うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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三人寄れば文殊の知恵だが、三本の矢も時には折れる

 この作戦のどこにそんなドヤ顔できる理由があるのだろう?

 ……という思いを顔いっぱいに張り付けている俺なわけだが、それを見てもなおCHEATちゃんの様子が変化することはない。

 つまり彼女にとってそれは、よっぽど自信のある策ということになるわけなのだが……ってことはなにか?まさか単純に三人に増えたから回答権が三倍、みたいなことではないのだろうか?

 

 

「いや流石にそれは舐めすぎだっての!!いいか見てろよお前、TASが私に負ける瞬間を!」

「威勢はとてもよい。私の度肝を抜く展開を所望する」

「言われずとも!わかってると思うが、これから行われるのは『絵柄しりとり』!自身の解釈力こそが問われるもの!」

「日本語以外の言語は?」

「TAS語は却下だ!」

「むぅ」

 

 

 ……などと言っていたら、CHEATちゃんが繰り出したのはクリティカルな制限。

 このしりとりは書いてあるモノを見て、それを自由に解釈せるという、いわば想像力がモノを言う遊びなわけだが……そこら辺のめんどくさい部分()を全部丸投げされる恐れのある『TAS語』を最初から排除するという、とてもクレーバーな宣言だと言えるだろう。

 

 ……いやまぁ、実際のところ『TAS語』はなんでも無視できる魔法の言葉、ってわけではないのだが。

 

 

『入力機器やゲームそのものの癖を見切る必要性がありますからねー』

「適当に絵を描いているように見えて、その実計算し尽くされたモノである……というのは、もはや周知の事実ですものね」

 

 

 DMさんとAUTOさんの話すように、『TAS語』が自由に見えるのはあくまでも()()()()()()()()()描いている、というだけのこと。

 その本質は、どこまでもシステマチックな計算の上に成り立った一種のパフォーマンスである。

 

 ……これは書く方の『TAS語』の話だが、それは話す方の『TAS語』にしても同じ。

 流石に『#♂∧∀∇』語とかは勝手が違うわけだが、そうでない場合の『TAS語』とは、その性質的に空耳のようなものなのである。

 例えばそう、『ツンドラ』な態度の中に『愛』があるという、『ツァンドィラ』みたいに……!

 

 ……どうやって発音するんだそれ、だって?まぁ世の中には、『クェイド』みたいに日本人的感覚だと『?』ってなるような名前も結構な数転がってるからね、仕方ないね。

 いやまぁ、海外にしかない発音記号とかを、日本語で無理矢理表現しようとするからこそ発生する問題、のような気もしないでもないけども。

 

 ……ともかく。

 本来の『TAS語』がそれらの特異な発音を組み合わせ、聞こえない音や何故か聞こえる音などを発生させるものである、というのは間違いなく。

 それゆえ、それを封じられると純粋な発想力勝負、ということになるわけである。

 

 つまり、今回のCHEATちゃんが狙っているのは回答権の増加などではなく──、

 

 

「私達は三人一組でやらせて貰うぜ!そっちもちまちまと三人相手にしなくていいんだから楽だろ?」

「……問題ない。蹴散らす」

 

 

 三人分に増えた頭脳による、発想力の増強。

 それこそが、今回彼女が思い付いた作戦の一つなのであった。……他にもあるのかって?そりゃまぁ、これだけだと勝ちを確信するには弱いし……。

 

 

 

・A・

 

 

 

 はてさて、異例の三位一体対一によるしりとりが始まろうとしているわけだが、この形式になったのにはやむを得ない事情、というのもある。

 

 それは、単純に三対一形式にすると(実情はどうあれ)周囲からは卑怯な行動にしか見えない、というものである。

 

 

「多くマス目を取った方の勝ち、というルールですと、どうしても回答権の多い側が有利になってしまう。かといって多い側の人数分、単騎側にも回答権を与える、という形式にするのだとしても……」

『それはそれで、同じ人間が複数答えることによる()()()()()に陥りやすくなる、ということですね?』

「その通りですわ」

 

 

 理由については、AUTO達の語る通り。

 マス目に目を向ける場合、純粋に人の多い方が有利となり、かといってその有利不利に目を向けると、今度は個人の知識量という壁にぶつかってしまう。

 

 どんな賢人にも、知識の底というものは存在している。

 その底とでも言うべき場所にたどり着くまでに、掘り起こさなければならない知識という土の量にこそ差はあれど……底無し沼のようなことにはなりはしない。

 

 それを踏まえる限り、例え分身であれ()()()()()()()()存在が複数居る……というのは、いわば知識の底を増やす行為と言い換えても良いのである。

 人の記憶は不確かなもの、些細なきっかけで思い出せなくなることがある、ということを踏まえれば、そのファンブルの可能性を極力少なくできる多人数側の方が有利である、というのは明白なのだ。

 まぁもちろん、この論理もあくまで普通の場合は、という但し書きが付くのだが。

 

 知識に底はあるといったが、その底を幾らでも掘り進められるTASさんに対し、はたしてCHEATちゃんが如何なる奇策を以て挑むのか。

 

 今回の対決はそこに見所があるのだと、俺達は確信した眼差しで、二人(よにん)の対峙を眺めるのであった──。

 

 

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