゃけると一人で人形劇みたいなことをしているのであった。

 ……えーと、これは笑うところなのかな?

 

 

「はっ、そうやってヘラヘラしてられるのも今の内だ!【チートコード実行】!!

「な、なにぃーっ!!?」

 

 

 思わず困惑する俺達に、しかしてCHEATちゃんはその態度を崩さない。

 そう、まるでこれこそが必勝の策だとでも言うように。

 そしてそれを証明するように、彼女は手持ち黒板を天に掲げ、

 

 

「……我はCHEAT一号」

「我はCHEAT二号!」

「そして私がCHEAT本体!!見たかTAS、これが私の答えだぁぁああっ!!」

「なんと」

 

 

 突然の輝きに怯んだ俺達が、閉じていた眼を開いた時。

 そこにあったのは、空気感以外ほぼ同一なCHEATちゃんが三人並んでいる景色なのであった。

 

 ……あー、TASさんの適当な『そっかー』が出てしまった。

 このままだとヤバいぞCHEATちゃん!

 

 そんな俺の焦りを知ってか知らずか、立ち並ぶ三人のCHEATちゃん達は不敵な笑みを浮かべていたのであった。

 

 

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