うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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勝ちを拾うには手狭に過ぎる

 思わず困惑しすぎて脳がフリーズしたCHEATちゃんが、ようやく再起動をはたしてから暫くのこと。

 気を取り直してしりとりの準備を終えた彼女は、一先ずこの勝負を三本先取形式にすることをTASさんに伝えたのであった。

 

 

「……なるほど、思っていた反応と違ったので、相手の出方を探るための動きですわね」

「一本目は見に回る、ってことかね?」

 

 

 相手の動きに合わせ、必要な判断ができている辺り、確かに三人分に増えた甲斐はあった、ということなのだろう。

 とはいえそれが実を結ぶのかと言われれば、難しいとしか言いようがないとも思うのだが。

 

 はてさて、今回の対決の主題となる『絵柄しりとり』だが、とあるゲームで登場した時には技術的な問題が存在していた。……いやまぁ、この問題に関しては()()()()()()()()()()()()()()()モノでもあるわけだが。

 それが、前回このゲームをした時にも触れた『プログラムである以上、返答も予め定められたものしか使えない』である。

 

 

「想像力を問うと言いつつ、出題者(プログラマー)の発想力という限界が存在する……ということですわね」

「そういう意味で、現実でやるこれは想像力も必須だけど、それ以上に自身の発言を相手に納得させる語彙力も必要になる、ってわけだね」

 

 

 そういう意味で、リアルでやるこのしりとりは本来のそれより遥かに自由度が上がったとも言えるわけなのだが……同時に、それを対戦相手に納得させるだけの理由を用意する必要もある、という別軸の駆け引きも発生しているのだった。

 まぁ、前回やった時は黒板側に判定を任せる、という形でその辺りの煩雑さは省いていたわけなのだが。……黒板が判定してたのも、今思い返すとおかしいな?

 

 まぁ、同時に今はあの黒板がわりと厄物というか、意味不明な物体であるため納得もできなくはないわけだが。

 ともあれ、今回はその判断機能は使わず、真っ当に相手を納得させる必要のあるアナログ型のしりとりにしてあるようだ。

 

 ──この辺りにも、勝ちを狙うCHEATちゃんの工夫が見て取れる。

 

 

「と、言いますと?」

「回答権を三回増やす代わりに、三人で一人分扱いするようにした今のCHEATちゃんは、出された答えに()()()()()()()()()()()()()んだ」

『あーなるほど、うっかり相手の答えに納得してしまっても、他の二人が納得しなければNGが出せるんですね』

 

 

 ちょっと卑怯臭い手だが……、一人で相手の出してきた理由を判別する必要のあるTASさんに比べ、CHEATちゃんの方は三人で話し合って賛否を決めることができる。

 言うなれば()()()()()()()正当な理由で相手の出したモノを否定できる仕組みを作った、となるだろうか。無論、実際にその対応が正当かどうかは別問題であるが。

 

 一人で否定するよりも、複数人で否定する方がなんとなく正しいことを言っているように見える、という風にも言い換えられるか。

 ともかく、感情に任せて単に否定しているだけ、と見られ辛くなるのはとても大きいわけである。

 

 これにより、相手の不正を抑えつつ、こちらの不正を通しやすくしたことを理解したTASさんが、『ん、意外とよく考えてる』と判断して多少やる気を上方修正したわけなのだが。

 ……これだけだとまだ、色々と抜けがあるのはなんとなくわかるだろう。

 

 そう思いながら争う二人を見れば、案の定その()()が顕在化している最中なのであった。

 

 

「に、二番で春雨!!」

「五番、ありがとう(merci)

「……ああくそ、認める!」

「はわわわ!?なんでなんでー!?」

「ええと、メルシーだから……し?」

「発音的には『すぃ』だから、お好きなように」

「……ええい、八番でシリアルコード!」

「十二番、都々逸」

「あ゛ー!!」

 

 

 マス目は合計二十五個、現状は互角の戦いのようだが……その実、追い詰められているのはCHEATちゃんの方である。

 それもそのはず、途中でCHEATちゃんも気付いたようだが……日本語縛りではなかったのが一番の問題。

 

 確かにTAS語は驚異的だが、そもそもの話世界に存在する言語の数はおよそ七千ほど。

 更に、言語によっては似たような意味合いのモノに対し、複数の表現が存在することなどもザラ。

 つまり、別にTAS語が使えなくともTASさん側の選択肢はそこまで減ってないのである。……まぁ、そのタイミングごとに正解の言葉を選ぶため、ちょっと時間が掛かるようにはなっているだろうが。

 

 そしてそこにも問題点が一つ。

 確かに一つ一つの問題に対して返答する際、以前よりも時間が掛かるようになっているものの……その時間は一秒にも満たない短い時間である。

 無論、そんな時間でも積み重なれば大きくはなるが……それはCHEATちゃん側も同じこと。

 

 そう、彼女は今回多数決の正当性を確保するため、自分以外の分身との思考の同期を取っていないが……()()()()()話し合う必要性、というものを自ら発生させてしまっているのである。

 脳内(イマジナリー)分身(フレンズ)だったならばまだマシだったのだろうが、変に奇を衒ったせいで自らの首を締める結果となってしまっているのだ。

 

 ──結局、一回戦目はそのままCHEATちゃんは押しきられて負けてしまったのであった。

 

 

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